作業別の留意事項 ここに紹介します留意事項は りんごを栽培する際に特に留意すべき内容を列記したものです また 栽培方法によっては該当しない内容も含まれます 実際の栽培にあたっては 地域の普及指導センターや JA 等に問い合わせいただき 園地条件や品種に適した施肥設計 栽培方法等に基づき栽培してくださ

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Ⅱ りんご生産情報 1 果実肥大 作業の進み (1) 果実肥大 9 月 11 日現在の果実肥大は 概ね平年並みから平年を上回っている 果実肥大 (9 月 11 日現在 横径 :cm 平年比:%) 地 域 年 つがる ジョナゴールド ふ じ 本 年 黒 石 平 年 (

隔年結果

1 著者が長い間研究してきた核果類(モモ スモモ オウトウ)のうち スモモとオウトウは結実が不安定で いかに安定して結実させるかが大きな課題になっている これに対し モモの結実確保は比較的容易だが 食味のばらつき を指摘されることが多い 品質の揃った果実を安定してとる モモではこれが課題であり 実現

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

Ⅱ りんご生産情報 1 果実肥大 作業の進み 病害虫の動き (1) 果実肥大 8 月 1 日現在での果実肥大は 7 月下旬の高温の影響で肥大の伸びが鈍ったものの 概ね平年並みから平年を上回っている 果実肥大 (8 月 1 日現在 横径 :cm 平年比:%) 地 域 年 つがる ジョナゴールド ふ じ

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果樹の生育概況

今後の管理のポイント [懸案事項] ①早期作型における2番花 房の花芽分化遅延 ②炭そ病とハダニ類の発生 拡大 [対策] ①寒冷紗を被覆して 花芽分化を誘導する 2番花房 の花芽分化を確認して被覆を除去する 被覆期間の目安 9月25 10月20日 ②定期的に薬剤による防除を行う 特に葉かぎ後の 葉か

果樹の生育概況

新梢では窒素や燐酸より吸収割合が約 2 分の1にまで低下している カルシウム : 窒素, 燐酸, カリとは異なり葉が52% で最も多く, ついで果実の22% で, 他の部位は著しく少ない マグネシウム : カルシウムと同様に葉が最も多く, ついで果実, 根の順で, 他の成分に比べて根の吸収割合が高い

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

果樹経営において収益を向上させるためには 収益性の低い品目 品種や生産性の低くなった老木から 消費者ニーズに対応した収益性の高い優良品種へ改植することが重要です ただし 果樹は を植えつけてから一定の収量が確保できるまでに数年の期間を要することから 計画的な改植が必要です 1 果樹の改植にあたって

目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

復興庁 農林水産省食料生産地域再生のための先端技術展開事業 被災地の早期復興に資する果樹生産 利用技術の実証研究 クリ ぽろたん のジョイント栽培マニュアル早期成園化 低コストの樹形管理と防除技術 宮城県農業 園芸総合研究所神奈川県農業技術センター国立研究開発法人農研機構果樹茶業研究部門

カンキツの土づくりと樹勢回復対策 近年高品質果実生産のために カンキツ類のマルチ栽培や完熟栽培など樹体にストレスをかける栽培法が多くなっています それにより樹体への負担が大きく 樹勢が低下している園地が増えています カンキツ類を生産するうえで樹が適正な状態であることが 収量の安定とともに高品質生産の

リンゴ黒星病、うどんこ病防除にサルバトーレME、フルーツセイバーが有効である

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予報 岡病防第16号

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

元高虫防第 139 号令和元年 7 月 4 日 各関係機関長様 高知県病害虫防除所長 病害虫発生予察情報について 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報及び令和元年度予報 4 号 (7 月 ) を送付します 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報 Ⅰ. 気象概況半旬 (6 月 ) 平均気温最高気温最低気

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H25 農作物技術情報第5号 果樹(H )

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Ⅱ りんご生産情報 1 生育 作業の進み 病害虫の動き (1) 生育ステージふじの満開日は黒石 ( りんご研究所 ) では 平年より2 日早い5 月 11 日 五戸 ( りんご研究所県南果樹部 ) では 平年より6 日早い5 月 9 日であった 開花日 ( 月. 日 ) 地域年つがるジョナゴールド王

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平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

