第五章 給水装置の維持管理
第五章 給水装置の維持管理 給水装置は 年月の経過に伴う材質の劣化等により故障 漏水等の事故が発生することがある 事故を未然に防止するため 又は最小限に抑えるためには維持管理を的確に行うことが重要である また 給水装置は 水道使用者等が善良な管理者としての注意をもって管理すべきものであり 維持管理についての使用者等に対する適切な指導が大切である 1 漏水の点検 給水管からの漏水 器具の故障の有無について随時又は定期的に点検を行う 表 -1 点検箇所漏水の状況予防 発見方法 メータ 蛇 口 水洗トイレ 受水タンク 壁 ( 配管部分 ) 地表 ( 配管部分 ) 下水のマンホール 全て蛇口を閉め使用していないのに パイロットが動いている 蛇口漏水は ポタポタから始まる 使用していないのに 水が流れている 使用していないのに ポンプのモーターがたびたび動く タンクの水があふれている 常時 受水タンクに供給している音がする 配管してある壁や羽目板が濡れている 配管してある付近の地面が濡れている マンホールの中に いつもきれいな水が流れている 定期的にメータを見る 蛇口が締まりにくいときは 無理に締めずにすぐ修理する 使用前に水が流れていないか調べる 受水タンク以下の給水設備に漏水がないか点検する 警報機を取り付ける タンクにひび割れ 亀裂がないかときどき点検する 家の外側を時々見回る 給水管 ( 地下 30 cm程度 ) の布設されているところには物を置かない マンホールの蓋をときどきあけて点検する 5-1
2 器具の故障と修理 一般的に使用されている器具の故障と修理方法は次のとおりである (1) 給水栓の故障と対策 表 -2 故障原因修理 1 こま パッキンの摩耗損傷 こま パッキンを取り替える 漏 水 2 弁座の摩耗 損傷 軽度の摩耗 損傷ならば パッキンを取り替える その他の場合は水栓を取り替える ウォータハンマ 不快音 グランドから漏水 1 こまとパッキンの外径の不揃い ( ゴムが摩耗して拡がった場合など ) 2 こまの裏側 ( パッキンとの接触面 ) の仕上げ不良 3 パッキンの硬度が軟かすぎるとき 4 水圧が異常に高いとき スピンドルの穴とこまの外径が合わなくがたつきがあるとき グランドパッキンの摩耗 損傷 正規のものに取り替える こまを取り替える 適当な硬度のパッキンに取り替える 止水栓で適当な水圧に調節する 摩耗したこまを取り替える グランドパッキンを取り替える スピンドルのがたつきスピンドルのねじ山の摩耗水栓を取り替える 水の出が悪い 給水栓のストレーナにゴミがつまった場合 蛇口を取り外し ストレーナのゴミを除去する 本体 ハンドル キャップナット スピンドルこま 弁座 図 -l 一般的な給水栓の構造 5-2
(2) こまの取替要領及びこまの種類アこまの取替要領 ( ア ) 水道の止水栓を右にまわして水を止める ( イ ) 給水栓のハンドルを全開にし スパナ等でハンドルの下にあるキャップナット を外し ハンドルを左に数回まわしてスピンドルを抜き取る 混合水栓の場合は a ドライバー等でキャップを外す b ビスを外す c ハンドルを引き抜く d キャップナットを外してスピンドルを抜く 混合水栓 キャップ ビス ハンドル 5-3
( ウ ) スピンドルを抜いた本体の中にこまが ( エ ) こまの摩耗やごみなどの付着を点検し 入っているので これをピンセットなど 摩耗しているものは新しいものと交換す で取り出す る ( オ ) 逆の順序で組立てを行い 元栓又は止水栓を左に回して開ける イこまの種類こまには 節水こまと普通こまがある 普通こまは水栓ハンドルを開くにつれて吐水量は急に増加するが 節水こまは水栓ハンドルを約半回転 ( 開き度 150 ) 位までは吐水量の増加が比較的少なく それ以上から急に増加する 都では都型節水こまを推奨している 節水こま ( 都型 ) 普通のこま この部分の 大きさが違う 図 -2 5-4
