大豆イソフラボンを多く含むとうたった「健康食品」(概要)

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保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

「健康食品」の定義

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「いわゆる健康食品」の安全性評価ガイドライン(案)

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 本資料の作成日 :2016 年 10 月 12 日商品名 : ビフィズス菌 BB( ビービー ) 12 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) による食経験の評価ビフィズス菌 BB-12

“にがり”の成分や表示等についてテストしました

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もっと知って欲しい!健康づくりに役立つ食品表示ガイド

栄養表示に関する調査会参考資料①

栄養成分等の分析方法等及び「誤差の許容範囲」の考え方について

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旧制度からの主な変更点 1 加工食品と生鮮食品の区分の統一 JAS 法と食品衛生法において異なる食品の区分について JAS 法の考え方に基 づく区分に統一 整理 新たに加工食品に区分されるもの さん現行の食品衛生法では表示対象とはされていない 軽度の撒塩 生干し 湯通し 調味料等により 簡単な加工等

シェイクイット! ダイエットプロテインシェイク ( シリアルフレーバー ) [ID 201-JP] 15,000 ( 税込 ) 植物性タンパク質を主原料に グルコマンナン 穀物 ビタミン ミネラル 乳酸菌などを含む 栄養の偏りがちな現代人におすすめの栄養補助食品です ダイエットのために 1 食分の置

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個人輸入の健康食品に注意!!-未承認の医薬品成分(シブトラミン等)を検出

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内容 1. 健康食品の全体像 2. 健康食品と医薬品の違い 3. 安全性と有効性のエビデンス 4. 安全かつ効果的な利用法 5. 食品の機能性で考慮すべきこと

特定できるものではありませんでした そのため 個人の体質や体調による影響が大きく影響したものであると判断しました よって 当該製品が原因と考えられる健康被害の発生は 確認されませんでした ただし 届出の製品と喫食実績で調査対象とした製品でルテイン量に違いがありましたので 既存情報から喫食経験および安

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3. 健康増進法や景品表示法の違反要件である 著しい という規定を早急な対応として削除すること消費者委員会の 建議 は しかるべき対応 6 項目の一つに健康増進法の違反要件である 著しく事実に相違する表示 などの 著しい という文言を法律から削除することの検討を要請しつつも 早急な対応 項目では 著

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2012年○月○日(第1版)

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

Taro-4

健康食品を正しく理解しよう!

H24/08/00

高麗人参を主原料とした「健康食品」(概要)

Microsoft Word - 【案1】登録認証機関立入要領改正通知(Ver )

< 追補 > ココデル虎の巻 平成 27 年度版 過去問題集 解説 2016 年 3 月 試験問題作成に関する手引き 正誤表対応 ここでは 2016 年 3 月に発表された正誤表による 手引き 修正で 影響のある過去問の 解説をまとめています 手引き 正誤表で影響のある( あるいは関連する ) 問題

健康食品 の安全性確保に関する取組 国民の健康に対する関心の高まり等を背景として これまで一般に飲食に供されることのなかったものや 特殊な形態のもの等 様々な食品が 健康食品 として流通する中で 安全性の高い製品が供給されるためには 以下のような幅広い取組が必要 製造段階における具体的な方策 1 原

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

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プロモーション展開 Healthy & Go! のキャッチコピーのもと Web SNS 新聞折込みなどで 4 月中旬よりプロモーションを実施します モデルは RINA( りな ) さん ( ファッションモデル ) を起用し 健康が女性をアクティブに美しくすることをブランドサイト プロモーションで表現

る として 平成 20 年 12 月に公表された 規制改革推進のための第 3 次答申 において 医療機器開発の円滑化の観点から 薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべきであると提言したところである 今般 薬事法の適用に関する判断の透明性 予見可能性の向上を図るため 臨床研究におい

注 ) 材料の種類 名称及び使用量 については 硝酸化成抑制材 効果発現促進材 摂取防止材 組成均一化促進材又は着色材を使用した場合のみ記載が必要になり 他の材料については記載する必要はありません また 配合に当たって原料として使用した肥料に使用された組成均一化促進材又は着色材についても記載を省略す

ビワの種子を使用した健康茶等に含まれるシアン化合物に関する情報提供

1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

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JAO正会員としての知識確認テスト

(電子メール施行)

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平成 29 年度食品安全モニター課題報告 食品の安全性に関する意識等について I. 食品の安全性に係る危害要因等について 問 1 A~G に掲げる事項についてリスクの観点からあなたはどう思いますか それぞれ の事項について 選択肢 1~6 の中から 1 つずつ選んでください 事項 A 環境問題 B

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Japanese Program

II-Ver8 print

別紙様式 (Ⅱ) 商品名 : 伝統にんにく卵黄 (31 粒入り 62 粒入り ) 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 安全性評価シート 喫食実績の有無 : あり なし ( あり の場合に実績に基づく安全性の評価を記載) 本製品 伝統にんにく卵黄 と同等の製品は 1993 年 11 月より日

a 主な表示媒体 (a) 容器包装 ( 別紙 1-1-1~ 別紙 1-1-5) (b) 新聞折り込みチラシ ( 別紙 1-2) (c) 新聞 ( 別紙 1-3) (d) テレビ ( 別紙 1-4) (e) ウェブサイト ( 別紙 1-5) b 表示期間 (a) 平成 13 年 12 月頃から平成 2

2010/02/19

2012年○月○日(第1版)

特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会 報告書46~63ページ

Concept -02-

2 改善命令 1への対応 TIB 審査会は ファーマコビジランス部門が委員長および事務局を務め 営業部門から独立した組織として運営しており 更に 2014 年 4 月より 審査体制の強化を目指し 法的観点から法務部員を メディカルサイエンスの立場からメディカルアフェアーズ部員 ( 医師 ) を委員に