Ⅱ りんご生産情報 1 生育 作業の進み 病害虫の動き (1) 生育ステージふじの落花日は 黒石 ( りんご研究所 ) で平年より2 日早い5 月 15 日 五戸 ( 県南果樹部 ) で平年より2 日早い5 月 18 日であった 満開日 ( 月. 日 ) 地域年つがるジョナゴールド王林ふじ 黒 石

コシヒカリの上手な施肥

H26 中予地方局産業振興課普及だより 新技術情報 -1 いちご新品種 紅い雫 ( あかいしずく ) 1. 紅い雫 の来歴県農林水産研究所が育成したいちご新品種 紅い雫 は あまおとめ ( 母親 ) 紅ほっぺ ( 父親 ) の交配により誕生し 平成 26 年 6 月 25 日に品種登録出願されました

バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

本日のお話 つなぐことの意味 技術の効果 ( 第一期実用技術開発事業 ) 現地実証と産地への実用化 適用樹種拡大研究への発展 更なる共同研究 実用化に向けて


メラレウカ苗生産技術の検討 供試品種は レッドジェム, レボリューションゴールド を用い, 挿し木を行う前日に枝を採取し, 直ちに水につけ持ち帰り, 挿し穂の基部径を 0.8~1.2mm,1.8~2.2mm,2.8~3.3mm で切り分けた後, 長さ約 8cm, 基部から 3cm の葉を除いた状態に

Ⅲ-2-(1)施設野菜

果樹の生育概況

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4. 台風通過後の対策として 適時適切な防除を心掛けること 特に 都道府県病害虫防除所から発表される発生予察情報に基づき適期防除に努めること 作目別対策 1. 園芸作物全般 (1) 事前の対策ア. 台風が接近する前に施設やほ場周辺の点検 排水路の清掃を行うこと イ. 温室 育苗 集荷施設等については

3 園芸作物 < 果菜類 > 1-1 トマト [ ハウス ] ア導入すべき持続性の高い農業生産方式の内容 トマトは主に道央 道南および道北の施設で栽培され 作型は促成 ( ハウス加温 マルチ ) 半促成 ( ハウス マルチ ) 抑制 ( ハウス ) などである 品種は 桃太郎 ハウス桃太郎 桃太郎

平成 30 年 7 月 27 日 ( 表題 ) 台風第 12 号の接近に伴う農作物被害技術対策情報について ( 担当 ) 佐賀北部農業技術者連絡協議会事務局 気象庁によると台風第 12 号は 現在 ( 平成 30 年 7 月 27 日 6 時 45 分 ) 硫黄島の南 東約 80km を北東に向かっ

Ⅱ りんご生産情報 1 生育 作業の進み 病害虫の動き (1) 生育ステージ 3 月の気温が高めに推移したため 生育が大幅に早まり ふじの発芽日は 黒石 ( りんご研究所 ) で平年より7 日早い4 月 2 日 五戸 ( 県南果樹部 ) で平年より8 日早い4 月 1 日であった 4 月 5 日仙台

平成 26 年度補正予算 :200 億円 1

表紙

仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

H23 農作物技術情報 第5号 果樹(H )

Ⅰ. 計画及び準備 1. 桜を植えるポイント ( 成育に適した場所 ) 1) 日当りを好む : 桜は日当りのよい場所を好みます 日がよく当り まわりに障害がない場所を選びましょう 日陰の場所ではうまく育ちません 2) 土地を選ぶ : 水はけがよく適度に湿り気があり 肥沃な土地を選びます 水捌けの悪い

農業指導情報 第 1 号能代市農業総合指導センター環境産業部農業振興課 発行平成 26 年 4 月 25 日二ツ井地域局環境産業課 確かな農産物で もうかる 農業!! 農家の皆さんを支援します!! 農家支援チームにご相談ください! 今年度 農業技術センター内に農家支援


Microsoft PowerPoint - チャトゲシンポ

平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

農業における豪雨被害に対する総合的な産地再生対策について 豪雨被害鳥獣害防止施設復旧事業 鳥獣被害防止総合対策事業 (43,379 千円 ) 予定 被災した侵入防止柵の再整備に要する経費 [ 補助率 : 国定額 ( 資材費相当 ) 又は国 1/2 県 1/4 ( 市町 1/4)] 鳥獣害防止施設復旧

