古賀市公共空間景観形成ガイドライン 目次 1. 公共空間景観形成ガイドラインとは... 2 (1) 目的... 2 (2) 位置づけ... 3 (3) 内容と対象 景観デザインの基本的な考え方 施設ごとの景観デザイン... 6 (1) 道路... 6 (2) 公園 緑

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Microsoft Word - 景観計画 docx

良好な景観の形成に関する方針 章周辺環境との調和及び建築物等の配置 規模 建築物等の形態 意匠 建築物等の外観の色彩 素材 建築附帯設備 敷地境界部及び敷地内の外構 駐車場 ゴミ置場 その他の外構附帯工作物 屋外照明 屋外広告物 工業 物流系 1 臨海部では 周辺の公園や緑地 水際のオープンスペース

2-1-5 屋外広告物の制限

Microsoft Word - Hよよ _景観形成ガイドライン (最終)●●● - コピー

平成22年 4月21日

甲府市では 風致地区条例の運用基準や地区別景観計画の中でマンセル値により色彩の基準を設けています これは まちなみにおける色彩が景観形成の上で重要な要素になっており 美しいまちなみをつくるためには 個々の建築物や工作物の色彩が互いに秩序を持った関係で構成されていることが大切だからです この解説は 用

Microsoft Word - 09池町通り.doc

Microsoft Word - 03第3章(p37-45)

地区整備築計画建物等に関する事項地区の 細区分 建築物の 敷地面積の 最低限度 壁面の位置の 制 限 建築物等の高さの最高限度 建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限 垣又は柵の構造の制限 拠点サービス地区沿道サービス地区 A 沿道サービス地区 B 沿道サービス地区 C 一般住宅地区 160 m2

Microsoft Word - ●決定⑤地区計画-2.docx

区域の整備 開発及び保全に関する方針地区施設の整備の方針建築物等の整備の方針 (2) 公園 緑地の整備方針地域に親しまれる やすらぎと憩いの空間を形成するとともに 西武立川駅から玉川上水に向けて形成される緑のネットワークの拠点となるよう公園や緑地を配置する (3) その他の公共空地の整備方針各敷地の

景観チェックシート ( 景観資源シート ) 全類型共通 届出者氏名行為の種類 行為の場所届出対象行為有り 無し < 計画地の周辺の景観資源の把握 > 鈴鹿らしい景観形成を考える際に留意すべき事項は地域によって異なるため, 計画地の周辺に身近な自然的景観資源や歴史的 文化的景観資源等の特徴的なものがあ

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長 崎 市 景 観 基 本 計 画

Microsoft Word - 景観形成基準

Microsoft Word - 景観計画 docx

(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

JOB台帳の略件名

位置等 商業系施設 3-1 壁面後退 ( 景観ガイドライン P44) u 壁面を後退させ 緑化を創出させることで より潤いある道路空間が演出できます u イベントが行われる広場のような公開空地を設けることで 地域のにぎわい空間が演出でき 各種イベント等に活用することができます u 公開空地内に植栽等

() 色彩に関する基本的な事項 マンセル表色系による色彩表現色を表現するとき, 一般に 鮮やかな赤 や 淡い水色 などと言ったりしますが, このような表現では, 人によって受ける色のイメージに幅が生じてしまいます そのため, 色を客観的に示す方法として, ここでは マンセル表色系 を使用しています

c7b

本日の説明内容 1 板橋駅西口周辺地区のまちづくり 2 板橋駅西口地区都市計画素案について 1 市街地再開発事業 2 地区計画 3 高度利用地区 4 高度地区 3 今後のスケジュール 1

成田市公共施設景観ガイドラインについて

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外観 ( 屋上設備等 ) 屋上に設備などを設ける場合は 道路などの公共空間から見えないように設置する位置に配慮するとともに 建築物本体や周辺景観との調和を図りましょう 周辺のスカイライン に配慮した形態にしましょう 威圧感や圧迫感を感じさせないよう 屋上緑化や壁面緑化などに積極的に取り組みましょう

区全域共通の景観形成誘導基準 2 景観形成誘導基準自己診断シート 2 ゾーン別の景観形成の方針に配慮した施設計画とする 河川に囲まれた新旧調和の景観ゾーン( 千住 新田など 荒川と隅田川に挟まれた地域 ) ア荒川や隅田川の主な眺望点からの見え方に配慮した 配置 とする イ外壁位置やなどは 隣接地等と

