Money Market Monthly マネーマーケットマンスリー 21 1 No.271 国内経済 回復は鈍い 金利 低水準でもみ合い 短期金利 株式 高値圏もみ合い J-REIT 外国為替 大幅円安後の調整に注意 米国金利日米主要経済指標 金利 株価 為替相場動向 ----------------------------------------- 日米の大型 IPO IPO とは株式新規公開のことを指し 今年は年後半にかけて日米で企業規模の大きい銘柄の上場が予定されており 注目を集めています まず米国では 9 月 19 日 中国の電子商取引最大手 アリババ集団 がニューヨーク証券取引所へ IPO として世界最大規模の上場を果たしました そして上場初日の時価総額は約 2,3 億ドル ( 約 2 兆円 ) と 日本で最大のトヨタ自動車 ( 約 22 兆円 ) を上回りました 日本の株式市場においては 1 月に外食大手 すかいらーく ( 上場時の想定時価総額約 2,8 億円 ) 人材派遣やメディア事業を手掛ける リクルートホールディングス ( 同約 1.6 兆円 ) が上場予定であり 今年の IPO の中でも最大級の規模になるとみられています そのため話題性がある反面 上場前に他の銘柄への換金売りや上場後に材料出尽くしの売りが大量に出た場合は 株式相場の重石になる可能性があります 参考までにアリババ集団の株価動向について 上場初日の終値は公開価格を約 38% 上回る 93.89 ドルとなりましたが その後は利益確定売りの動きをみせました 今後 日本の大型 IPO 銘柄がどのような値動きを見せるか注目したいと思います ( 折原 ) マネーマーケットマンスリーは経済 金利 為替 株価についての情報提供を目的として作成したもので 取引等の勧誘を目的としたものではありません また 金融商品取引契約の締結の勧誘に使用するものではありません 投資に関する最終決定は お客さまご自身の判断で行うようお願い申しあげます (21.9.2 作成 ) 資金証券部 TEL:2-26-77
国内経済 9 月 8 日に発表された-6 月期 GDP( 改定値 ) は 年率 7.1% となり 月の消費増税後の景気の落ち込みが事前に想定された以上に大きかったことが確認された 年末には さらに消費税率 1% への引き上げの判断を控えており 国内景気の先行きに対する警戒感は強いと思われる 一方で 直近では外国為替市場で円安が進み 加えて株高も進んでいることから 景況感や企業業績の回復も期待される そこで 個人消費と企業の生産動向を示す経済指標から 足元の国内景気を確認したい 商業販売統計 小売業と卸売業の販売額を集計した商業販売統計 (7 月 ) によれば 全体の販売額は前年比 +.1% とヶ月振りに小幅なプラスに転じた 月の大幅な落ち込みから 緩やかながら改善傾向にあることが見てとれる 今後の個人消費の動向を考えると 7 月の物価上昇分 ( 消費者物価指数 )+3.3% に対して 7 月の現金給与総額 ( 厚生労働省 ) によれば前年比 +2.% の増加となった 所得環境の改善が見られたものの 現状では依然として 実質所得の目減りが続いていることから 個人消費の大幅な回復は期待しにくい しかし 前述の通り直近の円安 株高による効果もあるため 今後も緩やかな回復基調が続くと思われる 鉱工業生産 製造業の生産の動向を示し 景気との連動性が高いといわれる鉱工業生産 (7 月 ) について見てみると 前年比で生産は.7% 在庫は +2.9% となった 生産の動向は 1 月の +1.6% をピークに減少傾向で推移している 在庫の動向を見ると 月以降プラスに転じていることから 製造業における在庫の積み上がりが顕著になっている 増税後の需要が想定以上に弱かったことで 在庫が積み上がってきていると考えられる 在庫の増加は 企業の生産を抑制させる可能性があり このまま在庫の増加が続くようであれば 国内景気を下振れさせる要因となりうるため 今後の動向に注意する必要があるだろう 以上 2つの経済指標からは 増税後の国内景気の回復は 非常に緩やかであると思われる 今後は 年末の再増税の判断に向けて その判断材料となる7-9 月期 GDP の動向や 再増税に向けた政府による景気対策等が注目されるだろう ( 網野 ) 1