長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) 骨子 ( 案 ) に関する参考資料 1 骨子 ( 案 ) の項目と種子の生産供給の仕組み 主要農作物種子法 ( 以下 種子法 という ) で規定されていた項目については 長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) の骨子 ( 案 ) において すべて盛り込むこ

3 三保松原の新たな管理体制平成 26 年 12 月の三保松原の松林保全技術会議から提言された三保松原保全センター ( 仮称 ) の設置に関し 本年 6 月 16 日の第 7 回三保松原保全実行委員会で提案された三保松原保全の主体となる新組織については 羽衣の松周辺の老齢大木や松枯れ対策についてのこ

2. 摘花の実施早期の摘花 摘果は 良好な果実肥大や翌年の花芽確保のために また 適正樹勢の維持のために重要な作業となる 仕上げ摘果を満開 30 日後までに終了することを目標に作業計画を立てる そのために摘花を積極的に行い 落花後の摘果作業の時間短縮を図る 腋芽花の他 生育不良の花そう 枝の直上直下

Microsoft Word 予報第9号

Microsoft Word - cap4-2013chugoku-hirosima

梢の発生が期待できるよう9月には必ず仕上げ摘果を徹底し 適正葉果比に仕上げましょう 着果量が中庸以上の樹では早生温州では9月中 普通温州では10 月上旬までに行いましょう(表2) ⑴着果過多樹着果量が多く肥大が悪い樹は 商品性の低い小玉果や傷果 病害虫被害果を中心に早急に

PC農法研究会

281003(最終)台風18号対策.doc

茨城県農業総合センター園芸研究所研究報告第 13 号 半促成メロンの 4 月穫り栽培における品種選定および保温方法 金子賢一 小河原孝司 薄史暁 佐久間文雄 SelectionofUsefulCultivarsandaMethodofHeatInsulationinSe

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

強い乾燥をうけるとこはん症の発生原因となりますので例年こはん症が発生する園では土壌改良をします ⑴土壌pHの改良土壌の最適pHは5.5~6.5です 苦土石灰施用後数年経過すると酸性になりますので何年も施用していない園では本年は施用しましょう 葉の縁がチョコレート色の斑点が発

から1月下旬から2月上旬です 収穫が遅くなると陽光面が回青して淡黄色くなることから遅れないようにします 収穫後は4%程度の予措をした後 中晩柑の貯蔵管理をします 3 土壌管理1月から2月は土壌改良を実施する時期です 土壌条件が悪く夏季に強い乾燥をうけると虎班症の発生原因とな

失敗しない堆肥の使い方と施用効果

11月表紙

1 作物名     2 作付圃場 3 実施年度   4 担当

どうして GAP を導入するの? 産地や農家が安定した経営を続けるためには 次のような取組が必要です 産地の信頼を守るための体制を作りましょう 安全な農産物の生産は農家の責務です また 産地の農家のうち 1 人でも問題を起こせば 産地全体で出荷停止や商品回収を行わなければならず その後の取引にも影響

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

資料 2 農業データ連携基盤の構築について 農業データ連携基盤 (WAGRI) WAGRI とは 農業データプラットフォームが 様々なデータやサービスを連環させる 輪 となり 様々なコミュニティのさらなる調和を促す 和 となることで 農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語

各都道府県知事 宛 25 消安第 175 号環水大土発第 号平成 25 年 4 月 26 日 農林水産省消費 安全局長 環境省水 大気環境局長 住宅地等における農薬使用について 農薬は 適正に使用されない場合 人畜及び周辺の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある 特に 学校 保育所 病

03クリの低樹高仕立て.indd

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AI IoTを活用したスマート農業の加速化 人手不足への対応や生産性の向上を進めるためには ICTを活用したスマート農業の推進が重要 今後人工知能やIoT等の先進技術により 生産現場のみならずサプライチェーン全体にイノ ベーションを起こし 生産性向上や新たな価値創出を推進 1

参考 < これまでの合同会合における検討経緯 > 1 第 1 回合同会合 ( 平成 15 年 1 月 21 日 ) 了承事項 1 平成 14 年末に都道府県及びインターネットを通じて行った調査で情報提供のあった資材のうち 食酢 重曹 及び 天敵 ( 使用される場所の周辺で採取されたもの ) の 3