平成15年度マーケットバスケット方式による安息香酸、ソルビン酸、プロピオン酸、

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

2. 検討 ~ 医療に関する事故の特殊性など (1) 医師等による医療行為における事故 医師等が患者に対してどのような医療行為を施すべきかという判断は 医師等の医学的な専門知識 技能に加え 医師等の経験 患者の体質 その時の患者の容態 使用可能な医療機器等の設備等に基づきなされるものである ( 個別

都道府県医師会医療安全担当理事殿 ( 法安 56) 平成 27 年 8 月 5 日 日本医師会常任理事今村定臣 酵素電極法を用いた血糖測定に使用する医療機器及び体外診断用医薬品に係る 使用上の注意 の改訂について グルコース分析装置 自己検査用グルコース測定器及び自動分析装置等並びに血液検査用グルコ

ARIIX-C

第2回特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会資料2-2-1

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医薬品の基礎研究から承認審査 市販後までの主なプロセス 基礎研究 非臨床試験 動物試験等 品質の評価安全性の評価有効性の評価 候補物質の合成方法等を確立 最適な剤型の設計 一定の品質を確保するための規格及び試験方法などの確立 有効期間等の設定 ( 長期安定性試験など ) 医薬品候補物質のスクリーニン

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「日本医師会の健康食品安全対策について ~「健康食品安全情報システム」事業より~」(平成24年10月30日消費者委員会ヒアリング資料)

医薬品たるコンビネーション製品の不具合報告等に関する Q&A [ 用いた略語 ] 法 : 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律 ( 昭和 35 年法律第 145 号 ) 施行規則 : 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 ( 昭和 36 年

( 国内流通製品 ) XMプロテインモリンガ +ホエイプロテインサプリメントシェイクタンパク質は アミノ酸の基本構成から成る複雑な分子です 人間のからだはこのタンパク質を必須アミノ酸に分解し 細胞に吸収させています その後 細胞内でアミノ酸が筋肉の構築や効果的な酵素反応を起こすタンパク質に再構築され

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記 1. 調査結果で判明した不十分な SR に基づき販売されている商品 企業名を明らかにすべきです消費者庁 報告書 は 届出 SR の報告内容が不十分で ガイドラインに準拠していない報告内容である商品が多数販売されていることを明らかにしました 制度の根幹を揺るがす事態であることを受け止め 消費者被害

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薬生安発 0302 第 1 号 平成 30 年 3 月 2 日 各都道府県衛生主管部 ( 局 ) 長殿 厚生労働省医薬 生活衛生局医薬安全対策課長 ( 公印省略 ) 医薬品リスク管理計画の実施に基づく再審査期間終了後の評価報告について の一部改正について 再審査期間中の新医薬品以外の医薬品の医薬品リ

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Q ふだん どんな食事を食べていますか? よく食べる料理は? あまり食べない料理は? よく食べる料理に をつけてみましょう 副菜 野菜やいも 海藻などを主な材料とした料理主食や主菜で不足する栄養面の補強をし 食事に味や彩りなどの多様さをもたらす 主菜 魚や肉 卵や大豆などを主な材料とした料理副食の中

3 調査手法 (1) 調査対象日本に居住する 20 歳 ~79 歳までの 健康食品 の利用者男女 10,000 人 (2) 調査数 予備調査 : 消費者 30,000 人 ( 男女比は約 1:1とし 年代構成は 総務省が公表している我が国の人口構成に併せて分配 なお 回答者数の足りない 70 代以上

健康効果を暗示させた多様な名称の製品の流通 健康食品やサプリメントという言葉に法令上の明確な定義はありません! 一般的な認識は 健康食品 健康の保持増進に資する食品全般サプリメント 錠剤 カプセル状等の製品 健康食品と認識されている製品の多くが錠剤 カプセル状なので サプリメントと健康食品は同じもの

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

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山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

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2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

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Q17 通信販売等で対象の医薬品を購入した場合 自宅のプリンタで出力した領 収書等を証明書類として確定申告に用いることは可能ですか < 製造販売業者の方向け> Q18 新規登録 変更時の届出書は 毎回全品目記載が必要ですか Q19 控除の申告は5 年を遡って行うことが可能ですが 発売中止となった対象

具体的論点 1( 栄養成分 ) ( 案 ) 平成 28 年 2 月 16 日第 2 回検討会資料 2 から抜粋 1 栄養成分を機能性表示食品制度の対象とする意義 2 安全性の確保 対象となる食品 成分の範囲 摂取量の在り方 3 機能性の表示 適切な機能性表示の範囲 消費者に誤解を与えないための情報の

政策課題分析シリーズ14(本文2)

令第 8 条第 1 項第 6 号に掲げる同令別記様式第 2 号による許可証票を記載 かつお節オリゴペプチド配合 消費者庁許可保健機能食品( 特定保健用食品 ) 血圧が高めの方に適した食品です 保健機能食品 ( 特定保健用食品 ) 許可表示 : 本品はかつお節オリゴペプチドを配合した食品で 血圧が高め

薬食審査発第 号

加工デンプン(栄養学的観点からの検討)

医療用医薬品最新品質情報集 ( ブルーブック ) 初版 有効成分 ニカルジピン塩酸塩 品目名 ( 製造販売業者 ) 1 ニカルジピン塩酸塩徐放カプセル20mg 日医工 日医工 後発医薬品 2 ニカルジピン塩酸塩徐放カプセル40mg 日医工 日医工 品目名 ( 製造販売業者 )