金沢市景観計画

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該当するゾーンを選択してください (最後のページ参照) 区全域共通の景観形成誘導基準 2 ゾーン別の景観形成の方針に配慮した施設計画とする 河川に囲まれた新旧調和の景観ゾーン( 千住 新田など 荒川と隅田川に挟まれた地域 ) ア荒川や隅田川の主な眺望点からの見え方に配慮した 配置 とする イ外壁位置

PowerPoint プレゼンテーション

1 名称と区域 1 名称 袖ケ浦駅海側地区 2 区域 袖ケ浦駅海側特定土地区画整理事業区域 景観形成 推進地区 一般地区 景観計画区域 袖ケ浦駅海側地区位置図 (袖ケ浦駅海側地区は市街地 袖ケ浦駅海側地区は市街地エリア エリアの一部です の一部です) 景観形成推進地区の区域 商業エリア エリア(商業

7-3 上田城南地域 (1) 将来像 ( 将来像 ) 水と緑と多様な都市機能が調和し快適な暮らしの環境が整ったまち ( 基本目標 ) 千曲川をはじめ産川や浦野川 小牧山や上田原古戦場 半過岩鼻など奇景や原風景の残る豊かな自然や農地を大切に保全するとともに 秩序ある都市空間づくりを進めます 良好な住環

4. 都市づくりの目標と方針 4-1 都市づくりの基本理念 地域の個性が輝く生活快適都市 上田 ~ 魅力あるふるさと活気ある交流風格ただようまち ~ 基本理念の意味あい 上田市は 歴史 文化 自然 産業などに恵まれた特色ある地域から成り立っており 各地域が個性を発揮し 連携し合い 交流を促進しながら

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はじめに 大和市では 大和らしい魅力ある景観を創造していくため 平成 8 年にやまと景観マスタープランを策定し これに基づき景観形成施策を展開してきました そのようななか 平成 16 年に景観法が制定され これまで自治体の自主的な取り組みであった景観づくりに関して法的な根拠が整えられました そこで

景観法 景観条例に基づく届出が必要な行為 我孫子市全域で景観法 景観条例に基づく行為の届出が必要です 届出が必要な行為 計画している行為に応じて 必要なページをごらんください 景観計画区域 ( 市全域 特定地区を除く ) 建築物 新築 増築 改築もしくは移転で ア. 高さが 10mを超えるものイ.

II 19 景観資源への見通しに配慮した配置としましょう 公園等 ( ) の配置は 丁字路のアイストップとなる部分や角地の部分など 周囲から見えやすく利用しやすい場所となるようにしましょう ゆとりあるオープンスペースを設けた集合住宅の例 道路に面した部分にオープンスペースを配置した集合住宅の例 公園

山手地区の概要 面積 約50ha 用途地域 工業地域 建ぺい率 60 容積率 200 高さの限度 第一種高度地区 最高限20m 2

藤沢市地区計画運用基準 施行平成 30 年 4 月 1 日 る 本運用基準は, 地区計画の届出に際しての審査の画一化及び円滑化を図るため, 必要な事項を定め 項目第 1 建築物等の用途の制限に関する事項第 2 建築物の容積率の最高限度に関する事項第 3 建築物の建蔽率の最高限度に関する事項第 4 建


Ⅴ.( 仮称 ) 登大路バスターミナル整備計画 3-3. 平面図 (1) 地上部 1 階平面図 33

工作物(2) 一般市街地ゾーン 築物 要素形意色 態 匠 建築物等は 周辺の景観及び街並みと調和する形態 意匠とする 屋根や屋上建築設備 広告物は 建築物と統一感のある一体的なデザインとするなど 軽快なスカイラインを持った景観を形成する 大規模な施設では 配置を工夫したり 適度に分節するなど 圧迫感

区域の整備 開発及び保全に関する方針 地区施設の整備の方針 建築物等の整備の方針 (1) 道路の整備方針区域内外との円滑な交通ネットワークの形成と歩行者等の安全で快適な歩行環境の向上を図るため 街区幹線道路及び区画道路を整備する 生活利便施設や良質な街並みを形成する住宅等の立地を誘導し 地域拠点にふ

