フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにフェキソフェナジン塩酸塩は 第二世代抗ヒスタミン薬の一つであり 抗原抗体反応に伴って起こる肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーターの遊離を抑制すると共に ヒスタミンの H1 作用に拮抗することにより アレルギー症状を緩和する 今回 フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK とアレグラ 錠 6mg の生物学的同等性を検討するため 後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン 1) ( 以下 同等性試験ガイドライン という ) に従い 日本人健康成人男子を対象として 絶食時に経口投与し 血漿中のフェキソフェナジンの濃度推移から両製剤のバイオアベイラビリティを比較した Ⅰ. 試験方法 1. 治験薬試験製剤としてフェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK ( 辰巳化学株式会社 )( 以下 試験製剤 という ) を 標準製剤としてアレグラ 錠 6mg( サノフィ株式会社 )( 以下 標準製剤 という ) を用いた 2. 被験者健康な成人男子志望者の中から 事前の健康診断および臨床検査において臨床的に問題がないと判断された 48 名を被験者とした 被験者の年齢および BMI を Table 1 に示した 3. 実験計画投与スケジュールを Table 1 に示した 試験は 2 群 2 期のラテン方格法により行い 休薬期間は 7 日間とした また被験者 48 名は 24 名ずつの 2 群に無作為に割り付けた 4. 投与方法および投与量投与スケジュールに従い 各製剤とも 1 錠 ( フェキソフェナジン塩酸塩 6 mg) を水 15 ml と共に服用した なお投与前 1 時間以上および投与後 4 時間は絶食とした 5. 血液試料採取方法血漿中薬物濃度測定用の採血は 投与前 投与後.5 1 1.5 2 2.5 3 4 6 8 1 および 12 時間の計 12 回行った 採血については 前腕静脈より 3 ml をヘパリンナトリウム加真空採血管を用いて採血し 冷却遠心分離により得られた血漿を分取し 測定まで-2 以下で凍結保存した 6. 測定対象物および測定方法フェキソフェナジンを測定対象として LC-MS/MS 法 により測定した なお 定量限界 (5 ) 未満の測定値は として解析した 7. データ解析生物学的同等性を検討する比較項目として AUCt および Cmax を用いた AUCt は台形法により Cmax は血漿中フェキソフェナジン濃度の最高実測値とし算出した 統計解析は 同等性試験ガイドラインおよび文献 2)~ 4) の方法に準じて行った AUCt および Cmax の試験製剤と標準製剤の対数値の平均値の差の 9% 信頼区間が log(.8)~log(1.25) の範囲にあるとき 試験製剤と標準製剤は生物学的に同等であると判定した なお 第 Ⅱ 期の治験薬投与前に 1 例 入所日に 1 例の中止例が発生 また第 Ⅰ 期投与前の検査において異常値を示した 1 例を統計解析対象から除外した 以上の 3 例を除く 45 例を解析対象とし統計解析を実施した Ⅱ. 結果 1. 薬物濃度および薬物動態試験製剤と標準製剤投与後の平均の時間的推移を Fig 1 および Table 2 に 各被験者における推移を Fig 2 および Fig 3 に 薬物動態パラメータについては Tble 3 に示した 両製剤とも投与後速やかに血漿中フェキソフェナジンが上昇し 試験製剤で 2.1±1.1 時間 標準製剤で 2.2 ±1.1 時間に Tmax に達した また Cmax は試験製剤で 239.34±112.28 標準製剤で 253.1±133.8 であった AUCt は試験製剤で 128.8±437.5 ng hr/ml 標準製剤で 1343.7±527. ng hr/ml であり 血漿中フェキソフェナジン濃度推移は両製剤ともほぼ同様の推移を示した 2. バイオアベイラビリティの比較試験製剤および標準製剤の薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCt および Cmax について試験製剤と標準製剤の対数値の平均値の差の 9% 信頼区間を Table 5 に示した 試験製剤と標準製剤の対数値の平均値の差の 9% 信頼区間は AUCt では log(.84)~log(.97) Cmax では log(.86)~log(1.6) であり いずれも同等性試験ガイドラインで要求される log(.8)~log(1.25) の範囲内であった
3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問題はないと判断された Table1 投与スケジュール 被験者 年齢投与スケジュール BMI ( 歳 ) Ⅰ 期休薬期間 Ⅱ 期 1 26 18.7 2 21 21.8 3 22 19. 4 24 24.3 5 22 24.2 6 25 2.1 7 22 19.4 8 28 21. 9* 25 22.1 1 27 21.1 11 2 19.6 標準製剤 7 試験製剤 12 24 18.9 日 13 29 2.7 1 錠間 1 錠 14 36 21.9 15 22 2.9 16 23 22. 17 32 2.8 18 22 19.6 19 23 23.2 2 23 2. 21 26 19.1 22 24 18.9 23 21 18.6 24** 39 21.2 *: 中止例 **: 統計解析除外例 被験者 年齢 ( 歳 ) BMI 25 22 23.7 26 23 24. 27 26 2. 28 22 21.8 29 21 2.2 3 22 18.6 31* 21 23.3 32 2 21.1 33 24 24.6 34 24 2.1 35 21 19.7 36 23 23.4 37 38 22.5 38 25 18.5 39 22 2.8 4 24 21.4 41 27 21.3 42 22 22.3 43 24 22.4 44 26 18.7 45 22 18.6 46 24 18.9 47 27 18.5 48 21 18.9 *: 中止例 投与スケジュール Ⅰ 期 休薬期間 Ⅱ 期 試験製剤 7 標準製剤 日 1 錠 間 1 錠 Ⅲ. 考察健康成人男子 45 名を対象とし フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK とアレグラ 錠 6mg を 2 剤 2 期のクロスオーバー法で経口投与し 経時的なから求めた AUCt および Cmax について両製剤のバイオアベイラビリティを比較し 生物学的同等性を検証した AUCtおよび Cmaxの試験製剤と標準製剤の平均値の差の 9% 信頼区間は 同等性試験ガイドラインにて規定されている log(.8)~log(1.25) の範囲内であったことより 両製剤は生物学的に同等であると判断した
