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成人看護学周手術期実習に関する 研究動向の分析 学生 指導者 教員を対象とした研究に焦点を当てて 昭和大学大学院保健医療学研究科水谷郷美

はじめに 現在 時代や国民のニーズの変化に伴い 医療の質の一層の向上が求められており チーム医療の一翼を担う看護師を養成する看護基礎教育の充実は看護の質を高めるために重要である 看護基礎教育の中でも実習は 知識を臨床能力に結び付けるためにあり 基礎看護学 成人看護学 小児看護学 母性看護学 精神看護学 老年看護学 在宅看護学から構成されている 実践能力を高め 患者の健康に寄与する看護師を育成するためにも実習を効果的行うことを目的とした多くの研究が行われている 2

実習 ( 看護学実習 ) とは 講義 演習で学習した看護学の知識 技術を 病院など実際の場面での体験を通して学ぶ授業方法の 1 つ 3

看護学実習研究の対象 指導をうけながら看護を提供する 学生 患者の状態や治療方針を考慮して 患者ケアの直接指導を行う 患者 教員 それぞれの立場で学生に有効な実習になるように調整を行う 指導者実習施設の看護師で 実習を効果的にするために 指導 評価を主体的に行う 4

周手術期実習とは 手術前 中 後にある患者を受け持ち 臨床での看護実践に参加し 個々の患者に必要とされている看護を実践する実習 5

用語の整理 看護基礎教育 基礎分野 専門基礎分野 専門分野基礎看護学基礎看護学実習 成人看護学 老年看護学 小児看護学 母性看護学 精神看護学 成人看護学実習成人期の対象を受け持ち 周手術期 回復期 慢性期 終末期など健康の状況にあわせた実習を行う 老年看護学実習 小児看護学実習 母性看護学実習 精神看護学実習 統合分野在宅看護学在宅看護学実習 6

研究目的 本研究では 成人看護学周手術期実習の 学生 指導者 教員の関係に焦点を当てた研究の動向を明らかにしていくために 1 看護学実習研究における成人看護学周手術期実習の位置づけ 2 周手術期実習の研究の動向 3 学生 指導者 教員を対象とした研究の動向について明らかにすることを目的とする 7

方法 1 看護実習の論文に関して医中誌データベースによる 1983 年から 2007 年までの 26 年間に発表された論文の書誌データ (= 題目 ) をテキストマイニングソフト Text Mining Studio Ver 3.0 により分析する 8

方法 2 研究対象 = 医学中央雑誌 医中誌とは 医学中央雑誌 の略で 日本国内発行の医学 薬学 歯学及び看護学 獣医学などの関連分野や大学の紀要 研究報告など 定期刊物約 4700 誌から 約 560 万件の文献を収録した医学文献データベースである 9

方法 3 医中誌のアドバンスド モード (Advanced mode) で 1983 年 ~2007 年の間の文献を対象として 看護 *( 学生 + 実習 ) の条件式で検索し, 論文題目を分析して行く 文献の研究の動向を知ることを目的にしているため 論文の種類は原著論文と会議録のみとする 原著論文 : 対象分野の研究 開発 調査で独創性 新規性のある文献で 目的 対象 方法 結果 考察 結論で構成され 要旨 要約があるもの 会議録 : 学術集会 会議などの発表報告 10

検索式 件数 #1 ( 看護 or 看護 ) 292546 #2 実習 17250 #3 #1 or #2 10648 #4 #3 and 原著論文 会議録 8273 最終の検索件数 11

表 1 項目 テキストの基本情報 値 総行数 ( 論文数 ) 8273 平均行長 ( 文字数 ) 24 総文数 13449 平均文長 ( 文字数 ) 14.8 述べ単語数 56418 単語種別数 9581 12

図 1 看護学実習年数別発表数 13

図 2 看護学実習単語頻度解析 14

結果 1 看護学実習 年代別発表数 単語頻度解析 図 1 年代別発表数の結果 看護学実習に関する研究は 1995 年から 1999 年までは一時停滞したが 年々増加していることがわかる 2002 年は特に増加が著しい 図 2 単語頻度解析の結果 看護学実習研究の内容が 学生 ( 看護学生 ) を対象として 実習 や 臨床 ( 臨地 ) 実習 を 検討 分析 研究 していることが伺える 15

図 3 看護学実習係り受け頻度解析 16

結果 2 看護学実習係り受け頻度解析 図 3 看護学係り受け頻度解析の結果 看護学実習の研究の内容が 専門科目である各看護学実習 について多く見られており 次いで 学生 の 自己評価 や 今後の課題 現状の課題 を研究している内容が見られる 17