草 津 市 景 観 形 成 ガイドライン 71

種別 名称 幅員等 延長又は面積 摘要 道路 区画道路 1 号区画道路 2 号区画道路 3 号区画道路 4 号区画道路 5 号区画道路 6 号区画道路 7 号 12.0m 12.0m 0.8~5.0m 2.6~8.3m 2.25m 1.65m 1.65m 約 790m 約 220m 約 700m 約

俯瞰する眺望景観では 展望所などの視点場から見て 著しく派手な形態 意匠としない 絵になる眺望景観 著しく派手な形態 意匠とは ①周辺の集落の家並みや丘の上の緑の稜線などを遮る突出したもの ②伝統的な家屋が創り出している家並みや緩やかに変化する地形や森林などと調和しない奇抜な形や 単一で巨大な形状の

都市地域 (1) 建築物及び工作物の新築 増築 改築 移転又は外観の変更ア配置 ( ア ) 道路後退 a 都市計画法 ( 昭和 43 年法律第 100 号 以下 法 という ) 第 8 条第 1 項第 1 号に規定する第 1 種住居地域 ( 以下 第 1 種住居地域 という ) 内 ( 国道 18

スライド 1


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第3章 市街地景観の整備

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府中市の位置 東京都のほぼ中央に位置し 新宿から約 22km 人口 : 約 25 万人

金沢都市計画地区計画の変更

c表紙

北部大阪都市計画彩都地区計画 ( 案 ) 北部大阪都市計画彩都地区計画を 次のとおり変更する 1. 地区計画の方針 名称彩都地区計画 位 置 茨木市大字粟生岩阪 大字宿久庄 大字清水 大字佐保 大字泉原 大字千提寺 大字大岩 大字福井 大字大門寺 大字生保 大字安威 山手台一丁目 山手台三丁目 山手

地区計画とは 地区計画とは 土地や建築物の所有者など地区の皆さんが合意を図りながら道路や公園などの配置 建築物の用途 容積率 高さ 色やデザイン等のルールをきめ細かく定め そのルールに基づいて建築行為等を行うことにより より良いまちづくりをすすめる手法のひとつです 地区の特性に応じて必要な項目を選択

目次 1. 市街化調整区域の土地利用方針について... 1 (1) 策定の目的... 1 (2) 方針の位置付け 市街化調整区域の課題 土地利用の方針... 3 (1) 土地利用の基本的な方針... 3 (2) 地区ごとの土地利用方針 開発計画等の調整

なお, は, 次のとおり遵守事項と協議事項から成り立っています 遵守事項 ( 定量的基準 ) 協議事項 ( 定性的基準 ) 良好な景観形成に大きな影響を及ぼさないよう, 景観形成上遵守すべき基準 質の高い景観を形成するよう, 景観形成上協議調整すべき事項 9

2


多摩都市計画地区計画の決定(多摩市決定)

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多摩都市計画地区計画の決定(多摩市決定)

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平井二丁目付近地区のまちづくり 平井二丁目付近地区は JR 平井駅南東部の都市計画道路放射第 15 号線に接し 都市計画道路補助第 120 号線が南北に通るなど 交通利便性が高く 旧中川沿川のうるおいある環境を感じられる地区です しかし 耕地整理により形成された街区内などでは 幅員 4.0m 未満の

中井町緑の基本計画(概要版)

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目次 1 対象区域 1 2 対象区域ごとの建築物の景観形成基準 2 (1) 第 1 地区 2 (2) 第 2 第 3 地区 21 3 柴又地域文化的景観に一定の配慮がある とは 26 4 申請手続き 27 ( 参考 ) 罰則規定 29

金沢市景観計画

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神宮外苑地区計画

絶対高さ制限を定める高度地区についてのQ&A

PowerPoint プレゼンテーション

1601弘前市景観計画ガイドライン_CS6.indd

- 2 - 及び規模 地区の 区分 地区施設の配置 道路 3 路線 幅員 ~ m 延長 約 m 公園 1 箇所 面積 約 m2 公共緑地 4 箇所 面積 約 m2 2 箇所 幅員 m 面積 約 m2 ( の幅員 mのうち 以上を高木植栽空間とする ただ し 門柱 門扉等の施設については この限りでは

第 2 章建築の基礎知識 第 1 章では 都市計画法を中心に 一定の範囲や広域的な観点から設けられたまちづくりのルールを解説しました 第 2 章では まちづくりの中でも 建築物の建築 に焦点を当てて それに関するルールを解説します 1 建築基準法 皆さんは 庭など敷地にゆとりがあり 頑丈で 部屋には