資料 3-1 人工知能や IoT によるスマート農業の 加速化について ( 案 ) 平成 28 年 11 月

表 30m の長さの簡易ハウス ( 約 1a) の設置に要する経費 資材名 規格 単価 数量 金額 キュウリ用支柱 アーチパイプ ,690 直管 5.5m 19mm ,700 クロスワン 19mm 19mm ,525 天ビニル 農 PO 0.1mm

スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)

SDS農薬要覧2019 ネマモール粒剤30

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4 奨励品種決定調査 (1) 奨励品種決定調査の種類ア基本調査供試される品種につき 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験その他の方法によりその特性の概略を明らかにする イ現地調査県内の自然的経済的条件を勘案して区分した地域 ( 以下 奨励品種適応地域 という ) ごとに 栽培試験を行うことに

(1) 購入苗 品種 サイズ 苗数 購入日 ( 植付日 ) くろがね 大玉 2 本 4 月 24 日 マイボーイ 中玉 3 本 4 月 24 日 愛娘 小玉 3 本 5 月 2 日 黒姫 小玉 3 本 5 月 2 日 縞王 大玉 1 本 5 月 16 日 合計 11 本 平成 26 年スイカ作り 2

写真1 自立登はんタイプの緑化 写真2 自立下垂タイプの緑化 写真3 ワイヤー補助資材使用の緑化 写真4 金網補助資材使用の緑化 写真5 フェンス使用の緑化 写真6 ネットを使用した緑のカーテン 写真7 ヤシマット併用金網補助資材と防風 写真8 ヤシマット併用金網補助資材を使用 パネルを使用したヘデ

1. 取組の背景射水市大門地域は 10a 区画の未整備な湿田が多く 営農上の大きな障害となっていた 昭和 62 年に下条地区で県内初の大区画圃場整備が実施されたのを皮切りに 順次圃場整備が進んでいる 大区画圃場整備事業が現在の 経営体育成基盤整備事業 になってからは 農地集積に加えて法人化等の担い手

PowerPoint プレゼンテーション

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アマミノクロウサギ保護増殖事業計画 平成 27 年 4 月 21 日 文部科学省 農林水産省 環境省

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白紋羽病の病徴 果樹の地上部にこんな症状が出ていたら要注意 春先の発芽が遅れ 花芽分化が多く 開花時期が早まる 徒長枝の本数が少ない または伸長が悪い 梅雨明け後期に 葉が萎れたようになる 秋期に葉の黄化や 落葉が早くなる 果実の肥大が悪く 熟期が早まる 徒長枝の伸長が悪い 菌 糸 束 秋期の葉の早

H30年産そば方針

本文、発送文

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本剤の使用に当たっては 使用量 使用時期 使用方法を誤らないように注意し 特に初めて使用する場合には病害虫防除所等関係機関の指導を受けることをおすすめします 安全使用上の注意事項 本剤は眼に対して刺激性があるので眼に入らないよう注意してください 眼に入った場合には直ちに水洗し 眼科医の手当を受けてく

4 パイプ埋め込み部分が水で緩くならないよう ハウス周囲の排水溝を点検して手直しする 5 強風により 資材 木片 小石等が飛来して被覆資材が破損しないように 施設周辺を清掃しておく 6 生育中の野菜がない簡易パイプハウスなどでは被覆資材を巻き上げて軒の部分にくくり付ける 7 鉄道沿線や幹線道路沿いの

農業気象技術対策資料

成るさくらんぼ便りvol.1(H22)

平成の主な気象災害

営農のしおり(夏秋キク)

Transcription:

りんご栽培のポイント < 栽培のポイント > 1 りんごは永年性作物であるので 品種構成の適正化による作業時間の分散や排水対策 園内作業道等の導入による効率的な園地整備など新植 改植に当たっては品種構成 園地整備等につき長期的な計画を策定しましょう! 2 施肥管理が重要 過剰な肥料の施用は着色不良やビターピット等の果実障害の原因になります 定期的に土壌診断を実施するとともに樹の状態を観察して適切な施肥を実施しましょう! 3 結実管理が最重要事項 受粉樹の導入 マメコバチの利用 人工受粉の実施等の結実対策を徹底しましょう! 4 高品質なりんご生産には適正着果量の確保が重要 着果過多となると 小玉果となるほか 着色 糖度 翌年の花芽形成にも悪影響を及ぼしますので あら摘果 ~ 仕上げ摘果 ~ 見直し摘果を確実に実施しましょう! 5 地球温暖化に伴う夏場の高温対策が重要 近年の夏場の高温傾向により日焼け果が増えています 寒冷紗の使用など 日焼け果発生防止対策を実施しましょう! りんごの生育ステージと主な作業 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 剪定 摘花 摘果 着色管理 収穫 剪定 作業 苗木の定植 施肥 受粉 草刈り 病害虫防除 生育ステージ 休眠期開花 結実期果実肥大 成熟期 休眠期 りんごの栽培に適する自然的条件に関する基準 ( 農林水産省 ) りんご 平均気温 年 6 以上 14 以下 4 月 1 日 ~ 10 月 31 日 13 以上 21 以下 冬期の最低極温 -25 以上 低温要求時間 1,400 時間以上 降水量 4 月 1 日 ~ 10 月 31 日 1,300mm 以下 気象被害を防ぐための基準 枝折れや樹の倒壊を防ぐため 最大積雪深が概ね 2m( わい化栽培においては概ね 1.5m) 以下であること 花器 幼果の障害を防ぐため 蕾から幼果期において降霜が少ないこと ( 注 )1. 一般に普及している品種及び栽培方法によるものとする 2. 最低極温とは 当該果樹の植栽値における 1 年をとおして最も低い気温である 3. 低温要求時間とは 当該地域の気温が 7.2 以下になる期間の延べ時間である 1

作業別の留意事項 ここに紹介します留意事項は りんごを栽培する際に特に留意すべき内容を列記したものです また 栽培方法によっては該当しない内容も含まれます 実際の栽培にあたっては 地域の普及指導センターや JA 等に問い合わせいただき 園地条件や品種に適した施肥設計 栽培方法等に基づき栽培してください 園地準備 < 園地選定 > りんごは 永年性作物であるため 園地選定の段階で条件が悪い園地を選定してしまうと 数年に渡って高品質な果実の収穫が難しくなるばかりではなく 将来の経営にも悪影響をおよぼすこととなります りんごは深根性の植物であるので 有効土層がなるべく深く ( 推奨は 50cm 以上 ) 保水性と通気性がともに優れる土壌を確保 りんご伐採跡地の植栽は 苗木生育が劣り 生育が悪い 忌地 と呼ばれる改植障害が発生する場合があるので注意 水田転換園は 排水対策や耕盤破砕を実施しない場合や 不良な土壌を客土した場合には極端な生育不良を招くことがあるので 対策徹底が必要 < 土づくり > 土壌改良は植え付け後の実施は困難なことが多く 土づくりを十分に実施しなければ その後数年にわたって果実生産への影響が発生してしまいます 新植及び改植時には 深耕 心土 ( 水田転換園は耕盤 ) 破砕を実施し 堆きゅう肥や石灰質肥料など土壌改良資材を適正量施用することが必要 特にわい性台木は各種障害が出やすいので 徹底した土壌対策が必要 忌地 ( 改植障害 ) 対策のため 根は丁寧に拾い集め 処分するか 園外に搬出 園地造成及び植栽までの園地改良手順 1 伐採 抜根 排根処理 2 地ならし 3( 心土 耕盤破砕 ) 4( 集排水対策 ) 5 クロールピクリンによる土壌消毒 6 石灰質肥料と堆きゅう肥を投入し 深耕 7 石灰質肥料を表面施用し 整地 8( 土壌浸食防止 ) 9 植え穴改良 () は場合により実施する項目 は紋羽病対策として実施する 下層土が緻密で 根の伸長を阻害しやすい土壌では なるべく深く ( 推奨 50cm 以上 ) 心土破砕を実施 ( ただし下層に不良土がある場合は除く ) < 排水対策 > 排水不良の園地は土壌の過湿により生育不良 収量 品質の低下を招くばかりでなく 大型機械の導入による踏圧障害を受けやすいため 土壌改良に先んじて早急に排水対策を徹底する必要があります 特に 階段畑の直下や傾斜地の下部は排水不良地になりやすくなります 暗渠の施工に当たっては 排水口の位置 深さと間隔 勾配と管径など排水計画を十分検討することが必要 排水口から確実に排水させるために 消雪期のように水量が多いときでも排水口が水没しないように設計することが必要 2