審査結果 平成 25 年 9 月 27 日 [ 販売名 ] アナフラニール錠 10 mg 同錠 25 mg [ 一般名 ] クロミプラミン塩酸塩 [ 申請者名 ] アルフレッサファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 5 月 17 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 4 月 26 日開

6. 審査等の方法 栄養成分ごとに一定の規格基準を設け 規格を満たすもののみが栄養機能食品として認められる ( 自己認証 ) 製品ごとに事業者が特定保健用食品としての申請を行い その申請に対して 消費者委員会等の審議を踏まえ 消費者庁が個別許可を行う なお 特定保健用食品としての許可実績が十分である

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オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

牛乳および乳製品摂取量

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

Transcription:

記者説明会資料 平成 18 年 6 月 22 日 独立行政法人国民生活センター 大豆イソフラボンを多く含むとうたった 健康食品 ( 概要 ) 1. 目的大豆や大豆食品は 我が国では日常的に摂取され 長い食経験を持つ食品である 大豆は植物性たん白質やカルシウムなどの栄養素の補給源として優れているだけでなく 近年はさまざまな機能性成分も注目を集めており その中でも大豆イソフラボンは骨粗しょう症の予防や更年期障害の軽減などの効果があるとされ 多くの 健康食品 1) が販売されている 大豆イソフラボンは化学構造が女性ホルモンと類似していることから前述のような種々の生体作用を示すと言われているが 一方で乳がん発症や再発等のリスクを高めるなど 有害性を示す報告もあるとされ 有効性と安全性について議論となってきた 2004 年に厚生労働省から大豆イソフラボン ( 配糖体又はアグリコン型 ) を関与成分とする特定保健用食品の食品健康影響評価の依頼がなされたことを受けて 食品安全委員会は大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方 ( 以下 基本的な考え方 とする ) 2) を定め これに基づき今年 5 月に評価結果を取りまとめた この中では 大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品は大豆又は一般の大豆食品とは異なり 大豆イソフラボンが濃縮あるいは強化された食品であること 大豆イソフラボンの多量かつ継続的な摂取が想定されること 日常の食生活に上乗せして摂取されるものであること等の特徴を持つとした上で 特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値が設定された 一方 大豆イソフラボンを含む 健康食品 は市場に多くみられ その中には大豆イソフラボンを特に多く摂取できるとうたった商品もある 健康食品 は 特定保健用食品と同様の摂取特徴を持つものも多いと考えられるため 大豆イソフラボンを多く含むとうたった 健康食品 について 大豆イソフラボン量を測定し 食品安全委員会が設定した上乗せ摂取量の上限値を超えるものがないか調べるとともに 安全性評価についての事業者アンケート 表示の調査等も併せて行い 消費者に情報提供することとした 1) 本報告書に限り 健康食品 は いわゆる健康食品の他 一部栄養機能食品を含む 保健機能食品特定保健用食品医薬品 ( 個別評価型 ) 一般食品栄養機能食品個別審査許可型 ( 医薬部外品を含む ) ( いわゆる健康食品を含む ) ( 規格基準型 ) ( 疾病リスク低減表示を含む ) 規格基準型条件付き特定保健用食品 2) 大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方 (2006 年 5 月食品安全委員会 ) 2. テスト実施期間検体購入 :2006 年 3 月 ~4 月テスト期間 :2006 年 3 月 ~5 月 1

3. 大豆イソフラボンに関する安全性等大豆に含まれるイソフラボンは 3 種の非配糖体 ( アグリコン型大豆イソフラボン ) と それぞれに糖が結合した配糖体 9 種の計 12 種類が知られている 味噌等の大豆発酵食品にはアグリコン型大豆イソフラボンが多く含まれているが ほとんどの場合 大豆や大豆食品に含まれる大豆イソフラボンは配糖体として存在している 大豆イソフラボン配糖体を摂取すると 腸内細菌等の作用により糖部分が分離し アグリコン型大豆イソフラボンとなって腸管から吸収される ( 図 1) 大豆イソフラボン配糖体アグリコン型大豆イソフラボン分解 ( 非配糖体 ) ( 腸内細菌等 ) 糖 糖 + 大豆イソフラボン ( 大豆イソフラボン配糖体 アグリコン型大豆イソフラボンの総称 ) 図 1. 大豆イソフラボン ( 配糖体及びアグリコン型 ) 食品安全委員会は 閉経前 閉経後女性及び男性についての大豆イソフラボンの安全な摂取目安量を以下のように設定した また 妊婦 胎児 ( 妊婦が対象 ) 乳幼児及び小児については 特定保健用食品として大豆イソフラボンを日常的な食生活に上乗せして摂取することは推奨できない とした 1 特定保健用食品としての大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) 3) の安全な一日上乗せ摂取量の上限値 : 一日当たり 30 mg 上乗せ摂取量の上限値とは 日常の食事に加えて大豆イソフラボンを摂取しても安全な量 日常の食生活 ( 大豆 大豆食品 ) 安全な一日上乗せ摂取量の上限値 :30 mg 2 大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) の安全な一日摂取目安量の上限値 : 一日当たり 70~75 mg この上限値はこの量を毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均としての上限値であり 大豆食品からの摂取がこの量を超えることにより 直ちに健康被害に結びつくということではない 3) 大豆イソフラボン配糖体はアグリコン型大豆イソフラボンとして腸管から吸収されるため 食品安全委員会はアグリコン型大豆イソフラボンに換算した量として安全性評価を行った 備考本報告書中で使用している用語について 大豆イソフラボン : 大豆に含まれる 配糖体及び非配糖体 ( アグリコン型大豆イソフラボン ) 計 12 種のイソフラボン類の総称 アグリコン型大豆イソフラボン : 大豆イソフラボンのうち非配糖体 3 種 ( ダイゼイン グリシテイン ゲニステイン ) 大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) : 大豆イソフラボン配糖体をそれぞれアグリコン型に換算し アグリコン型大豆イソフラボンに加えたもの 2