計画的な再開発が必要な市街地 特に一体的かつ総合的に再開発を促進すべき地区 市町名 名称 再開発の目標 土地の合理的かつ健全な高度利用及び都市機能の更新に関する方針 特に整備課題の集中がみられる地域 ( 課題地域 ) 地区名 西宮市 C-4 浜脇 ( 約 175ha) 居住環境の向上 良好な都市景観

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都市景観における 屋外広告物に関する ガイドプラン 2017 大阪市

地区 の 区分 名称駅南口西街区地区駅南口東街区地区駅北口駅前広場地区 面積約 2.8 ha 約 0.6 ha 約 1.7 ha 用途地域による用途制限の他に 次の各号に掲げる建築物は 建築し てはならない 地区整備計画 建築物等に関する事項 建築物の 用途の制限 1. 指定道路 1 に面する敷地の

目 次 Ⅰ 豊四季台景観重点地区について 1 景観重点地区とは 1 2 重点地区の目標 2 3 景観形成の基本方針 3 Ⅱ 空間形成の基準 1 景観形成の考え方 4 2 主要道路 (1) 中央通り 6 (2) 県道柏流山線 7 (3) 柏駅西口線 8 (4) 吉野沢高野台線 (4)-1 柏駅西口線か

景観形成基準の事例資料集

第 4 章 良好な景観の形成のための行為の制限 4-1 景観計画による行為の制限 良好な景観の形成に関する方針を踏まえ これを実現するため 景観計画区域内のA~Gにおける景観に特に大きな影響を及ぼすと考えられる規模の築行為等および景観計画重点区域内の築行為等を対象とし 築物等の意匠 形態 色彩 緑化

景観形成ガイドライン作成

平井二丁目付近地区地区計画の概要 平井二丁目付近地区地区計画の概要をお示しします 詳しくは 同封の 平井二丁目付近 地区計画書 計画図 をご確認ください 地区計画の区域地区計画の対象区域は 下図のとおりです 平井二丁目付近地区 ( 約 28.6ha) 江戸川区平井一丁目 平井二丁目及び 小松川三丁目


交通結節点が備えるべき機能を整理すると 最も基本となるものとして があり これに加えて 都市機能の誘導 集積を促進させ 都市内の中心的な拠点地区を形成する 及び 都市の顔 となる 交通結節点の計画 整備の検討においては 先に示した の三種の機能がそれぞれ交通結節性 人の交流や景観等の面で役割を果たし


第 Ⅱ ゾーンの地区計画にはこんな特徴があります 建築基準法のみによる一般的な建替えの場合 斜線制限により または 1.5 容積率の制限により 利用できない容積率 道路広い道路狭い道路 街並み誘導型地区計画による建替えのルール 容積率の最高限度が緩和されます 定住性の高い住宅等を設ける

(案)

地区計画パンフレットP.1

西が丘地区の景観づくり 景観形成重点地区西が丘地区 東京都北区

2. 良好な景観の形成のための行為の制限 行為の制限の基本方針 本町の特徴的で多様性に富む景観の保全 創出を図り 地域全体として調和の取れた景観が形成されるよう 地域の特性を考慮した上で必要な行為の制限を行い 適切な規制 協議 誘導に努めます 1 建築物の建築等に関する行為の制限 規模 配置 地域景

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( 公開 半公開通路 ) 歩行者の利便性の向上を図るため 屋外に加え屋内をも対象にスカイウェイとの接続を考慮した公開または半公開の通路を確保する ( 防災用通路 ) 高層 複合施設への消防車の寄り付き 消火活動 防災避難のため敷地内通路を確保する ( サービス車両の進入路 ) 公道上での寄り付きを極

播磨科学公園都市・アーバンデザインガイドライン

地区整備計画書地区整備計画建築物等に関する事項地区の区分 地区の名称地区の面積 建築物等の用途の制限 建築物の敷地面積の最低限度 建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合の最高限度建築物の建築面積の敷地面積に対する割合の最高限度 壁面の位置の制限 独立住宅地区 A 約 21.9 ha (1) 長屋

Transcription:

古賀市公共空間景観形成ガイドライン 目次 1. 公共空間景観形成ガイドラインとは... 2 (1) 目的... 2 (2) 位置づけ... 3 (3) 内容と対象... 4 2. 景観デザインの基本的な考え方... 5 3. 施設ごとの景観デザイン... 6 (1) 道路... 6 (2) 公園 緑地... 9 (3) 水辺 河川... 11 (4) 公共建築物... 12 1

1. 公共空間景観形成ガイドラインとは (1) 目的 古賀市は 海 平野 丘陵地 山林と連なる変化に富んだ地形を有した都市です こうした自然条件を活かしながら 地域の人々の暮らしの積み重ねによって 松林や河川などの豊かな自然環境と市街地環境が共存する良好な景観が生み出されてきました これまで守り育てられてきた風土や景観を大切にし 地域を愛する人々や子どもたちを育んでいくことは 古賀市に生活する私たちの大きな使命だと考えられます 将来 子どもたちや孫たちに誇れる郷土を残していくために 平成 23 年度に 美しいまちづくりプラン を策定しました このプランを通じて 市民 事業者 行政が共働して 古賀市の景観を守り育て 創り活かしていく取り組みが進められています 特に公共施設は 大規模なものが多く 景観への影響が大きな存在です 道路 公園 緑地 水辺 河川などは都市の骨格であり 多くの人々が利用する空間です 公共施設の整備においては 景観に配慮した整備を先導的に進めることで 市民や事業者の景観まちづくりへの関心を高めることが求められています このガイドラインは 景観法 や 美しいまちづくりプラン を踏まえ 公共施設などの景観デザインを適切に誘導し 古賀市の良好な景観まちづくりを推進することを目的としています 2

(2) 位置づけ 古賀市では 平成 23 年度に 美しいまちづくりプラン を策定し 今後の景観まちづくりの基本方針を定めました 美しいまちづくりプラン では 景観まちづくりの推進方策の一つである景観まちづくりのルールづくりの中で 景観ガイドラインの策定が位置づけられています 具体的には 古賀市が率先して景観形成を図るため 公共建築物の形態意匠や色彩の基準 周囲のオープンスペースや道路の植栽などのガイドラインを定め 実践していきます また 住宅や工場などの環境についても 古賀市の風土を踏まえた樹種や植栽デザインなどを推奨する緑化ガイドラインを定めて 協力を呼びかけていきます という方針が掲げられています 本ガイドラインは この方針に基づき作成するものです 古賀市美しいまちづくりプラン ( 平成 23 年 ) 景観まちづくりのきっかけづくり 景観まちづくりの場づくり 景観まちづくりのルールづくり 1 景観まちづくりセミナー 2 景観まちづくり教育プログラム 3 景観まちづくり体験フィールド 1 市民活動団体の連携の場づくり 2 行政連絡会議の設置 3 景観協議会の設置 4 周辺自治体との広域連携の場づくり 1 景観計画の策定 2 景観ガイドラインの策定 3 屋外広告物条例の策定 4 環境保全に関する制度づくり 古賀市公共空間景観形成ガイドライン 3

(3) 内容と対象本ガイドラインは 地域の景観形成に先導的な役割を果たす公共施設整備の指針として 景観デザインの基本的な考え方を示すもので 道路 公園 緑地 水辺 河川 公共建築物などの各施設ごとに景観デザインにおける配慮すべき事項をまとめています ガイドラインの利用者は 主に公共施設等の事業者 設計者及び施工者 施設管理者を対象としており 新築 改築 増築 修繕などを行う際に 古賀市の景観デザインの考え方などを認識するとともに 取り組むべき景観デザインの手がかりとして活用すべきものです また 景観は公共施設と民間の施設などが一体となって形成されるものであることから 民間の施設においても利用を推奨します 公共施設等の事業者 設計及び施工者 施設管理者 市民及び民間事業 古賀市公共空間景観形成ガイドライン 古賀市の良好な景観形成の実現 4