苗木植栽 < 定植 > 粗雑な植え付けは後の生育に影響します また 風による倒伏や乾燥は樹体の生育不良につながるおそれがあります 定植後 成園化するまでには 数年を要しますので その間の経営や成園化後の作業の効率化を考える必要があります 植え穴は十分な広さと深さに掘り 必要な改良資材を投入 苗木の植栽の時期は根の活着の面から休眠期中の秋植えの方が望ましい が 地域によっては積雪 土壌凍結の影響や野ウサギや野ネズミの被害が大きいことから 春植えを実施 収穫期が似通った品種をまとめて植栽することで 栽培管理作業の省力化にもつながり 農薬の飛散による農薬の残留を回避が可能 りんごは自家不和合性が強く 交雑不和合性も一部見られるので 和合性のある品種の混植を検討 新植及び改植時には 紋羽病の予防のため 必ず土壌消毒を実施 暖地産の軟弱な苗木及び早堀りした苗木は冬期の影響を受けやすいことから 植え付け後に紙などで被覆 わい化栽培 特に新わい化栽培に用いられる台木は凍害に弱い 幼木期 ( 少なくとも結実開始から5 年程度まで ) は わら巻きや 白塗剤を塗布し凍害を防止 整枝 剪定 < 整枝 剪定の基本 > 整枝 剪定が強いと 葉の茂りすぎによる結実不良や品質の低下 害虫の発生を助長してしまいます 逆に弱いと 樹勢衰弱や肥大不足 果形不良が問題となります 整枝 剪定作業に入る前に樹の植栽密度が適切であるかを確認し 園内が混んでいる場合には 間伐や縮伐を実施 整枝剪定の三原則 1 どの枝にも十分日光が当たること 2 様々な作業が安全に やりやすく効率が上がること 3 どの枝にも容易に防除薬液がかかることと 基本樹形を念頭に置き 大枝 中枝 小枝の順に整枝 剪定を実施 若木や樹勢が強い場合の立ち上がり枝 重なり枝など 誘引で解決できる場合があるので 剪定の前に誘引の検討を実施 品種毎や樹勢の強弱 花芽着生状況により整枝 剪定の要点が異なるので 状況に応じた判断が必要 さび果 変形果 対策としても整枝 剪定を活用し 1 本 1 本の樹においても 風通しを良くし 適樹勢にすることが必要 3

整枝 剪定 < 花芽着生状況による整枝 剪定方法 > 花芽の着生状況によって その年の結実量や生育後の樹体の状況がある程度推測できることから 樹勢の適正化や樹体の悪影響を少なくするために 花芽着生状況に応じた整枝 剪定を行います 整枝 剪定は着花量の多少で次のように整枝 剪定を実施 1 花芽が多い場合花芽が多いことから 結実量が多くなることによって樹体養分の消耗が多くなり 果実の肥大や品質等への悪影響が考えられることから 成り枝には切り返しや間引きを多く入れる 弱っている枝は切り上げを行う 成木で骨組みの枝が多い場合は 思い切って大枝を整理するなど樹勢の強化を意識した整枝 剪定を実施 2 花芽が平年並みの場合樹勢も適度であることが考えられることから 下垂した枝など衰弱に向かいつつある枝は切り返し剪定を行い 上向枝や強めの枝は間引き剪定を主体とするなど樹全体の樹勢の調和と維持を意識した整枝 剪定を実施 3 花芽が少ない場合花芽が少ないと 枝の伸長が旺盛になりやすく 樹勢が強くなることが考えられることから 強剪定は控え ハサミ入れを少なくするなど花芽量の確保を図ることを意識した整枝 剪定を実施 施肥 < 施肥 > りんごは永年生作物なので 毎年の管理作業の悪さが翌年以降にも影響し 生産量や品質の低下となる恐れがありますので 施肥の適正化が必要です 各地で施肥基準が策定されているので それを基本に施肥時期や施肥量 を設計 若木や強樹勢樹では 樹勢が落ち着くまで施肥は控える 窒素過多になると ビターピット コルクスポットといった果実障害が 生じる場合がありますので むやみな窒素成分の施用は控える 施肥量については 毎年これくらい施肥していたから という感度ではなく 土壌診断の結果や果実の品質 ( 着色や肥大 ) の良否 適樹勢であるかどうかに基づき 総合的に判断して適正量を施用 定期的に 2 年に 1 回は土壌診断を実施し 土壌の状態を確認 受粉 < 受粉 > りんごの開花時期は比較的気温も高い時期となり訪花昆虫の動きも活発ではありますが 年によっては気温が非常に低く それによって結実の悪いことがあります また 開花中の長雨や強風も結実率を低くなる場合があります 4

