JR 博多駅ビル利用状況調査 要約 九州新幹線鹿児島ルートの全線開業に先立ち 今年 3 月 3 日に誕生した JR 博多駅ビル 開業後半年間の来店客数は 3 千万人を超え 売上高は 400 億円に迫るなど順調な滑り出しを見せており 九州各地に及ぼすストロー現象が懸念されている そこで今回は 九州全域から集客していると思われる同ビルの利用状況と各地への影響を探るために 九州 7 県の県庁所在都市の男女を対象にネット調査を実施した 調査結果の概要 1. JR 博多駅ビルを訪問した割合は 46.1% となり 5 割に満たなかった 福岡市の 85.5% が突出して多かったが 熊本市は 43.1% 九州新幹線の全線開業により所要時間が大幅に短縮した鹿児島市においても 32.0% となるなど 福岡市以外では 3~4 割台にとどまっている 2. 訪問経験がある人の訪問回数は 1 回 が 41.7% で最も多かったが 2~4 回 37.0% 10 回以上 も 11.7% と複数回の割合も比較的多い とりわけ 地元の福岡市では 10 回以上 が 3 割に上る 3. 訪問したキッカケは 新しく開業したから (69.5%) が最も多く 開業効果が表れる結果となった 一方で 他の目的のついで も 6 都市で 3 割を超えており JR 博多駅ビルを目的とした 九州全域からの呼び込みには至っていない 熊本限定の ビックリつばめ 2 枚きっぷ があったから は 8.0% だった 4. 利用した店舗 ( 施設 ) については 共に九州初出店となる 東急ハンズ ( 訪問率 69.5%) と 博多阪急 ( 同 62.6%) が人気を二分した また 買い求めた商品の種類では 今でも行列ができるところがあるという スウィーツ 菓子類 ( 購入率 51.1%) が唯一 5 割を超えたが 一方で 買物していない がでは (30.3%) では熊本市(31.0%) で 3 割を超えた 5. JR 博多駅ビルの開業に伴う地元の商業施設等への影響については 大分市と鹿児島市において 中心商店街や百貨店の利用が 減った の割合が 1 割を超え 購買流出の懸念がうかがわれる 一方 熊本市と長崎市においては いずれも 1 割を下回り とりわけ熊本市では 5% 程度にとどまることから 両市への影響は軽微なものと思われる 調査の概要 1. 調査対象 : 九州の県庁所在都市 7 市の20 歳以上の男女 2. 調査時期 : 2011 年 9 月 20~22 日 3. 調査方法 : ネットリサーチ ( 調査委託先 : 株式会社マクロミル ) 4. 有効回答 : 1,432 人 5. 回答者の属性 年齢 男性 女性 福岡市佐賀市長崎市熊本市大分市宮崎市鹿児島市 1,432 207 203 204 202 205 205 206 100.0 14.5 14.2 14.2 14.1 14.3 14.3 14.4 715 104 100 101 101 103 103 103 100.0 14.5 14.0 14.1 14.1 14.4 14.4 14.4 717 103 103 103 101 102 102 103 100.0 14.4 14.4 14.4 14.1 14.2 14.2 14.4 254 42 39 36 33 41 30 33 100.0 16.5 15.4 14.2 13.0 16.1 11.8 13.0 443 73 66 59 64 63 53 65 100.0 16.5 14.9 13.3 14.4 14.2 12.0 14.7 412 58 48 68 55 58 67 58 100.0 14.1 11.7 16.5 13.3 14.1 16.3 14.1 205 22 33 27 31 31 27 34 100.0 10.7 16.1 13.2 15.1 15.1 13.2 16.6 118 12 17 14 19 12 28 16 100.0 10.2 14.4 11.9 16.1 10.2 23.7 13.6 1
1. JR 博多駅ビル訪問経験者は 46.1% 訪問経験者の 5 割超が また行ってみたい JR 博多駅ビル訪問の有無をたずねた結果が図表 1 である では訪問したことが ある ( 以下 訪問経験者 ) は 46.1% となり半数に満たなかった 属の特徴をみると 男性の 41.5% に対して女性は 50.6% となり 5 割を超えた また 訪問経験者は が 61.0% で最も多く 年齢が高くなるにつれて減少する傾向にある では 福岡市の訪問経験者の割合が 85.5% となり 当然の結果ながら全都市の中で最も多かったが 福岡市以外の都市ではいずれも 5 割を下回った 九州新幹線の沿線都市をみると熊本市で 43.1% 全線開業により所要時間が大幅に短縮された鹿児島市でも 