九州旅客鉄道株式会社熊本総合車両所を訪問して 今回は 鉄車工のJRIS 整備ブレーキ部会の見学会として 今年 3 月に九州旅客鉄道株式会社殿のご厚意により熊本総合車両所を見学させて頂きましたので その時の内容を車両工場訪問記事としてご紹介する事と致します 九州旅客鉄道株式会社 熊本総合車両所 は 熊本県熊本市南区にあり 熊本駅から鹿児島本線富合駅で下車 徒歩 15 分ほどに位置しています熊本総合車両所は JR 西日本の博多総合車両所 JR 東日本の新幹線総合車両センター ( 仙台 ) に次いで全国で3 番目となる 新幹線総合車両基地 として2011 年 11 月 22 日に発足し 新幹線 800 系並びにN700 系の仕業検査 交番検査と台車検査 全般検査を行う工場設備を併せ持った基地です 総合事務所 総合事務所玄関ホールの掲示物 熊本総合車両所の全景 総合事務所の玄関を入ると壁にかわいい掲示物があったので聞いてみると 社会貢献として毎年秋に車両所内を一般公開する 新幹線フェスタin 熊本 や 平日火曜日から木曜日に行う車両所内の一般見学に関するもので女性社員の手による制作とのことでした 女性らしい細やかな気配りがなされており 新幹線を間近に感じられる工夫が随所に見られました 多くの家族連れで小学生等の参加があり 参加者の名前の木やお礼の手紙が掲示されていました 47
総合事務所の会議室にて熊本総合車両所末永所長様 城水副所長様 本村助役様との名刺交換のあと城水副所長様から熊本総合車両所の概要について説明がありました 会議室での概要説明の様子 車両所の概要 (1) 基地諸元周囲 : 長さ約 1.4km 幅約 150m 敷地面積 : 約 20 万 m2 建物面積 : 約 5.7 万 m2 収容編成数 :13 編成 (2) 設備内容 (8 両対応 ) 着発留置 :13 線引上 / 解体 / 台車振替 / 臨時修繕 : 各 1 線 [ 検車庫 ] 全検整備線 :1 線交番検査線 :2 線仕業検査線 :2 線車輪転削線 :1 線 (3) 組織所長の他 以下の組織となっています 総務課 : 企画 安全 経理 資材 業務計画 設備管理技術課 : 品質管理 教育計画 検査 ( 全台検 ) 品質管理課 : 工程管理 信号 庫付 交番検査 仕業検査 熊本駅派出グループ会社 :4 社 (4) 整備車両 800 系 ( さくら つばめ ) は6 両編成で 博多 ~ 鹿児島中央間を最高速度 260km/hで運行しており 8 編成がここ熊本総合車両所に所属しています 元々は9 編成でしたが 2016 年 4 月 14 日の熊本地震で脱線した1 編成が営業できなくなり 6 両のうち3 両を解体し 残り3 両を教育用として活用する計画とのことでした N700 系 ( みずほ さくら つばめ ) は8 両編成で 新大阪 ~ 博多 ~ 鹿児島中央間を最高速度 300km/h( 九州新幹線内は 260km/h) で運行しており 11 編成がここに所属しています (5) 検修業務 1 仕業検査高速走行を終えたパンタグラフや台車 足回りを中心とした部品の点検 ブレーキ装置やドア開閉装置等 重要な保安機器の動作チェックを行います 検査は主に仕業検査線で行います ( のべ4000 編成 / 年 ) 2 交番検査パンタグラフ 駆動装置 電気制御装置 ブレーキ装置等の機器カバーを取り外し 内部の状態 動作 機能の検査確認を行います 検査は交番検査線で行います ( のべ230 ~ 240 編成 / 年 ) 3 台車検査特に車輪周りの検査には万全を期し 超音波探傷と磁粉による探傷を行います 台車の着脱は台車振替線 検査は主に台車検修場で行います ( のべ10 編成 / 年 ) 4 全般検査細部について 車体と機器の検査を行い新車さながらの状態にします 機器の動作確認試験やATCの機器検査等を行うことによって安全が保たれています 検査は主に台車は台車検修場 車体は車体検修場で行います ( のべ10 編成 / 年 ) 48