2. 景観デザインの基本的な考え方 公共空間の景観形成による美しいまちづくりを進めるため 本ガイドラインでは 以下の4 項目を基本的な考え方としています 1 自然と緑を活かした景観づくり公共空間のデザインにおいては 自然や田園風景 街なみの連続性などを阻害しないことが重要であることから 背景となる自然との調和や 風景の変化 連続性を生み出す緑を活かした景観づくりに努めます 2 地域の特性に配慮した景観づくり古賀市の風土や生態系など 地域の特性に配慮するため 自然石や木材などの自然素材を用いることで 周辺環境となじむ景観づくりに努めます 人工素材を用いる場合でも 可能な限り 自然に存在する色彩を用いるなどの配慮を行います 3 長く親しまれる景観づくり公共施設は一般的に耐用年数が長く 不特定多数の人が利用するものであることから 安全 安心という公共施設の機能を満たしながら 長く親しまれる 飽きのこない形状 素材 色彩等の採用に努めます 4ユニバーサルデザインの理念に基づく景観づくり年齢や性別 障がいの有無や社会的立場などに関わらず すべての人にとって安全で快適な施設として整備します また 使いやすさはもとより 美しさの視点も考慮したデザインとなるよう努めます 公共施設のサインにおいては 周辺環境に調和したわかりやすいサイン整備に努めます 5

3. 施設ごとの景観デザイン (1) 道路 道路は 都市の骨格であるとともに 市民生活とも関わりの深い公共施設です 景観デザインにおいては 風景の 地 となる要素であることから 主張しすぎないシンプルなデザインが求められます 市街地においては 地域のイメージを特徴づける重要な要素となることから 街路樹やストリートファニチャー 1 など 周辺施設との調和に配慮した景観デザインとなるよう取り組む必要があります 地域の特性に配慮した歩道景観デザイン 骨格となる主要な幹線においては シンボル空間となるような街路樹の配置に努めます 主要な交差点などでは 空いたスペースを活用した花壇などによって 特徴ある空間デザインづくりに努めるとともに 市民と共働で管理を行うなど 地域と連携した取り組みに努めます JR 駅周辺などの道路では 賑わいを演出する空間デザインづくりに努めます 道路環境の風格を引き立てる街路樹 花壇のある交差点など特徴ある空間づくり プランターを活用した賑わいの演出 1 ストリートファニチャーとは 道路上に置かれている備品の総称 街灯 案内板 彫刻 噴水 ベンチ 電話ボックス バス停など 歩行者に快適さを提供するための設備 6

景観を引き立てる舗装デザイン 舗装については 主張しすぎず 周囲になじむ落ち着いたデザインとなるよう努めます 歩道などの路面については 経年変化を考慮した素材選びが必要です また 高彩度 高明度の色彩は極力避け 自然色に近い脱色アスファルトを用いるなど 周辺環境との調和に配慮するよう努めます 点字ブロックは 輝度比( コントラスト ) を 2.0 以上に保つことを前提としながら 彩度や太陽光の反射を抑えた素材の活用や 舗装と点字ブロックの色相差に配慮することで 景観面と機能面の両立に努めます 脱色アスファルトと反射を抑えた点字ブロック素材の活用 石材の素材感を活かした歩道 歩行者の安全性 快適性への配慮 歩行者の多い市街地の道路などでは 誰もが安全で快適に利用できるように 電柱などの後退による歩道空間の確保や段差の解消 歩車分離 滑りにくい舗装整備に努めます 住宅街においては 敷地後退や舗装の工夫などによって 安全な歩行空間の確保に努めます 電柱の後退による歩道空間の確保 歩道と車道の段差解消 7

周辺と調和したストリートファニチャー ストリートファニチャーは 都市空間における人々の活動を助けるとともに まちを演出する要素ともなります 本来の役割を果たす機能的なデザインを基本としつつも 周辺環境との調和や維持管理等にも配慮したデザインとなるよう努めます 自然素材の活用やそれぞれの地域でなじみの深いモチーフを用いるなど 親しみやすいデザインとなるよう努めます 街灯と信号機が一体化したシンプルな構造のデザイン 電柱と電灯の色彩の統一 周辺環境に配慮したサイン 舗装等と調和した色彩を用いたベンチ シンプルなデザインのサイン 8

(2) 公園 緑地 公園 緑地は 人々の憩い 交流などの空間であり 緑を身近に親しむことができる場所です 地域住民が愛着を持ち 親しまれる施設づくりが重要であることから 日常的に市民の声を反映できる仕組みづくりや 地域と連携した維持管理の方法を構築する必要があります 地域の特性に配慮した緑化 古賀市は うみ まち さと やまのそれぞれの連なりがある地域であることから 公園 緑地ではそれぞれの地域の植生に配慮した緑化を進めます 施設の性格や敷地の状況を把握しながら 中高木 低木 地被類など多様な緑の効果的な導入に努めます 緑の配置を行う際は 人の動線に配慮しながら 視界を妨げないオープンな空間づくりに努めます 松林を活かした公園整備 海を感じさせるハマボウの植栽 視界を妨げにくい緑の配置 中高木 低木 地被類などの効果的な導入 9