32.0% にとどまった また 今後の訪問意向をみたものが図表 2 で では ( また ) 是非行きたい ( 以下 是非行きたい ) が 49.8% となった ( また ) 行くかもしれない の 23.2% と合わせると 7 割超が今後も訪問意向がある 属にみると 是非行きたい が男性の 41.4% に対して 女性が 58.2% と女性の訪問意向が高い また 是非行きたい は (56.7%) と (55.5%) で 5 割を超えるなど若い世代の訪問意向が高い では 是非行きたい は福岡市で 55.6% と最も多かったが 鹿児島市 5% 佐賀市 52.7% 大分市 51.7% と 4 都市で 5 割を超えた 図表 1 JR 博多駅ビル訪問の有無 (n=1,432 人 ) 図表 2 今後の訪問意向 (n=1,432 人 ) 46.1 5 49.8 23.2 21.6 5.4 男性女性 41.5 50.6 61.0 48.8 43.7 37.1 58.5 49.4 39.0 51.2 56.3 62.9 男性女性 41.4 58.2 56.7 55.5 47.6 37.6 42.4 26.6 25.2 6.9 19.8 22.8 22.1 18.0 4.0 16.1 4.3 19.2 3.2 20.9 28.3 27.1 25.5 25.9 21.2 6.1 8.3 9.3 福岡市佐賀市長崎市熊本市大分市 28.0 46.3 45.1 43.1 37.6 85.5 72.0 53.7 54.9 56.9 62.4 14.5 福岡市佐賀市長崎市熊本市大分市宮崎市鹿児島市 55.6 52.7 44.1 47.5 51.7 42.9 5 20.8 24.1 26.0 24.8 23.4 25.4 18.0 20.8 2.9 16.7 6.4 23.5 6.4 23.3 4.5 17.1 7.8 25.9 5.9 23.8 4.4 宮崎市鹿児島市 32.7 32.0 67.3 68.0 訪問あり訪問なし 54.4 45.9 25.8 18.90.9 21.0 23.8 9.3 ある ない ( また ) 是非行きたい ( また ) 行くかもしれない 他の用件のついでに行く 行きたいとは思わない 2
2. 訪問経験者のうち 6 割が複数回訪問 訪問のキッカケは 新しく開業したから 訪問経験者に訪問回数をたずねた結果が図表 3 である 1 回 が最も多く で 41.7% 男 性が 42.8% 女性が 40.8% となった 一方 2~4 回 が 37.0% 5~9 回 が 9.7% 10 回 以上 が 11.7% となっており 複数回訪問している割合は 6 割近くに上った 1 回 は年齢が高 くなるほど多くなっているが 全年代を通して 10 回以上 というリピーターも存在しており 特に 図表 3 訪問回数 (n=660 人 ) では 15.2% と に次いで多かったこ とは注目される では 福岡市と佐賀市を 41.7 37.0 9.7 11.7 除くと 1 回 が最も多くなっているが 鹿児島男性 42.8 34.7 11.8 10.8 性市では 1 回 の 47.0% に対して 2~4 回 も 42.4% 別女性 40.8 38.8 8.0 12.4 と拮抗しているところは注目される 40.6 30.3 12.9 16.1 図表 4 は訪問したキッカケをにみたもの年である 鹿児島市を除くすべての都市で 新しく齢 40.7 38.9 9.3 11.1 開業したから が最も多くなっており 一定の開 別 41.1 38.3 10.010.6 業効果が表れているようだ しかし 鹿児島市では 他の目的のついで が 56.1% で最も多く 宮 44.7 48.5 46.1 27.3 9.1 5.3 15.2 崎市でも 新しく開業したから と同率の 46.3% となるなど 同ビルを 目的 とした九州全域か 福岡市佐賀市 15.8 33.0 35.0 18.6 43.6 30.5 10.6 12.8 らの呼び込みには今のところ至っていないようで 長崎市 53.3 38.0 6.52.2 都ある 市熊本市 つばめ の乗車率改善に向け 熊本- 博多間別大分市の つばめ 指定席利用限定で発売されている ビ宮崎市ックリつばめ 2 枚きっぷ は 割安な価格に加え鹿児島市アミュプラザで利用できる買物券がセットになっ 52.9 59.7 65.7 47.0 37.9 31.2 31.3 42.4 4.6 4.6 6.52.6 3.0 0.0 6.14.5 ており 重要なインセンティブになっているのではないかと考えていたが 8.0% にとどまった 1 回 2 ~ 4 回 5 ~ 9 回 10 回以上 新しく開業したから 他の目的のついで 図表 4 