4. テスト対象銘柄神奈川県相模原市内のドラッグストア及びインターネットで販売されている 大豆イソフラボンを多く含むとうたっており 一般の食品とは形状が異なる 錠剤又はカプセル状の 健康食品 の中から 表示値から算出した一日当たりの大豆イソフラボンの最大摂取量が 30 mg 以上であると受け取れる 24 銘柄をテスト対象とした ( 表 1) 表 1. テスト対象銘柄一覧 No. 銘柄名製造者又は販売者名内容量 1 アクティオ大豆イソフラボン ( ビタミン D 配合 ) アサヒフードアンドヘルスケア 購入価格 ( 円 : 税込み ) 一日最大摂取目安量当たりの大豆イソフラボン量 ( 表示より算出 ) 60 粒 (1 粒重量 250 mg) 1,396 大豆イソフラボン 50 mg 2 大豆イソフラボン井藤漢方製薬 30 g(250 mg 約 120 粒 ) 1,625 大豆イソフラボン 60 mg 3 大豆イソフラボンロイヤル ウエルネスジャパン 60 g(250 mg 約 240 粒 ) 2,051 イソフラボン 75 mg 4 5 天然 オイスターシェルカルシウムプラス大豆イソフラボンネイチャーメイド大豆イソフラボン 輸入元 : エープライム製造元 :VITA-BASICS INTERNATIONAL CO. 6 大豆イソフラボンオリヒロ 7 リエータビューティー大豆イソフラボンプラス 100 錠 2,415 大豆イソフラボン 50 mg 大塚製薬 15g(250 mg 60 粒 ) 1,365 大豆イソフラボン 50 mg キリンウェルフーズ 8 黒ごまイソフラボン ケイセイ 60 g ( 約 240 粒 /1 粒 250 mg) 37.8 g (210 mg 6 粒 30 袋 ) 52.8 g (1 粒重量 220 mg 240 粒 ) 2,145 イソフラボン 50 mg 2,882 大豆イソフラボン 50 mg 2,629 大豆イソフラボン 100 mg 9 ざくろ de 美人 健康フーズ 60 g(250 mg 240 粒 ) 4,032 大豆イソフラボン 100 mg ( イソフラボンとして 40 mg) 10 大豆イソフラボン 小林製薬 15.0 g(250 mg 60 粒 ) 1,821 大豆イソフラボン 60 mg 11 Smile Supli 大豆イソフラボン サラヤ 90 粒 2,940 大豆イソフラボン 40 mg 12 イソフラックス サンウエル 36 g(300 mg 120 粒 ) 5,340 大豆イソフラボンアグリコン 30 mg 13 イソフラボーン サンウエル 54 g(300 mg 180 粒 ) 7,980 大豆イソフラボンアグリコン 60 mg 14 豊年大豆イソフラボン 30 J-オイルミルズ 36.9g(1 粒 410 mg[ うち内容液 230 mg] 90 粒 ) 3,601 イソフラボン 90 mg 15 ベネフィーク 90 粒資生堂ビューティーフーズ 美輝イソフラボン (1 粒約 470 mg 中内容物 300 mg) 4,179 大豆イソフラボン 40 mg 16 Q10 AA SLIMFIX 資生堂薬品 90 粒 (1 粒重量 450 mg 1 粒内容量 300 mg) 4,998 イソフラボンアグリコン 40 mg 17 ローヤルイソフラボン 第一薬品工業 48.0 g(400 mg 120 粒 ) 8,960 大豆イソフラボンアグリコン (40 %)62 mg 18 COMSQUID BLOCK DHT 大機アイセック事業部 44.5 g(1 粒の重量 495 mg 1 粒の内容量 300 mg) 90 粒 8,190 大豆イソフラボン 90 mg 19 Vita Rita スーパーイソフラボン トータルボディコンセプト 30g(250 mg 約 120 粒 ) 3,581 大豆イソフラボン 80 mg 20 イソラコン ニチモウ 32.4 g(270 mg 120 粒 ) 8,113 アグリコン型大豆イソフラボン 40.8 mg 21 ライフマックス ニチモウ 48 g(400 mg 120 粒 ) 7,140 アグリコン型大豆イソフラボン 30 mg 22 フラボンチャーム 美健ライフ 81 g(270 mg 約 300 粒 ) 3,079 大豆イソフラボン 40.1mg 23 PEP( ペップ ) カボチャ種子エキス大豆胚芽エキス ( イソフラボン ) 販売者 : ヒデ薬品 製造者 : テルヴィス 55 g(275 mg 200 粒 ) 7,333 大豆イソフラボン 50 mg 24 黒豆イソフラボン粒山本漢方製薬 60 g(250 mg 240 粒 ) 1,422 イソフラボン 40 mg マークは 2006 年 5 月現在販売されている商品がテストした商品と表示が異なるもの 購入価格は 2006 年 5 月に店頭若しくは通信販売における購入価格を調査した平均値である このテスト結果は テストのために購入した商品のみに関するものである 3