Fig 1 平均推移 () 35 血漿中フェキソフェナジン濃度 3 25 15 1 5 フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK 標準製剤 ( 錠剤 6mg) Mean±S.D.,n=45 Table 2 フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK および標準製剤の平均 () 薬剤名.5 1 1.5 2 2.5 3 4 6 8 1 12 フェキソフェナジン 平均値 63.36 165.53 19.98 195.59 189.62 176.92 153.37 13.16 64.93 4.2 26.94 塩酸塩錠 6mg TCK ±S.D. 61.1 119.55 11.85 76.42 73.43 78.32 7.2 38.97 23.5 13.65 8.89 標準製剤 平均値 64.65 178. 27.43 214.47 23.2 193.97 172.2 117.46 73.85 46.31 31.9 ( 錠剤 6mg) ±S.D. 64.95 117.15 129.15 131.45 114.26 92.4 71.3 39.2 27.94 2.29 14.5 (n=45) Fig 2-1 各被験者における推移 ( 標準製剤先行群 ) 被験者 No.1 被験者 No.2 4 4 被験者 No.3 被験者 No.4 4 4
Fig 2-2 各被験者における推移 ( 標準製剤先行群 ) 被験者 No.5 被験者 No.6 4 4 被験者 No.7 被験者 No.8 4 4 被験者 No.1 被験者 No.11 4 4 被験者 No.12 被験者 No.13 血 4 漿中 濃度 4 被験者 No.14 被験者 No.15 4 4 被験者 No.16 被験者 No.17 4 4
Fig 2-3 各被験者における推移 ( 標準製剤先行群 ) 被験者 No.18 被験者 No.19 4 4 被験者 No.2 被験者 No.21 4 4 被験者 No.22 被験者 No.23 血 4 漿中 濃度 4 Fig 3-1 各被験者における推移 ( 試験製剤先行群 ) 被験者 No.25 被験者 No.26 4 4 被験者 No.27 被験者 No.28 4 4
Fig 3-2 各被験者における推移 ( 試験製剤先行群 ) 被験者 No.29 被験者 No.3 4 4 被験者 No.32 被験者 No.33 4 4 被験者 No.34 被験者 No.35 血 4 漿中 濃度 4 被験者 No.36 被験者 No.37 4 4 被験者 No.38 被験者 No.39 4 4 被験者 No.4 被験者 No.41 4 4
Fig 3-3 各被験者における推移 ( 試験製剤先行群 ) 被験者 No.42 被験者 No.43 4 4 被験者 No.44 被験者 No.45 血 4 漿中 濃度 4 被験者 No.46 被験者 No.47 4 4 被験者 No.48 4 Table 3 フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK と標準製剤の AUCt Cmax Tmax および T1/2 薬剤名フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK 標準製剤 ( 錠剤 6mg) AUCt (ng hr/ml) Cmax () Tmax 128.8±437.5 239.34±112.28 2.1±1.1 3.2±.4 1343.7±527. 253.1±133.8 2.2±1.1 3.2±.6 (hr) T1/2 (hr) ( 平均値 ±S.D.,n=45)
Table 4 分散分析の結果 パラメータ 変動要因 自由度 平方和 平均平方 分散比 p 値 判定 被験者間変動群又は持込効果 1.23542.23542 6.147.172 * 被験者 / 群 43 1.648384.38335 4.517. * AUCt 被験者内変動薬剤 1.46217.46217 5.4273.246 * 時期 1.189.189.221.8824 残差 43.366173.8516 - - 被験者間変動 群又は持込効果 1.47915.47915 8.2638.63 * 被験者 / 群 43 2.45371.56985 3.6779. * Cmax *:p<.5 被験者内変動薬剤 1.8755.8755.5651.4563 時期 1.167.167.18.9177 残差 43.666233.15494 - - Table 5 フェキソフェナジン塩酸塩錠 6mg TCK と標準製剤の対数値の平均値の差の 9% 信頼区間 項目 AUCt Cmax 試験製剤と標準製剤の対数値の平均値の差の 9% 信頼区間 log(.84)~log(.97) log(.86)~log(1.6) 1) 後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について : 別紙 ( 平成 18 年 11 月 24 日薬食審査発第 11244 号 ) 2) 江島昭他 : 生物学的同等性の試験方法についての解説. 医薬品研究 13:116-1119,1982 3) 江島昭他 : 生物学的同等性の試験方法についての解説 統計解析その 2. 医薬品研究 13:1267-1271,1982 4) 江島昭他 : 生物学的同等性の試験方法についての解説 統計解析その 3. 医薬品研究 15:123-133,1984