受粉 < 受粉 > りんごは自身と同じ品種の花粉では結実しない自家不和合性や異なる品種でも結実しない交雑不和合性の性質があるため 受粉樹の植栽や受粉用花粉を採取する場合には 品種間の交雑和合性に注意が必要 結実確保のためには 開花時期が近い2~3 樹の経済品種を混植し さらに訪花昆虫を利用 単植園の場合には 受粉専用品種の導入についても検討 状況に応じて 確実に受粉させ変形果を減らすことができる人工受粉を実施 摘花摘果 < 摘花 > りんごは開花する際 貯蔵養分を使用するので 摘花を実施しないと果実品質や樹勢に影響が出るおそれがあります えき芽花 生育が不良な花そう 位置の悪い花そうを摘花 開花量が多く 開花中の好天による結実が十分と見込まれる場合 労力軽減のため 薬剤摘花が有効 なお 使用にあたっては 時期 薬害 訪花昆虫等への注意が必要 摘花を強く行うと降霜や開花期の天候不良により結実不良が生じた場合必要な着果数を確保できなくなる恐れがあるので注意が必要 < 摘果 ( あら摘果 仕上げ摘果 )> 果実の大きさや品質は1 果あたりの葉の枚数によるので 葉の枚数に応じて結実数を摘果実しないと 低品質 ( 糖度 着色 ) や小玉化を招くこととなります また 果実数が多いと 花芽の形成が不良となり翌年の結実数にも影響します 基本的には 摘果は2 段階に分けて行う 1 回目 ( あら摘果 ) は 満開後 30 日頃をメドに 2 回目は仕上げ摘果で 満開後 60 日頃までに最終的な果実数になるように摘果 摘果作業の遅れから着果過多となり 果実の小玉果を招いたり 着色や糖度に悪影響を及ぼすことが懸念されるので 摘果作業を着実に行うとともに 適正着果量の確保が必要 不要な果そうの摘果は早めに実施 品種の特性にあった摘果を実施 大規模経営や複合経営等で摘果作業が遅れそうな場合には薬剤摘果の導入を検討 5

摘 果 < 摘果 ( 見直し摘果 )> 着果過多になると 着色 成熟が遅れ 糖度も低くなります 仕上げ摘果をひととおり実施した後 さび果や肥大不良果 変形果を中心に見直し摘果を実施 着色管理 収穫 < 日焼け防止 > 近年 温暖化の影響により 日焼け果の発生が増えています 長野県果樹試験場のわい性台木樹における調査では 果実表面最高温度が51.5 を超えると 樹冠外周部で日光にさらされ固定された果実の50% に 日焼け果が発生しました また 日最高気温が32 を超える日に 果実表面最高温度が 51.5 となる果実が認められました 樹上もしくは南 ~ 西日が当たる側面に寒冷紗を設置 急激な強い着色管理は 果実に日焼けを発生させるので 曇天が続く日に実施するなど工夫が必要 < 着色管理 > 気温が高い時期に着色管理を行うと日焼けを発生を招く場合があるので注意が必要です 葉摘みは収穫開始予定の30~40 日前から2~3 回に分けて実施 強い葉摘みは鮮明な色が着かない場合があるので 注意が必要 玉回しはある程度着色が進んだ頃に実施 果実の肥大に伴い枝が下垂し 受光環境が悪くなるため 着色管理の前に支柱立てや枝つり等により受光環境を改善 < 落果防止剤の散布 > りんごは 品種によっては収穫前に落果するものがあるので 注意が必要です 収穫前に落果防止剤を散布 落果防止剤は 品種や剤によって使用濃度 散布時期が異なるので 使用に当たっては確認が必要 < 収穫 > 高品質な果実を出荷するため 食味や着色に注意して収穫します 収穫は 着色や食味等の果実品質を確かめ 適熟果から数回に分けて実施 黄色系の品種は 特に見た目では判断しづらいので 適期収穫のため 各品種毎のカラーチャートを確認 日当たりの良い樹冠外周部から樹冠内部へと数回に分けて収穫 まだ気温が高い時期の早生 中生種の収穫は なるべく果実温の低い午前中 に行い 晩生種は凍害の危険が高まる前に収穫を終わらせることが必要 6