訪問したキッカケ (n=660 人 複数回答 ) (%) 好きなショップがあるから 新聞 テレビ等で見て 3 友人 知人たまたま訪に誘われて問した 九州新幹線が全線開業したから ビックリつばめ 2 枚きっぷ があったから その他 福岡市 69.5 33.3 24.3 22.6 22.6 15.3 7.3-5.6 佐賀市 55.3 34.0 24.5 24.5 25.5 16.0 0.0-4.3 長崎市 51.1 38.0 22.8 19.6 13.0 15.2 1.1-3.3 熊本市 55.2 25.3 24.1 18.4 13.8 17.2 29.9 8.0 6.9 大分市 54.5 46.8 19.5 20.8 10.4 15.6 6.5-1.3 宮崎市 46.3 46.3 22.4 17.9 6.0 19.4 6.0-4.5 鹿児島市 37.9 56.1 21.2 21.2 18.2 18.2 30.3-1.5 注 ) ビックリつばめ 2 枚きっぷ があったから は熊本市だけの設問と回答であるため 比較のみ行っている
3. 東急ハンズと博多阪急が人気を二分 買物の目当ては スウィーツ 訪問した際に利用した店舗 ( 施設 ) についてみたものが図表 5 である 東急ハンズ が 69.5% で最も多く 次いで 博多阪急 が 62.6% となり 九州初出店の 2 店舗が いずれも 6 割を超える高い利用率となった これらに続くのが 主に飲食施設で構成される 博多一番街 と シティダイニングくうてん となっている 男女別では 博多阪急 と シティダイニングくうてん で女性の利用が多く 総じて男性の利用率は女性に比べて低くなった にみると では 東急ハンズ の利用率が高く シティダイニングくうてん で低くなっている 一方 では シティダイニングくうてん を除いた店舗 ( 施設 ) でより高くなっており 店舗の種類に関係なく 満遍なく利用しているといった特徴がみられる では 福岡市で JR 九州ホール を除くすべての店舗 ( 施設 ) でを上回っており 満遍なく利用されていることから 他の都市とは異なり 日常的な利用が定着していると思われる結果となった 一方で宮崎市は JR 九州ホール 以外の利用率はすべてを下回っており 訪問したキッカケの結果 ( 新しく開業したから と 他の目的のついで が共に 46.3% で 1 位 ) と重ね合わせてみると 他の用事のついでに寄ってみた という層が多いようである 図表 5 利用した店舗 (n=660 人 複数回答 ) (%) 東急ハンズ博多阪急博多一番街 シティダイニングくうてん つばめの杜ひろば JR 九州ホール T ジョイ博多 69.5 62.6 43.6 35.2 18.0 15.9 15.0 男性 66.3 54.9 42.1 27.9 15.2 16.5 16.5 女性 72.2 68.9 44.9 41.0 20.4 15.4 13.8 74.8 61.9 40.0 27.7 16.8 17.4 14.8 69.4 64.4 41.7 37.5 19.4 12.5 13.4 71.1 62.2 49.4 40.6 17.8 14.4 16.1 55.3 5 38.2 31.6 10.5 19.7 14.5 69.7 75.8 54.5 33.3 33.3 30.3 21.2 福岡市 74.0 75.1 49.7 44.1 26.6 13.6 20.3 佐賀市 68.1 71.3 46.8 44.7 25.5 18.1 14.9 長崎市 72.8 60.9 31.5 35.9 10.9 15.2 13.0 熊本市 73.6 54.0 37.9 33.3 13.8 16.1 17.2 大分市 72.7 55.8 49.4 20.8 9.1 13.0 13.0 宮崎市 47.8 55.2 32.8 28.4 10.4 20.9 6.0 鹿児島市 68.2 45.5 51.5 22.7 18.2 18.2 12.1 : を 5 ポイント以上上回る : を 5 ポイント以上下回る 4