人々の活動に配慮した憩いの場づくり 周辺の環境や経年の変化によって 公園 緑地の役割も異なることから 子どもの遊び場から 大人の休憩スペースなど 想定される利用実態に応じた空間づくりに努めます 地域住民に親しまれる公園 緑地とするために オープンスペースに花壇などを整備し 市民と共働で管理を行うなど 地域と連携した取り組みに努めます オープンスペースの花壇整備 木陰で座れる環境整備 歴史公園として遺跡を保存 整備 眺望を楽しめる施設などの整備 10

(3) 水辺 河川 水辺 河川は 市街地と田園地帯や山林をつなぐ都市の骨格となっているとともに 市民が身近に自然を感じられる憩いの場ともなっています また 多様な生物の生息空間としても貴重な場所となっています このため 水辺 河川は自然などの周辺環境に十分配慮を行いながら 市民が親しみをもてる景観づくりを行っていく必要があります 自然などの周辺環境に配慮した水辺環境づくり 古賀市の河川は 大部分が県営河川ですが 改修が行われる際は 自然の形状や生態系を尊重しながら 河道の直線化や河床の掘削などはできるだけ行わないように働きかけます せき 護岸や堰などの施設は 周辺の景観と調和を図るため 明度 彩度を低く抑えるとともに 自然素材の活用に努めます 護岸の周辺では既存樹木の保全に努めるとともに 地域の要望などに応じ郷土樹種による植樹を行うなど 良好な河川環境の維持 形成に努めます 緩勾配の河岸や 階段 坂道など 水際まで降りられる環境の維持に努めます 景観上の拠点と考えられる場所においては 市花のコスモスを活かした環境整備を行うなど 市民に親しまれる河川環境づくりを行います 水辺の眺めを楽しめるなど市民の憩いの場となる環境の維持に努めます 桜並木の護岸の保全 護岸のハマボウの植栽 水際まで降りられる環境の維持 水辺の眺めを楽しめる環境の維持 11

(4) 公共建築物 公共建築物は地域の街並みを構成する要素の一つであり 市民の利用も多い施設です なかでも大規模な施設は 周辺環境に与える影響も大きいことから 景観形成の先導的な役割を担う必要があります 立地する地域の特性を踏まえながら 市民に親しまれる景観づくりを目指していくことが必要です 周辺環境に配慮した形態 デザイン 大規模な施設は 周辺環境に与える影響も大きいことから ランドマークとなる建築物以外は シルエットやスカイラインに配慮した形態 デザインとなるよう努めます また 背景となる緑地を意識して 建物が小さく見えるように 分棟化や高さに配慮したデザインとなるよう努めます 単調な外観となりがちな大規模な建築物は 壁面を水平方向 垂直方向に分節化することで圧迫感を軽減させ まちのスケールと調和したデザインとなるよう努めます 敷地境界から建築物の壁面の位置を後退させるなど 道路などから景観に圧迫感を与えないように 建物の配置に配慮します 背景となる緑地を意識した分棟化 ( イメージ ) 分節化による建物壁面の変化 分節化による建物壁面の変化 ( イメージ ) 12