国内金利 9 月の1 年国債利回り変動レンジ.9%~.8% 9 月の国内金利は小幅に上昇した 米国における早期利上げ観測が意識されたことから 海外市場において金利が上昇したこと等を受け 国内金利も.8% まで上昇する場面が見られた 一方 日銀が大規模な国債買い入れオペを継続していることから 月後半にかけてはもみ合いながら低下した 2 日の1 年国債利回りは.2% と8 月末の.9% から.3% 上昇した 1 月の見通し 1 月の予想レンジ 1 年国債利回り.%~.8% 1 月の国内長期金利は 低水準でもみ合う展開を想定する 国内では 消費増税後の景気回復が鈍く 追加緩和への期待が再燃していることから金利低下の要因として作用するだろう また 海外市場をみると 欧州の景気減速懸念への対策として 9 月に ECB( 欧州中央銀行 ) が政策金利の追加引き下げを実施した このことから 今後も ECB による追加緩和への期待が高まる場面では 国内金利にも低下要因として働くものと考えられる 一方 金利上昇の要因として米国における早期利上げ観測がある 9 月に開催された FOMC( 米連邦公開市場委員会 ) では米国の量的緩和が予定通り1 月に終了する見通しとなった 市場の関心は米国の政策金利の利上げの時期がいつになるかに移っており 早期利上げ観測が高まる場面では国内金利にも上昇圧力がかかるだろう 以上を踏まえると 今月の国内金利は米国金利の動向次第でやや上昇する可能性はあるものの 基本的には低水準でもみ合う展開となるだろう 短期金利 9 月の無担保コール翌日物は 日銀の政策金利の.1% を下回る水準での推移であった 短期国債市場において国庫短期証券 (TDB)3 カ月物はマイナス金利で取引される場面があった 9 月に入り日銀は短期金融市場において初めてマイナス金利で短期国債の買入れオペを実施し 金融緩和政策を一段と強めている 1 月においても短期金融市場の環境は変わらず 低下圧力が掛かりやすい状況が継続するだろう ( 伊澤 ) 2
212/ 21/3 2/29 213/3/3 213//29 213/7/28 213/9/26 21/2 2/2 21/3/2 21//2 21/7/23 21/9/21 212/ 2 213/2/12 213//13 213/6/12 213/8/11 213/ 22/9 21/2/7 21//8 21/6/7 21/8/6 株式市場 9 月の株式相場は上昇した 外国為替市場で円相場が 1ドル =19 円台前半と約 6 年ぶりの円安水準になったことを受けて 輸出採算が一段と改善するとの期待から輸出関連株中心に買いが集まった また 米国株式市場で史上最高値を更新したことも日本株の追い風となり 月を通して上昇基調で推移し 年初来高値を更新する場面も見られた 17, 16, 1, 1, 13, 12, 11, 1, 9, 8, 円 (C) 日本経済新聞社 日経平均株価 2 日の日経平均株価は 16,37 円とな り 8 月末から 99 円の上昇となった 1 月の見通し 1 月の株式相場はもみあう相場になるだろう 日本株が弱含む場面では 日銀の ETF 買い入れや 年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) の運用改革に伴い 日本株の保有比率を引き上げるとの観測が相場を下支えすることで底堅い相場になるものと思われる また 外国為替市場で円安が進行したことを受けて 輸出関連企業に対する業績上振れへの期待が高まっていることや 日本株の売買シェアの高い海外投資家が買い越しに転じていることが 日本株の上昇をサポートする要因になるだろう ただ 日本株の上昇ピッチが速いことで 相場に短期的な過熱感が見られることや イスラム国への空爆拡大など地政学リスクがくすぶる中 一方向の上昇はしづらいものと思われ 高値圏でもみ合う相場になるものと思われる 1 月の日経平均株価予想レンジ 1, 円 ~ 17, 円 J-REIT 不動産投資信託 (J-REIT) で代表的な 指標の東証 REIT 指数は横ばいで推移した 引き続き配当利回りの高さを背景に資金流入が 見られ 底堅い推移が見られた ただ上昇する 場面では 利益確定売りの動きが見られたこと で上値は重く 方向感に乏しい狭いレンジでの 推移となった 1 月の見通し 1,7 1,6 1, 1, 1,3 1,2 1,1 1, 9 8 (C) 東京証券取引所 東証 REIT 指数 1 月の東証 REIT 指数は上昇するだろう 相場の下落する場面では 日本銀行による J-REIT 買い入れ が見られていることで 下値不安については乏しいものと思われる また 世界的な低金利の継続といった環境面 が追い風となる中 3% 前半と高い配当利回りに着目した買いが継続するだろう ( 森久保 ) 3