図表 6 は訪問した際に買い求めた商品で スウィーツ 菓子類 が 51.1% と唯一 5 割を超えた 以下 ファッション衣料 34.2% 家庭雑貨 28.8% その他の食品 24.4% 文房具 22.9% と続いているが 前述の店舗利用率の高さに照らし合わせると いろんな新しいお店を覗いてはみたものの 実際に買物はしなかった ウインドウショッピングが思いのほか多いことが推測される 属にみたときの特徴としては 書籍 を除くすべての商品で 買い求めた割合が女性が男性を上回る一方で 買物していない は男性が女性を上回ったこと そしてにみたときに 熊本市と宮崎市は相対的に買物した割合が低くなったことなどが挙げられる とりわけ熊本市は 買物していない が 31.0% で全都市の中で最も多く 訪問経験者のうちの 3 人に1 人は買物をしなかったことになる つまり 熊本市に関しては 購買の流出 や ストロー現象 について 今回の調査結果をみる限り JR 博多駅ビル開業による影響は少ないものと思われる 図表 6 買い求めた商品 (n=660 人 複数回答 ) (%) スウィーツ 菓子類 ファッション衣料 家庭雑貨その他食品文房具書籍インテリア 買物していない 51.1 34.2 28.8 24.4 22.9 1 11.4 18.6 男性 38.0 22.6 23.6 22.2 18.5 16.5 8.8 25.6 女性 61.7 43.8 33.1 26.2 26.4 11.8 13.5 12.9 45.8 42.6 25.8 18.1 2 18.1 15.5 22.6 56.0 38.0 31.9 25.9 22.7 13.4 13.0 13.0 51.1 30.6 30.0 22.8 26.7 15.0 8.9 17.2 47.4 22.4 22.4 28.9 11.8 6.6 30.3 51.5 18.2 30.3 42.4 24.2 9.1 12.1 18.2 福岡市 52.0 36.2 30.5 3 23.7 23.7 11.3 18.1 佐賀市 55.3 38.3 31.9 25.5 23.4 9.6 11.7 14.9 長崎市 53.3 30.4 2 20.7 21.7 7.6 12.0 16.3 熊本市 50.6 26.4 27.6 18.4 21.8 8.0 14.9 31.0 大分市 51.9 40.3 26.0 18.2 18.2 9.1 13.0 14.3 宮崎市 38.8 25.4 2 20.9 13.4 16.4 0.0 22.4 鹿児島市 51.5 40.9 36.4 21.2 37.9 13.6 15.2 13.6 : を 5 ポイント以上上回る : を 5 ポイント以上下回る 5
4. 熊本市からの購買流出は軽微 一部の都市では地元への影響もまた本調査では JR 博多駅ビルの開業がそれぞれの都市の地元の商業施設等へ及ぼす影響を考察するために 同ビルの開業に伴う地元中心商店街と地元百貨店の利用の増減をたずねた 図表 7 は地元の中心商店街の利用の変化をみたものであるが では 変わらない が 87.4% となっており 9 割近くは利用に変化はないとしている しかしながら 減った が 8.8% で 増えた の 3.8% を上回っており 全く影響がないとは言えない また 減った は の 2 割近く (18.2%) では大分市 宮崎市 鹿児島市で 減った が 1 割以上となっており 特にこれらの都市を中心に少なからず影響があるようだ 一方熊本市は 減った が 5.7% で 福岡市 長崎市と並び低くなっており 中心商店街への影響は軽微なものと思われる 図表 8 は 同様に地元百貨店の利用の変化についてみたものである では 変わらない が 85.3% と最も多かったが 減った が 11.2% と中心商店街に比べると 2.4 ポイント高くなっていることから JR 博多駅ビル開業は 地元の百貨店にとって多少の影響があるものと思われる その中でも大分市では 減った が 2 割を超えていることから 地元の百貨店への影響が懸念される 一方熊本市は 減った が 5.7% と 7 都市の中で最も低く 地元百貨店への影響は 中心商店街と同様に軽微なものと思われる 図表 7 地元中心商店街利用の増減 (n=660 人 ) 図表 8 地元百貨店利用の増減 (n=660 人 ) 3.8 87.4 8.8 3.5 85.3 11.2 男性 女性 3.7 85.2 89.3 11.1 6.9 男性 女性 3.4 3.6 83.2 87.1 13.5 9.4 3.2 87.7 9.0 87.1 9.0 5.1 2.2 87.0 90.6 85.5 7.9 7.2 10.5 5.1 0.6 2.6 86.6 87.2 80.3 8.3 12.2 17.1 6.1 75.8 18.2 9.1 69.7 21.2 福岡市 3.4 91.0 5.6 福岡市 4.0 86.4 9.6 佐賀市 2.1 88.3 9.6 佐賀市 0.0 86.2 13.8 長崎市 熊本市 大分市 4.3 2.3 90.2 92.0 80.5 5.4 5.7 15.6 長崎市 熊本市 大分市 3.3 1.1 5.2 88.0 93.1 74.0 8.7 5.7 20.8 宮崎市 1.5 85.1 13.4 宮崎市 1.5 89.6 9.0 鹿児島市 10.6 77.3 12.1 鹿児島市 10.8 75.8 13.6 増えた変わらない減った 増えた変わらない減った 6