5. テスト結果 1) 大豆イソフラボン量 テスト対象 24 銘柄中 14 銘柄に 食品安全委員会が設定した 一日上乗せ摂取量の上限値 を超える量の大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) が含まれていたテスト対象銘柄の大豆イソフラボン量 ( アグリコン換算値 ) 4) を調べ 食品安全委員会が設定した 一日上乗せ摂取量の上限値 と比較した その結果 ( 図 2) 表示された一日最大摂取目安量当たりの大豆イソフラボン量 ( アグリコン換算値 ) が 30 mgを超える銘柄がテスト対象 24 銘柄中 14 銘柄あった うち 2 銘柄 (No. 8 13) は一日最大摂取目安量を摂取した場合 一日上乗せ摂取量の上限値 の 2 倍以上の大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) を摂取する可能性があった また 表示された一日最小摂取目安量中にも 30 mgを超える大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) が含まれているものが 2 銘柄 (No. 3 13) あった 大豆イソフラボン量 ( アグリコン換算値 mg) 80 60 40 20 一日最小摂取目安量一日最大摂取目安量 一日上乗せ摂取量の上限値 (30mg) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 No. 図 2. 一日当たりの大豆イソフラボン摂取量 ( アグリコン換算値 ) 4) 大豆イソフラボン配糖体をアグリコン換算する際は 大豆イソフラボン配糖体とアグリコン型大豆イソフラボンの分子量の比を用いた 多くの事業者が大豆イソフラボン量に関する変更を予定若しくは検討していた テスト対象銘柄を製造又は販売している事業者 22 社 (24 銘柄 ) に対して アンケート調査を実施 した その結果 ( 図 3 表 2) 一日最大摂取目安量 当たりの大豆イソフラボン量 ( アグリコン換算値 ) が 30 mg を超えていた 14 銘柄のうち 大豆イソフラボン量に関する変更を行わないと回答したのは 1 銘柄のみだった 具体的な変更内容について回答があった銘柄はいずれも大豆イソフラボンの一日当たりの摂取量を食品安全委員会が設定した 一日上乗せ摂取量上限値 以下に下げる方向での変更が検討されていた 変更予定若しくは変更を検討中 (9 銘柄 ) 5) 一日最大摂取目安量当たりの大豆イソフラボン量 ( アグリコン換算値 ) 変更しない (1 銘柄 ) 生産終了若しくは販売中止予定 (4 銘柄 ) 変更する (2 銘柄 ) 5) 5) 30 mg 以上 30 mg 以下 (14 銘柄 ) (10 銘柄 ) 変更しない (7 銘柄 ) 検討中 (1 銘柄 ) 図 3. 大豆イソフラボン量に関する変更 (N=24) 4

表 2. 一日最大摂取目安量当たりの大豆イソフラボン量及び事業者アンケート結果 (2006 年 5 月 ) No. 1 2 3 大豆イソフラボン 含有量に関する表示 2 粒当たり大豆イソフラボン 50mg 4 粒当たり大豆イソフラボン 60mg 8 粒当たり大豆抽出物 250mg ( イソフラボンとして 50mg) テスト結果事業者アンケート結果 ( 大豆イソフラボン量に関する変更 ) 分析値 (mg/ 日 ) 7) 変更項目表示の調査結果変更を変更内容 6) 一日摂取目安量に表示量行うか 関する表示 (mg/ 日 ) 大豆イソフラボン量 アグリコン換算量 2 粒 50 52.5 32.7 販売中止予定 4 粒 60 55.8 35.8 生産終了 8~12 粒 75 76.0 47.9 販売中止予定 大豆イソフラボン含有量 摂取目安量表示 4 1 錠中大豆イソフラボン25mg 1~2 錠 50 0.9 0.5 検討中 検討中 検討中 検討中 5 1 粒当たり大豆イソフラボン 25mg 2 粒 50 44.4 44.3 行う 変更しない 変更する 1 日 1 粒 6 製品 8 粒中大豆胚芽抽出物 125mg ( イソフラボンとして 50 mg) 8 粒 50 55.0 34.6 変更予定 検討中 検討中 検討中 7 8 9 10 6 粒当たり大豆イソフラボン 50mg 8 粒当たり大豆イソフラボン100mg 8 粒当たり大豆イソフラボン 100mg ( イソフラボンとして 40mg) 1 粒当たりの含有量大豆イソフラボン 30 mg 1 袋 (6 粒 ) 50 52.9 33.0 8 粒 100 107.1 67.2 行う ( 予定 ) 販売中止予定 8 粒 40 39.9 24.9 行わない 変更する ( 予定 ) 変更しない ( 検討中 ) 9) 検討中 9) 2 粒 60 62.6 39.0 検討中検討中検討中検討中 11 3 粒当たり大豆抽出物 100mg ( 大豆イソフラボンとして 3 粒 40 39.6 25.1 行わない 40mg) 12 3 粒当たり大豆イソフラボンアグリコン 15 mg 3~6 粒 30 8) 36.9 36.0 行う 変更する 変更する 検討中 13 6 粒当たり大豆イソフラボンアグリコン 30 mg 6~12 粒 60 8) 72.8 70.7 行う 変更する 変更する 検討中 14 1 粒当たりイソフラボン30 mg 1~3 粒 90 90.7 56.6 検討中 検討中 検討中 検討中 15 3 粒当り大豆イソフラボン 40mg 3 粒 40 34.0 21.3 行わない 16 3 粒当たりイソフラボンアグリコン 40 mg 2~3 粒 40 8) 37.4 37.4 検討中 17 4 粒中大豆イソフラボンアグリコン (40%)62mg 4 粒 24.8 8) 23.1 23.1 行わない 18 3 粒中大豆イソフラボン90mg 3 粒 90 18.7 11.4 行わない 19 20 21 22 23 24 4 粒当たり大豆イソフラボン 80mg 1 粒あたりアグリコン型大豆イソフラボン 10.2 mg アグリコン型大豆イソフラボン1 粒あたり7.5mg 10 粒当り大豆イソフラボン 40.1mg 6 粒中大豆胚芽抽出エキス 100mg( 大豆イソフラボン 30% 含有 ) イソフラボン40mg (12 粒についての表示 ) 変更を検討中 変更しない 4 粒 80 6.0 3.7 行う変更しない変更する イソフラボンアグリコン 30 mg/3 粒 大豆イソフラボン 20mg/1 粒 1 日あたり 2 錠 2~4 粒 40.8 8) 9) 44.4 42.7 行う変更する変更する検討中 2~4 粒 30 8) 35.9 34.8 行わない 10 粒 40.1 34.6 22.2 行う変更しない変更する 1 日あたり 7 錠 6~10 粒 50 41.9 26.2 行わない 12 粒 40 45.9 28.6 行わない 6) 一日最大摂取目安量当たりの大豆イソフラボン量 ( 表示より算出 ) 7) 表示された一日最大摂取目安量から算出した大豆イソフラボン量 8) アグリコン型大豆イソフラボンとしての表示量 なお No. 17 は 大豆イソフラボンアグリコン (40 %) 62 mg との表示があったため 62 mg の 40 % を大豆イソフラボンアグリコンの量と解釈して算出した 9) 一日当たりの大豆イソフラボン摂取量を 一日上乗せ摂取量上限値 以下に減らす方向で検討中 との回答があった銘柄 5