各被害 病害虫対策 < 病害虫防除 > 病害虫の発生は地域やその年の天候などにより異なるので 都道府県の病害虫防除所の防除指針 発生予察情報等に注意し 各産地 地域の防除歴を参考にした適期防除を着実に実施しましょう 防除作業の効率化のため スピードスプレイヤーの導入やそのための園内作業道の整備を実施しましょう 特に 重要な病害虫は モニリア病 黒星病 斑点落葉病 炭疽病 ハマキムシ類 シンクイムシ類 アブラムシ類 ハダニ類です これらの病害虫の防除に失敗すると品質への影響が大きいので 注意が必要です 自然災害対策 < 雪害対策 ( 事前対策 )> 苗木 幼木や改植後間もない若木については 結束して樹冠を縮め 支柱を立てて 枝をひもや縄などで固定します 成木は 雪害を受けそうな枝には支柱を入れます また 空洞や裂開の生じている樹はボルト等を用いて補強します 積雪時の野そ害を低減するため 樹冠へのプロテクター等の巻き付けや 忌避剤の塗布や散布 殺そ剤の投与等の対策を実施します < 降雪 積雪中の対策 > 安全が確保できる範囲で 樹園地を見回り除雪を行います 雪で埋まった枝は沈下しないうちに可能な限り掘り起こします 掘り起こしが困難な場合は スコップで雪に切れ目を入れたり 樹冠下の雪踏みを行います < 寒害対策 > 防風垣または防風網を設けている場合は 裾の部分の巻き上げなどによっ て 冷気が停滞しないよう努めましょう また 地熱部分の熱移動が妨げられますので 敷きわらの全面被覆は避けましょう 凍害のおそれがある場合には 主幹部への白塗剤の塗布 わら巻き等の防寒対策を実施しましょう < 霜害対策 > 霜害の発生するおそれのある地域では 防霜ファンの稼働により霜害の発生防止に努めましょう 燃焼で降霜を防ぐ場合には 火災防止の観点から周辺環境に十分配慮するとともに 固形燃料や灯油等ばい煙の発生の少ない燃料を使用しましょう 蕾や開花の時期に霜害を受けた場合は 残存花への人工受粉を行い 結実の確保に努めるとともに 幼果が霜害を受けた場合は 果実の状態を十分観察した上で摘果を実施しましょう < 冷害対策 > 日照不足 低温 低湿等に対しては 人工受粉による結実の確保や排水対策 肥培管理の適正化に努めましょう 7

各被害 自然災害対策 < 台風対策 ( 予防対策 )> 強風に備え 事前に防風網や支柱の点検 補修を実施しましょう また 倒伏しやすい樹体は支柱により補強しましょう 特に わい化りんごは倒伏しやすいため トレリス方式等の防風対策に努めましょう 被害を最小限に留めるため 農薬使用基準 ( 散布から収穫までの経過日数 ) に留意しつつ 事前に収穫可能な果実はできる限り収穫しましょう < 台風対策 ( 事後対策 )> 落果した果実については 農薬の使用状況を確認した上で 傷等の程度に応じて選別し 必要に応じて冷蔵庫等で貯蔵しましょう 落果した果実は 原則 果汁のパツリン汚染を防止するために果汁原料用には利用しないようにしましょう やむを得ず利用する場合には 低温保管 早期利用 腐敗果の選別を徹底しましょう < 参考資料 > 青森県りんご生産指導要綱編集部会編 りんご生産指導要項 長野県長野農業改良普及センター : 作物別技術情報 http://www.pref.nagano.lg.jp/nagano-aec/joho/gijyutu.html 8