外国為替 9 月のドル円相場は 大幅に円安ドル高へ推移した 第 2 四半期 GDP の下方修正等により 日本の 景気減速が意識されたことや 日銀黒田総裁が追加緩和に踏み込んだ発言をしたことなどから 日銀の 追加緩和観測が高まり 円安ドル高基調が強まった 米国では 17 18 日の FOMC( 連邦公開市場 委員会 ) にて 各委員の政策金利見通しが上方修正された 量的緩和終了後の利上げが意識されたため 円安ドル高は加速し 約 6 年半ぶりに 19 円を上回る場面も見られた 2 日現在のドル円相場は 18 円 7 銭 ユーロ円相場は 138 円 67 銭となった NY 外国為替市場 : ドル円相場 9/1 円高値 (9/1) 円安値 (9/19) 9/2 1 円 3 銭 1 円 6 銭 19 円 6 銭 18 円 7 銭 1 月の見通し 1 月のドル円相場は もみ合う展開を予想する 米 FRB( 連邦準備制度理事会 ) は 1 月にも量的 緩和政策が終了となる見通しであり 市場では来年 の利上げが意識されつつある 一方で日本は消費増 税後の景気回復にもたついており 追加緩和観測が 再燃している このように 日米中央銀行の緩和姿 勢の差が明確となる状況は 中長期的な円安ドル高 トレンド形成の主因となろう 一方で 足元の円安ドル高の推移には過熱感があり 節目では投機的なポジションの利益確定の動き などから 円高ドル安へ推移する場面も予想される また 米国はイスラム国に関連し シリアでの空 爆に踏み切るなど 中東情勢は依然緊迫した状態にある 地政学リスクの高まりがきっかけとなり 円 高ドル安へ調整する場面も想定され 短期的な市場の変動には注意されたい 予想レンジドル円相場 16. 円 ~111. 円 ユーロ円相場 13. 円 ~11. 円 米国金利 9 月の米国長期金利は上昇した 米国は緩やかな景気拡大を続けており FOMCを控えた中 FRBの出口政策が意識されたため 金利は上昇基調での推移となった 1 月の見通し 1 月の米国長期金利はもみ合う展開が予想される 足元の雇用市場は堅調であり 賃金の上昇など雇用の質改善の動きも見られる FRBの金融政策が出口に向かう姿勢に変わりは無く 金利上昇要因となろう 一方で日欧中央銀行は今後緩和姿勢を強めることが予想される 相対的に高金利となる米国債需要の高まりも見込まれることから 米国長期金利は方向感の出にくい展開となろう ( 菊地 ) 予想レンジ 1 年国債利回り 2.3%~2.7%
/3 1/3 2/3 3/3 /3 /3 6/3 7/3 8/3 9/3 1/3 11/3 12/3 13/3 1/3 98/3 /3 2/3 /3 6/3 8/3 1/3 12/3 1/3 /3 1/3 2/3 3/3 /3 /3 6/3 7/3 8/3 9/3 1/3 11/3 12/3 13/3 1/3 日米主要経済指標 (1) 国内経済指標 平成 26 年 9 月 2 日現在 1 実質 GDP ( 前期比 年率 ) 出所 : 内閣府 2 日銀短観 大企業業況判断 DI 出所 : 日本銀行 1 1 - -1-1 -2 2-2 - -6-8 製造業 非製造業 3 鉱工業生産指数 ( 前年比 ) 出所 : 経済産業省 機械受注統計 ( 前年比 ) 出所 : 内閣府 2-2 - -6 6 2-2 - -6 家計調査 2 人世帯支出 ( 前年比 ) 出所 : 総務省 6 完全失業率 出所 : 総務省 1 - -1 6 3 (2) 米国経済指標 1 実質 GDP ( 前期比 年率 ) 出所 : 米商務省 2ISM 景況感指数 出所 : 全米供給管理協会 1 - -1 7 6 3 製造業 非製造業 3 非農業部門雇用者数 ( 前月比増減 ) 出所 : 米労働省 新築住宅販売 ( 前年比 ) 出所 : 米商務省 1 ( 千人 ) - -1 2-2 - -6
金利 株価 為替相場動向 平成 26 年 9 月 2 日現在 1 日経平均株価 21 年国債利回り 22 2 18 16 1 12 1 8 6 ( 円 ) 2.2 2. 1.8 1.6 1. 1.2 1..8.6..2. (C) 日本経済新聞社 3NY ダウ平均株価 米国 1 年国債利回り 18 16 1 12 1 8 6 7 6 3 2 1 為替ドル円相場 1 ( 円 ) 13 12 11 1 9 8 7 6 為替ユーロ円相場 18 ( 円 ) 16 1 12 1 8 7 為替豪ドル円相場 8NY WTI 原油先物 (1 バレル ) 12 ( 円 ) 11 1 9 8 7 6 16 1 12 1 8 6 2 ( ドル ) 6