科学的知見による安全と安心 やまなし食の安全 食育推進大会平成 23 年 9 月 15 日 国立医薬品食品衛生研究所登田美桜
今日お話する内容 食の 安全 と 安心 をど う受け入れるか
今日の話のポイント! 1 安全 と 安心 を混同しない 2 安全は科学的 安心は心理的 3 絶対的に安全な食品はあり得ない ( ゼロリスクはない ) 4 食品や物質によるリスクは量の問題 5 安心を得るためには皆さん ( 国 地方自治体 食品関連業者 消費者 ) の努力が必要
この言葉聞いたことありませんか? 国民の皆さんの食の安全安心がまたもや脅かされる事件が起きました! 賞味期限の偽装 ユッケによる食中毒 原産地の偽装 鳥インフルエンザや口蹄疫の発生 残留農薬の基準値超過 etc. そこで ちょっと気にして欲しい
1 安心 と 安全 を混同しない 安全安心 安全 か 安心 意味が違います
食の安全とは何だろう?
食の安全とは何だろう? 食品 の安全 food safety 食品を摂取したときの安全 ( 食品の衛生管理 ) 食糧 の安全 food security 食糧の安定供給の問題 ( 植物防疫 家畜や水産物の衛生管理 )
食品の安全は定義がある コーデックス委員会 ( 国際規格等を作成 ) で定義されている 食品 食品衛生の原則と推奨される国際作業規範: 食品 衛生の一般原則一般原則 行政 生産 製造者 消費者へ RECOMMENDED INTERNATIONAL CODE OF PRACTICE GENERAL PRINCIPLES OF FOOD HYGIENE CAC/RCP 1-1969, Rev. 4-20031 食品安全 (Food Safety) とは 意図された用途で 作ったり 食べたりした場合に 害を与えない その食品が消費者へ害を与えないという保証 Food safety -assurance that food will not cause harm to the consumer when it is prepared and/or eaten according to its intended use.
FAO/WHO 合同食品規格計画 ( コーデックス委員会 ) FAO( 国連食糧農業機関 ) と WHO( 世界保健機関 ) により 1962 年に設立 国際政府間組織 ( 加盟 184 カ国 +1 地域連合 ) 消費者の健康保護 食品の公正な取引の保証が主目的 食品に関するする国際規格国際規格や規範規範の作成 世界貿易機関 (WTO) の SPS 協定で国際基準となる 食品の安全性に関するリスク分析 :1993 年
食品安全にどう取り組むか?
食品安全にどう取り組むか?
日本の食糧事情 出典 : 農林水産省 HP 平成 22 年度の食糧自給率について http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
SPS 協定 (1994 年 ) WTO( 世界貿易機関 ) の協定の 1 つ 153 ヶ国 地域が加盟 ( 2008 年 11 月現在 ) 衛生と植物防疫のための措置 に関する協定 (Agreement on the Application of Sanitary and Phytosanitary Measures) 食品安全と動植物の健康のための基準等の措置についての国際的な基本ルールを提示
SPS 協定の基本ルール 1 加盟国が独自の基準を定めることを認めているが 同時に規制は科学的根拠に基づくものでなければならない 2 加盟国は 国際的な基準や指針 勧告 ( 食品安全の場合はコーデックス規格 ) が存在する場合には それらを使うことを奨励 3 加盟国が国際的な基準等よりも厳しくしようとする場合には 科学的根拠をもとに正当性を示す理由を述べなければならない 4 科学的根拠は ( コーデックス指針に従って実施された ) リスク評価に基づくこと
食品安全にどう取り組むか?
