農産加工機械学 (3) ー穀物の貯蔵と品質ー キーワード : 籾, 玄米, 白米, 無洗米, カントリーエレベータ, ライスセンタ, 水分含量, 含水率 農学研究科地域環境科学専攻 農産加工学分野 近藤直
教科書 ( 配布プリント ) p91 配布プリントの参照ページ ネジコンベア 乾燥機, 籾すり機, 袋詰め機
米の貯蔵と品質
穀物の品質 ( 穀物とは, 米, 麦類, 大豆, トウモロコシなどをさす ) 乾燥機はなぜ必要か? 水分が高い (16% 以上 ) と貯蔵時に, かび米ややけ米となり, 品質低下するため 籾貯蔵 : 虫および微生物による品質劣化抑制に優れている ( 米の生産地において行われる ) 玄米貯蔵 : ビタミン B1 含量や容積重 ( 籾貯蔵の 60%) で優れている ( 消費地で行われる ) 精米貯蔵 : 日本ではほとんど見られない 肌ぬかが残っていると脂肪酸度が上昇しやすい ( 無洗米は肌ぬかがないため, 貯蔵性に優れている ) 籾貯蔵も玄米貯蔵も食味や化学成分の変化は両者でほとんど差がない常温貯蔵 : 時間がたつと古米化は避けられない 生命力, 発芽能力, 食味の低下低温貯蔵 : 米の品質劣化の抑制, 害虫や微生物の繁殖の抑制に効果がある 貯蔵温度 13 以下 相対湿度 70% の低温区では 常温区に比べて酵素活性 ビタミン B1 炭水化物 脂質 たんぱく質等の減少 低下が抑制密封貯蔵 : 不活性ガスによる密封貯蔵と同様な嫌気状態が保たれ, 気体透過性の低いプラスチックフィルムを用いた場合は酸素濃度の低下が早く 食味も良好に保持
貯蔵中の脂肪酸度の上昇は精白米貯蔵の方が玄米貯蔵より速やかに進行するが, 精白米の表面を研磨しあるいは洗浄して糠を除去した クリーン白米, 無洗米 などは 貯蔵中に精米の白度が保たれ 脂肪酸度の増加が抑制される (( 社 ) 農林水産技術情報協会刊 美味しい米第 2 巻米の美味しさの科学第 4 章収穫後の技術の美味しさへの影響
米の品質変化の無機的要素 貯蔵中の米周辺の相対湿度は安定 (1) 温度 酸素による呼吸量の増大 食味の劣化高温 呼吸量の増加 自身の消耗 ( 夏期は変質の危険性が高い ) 有気 ( 好気 ) 呼吸 (Aerobic): C 6 H 12 O 6 + 6O 2 6CO 2 + 6H 2 O + 2,821kJ 無気 ( 嫌気 ) 呼吸 (Anaerobic): C 6 H 12 O 6 2C 2 H 5 OH + 2CO 2 + 117kJ (2) 低温貯蔵による発芽率 (germination rate) の維持高発芽率 米の活性高い ( 生体 ) 高食味 (3) 温度による脂肪酸の生成 ( 脂質の酸化 ) 食味の劣化脂肪酸の生成量 ( 増加量 ) は貯蔵時の積算温度 (Ta) に比例する Ta [.day] =Σ( 日平均気温 -10) 貯蔵温度が10 以下 脂肪酸度の増加はない コストと脂肪酸度の許容度により合理的に貯蔵温度を決定するべき (4) 含水率による脂肪酸および砕米の増加 F=Fi+ (a M+b) Ta F: 脂肪酸度 [mg-koh/100g-grain],a,b: 定数,M: 含水率 [%W.B.] Fi: 初期脂肪酸度 [mg-koh/100g-grain] 低含水率 脂肪酸度の増加量は小さい 低含水率 ( 過乾燥 ) 食味低下, 砕米の増加
米の品質変化の有機的要素 (1) 微生物温度と相対湿度により細菌やカビが繁殖温度 : 微生物繁殖の範囲は広い 相対湿度 : 高湿条件は微生物繁殖に好適 貯蔵時の含水率は粒の水分活性 (water activity: Aw) で考慮するべき 貯蔵中の米周辺の相対湿度は安定 水分活性とは? 食品を保存する場合 その食品が腐敗するのか カビが生えるのか あるいは 吸湿するのか 乾燥するのかなどを判断するのに 水分活性 (Water Activity-Aw) という数値を用いることが多い 水蒸気圧 P 食品を容器に入れて密封すると 食品中の水分が蒸発して容器内の空間に充満し ついには平衡水蒸気圧 P に達する P: 密封容器内の水蒸気圧 Po: 食品を水と置きかえたときの水蒸気圧, つまりその温度における飽和水蒸気圧水分活性 Aw=P/Po で表される
結合水は食品成分と化学的に結合しており 一般の乾燥法では蒸発せず また -30 付近にならないと凍結もしない 溶解水は食品中の可溶成分が溶存しており その結合力は結合水よりも弱い 自由水は 食品との結合力は非常に弱く 食品表面の空隙にしみこんでいる水分が多く また簡単に蒸発する (cf 土壌中から植物の根が吸い上げる水分も自由水 ) 微生物が繁殖できる水分活性 Aw の目安細菌 :0.94~0.99 酵母 :0.88 以上カビ :0.80 以上 食品中の水分 : 結合水, 溶解水, 自由水 平衡水分曲線とは食品を各湿度の環境に保存し 水分が一定になったところの含水率を縦軸に 関係湿度を横軸にプロットしてグラフにしたもの 植物に水をやるタイミング 米が 15 %W.B. の含水率の時,Aw=0.75 http://www.tcn.zaq.ne.jp/kanno/public_html/aw.htm