図 4 専門科目単語頻度解析 18

結果 3 専門科目単語頻度解析 看護学実習の研究の中で 専門科目である各看護学実習 についてさらに動向を分析するため 専門科目をグルーピングし その中で単語頻度解析を行った 図 4 専門科目単語頻度解析では 基礎看護学 が最も多くなっており 次いで 母性看護学 が多い 成人看護学 は成人期という幅広い対象を扱っているにも関わらず 3 番目に位置している 19

図 5 専門科目内の手術単語数 20

結果 4 専門科目内の手術単語数 図 5 専門科目内の手術単語数の結果 手術に関して扱っている研究は 成人看護学 がほとんどであった 母性 小児 老年看護学 でも手術を受ける患者を実習の対象とする場合があるが 老年看護学 の 2 件のみであり これらの専門科目では手術についての研究が尐ないことが伺える 21

図 6 周手術期実習年代別発表数 22

結果 5 周手術期実習年代別発表数 周手術期実習 について動向を知るために 手術 という単語を含む文献のフィルタリングを行った 文献は 176 件であった 図 6 周手術期実習関連年代別発表数の結果 1982 年から 1999 年まで 10 件 / 年とあまり研究が行われていなかった しかし 2000 年から年々増加している 23

図 7 周手術期実習単語頻度解析 24

結果 6 周手術期実習単語頻度解析 図 7 周手術期実習単語頻度解析の結果 研究の内容が 実習 学生 に続き 手術室 が多い この中で特徴的なのは 実習指導 が 17 件あり 原文を参照すると教員と指導者の立場からの研究が半数ずつであった 25

図 8 周手術期実習関連単語頻度解析 26

結果 7-1 周手術期実習関連単語頻度解析 周手術期実習 に関して具体的に動向を分析するため 手術や急性期など 周手術期関連 についてグルーピングをおこなった 周手術期関連 について研究された文献は 257 件見られた 精神疾患における 急性期 に関しては 原文を参照し 除外をしている 27

結果 7-2 周手術期実習関連単語頻度解 図 8 手術関連単語頻度解析では手術に関する研究の中でも 周手術期 など時期についてのものがほとんどであり 続いて 手術室 など場所や部署についてのものであった 手術 や 手術室実習 に関しては各 10 件以下と研究数は尐ない 28

図 9 看護学実習評判抽出 29

図 10 周手術期実習評判抽出 30

結果 8 評判抽出の比較 図 9 看護実習評判抽出と図 10 周手術期評判抽出では 不安 と 困難 のマイナス因子が非常に大きく見られている 図 10 周手術期評判抽出で特徴的なのはマイナス因子の 急激 と 不具合 である 31

図 11 研究対象単語頻度解析 32

結果 9 研究対象単語頻度解析 看護学実習の研究の中で 学生 教員 指導者 の研究対象についてさらに動向を分析するため 研究対象をグルーピングし その中で単語頻度解析を行った 図 10 研究対象単語頻度解析で 看護学実習では 学生 を対象としている研究がほとんどであった 次いで 指導者 教員 の研究が見られている 33

表 2 看護学実習特徴語抽出学生 単語 品詞 属性頻度 全体頻度 指標値 学生 名詞 2072 2072 2177.22529 看護学生 名詞 1284 1284 1349.20717 変化 名詞 340 485 219.274546 学ぶ 動詞 244 335 169.789424 分析 名詞 423 764 119.962331 体験 名詞 131 164 106.247647 認識 名詞 143 205 91.258629 臨地実習 名詞 374 693 89.410635 不安 名詞 117 162 80.116625 自己評価 名詞 122 179 73.950507 患者 名詞 211 372 68.496638 34

表 3 看護学実習特徴語抽出指導者 単語 品詞 属性頻度 全体頻度 指標値 指導者 名詞 149 149 544.92735 実習指導者 名詞 135 135 493.72612 臨床実習指導者 名詞 120 120 438.86766 臨床指導者 名詞 87 87 318.17906 臨地実習指導者 名詞 42 42 153.60368 教員 名詞 44 169 126.73928 評価 名詞 56 381 115.93985 役割 名詞 26 70 83.057032 関わり 名詞 28 128 75.05936 実習指導 名詞 34 225 72.120527 指導 名詞 31 187 70.718919 35

表 4 看護学実習特徴語抽出教員 単語 品詞 属性頻度 全体頻度 指標値 教員 名詞 169 169 873.43076 看護教員 名詞 49 49 253.24324 関わり 名詞 23 128 98.552838 臨床指導者 名詞 19 87 85.039046 看護学 名詞 24 262 77.986916 学生 名詞 86 2072 60.196847 役割 名詞 13 70 56.158059 指導 名詞 17 187 54.966621 評価 名詞 24 381 54.961621 指導者 名詞 15 149 51.595798 認識 名詞 17 205 51.483804 36