科学的根拠とは? 科学的な実験や調査調査データによる裏付けができるということ 食品中の危害原因物質レベルと健康被害の発生を防止するレベルを関連づけるデータ 再現性のある科学的データ ( 偶発的なものはダメ ) 可能であれば ある程度まとまったデータ 客観的に判断することができる データの質も重要 ( ある程度信頼できる ) GLP 研究デザイン 研究論文の質
リスクとは? 食品の中に存在するヒトに影響をあたえる危険因子 ( ハザード ) によって 有害な影響が起きるかもしれないという可能性 またはその影響の程度 低い 安全側有害な影響が起こりにくい 小さい 高い 危険側有害な影響が起こりやすい 大きい
リスク分析の枠組み リスク評価 科学ベース 食品安全委員会 リスク管理 政策ベース 厚生労働省農林水産省 リスクコミュニケーション 食品製造者 生産者生産者 消費者消費者など 関係する人は全員が参加 FAO/WHO 合同食品規格計画 ( コーデックス委員会 ) が考案
食品安全の取り組みは時代とともに変化 有害な影響を未然に防ぎましょう ( リスクを低く抑えましょう ) リスク分析の導入 ( 科学的根拠をもとに ) 日本にとっては比較的新しい取り組み ( 以前は問題が発生してからの対処だった ) 最終製品の検査から 製造工程の各段階での予防 さらにフードチェーンアプローチへ
食品安全の取り組み 食品安全 (Food Safety) とは 意図された用途で 作ったり 食べたりした場合に その食品が消費者へ害を与えないえないという保証 リスクが許容できる程度に低い状態 よく勘違勘違いされる 安全 とは 害を与えない 有害なものが入っていない
食品安全を考える上でもっとも 重要な 2 つのポイント! 3 絶対的に安全な食品はあり得ない 安全 リスクがゼロ 4 食品や物質のリスクは量の問題
3 絶対的に安全な食品はあり得ない 安全 リスクがゼロ
食品とは 人間が生きるための栄養やエネルギー源として食べてきたもの 食品は数多くの化学物質 ( 成分 ) の集まり 栄養素や添加物など 一部は構造や機能がわかっている しかし 成分の全部は明らかになっていない ( どのような化学物質が含まれているか不明 ) ヒトにとって有益なものも 有害なものも含まれている
食品に有害有害なものはなものは入ってないってない方がいい 確かにその通り. かつて 米国にはそういう法律が存在した デラニー条項 (1953~1996 1996 年 ) ヒトまたは動物にがんを誘発する食品または色素添加物は いかなる意味においても安全ではない 全ての発がん物質について 食品に添加 残留 混入されるべきではない 時代とともに新たな事実が判明する 微量分析が可能になった (1/1000~1/10,000 1/1,000,000,000,000 の濃度 ) 動物実験だけでなく 細胞レベルでも確認できるようになった 発がんには 食品よりもタバコ アルコール 食事バランスなどが大きく関与することがわかった 添加しなくても天然の食品には多くの発がん物質が存在することがわかった ( 例 : ローストコーヒーに含まれる成分のうち齧歯類の慢性毒性試験をしたのは 21 種類 そのうち 16 種類に発がん性があった :Gold LS., Ames BN. ら 1990)
例えば 発がん物質 WHO の 1 機関国際がん研究機関 (IARC:International Agency for Research on Cancer) 発がん性の根拠にしたがって物質等を分類 (Group) Group 1 : ヒトに対して発がん性がある Group 2A : ヒトに対しておそらく発がん性がある Group 2B : ヒトに対して発がん性の可能性がある Group 3 : ヒトに対する発がん性について分類できない Group 4 : ヒトに対しておそらく発がん性はない
普段食べている食品にも発がん物質は入っています Group 1 評価 ヒトに対して発がん性がある 2A ヒトに対しておそらく発ガン性がある 2B ヒトに対して発ガン性がある可能性がある 分類例 アルコール飲料 タバコ アフラトキシン ( ナッツ類 ) ベンゾピレン ( おこげ ) ヒ素及びヒ素化合物 カドミウム 紫外線 etc. アクリルアミド ( ポテトチップス フライドポテト ビスケット コーヒー等 ) etc. カフェ酸 ( リンゴ ニンジン セロリ ナス ブドウ レタス ナシ バジル コーヒー等 ) メチルオイゲノール ( 甘い香り ) フラン etc. 入っているのは発がん物質だけではありません ( 例 : 自然毒 アレルギー物質 病原性微生物 )
絶対的に安全な食品はあり得ないリスクリスクリスクリスクリスクはゼロゼロゼロゼロリスクリスクリスクリスクありありありあり低い低い高い高い絶対に危険絶対に安全有害なものは何も入っていないひとつのひとつのひとつのひとつの食品食品食品食品に数多数多数多数多くのくのくのくの化学物質化学物質化学物質化学物質 ( 成分 ) や微生物微生物微生物微生物が存在存在存在存在し ヒトヒトヒトヒトにとってにとってにとってにとって有益有益有益有益有益有益有益有益なものもなものもなものもなものもなものもなものもなものもなものも 有害有害有害有害なものもなものもなものも有害なものも有害有害有害なものもなものもなものもなものも含まれているまれているまれているまれている
食品に有害なものは入ってない方がいい 確かにその通り. かつて 米国にはそういう法律が存在した デラニー条項 (1953~1996 1996 年 ) ヒトまたは動物にがんを誘発する食品または色素添加物は いかなる意味においても安全ではない 全ての発がん物質について 食品に添加 残留 混入されるべきではない 時代とともに 微量分析が可能になった (1/1000~1/10,000 1/1,000,000,000,000 の濃度 ) 動物実験だけでなく 細胞レベルでも確認できるようになった 天然の食品にも多くの発がん物質が存在することがわかった 発がんには 食品よりもタバコ アルコール 食事バランスなどが大きく関与することがわかった デラニー条項条項は不可能不可能だった! 食品にはには 様々な有害有害な物質物質が入っているっている可能性可能性があるだから 量 ( 使用量 摂取量 ) を安全安全レベルレベルに抑えるえる方向方向で検討検討しようリスク - ベネフィットやリスクリスク評価評価などなどリスクベースリスクベースの考え方を導入導入しよう