壁面の色彩コントロール 公共建築物では 壁面に白色を用いたものが多くみられます 白色は無彩色ですが 明度が高く 光の反射率が高いため 大規模な壁面の場合 周辺環境との調和を乱してしまいます 建築物の補修や塗り替えの際には 明度と彩度の低い色彩を用いるなど 周辺環境になじむよう配慮します 彩度が5を超える高彩度の色彩は非常に目立ちやすく 強力なアクセントとなります これらの色彩を使用する場合は 小面積に留め サインや標識 催事ののぼり旗などに限定し 壁面や屋根の色彩には用いないようにします また 使用する色数についても できるだけ少なくします それぞれの建築物が多種多様な色彩の外壁を用いると まとまりのない雑然とした景観となってしまいます 一方で 全ての外壁の色彩を統一してしまうと 変化のない魅力に乏しい景観となってしまいます 色彩には 調和しやすい組み合わせがあることから 外壁や屋根などを同じ色相でそろえたり 類似色やトーン ( 色調 ) をそろえることで 周囲の街並みと調和した環境づくりに努めます トーン ( 色調 ) とは 明度と彩度の似ている色彩の組み合わせのこと 目立つ色 利用場所 利用イメージ 高彩度色 交通標識祭事の幟公共サイン交通機関の車両 など 変化 一時的 小面積 強い対比 動的 アクセント 中彩度色 樹木の緑モニュメント建築物のアクセント建築物の低層部など 低彩度色 デッキ 橋 歩道橋ストリートファニチュア路面舗装 建築物の屋根建築物の中高層部など周囲になじむ色 不変 長期的 大面積 弱い対比 静的 ベース 類似色でそろえる配色 色相でそろえる配色 低層に中彩度色 高層に低彩度色を用いた例 トーンでそろえる配色 13

色彩の考え方 色には様々な表し方がありますが 景観の色彩においては 色彩を正確かつ客観的に表わす必要があるため 物体の表面色を 色相 明度 彩度 という 3 つの属性で表す表示体系の マンセル表色系 を採用します 3 つの属性 色相は 色合いの違いを表し 図のように 赤 (R) 黄赤(YR) 黄 ( Y) 黄緑(GY), 緑 (G) 青緑 (BG) 青 ( B) 青紫(PB) 紫 ( P) 赤紫(RP) の 10 種類の基本色で表示します マンセル色相環は 現在実用として用いられているのは 10 色相 (Y, YR, R ) のそれぞれを 4 分割にした 40 種 =40 色相か 2 分割にした 20 種 =20 色相です 明度は 色の明るさを表わし 明るいほど数値が大きく 暗いほど数値が小さくなります 無彩色 ( 白 ~ 灰色 ~ 黒 ) の場合は N9.5 のように頭に N をつけて表示します 彩度は 色の鮮やかさを表し 無彩色は 0 で鮮やかさが増すほど数値が高くなります マンセル色相環 マンセル色立体 マンセルの表記方法 マンセルは 色相にヒュー(Hue) 明度にバリュー(Value), 彩度にクロマ (Chroma) と いう言葉をあて それぞれの略号を用いて値の HV/C と表記します 9 8 7 6 5R 色相 (hue) 明度 (value) 5 4 3 2 1 N 0.5 1 1.5 2 2.5 3 4 5 6 7 8 9 10 12 14 彩度 (chroma) 平成 21 年度に実施した景観基礎調査では 古賀市内の公共建築物の色彩について明度は 4~9 彩度は 1~10 の範囲にあるという結果が出ています 14

壁面素材の配慮 建築物の低層部の外壁など 歩行者の視線に近いところでは 自然素材を用いることで 建物や空間の質の向上を図ります 自然素材が使用できない場合においても 木材や石材 砂や土などの自然素材に近い色あいを用いることに努めます ようへき 擁壁は 垂直に近い面として現れ 目立ちやすい構造物であることから 素材感のあるものを用いたり 路面と統一感のあるデザインとすることで 周辺環境との調和や圧迫感の低減に努めます 木材等の自然素材の活用 路面と擁壁のデザインの統一感 道路に面する敷地の緑化 大規模な公共建築物の壁面は 隣接する道路などに圧迫感を与えることから 壁面位置の後退や壁面などの緑化に努めることで 周辺環境との調和や圧迫感の低減に努めます 壁面の位置の後退と緑化 敷地と壁面の緑化 15

オープンスペースの活用 公共施設のオープンスペースは 緑化を行うとともに 人々が座れる環境の整備や憩いの場づ くりに努めます 松の木陰と噴水による憩いの場づくり オープンスペースの緑化 駐車場の活用 駐車場は 大規模になりすぎないよう 適度に分節 分割を行い 樹木などを活用して周囲の修景を行うよう努めます また 芝や透水性の高い舗装材を活用するなど 緑の活用に努めます 駐車場の緑化 1 駐車場の緑化 2 周辺環境になじむサイン整備 施設の案内表示やサインを多用すると 煩雑な印象を与えることから できるだけ必要最小限に集約するように努めます サインは 高彩度のものが多く 非常に目立ちやすいため 小面積に留めるように努めます 16