5 各修繕職場各修繕職場では 台車検査や全般検査で車両から外した機器を洗浄 分解 部品交換や手入れ 組立 塗装を行います 車両所内の見学 会議室でご説明頂いた後に 車両所内を台車検修場 車体検修場 車体塗装場 検車庫の順で見学させていただきました 台車検修場へ行く途中で 熊本地震の痕跡が見られました 建屋の基礎はしっかりしているので沈下もなく支障はないとの事ですが 車両所が建設される前は この一帯が田園であったため 建屋以外の部分で地盤沈下が発生した痕跡が残っているとのことでした 各検修場の間には トラバーサがあります (2) 台車検修場台車検修場に入ると台車検修の流れ図や編成単位の台車上げの説明図 さらに最近では外国人の見学者も多いとのことで英語版の説明図等 見える化が行われていました 台車検修場には台車振替線があり 6 両及び 8 両編成を一挙に車体上げできる設備があって編成単位で台車を仮台車に振り替える作業が行われています 台車振替線 熊本地震による地盤沈下跡 (1) 検修の流れ検車庫 台車検修場 車体検修場 車体塗装場 車体検修場 台車検修場 検車庫の順で解体 検査 修繕 組立が行われています 車両から抜いた台車は 隣接するライン化された修繕場に移動して洗浄 分解後 各部品の修繕職場にて修繕 検査して再度 組立 試験 塗装工程を経て台車検修が完成します 又 2 階は約 7,000 点の部品倉庫とのことでした 台車検修場 トラバーサ (3) 車体検修場車体検修場 1 階では 装置類の検修を行い 49
2 階では各部品の検修が行われていました 台車検修場同様に通路も広く 非常に整理整頓が行き届いていました を発見したら すぐ横で再はんだを行うとのことでした なお 必要によりプリント基板は13 年程度で新品交換を計画しているとのことでした 車体検修場 1 階主制御装置 電源装置等の電子品装置については 交番検査や全般検査で自動試験にて試験を行っているので全般検査では車両から降ろして分解 検査 組立は実施していないそうです 上記の検査で不具合が出れば 不具合部を調査の上 メーカに返却して原因調査 対策及び現品の修繕を行うとのことです 2 階の各部品検修場においては 組み忘れ防止のためにパンタグラフ1 台分の部品を揃えた部品配膳ラックが用意されていました (4) 車体塗装場車体塗装場は 車体塗装場 AとBがあり この2 棟間にもトラバーサがありました 車体塗装場では 車体検修場からの車両を外板補修 外板自動研ぎ 手研ぎ 洗浄 水切り マスキング 車体乾燥 車体塗装 補修塗装 シール貼りの工程を経て車体が完成し 車体検修場に送られます その後 車体検修場で各機器や車内部品等のぎ装が行われて 台車検修場に送られて仮台車から本台車に取り換えが行われて車両が完成します そして 検車庫に送られて完成試験を実施後 本線走行試験を経て営業線投入となります 外板自動研ぎ装置 部品配膳ラック この職場で組み上がった各部品は 試験機で検査しておられました 最近取り組みを始められたプリント基板の はんだクラック を見つけるために はんだ部を360 度拡大表示できる装置を見せていただきました この装置ではんだクラック ロボットによる車体自動塗装場 50
いるとのことでした 検車庫車体塗装場から総合事務所に行く途中の臨修線で教育用車両 3 両 ( 前述の熊本地震で脱線した車両を活用 ) とFGT 車両がありました (3)JR 九州の車両では木製が多く使われているが何か御苦労はありますか その他でご苦労されていることはありますか 800 系では経年変化で壁板等のひび割れが発生している場合もあり その補修のための在庫がない場合は 特注しているとのことでした 他にブレーキ関係では 当初はディスク板の熱亀裂の発生等があったが 材料の変更によって改善されているとの話題がありました 教育用車両 3 両と FGT 車両 集合写真 質疑応答 総合事務所に戻って会議室で質疑応答を行いました (1) 他の新幹線総合車両基地との情報交換について情報交換については JR 東海やJR 西日本との間で不具合情報の共有等を図っており 本年からは他社と合同で脱線 復旧対応訓練への取り組みもしておられているとのことでした さいごに 今回は お忙しい中にもかかわらず 車両所見学をお受入れ頂き 貴重な機会を得る事ができました 九州新幹線の安全安定輸送に貢献する熊本総合車両所の素晴らしい検査設備を見学させて頂き いろいろお話しを頂戴できました事に感謝しております ありがとうございました ( 鉄車工北川好弘 ) (2) 小集団活動について業務 サービスやフリーなテーマで課単位 地域単位及びJR 九州での発表会を行われて 51