大豆イソフラボン量が表示量より著しく少ない銘柄があった 大豆イソフラボン量が表示量の約 1.8 %(No. 4) 20.8 %(No. 18) 7.5 %(No. 19) と 大幅に少ない銘柄があった ( 表 2) これらは景品表示法上問題がある表示と思われた アグリコン型大豆イソフラボンを強化したと考えられる銘柄があったテスト対象 24 銘柄中 7 銘柄に アグリコン型大豆イソフラボンを特に強調した表示があった そこで テスト対象銘柄に含まれる大豆イソフラボンのうち アグリコン型大豆イソフラボンが占める割合を調べた その結果 ( 表 3) テスト対象銘柄の多くはアグリコン型大豆イソフラボンがほとんど含まれておらず 大豆イソフラボン配糖体が大部分を占めていた 一方 アグリコン型大豆イソフラボンを特に強調した 7 銘柄のうち 6 銘柄 (No. 12 13 16 17 20 21) とそれ以外の 1 銘柄 (No. 5) では アグリコン型大豆イソフラボンの割合が 9 割以上と 一般の大豆食品と比較しても著しく高い含有率であり アグリコン型大豆イソフラボンを特に強化していると考えられた No. 表 3. アグリコン型大豆イソフラボンを強調した表示の有無とその割合 10) アグリコン型大豆イソフラボンを強調した表示 アグリコン型の割合 (%) No. アグリコン型大豆イソフラボンを強調した表示 アグリコン型の割合 (%) 1 なし 0.3 13 あり 94.0 2 なし 5.4 14 なし 0.5 3 あり 5.1 15 なし 2.1 4 なし 0 16 あり 100 5 なし 99.8 17 あり 100 6 なし 2.9 18 なし 1.5 7 なし 0 19 なし 1.7 8 なし 2.6 20 あり 91.5 9 なし 2.5 21 あり 91.7 10 なし 2.3 22 なし 8.6 11 なし 3.9 23 なし 4.6 12 あり 93.7 24 なし 1.3 10) 商品に含まれる大豆イソフラボン 12 種の合計量のうち アグリコン型大豆イソフラボン ( ダイゼイン ゲニステイン グリシテイン ) が占める割合 ( 重量比 ) 2) 大豆食品との成分の相違 テスト対象銘柄は大豆食品とは成分のバランスが大きく異なっており 大豆食品の代替とはならない 基本的な考え方 では 大豆や大豆食品と成分( 大豆イソフラボン たん白質 カルシウム等 ) のバランスが異なる食品の食経験がないことが指摘され 大豆イソフラボンの摂取量が大豆食品の摂取量の指標として安易に用いられる風潮に懸念が示されている そこで テスト対象銘柄の一日最大摂取目安量中のたん白質及びカルシウム量を平成 15 年国民健康 栄養調査結果から試算した大豆食品からの摂取量 11) と比較した その結果 ( 図 4) カ 6

ルシウム含有量はテスト対象 24 銘柄中 8 銘柄 (No. 2 3 4 9 12 13 17 24) で大豆 食品からの摂取量 (85.9 mg) を上回っていたが その 8 銘柄は全て カルシウムを含むと 思われる大豆由来以外の原材料が表示されており カルシウムを含む原材料が添加された商品であると考えられた たん白質は全銘柄で 大豆食品からの摂取量 (8.1 g) の 10 % 以下しか含まれていなかった 一方 平成 14 年国民栄養調査結果より試算された大豆食品からの大豆イソフラボン摂取量 ( アグリコン換算値 ) 12) の中央値は一日当たり 18 mgであり テスト対象銘柄には 一日摂取目安量を摂取した場合 大豆食品からの摂取量以上の大豆イソフラボンを摂取することができる商品も多かった ( 図 2 表 2) しかし たん白質やカルシウムとのバランスは大豆食品とは大きく異なっており 大豆イソフラボンのみを濃縮あるいは強化したこれらの 健康食品 を摂取することは大豆食品の摂取の代替とはならないと言える 大豆食品からの摂取量 (8.1 g) たん白質 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 図 4. 大豆食品からのたん白質 カルシウム摂取量との比較 13) No. カルシウム 6.7 倍 0.5 倍 2 倍 4 倍 6 倍 12 倍 大豆食品からの摂取量 (85.9 mg) 12.1 倍 : カルシウムを含むと思われる原材料が表示された銘柄 11) 平成 15 年国民健康 栄養調査結果における全国平均の大豆 加工品摂取量 及び味噌 醤油摂取量を用いて たん白質及びカルシウム摂取量の平均値を算出した ( たん白質 8.1 g カルシウム 85.9 mg) ( 参考 : 平成 15 年国民健康 栄養調査報告 平成 17 年 8 月厚生労働省 ) 12) 平成 14 年国民栄養調査結果における全国平均の大豆 加工品摂取量 及び味噌 醤油摂取量を用いて試算された一日当たりの大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) の摂取量 ( 基本的な考え方 より ) 13) テスト対象銘柄の一日最大摂取目安量に含まれるたん白質及びカルシウム量との比較 大豆由来以外のたん白質若しくはカルシウムも含む なお カプセル状の銘柄については 被包材を除いた内容物中の含有量である 7