(3) ロータンクの故障と対策 表 -3 故障原因修理 鎖のからまり フロート弁の摩耗 損傷のため すき間から水が流れ込んでいる 鎖が 2 環くらいたるむようにセットする 新しいフロート弁に交換する 水がとまらない 弁座に異物がかんでいる 分解して異物を取り除く オーバーフロー管から水があふれている ボールタップの止水位調整不良の場合は 水位調整弁で調整する ボールタップのごみ噛みの場合は パッキンに噛み込んだごみを取り除き パッキンに傷がある場合は新しいものと交換する 水が出ない ストレーナーに異物がつまっている 主弁のスピンドルの折損 分解して清掃する ボールタップを交換する 手洗管 主弁 浮玉 ストレーナ ボールタップ パッキン 連結棒 浮玉 鎖 オーバフロー管 ハンドル スピンドル フロート弁 止水栓 図 -3 5-5
(4) 副弁付定水位弁の故障と対策 表 -4 故障原因修理 水が止まらない 1 副弁の故障 2 主弁座に異物をかんでいる 3 主弁座パッキンの摩耗 1 ストレーナーに異物のつまり 一般形ボールタップの修理と同じ シリンダを外し 弁座を清掃する 新品と取り替える 分解して清掃する 水が出ない 2 ピストンの O リングが摩耗して作動しない O リングを取り替える ピストン シリンダ 副弁 ピストン用 O リング 主弁 ストレーナ 副弁 主弁座 パッキン 図 4 5-6
(5) 大便器洗浄弁 表 -5 故障原因修理 常に少量の水が流出している 1 ピストンバルブと弁座の間に異物がかんでいる 2 弁座又は弁座パッキンの傷 ピストンバルブを取り外し異物を除く 損傷部分を取り替える 常に大量の水が流出している 瞬間流量が少ない 瞬間流量が多い 吐水時間が短い 吐水時間が長い ウォータハンマが生じる 1 ピストンバルブの小孔のつまり 2 ピストンバルブのストレーナーの異物のつまり 3 押棒と逃し弁との間にすき間がなく常に押棒が逃し弁を押している 4 逃し弁のゴムパッキンがいたんでいる 1 水量調節ねじをねじ込みすぎている 2 ピストンバルブの U パッキンが摩耗している 水量調節ねじがあきすぎている 1 開閉ねじがあきすぎている 2 ピストンゴムパッキンがめくれたり 摩耗している 1 開閉ねじを締めすぎている 2 小孔にゴミがつまり圧力室に少量しか水が入ってこない 1 ピストンゴムパッキンを押しているビスがゆるんでいる 2 非常に水圧が高くかつ開閉ねじがあきすぎている ピストンバルブを取り出し 小孔を掃除する ピストンバルブを取り出し ブラシなどで軽く清掃する ハンドルを取り替えたような場合すき間がなくなることがある ヤスリなどで押棒の先端をけずり 1.5 mm位のすき間になるようにする ピストンバルブを取り出し パッキンを取り替える 水量調節ねじをドライバーで左に回して上げる ピストンバルブを取り出し U パッキンを取り替える 水量調節ねじを右に回して下げる ドライバーで開閉ねじを右に回して下げる ピストンバルブを取り出しピストンゴムパッキンをよく広げるか または取り替える 開閉ねじを左に回して上げる ピストンバルブを取り出して掃除する ビスがゆるんだ場合圧力室に多量の水が流入してピストンバルブが急閉止して音を発する ビスの締め直しをする 開閉ねじをねじ込み 水の水路を絞る 3 ピストンゴムパッキンの変形 ( ピストンバルブが急閉止する ) ピストンバルブを取り出してよく広げるか または取り替える ハンドルか ら漏水する ハンドル部の Oリングのいたみ Oリングを取り替える 5-7
. 止水栓カバー 開閉ねじ 水量調節ねじ インデックス 本体カバー ピストンバルブ 小孔 ストレーナ 止水栓 逃し弁 ハンドル バキュームブレーカ 5-8