http://www.ai-nex.co.jp/water_activity.htm
カビの生育条件 (1) 一般に湿度 80%RH 以上 水分にして 15% 以上で繁殖する しかし, 湿度が 62~63%RH 水分にして 13~14% でも生育するカビもある 食品の水分含量が 10% 以下だとカビが生える心配はない カビは澱粉質の食品に繁殖しやすく 米 小麦 あるいはこれらの加工食品は 平衡水分が 13.5~15.5% であるからカビが繁殖する 乾燥米菓などは水分が 4~8% であるから心配はないが 吸湿して水分が 13~14 % となるカビが発生する パン カステラ 生菓子などは水分が 30% 付近で非常にカビが発生しやすい カビ繁殖の最適温度は 25~30 で 15 以下,40 以上では増殖率は低下する 家庭用冷蔵庫 (0~5 ) でも増殖の速度は小さいが繁殖する
カビの生育条件 (2) カビの耐熱性は 60 まで 60 では 10 分から 15 分程度で死滅 菌の胞子で 100 5 分間に耐えれるものもある カビは酸素がなければ生育できない 酸素濃度を 1 % 以下にまで下げると生育は著しく抑制され 0.1% では少数の限られた菌種のみ生育可能 カビの生育可能 ph は 1~11 で 一般には ph 5~6 においてよく生育する カビの胞子の発芽は ph 3~7 の間で行われる 二酸化炭素には静菌作用があり 二酸化炭素が 50 % 以上で一般のカビはほとんど生育不能 水分活性が低ければ, 二酸化炭素が 30% でも発育阻害される マルカビ アオカビ http://www.techno-s.co.jp/publish/kabi/kabi-nakami.htm http://www.techno-s.co.jp/publish/kabi.htm
包装によるカビ防止方法 1 脱酸素剤で容器内酸素を除去する 2 二酸化炭酸 または 窒素ガスとの混合ガスによるガス充填包装 窒素ガス 100% でのガス充填包装はカビ防止効果の持続性が低い 3 包装後に約 200 での乾熱で食品表面のカビを殺菌する 耐熱温度 140 参考文献 : けんぱく社奥脇義行編著微生物と免疫 http://www.tokyo-kasei.ac.jp/~ichimaru/newcurriculum/foodhealth/ けんぱく社菅原龍幸他著食品学各論 datafiles2002/fh11222021.htm 参考 URL:http://www2s.biglobe.ne.jp/~tcfk/aw.htm
米の品質変化の有機的要素 (2) 貯穀害虫害虫の種類と米の形態および貯蔵温度が関係 通常 籾の形態は害虫に強いが, 玄米はヌカが露出しているため 害虫に弱い 一般的な白米は肌ヌカのため害虫に弱いが, クリーン白米や無洗米は貯蔵性が高い ( ヌカが除去されているため ) ノシメマダラメイガ, タバコシバンムシ, コクヌストモドキ, ヒラタコクヌストモドキ, ヒラタチャタテ, コクゾウ, ココクゾウ http://www.kokusaieisei.jp/pest_guide/pest_guide.html
米ぬかの成分 : 2 割は脂質食物繊維ビタミン B1 B2 ナイアシンなどの B 群ビタミン E カルシウム, リン, 鉄, カリウム, マグネシウム, 亜鉛, 銅などのミネラル 米ヌカからとれるいろいろな有用物質の流れ ( ) 内はコメを 1000 としたときの回収量 http://www.ruralnet.or.jp/gn/199812/kanto01.htm
食品の成分の分類 食品成分と性質 (1) たんぱく質 (2) 脂肪 (3) 炭水化物 (4) 無機質 (5) ビタミン類 (6) 水分 (7) 香気成分 色素等の微量成分
茶碗 1 杯分のご飯の栄養を身近な食品に例えてみると ご飯 ( 精白米 )1 杯分 (150g) の栄養価 カルシウム プチトマト 3 個分鉄 とうもろこし 1/3 本分ビタミン B さやえんどう 12 枚分食物繊維 レタス 1 枚半分マグネシウム アスパラガス 5 本分亜鉛 ほうれん草 1/2 束分ビタミン E ゴマ小さじ 8 杯分 エネルギ蛋白質脂質糖質繊維 カルシウム 鉄 マグネシウム 亜鉛 ビタミン B1 ビタミン B2 252kcal 3.75g 0.45g 55.65g 0.45g 4.5mg 0.15mg 10.5mg 0.9mg 0.03mg 0.015m g http://www.mitinoku.or.jp/kome/kome.htm#eiyou
来週までのレポート (A4 サイズの用紙に記入 ) 米の品質を保持するための貯蔵方法, 品質変化に関わる要素をまとめなさい