3) 表示について 大豆イソフラボン量に関する表示は銘柄毎に異なり 現状ではアグリコン換算した大豆イソフラボン量は分かりにくかったテスト対象銘柄の大豆イソフラボン量に関する表示を調べたところ ( 表 4) 銘柄毎に表記の方法がまちまちであった また 大豆イソフラボン 若しくは イソフラボン の量が表示されていた銘柄には アグリコン換算した大豆イソフラボン量の表示はなく 食品安全委員会の安全性評価と照らし合わせて商品選択しようとした場合 分かりにくい表示であると考えられた 一方 イソフラボンアグリコン や アグリコン型大豆イソフラボン の量が表示された銘柄も 表示量が商品に元々含まれるアグリコン型大豆イソフラボン量の表示なのか アグリコン換算としての表示なのか 分かりにくかった テスト対象銘柄を製造又は販売する事業者に対し アグリコン換算量表示を行うかアンケート調査を実施したところ イソフラボン 若しくは 大豆イソフラボン の量が表示されていた 18 銘柄中 6 銘柄 (No. 4 6 10 11 14 15) で アグリコン換算量の表示が予定若しくは検討されていた 表 4. 大豆イソフラボン量に関する表示 大豆イソフラボン量に関する表示 銘柄数 ( 合計 24 銘柄 ) 大豆イソフラボン 14) 14 銘柄 イソフラボン 4 銘柄 大豆イソフラボンアグリコン 3 銘柄 イソフラボンアグリコン 1 銘柄 アグリコン型大豆イソフラボン 2 銘柄 14)No. 9 は 大豆イソフラボン 100 mg( イソフラボンとして 40 mg) という表示だった 現状では 食品安全委員会が指摘した内容に関する注意表示がない銘柄が多かったが 事業者アンケートの結果から 注意表示の変更を検討する動きがあることが分かった 基本的な考え方 では 妊婦 胎児( 妊婦が対象 ) 乳幼児及び小児が大豆イソフラボンを特定保健用食品として日常的な食生活に上乗せして摂取することは推奨できない とされている また 大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の評価書では 他のイソフラボン含有サプリメントとの併用はしない旨 過剰摂取はしない旨 等の内容の注意喚起の表示を行う必要があるという考え方が示されている そこで これらの注意表示の有無を調べた その結果 ( 表 5) 摂取を避けるという旨の表示があった銘柄は 妊婦 9 銘柄 乳幼児 5 銘柄 小児 5 銘柄であり 過剰摂取を避ける旨の表示があった銘柄は 9 銘柄だった 他のイソフラボン含有サプリメントとの併用を避ける旨の表示がなされた銘柄はなかった テスト対象銘柄を製造又は販売している事業者に対し 食品安全委員会の安全性評価を受けて注意表示の変更を検討しているか アンケート調査を行った その結果 ( 表 5) 生産 販売中止又は中止予定との回答があった 4 銘柄を除く 20 銘柄中 13 銘柄で注意表示の変更が予定若しくは検討されており 食品安全委員会による特定保健用食品の安全性評価を受けて 健康食品 についても注意表示を変更する動きがあることが分かった 8

No. 表 5. 主な注意表示の有無及び事業者アンケート結果 (2006 年 5 月 ) 表示の調査結果 ( 表示あり : 表示なし : ) 使用回避表示 妊婦乳幼児小児 併用を避ける旨 過剰摂取を 15) 避ける旨 変更を行うか 1 17) 17) 販売中止予定 2 生産終了 3 販売中止予定 事業者アンケート結果 ( 表示を追加する : ) 使用回避表示 妊婦乳幼児小児 変更内容 併用を避ける旨 過剰摂取を避ける旨 4 検討中検討中検討中検討中検討中検討中 5 行う 6 17) 17) 変更予定変更なし変更なし変更なし ( 予定 ) 変更なし 7 16) 検討中検討中検討中検討中検討中検討中 8 販売中止予定 9 行わない 10 17) 17) 行わない 11 16) 行わない 12 行う 変更なし変更なし 13 行う 変更なし変更なし 14 検討中検討中検討中検討中検討中検討中 15 16) 行う変更なし 16 行う変更なし変更なし変更なし 変更なし 17 行わない 18 行わない 19 検討中検討中検討中検討中検討中検討中 20 17) 17) 行う ( 検討中 ) 変更なし変更なし変更なし ( 検討中 ) ( 検討中 ) 21 行う ( 検討中 ) 変更なし変更なし変更なし ( 検討中 ) ( 検討中 ) 22 行わない 23 行わない 24 行う 15) 表示された摂取目安量を守る旨の表示があった銘柄を含む 16) 医師 ( 薬剤師 ) にご相談ください という旨の表示があった銘柄 17) お子様は使用を避けて下さい という旨の表示があった銘柄 栄養表示基準における強調表示があったにもかかわらず 成分量の表示がない銘柄があった 栄養成分を補給できる旨の表示があったにもかかわらず 成分量の表示がない銘柄が 2 銘柄 (No. 3( カルシウム マグネシウム ) No. 9( カルシウム ビタミン D ビタミン E)) あった 栄養成分を補給できる旨の強調表示をする場合 健康増進法に基づく栄養表示基準において成分量の表示義務が課されているため 栄養表示基準に抵触する可能性があると考えられた 9