(6) 小便器洗浄弁 表 -6 故障原因修理 流量が少ない ピストン弁のリフトが小さいので弁の開口面積が少ない 1 カバーを外して 調節ねじを左に回す 2 調節後ナットを十分締める 流量が多い 吐水時間が短い 吐水時間が長い ピストン弁のリフトが大きすぎて弁の開口面積が多すぎる 洗浄弁にかかる水圧が高すぎる 洗浄弁にかかる水圧が低くすぎる 1 調節ねじを左に回す 2 調節後ナットを十分締める 開閉ねじを右に回す 開閉ねじを左に回す 調節ねじ 開閉ねじ ピストンバルブ小孔ストレーナ押し棒 押しボタン 図 -6 5-9
(7) 湯沸器 湯沸器にはいろいろな種類があり その構造も複雑であるので 故障が発生した場合 使用 者等が修理することは困難かつ危険であるので 製造メーカーに修理を依頼する 3 異常現象と対策 (1) 水質の異状ア異常な臭味水道水は 消毒のため塩素を混入しているので消毒臭 ( 塩素臭 ) がある この消毒臭は 残留塩素の酸化作用による殺菌効果があることを意味し 水道水の安全性を示す一つの証である なお 塩素以外の臭味が感じられたときは 所在地を所管する取扱事業所又はお客さまセンター ( 多摩地区は多摩お客さまセンター ) へ連絡をする イ異常な色 ( ア ) 水道水が白濁色に見え数分間で清澄化する場合は 空気の混入によるもので一般的に問題はないが 疑いのある場合は 所在地を所管する取扱事業所又はお客さまセンター ( 多摩地区は多摩お客さまセンター ) へ連絡をする また 水質検査を依頼する場合は 所在地を所管する各営業所又は各サービスステーションへ水道水質検査申込書 ( 様式 12) を提出する ( イ ) 水道水が赤色又は黒色になる場合は 鋳鉄管 鋼管のさびが流速の変化 流水の方向変化などにより流出したもので 一定時間排水すれば回復する なお 水質に疑いのある場合は 所在地を所管する取扱事業所又はお客さまセンター ( 多摩地区は多摩お客さまセンター ) へ連絡をする また 水質検査を依頼する場合は 所在地を所管する各営業所又は各サービスステーションへ水道水質検査申込書 ( 様式 12) を提出する (2) 出水不良近くに配水小管がなく 長距離連合給水管により給水を受けている給水装置が 管の老朽や支分栓の増加等により水の出が悪くなるなど出水不良の原因は種々あるが そのような場合は次による ア配水小管の水圧が低い場合周囲のほとんどが水の出が悪くなったような場合は 配水小管の水圧低下が考えられるので 所在地を所管する取扱事業所又はお客さまセンターへ連絡する イ給水管径が小さい場合当初の使用予定を上回って既設給水管から多数の支分引用を行うと 必要水量に比し給水管径が小さくなり出水不良をきたす このような場合には適正な口径に改造する必要がある ウ管内にスケールが付着した場合亜鉛めっき鋼管などは内部にスケール ( 赤さび ) が発生しやすく 年月を経るとともに実内径が小さくなるので出水不良をきたす このような場合には管の布設替えが必要である エ配水小管の工事等により断水したりすると 通水時の水圧によりスケール等がメータのストレーナに付着し出水不良となることがある このような場合は お客様センターへ連絡し都へ対応を依頼するか ストレーナ清掃を行う 5-10
オ給水管が途中でつぶれたり 地下漏水をしていることによる出水不良 あるいは各種器具の故障などによる出水不良もあるが これらに対しては 現場調査を綿密に行って原因を発見し その原因を除去する (3) ウォータハンマウォータハンマが発生している場合は その原因を十分調査し 原因となる器具の取替えや 給水装置の改造により発生を防止する 給水装置内に発生原因がなく 外部からの原因によりウォータハンマが発生している場合もあるので注意する (4) 異常音給水装置が異常音を発する場合は その原因を調査し発生源を排除する ア水栓のこまパッキンが摩耗しているため こまが振動して異常音を発する場合は こまパッキンを取り替える イ水栓を開閉する際 立上り管等が振動して異常音を発する場合は 立上り管等を固定させて管の振動を防止する ウア及びイ以外の原因で異常音を発する場合は ウォータハンマに起因することが多い 5-11