結果 10 看護学実習 特徴語抽出の比較 表 2 3 4 の 学生 指導者 教員 の特徴語抽出の結果 それぞれの対象者が上位に抽出されてる 特徴的なのは 指導者 を含む研究では 教員 が 教員 を含む研究では 指導者 が 学生 という対象よりも高い指標値を示している 37

図 12 周手術期実習対応バブル分析 38

結果 11 周手術期実習対応バブル分析 図 12 対応バブル分析の結果 周手術期実習 の研究では 学生 を対象としている研究がほとんどであった 学生 と 指導者 を同時に対象としたものが ほとんどないことが伺える 39

考察 1 看護学実習研究における 成人看護学周手術期実習の位置づけ 看護学実習に関する研究は年々増加しており 学生を対象として 実習を分析 検討している研究が多く見られていた 看護学実習の中で成人看護学は 18~64 歳までの成人期にある幅広い層を対象としており 実習単位も基礎看護学に次いで多いにも関わらず 基礎 母性看護学に次いで三番目の研究数であった 一番研究されている基礎看護学は 看護学実習の基礎となっており 学生が初めて体験する実習のためだと考えられる 母性看護学が二番目に研究されている理由に関して今回の研究では明らかにならなかったため 今後の課題とする 手術を受ける患者は各専門分野の看護学実習で対象となる可能性があるが そのほとんどの研究が成人看護学で行われている状況が明らかになった 40

考察 2 周手術期実習の研究の動向 周手術期実習についての研究は 看護学実習の研究の内 3% と尐なく 1982 年から 1999 年まで研究が十分に行われていなかったが 2000 年から年々増加していた 看護学実習と比較して周手術期実習の研究の内容で特徴的なのは 手術室 と 実習指導 であった 手術室 は学生が担当患者の手術に付いて 手術室という特殊な環境で見学実習をするためだと考えられる 実習指導 は 教員と指導者の立場からの研究が半数ずつであり 周手術期実習では 教員 指導者双方の実習指導がより重要であることが伺われた またマイナスな因子としての特徴は 急激 であった 患者は手術により身体的に大きな変化をきたし 手術後も日々変化をするが その 急激 な速さに学生が対応できない現状およびそれに対する支援方法の研究が行われていることが伺えた 41

考察 3 学生 指導者 教員を 対象とした研究の動向 看護学実習では 学生 を対象としている研究がほとんどであり 指導者 や 教員 を対象とした研究数は尐なかった その中で注目すべきことは 指導者 を含む研究では 教員 が 教員 を含む研究では 指導者 が 学生 という対象よりも高い指標値を示していることである これは 実習指導を行う上で指導者と教員の連携は必要ではあるが 現実的に困難な状況があり その改善や連携の強化を目指した研究がおこなわれていることが考えられる 周手術期実習の研究では 学生を対象としている研究がほとんどであり 学生と指導者を共に対象としたものが ほとんどないことが伺えた これは 周手術期実習の研究が初期段階であるため 実習を行う学生の実際に着目した研究が多くなったと示唆される 42

結論 1. 臨地で展開される実習は 学生にとって不安や困難となっており それを改善するための研究が年々増加している傾向が示された また 指導者 - 教員 の関係性に関する研究が 指導者 - 学生 教員 - 学生 より多いことが明らかになった 今後は学生を軸として対指導者 : 教員との関係の分析を行い 充実した実習展開の構築を目的とした研究の必要性が示唆された 2. 周手術期実習は対象となる患者の身体状態の急激な変化があるため 学生はさらに強い不安や困難を感じることが多いことが見出された しかし 周手術期実習の研究数は十分ではなく 特に 指導者 - 学生 の関係を明らかにした研究は尐ない 今後は 学生の不安 困難な状況への指導者の支援方法の検 討が課題となる 43

研究の限界 研究文献の題目に対するテキストマイニングの技法により 周手術期の看護実習に関する研究動向を大局的に把握できた また 学生 と 教員 指導者 との関係についての研究の特徴も明らかにされた しかし 本研究は論文タイトルによる分析のため タイトルに現れていない論文を分析から見落とした可能性がある また周手術期実習の文献数が尐ないため 分析の結果に限界がある 量的分析である本研究に加えて 周手術期の看護実習の論文の具体的内容の質的研究を行い ミックス法による総説 ( 展望 ) 論文を仕上げるのが今後の課題である 44

引用 参考文献 明石惠子 : 急性期看護実習の困難をどう乗り越えるか, 看護展望,26(11),17-22,2001. 岡田千鶴子他 : 周手術期実習における臨床側と学校側の連携, 看護展望,26(11),30-42 和田修他 : 看護学大辞典, 医学書院,2002. 45