6. 消費者へのアドバイス 大豆イソフラボンを多く含むとうたった 健康食品 の長期的な過剰摂取は避けたほうがよい今回 表示から算出した一日当たりの大豆イソフラボンの最大摂取量が 30 mg 以上であると受け取れる錠剤又はカプセル状の 健康食品 をテストしたところ 食品安全委員会が設定した特定保健用食品としての大豆イソフラボンの 一日上乗せ摂取量の上限値 を超える量を摂取する可能性のある銘柄が 24 銘柄中 14 銘柄あった 設定された上限値は 特定保健用食品として 大豆イソフラボンを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の上限値 とされているが 健康食品 も特定保健用食品同様の摂取特徴を持つものと考えられるため 過剰摂取を避け 一日の摂取量をコントロールしたほうがよいだろう 妊婦 乳幼児及び小児は大豆イソフラボンを日常的な食生活に上乗せして摂取しないほうがよい 基本的な考え方 では 妊婦( 妊娠の可能性のある方を含む ) 胎児( 妊婦が対象 ) 乳幼児及び小児が大豆イソフラボンを日常的な食生活に上乗せして摂取することは推奨できない とされている テスト対象銘柄の中にはこのような旨の使用回避表示がなされていない銘柄が多かったが 表示がない場合も摂取は避けたほうがよいだろう 大豆イソフラボンを含む 健康食品 は 大豆食品の成分とバランスが大きく異なっているので 大豆食品の摂取と同一に考えないテスト対象銘柄のような 健康食品 は大豆や大豆食品と成分のバランスが大きく異なっており 大豆食品の代替とはならない 大豆イソフラボンのみを濃縮あるいは強化したこれらの 健康食品 の摂取を大豆食品の摂取と同一に考えないようにしよう 大豆や大豆食品はこれまで通り摂取するとよい食品安全委員会が安全性評価を行ったのは 大豆イソフラボンのみを濃縮あるいは強化し 日常の食事に上乗せして摂取する特定保健用食品についてであり 一般の大豆食品の摂取については これまで 安全性についての問題が提起されたことはない たん白質やカルシウム等の栄養素をバランス良く含む大豆や大豆食品はこれまで通り摂取するとよい 7. 業界への要望 大豆イソフラボンの一日摂取量が 食品安全委員会が設定した 一日上乗せ摂取量の上限値 を超えないよう改善を要望するテスト対象銘柄の中には 表示された一日摂取目安量を摂取した場合 食品安全委員会が設定した 一日上乗せ摂取量の上限値 を超える大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) を摂取してしまうものが多くみられた 健康食品 も特定保健用食品同様に多量かつ継続的な摂取が想定されるため 上限値を超えないよう 改善を要望する 10

大豆イソフラボン量に関する表示や注意表示等 より分かりやすい表示にするよう改善を要望する消費者が商品を選択する際 食品安全委員会が設定した 一日上乗せ摂取量の上限値 と比較できるよう アグリコンに換算した大豆イソフラボン量の表示を徹底してほしい また 注意表示の充実など より分かりやすい表示にするよう 改善を要望する 大豆イソフラボン量及び栄養成分表示の適正化を要望するテスト対象銘柄の中には 大豆イソフラボン量が表示量よりも著しく少なく 景品表示法上問題があると思われる銘柄があった また 栄養成分を補給できる旨の強調表示があるにもかかわらず成分量の表示がなく 健康増進法に基づく栄養表示基準に抵触すると思われる銘柄があった 表示の適正化を要望する 8. 行政への要望 特定保健用食品だけでなく 健康食品 についても 消費者が摂取する上での何らかの指針を示すよう要望するテストした 錠剤又はカプセル状の 健康食品 の中には 食品安全委員会が設定した 特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値 を超える量の大豆イソフラボン ( アグリコン換算 ) を含む銘柄が多くみられ どの銘柄もアグリコン型 配糖体のバランスや他成分とのバランスなどが大豆食品と大きく異なっていた テスト対象銘柄のような 健康食品 も特定保健用食品同様 多量かつ継続的な摂取が想定されるものであるため 安全上特定保健用食品と同様に考えてよいと思われる 消費者がこのような 健康食品 を摂取する上での何らかの指針を示すよう要望する 大豆イソフラボン量及び栄養表示基準に基づく表示について指導の徹底を要望するテスト対象銘柄の中には 大豆イソフラボン量が表示量よりも著しく少なく 景品表示法に抵触する可能性がある銘柄があった また 栄養成分を補給できる旨の表示があるにもかかわらず成分量の表示がなく 健康増進法に基づく栄養表示基準に抵触すると思われる銘柄があった 表示を適正化するよう 指導の徹底を要望する 要望先内閣府食品安全委員会事務局情報 緊急時対応課厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課公正取引委員会事務総局取引部景品表示監視室財団法人日本健康 栄養食品協会 情報提供先内閣府国民生活局消費者調整課農林水産省消費 安全局消費 安全政策課 本件問い合わせ先商品テスト部 :042-758-3165 11

<title> 大豆イソフラボンを多く含むとうたった 健康食品 ( 概要 )</title> 12