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プレゼンテーションタイトル

Transcription:

1 平成 23 年 6 月 30 日 平成 23 年度東日本大震災に関する緊急調査実施報告書 (1) 実施課題名 : 東北地方太平洋沖地震による河川管理施設の被災状況調査 (2) 調査代表者 ( 氏名, 所属, 職名 ): 堀智晴, 防災研究所 地球水動態研究領域, 教授 (3) 調査組織 ( 氏名, 所属, 職名, 役割分担 ): 堀智晴, 防災研究所 地球水動態研究領域, 教授, 総括 調査野原大督, 防災研究所 地球水動態研究領域, 助教, 調査 (4) 配当額 : 300 ( 千円 ) (5) 調査期間 : 平成 23 年 5 月 15 日 ~ 平成 23 年 5 月 16 日 (6) 調査報告 : 調査目的 趣旨 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では, 地震及びそれに引き続く津波により, 沿岸部を中心とした家屋や家財などの被害が生じただけでなく, 河川堤防などの河川構造物にも地震の揺れに伴う亀裂による強度低下や津波の越流による損壊などの被害が生じた. また, 地震時の地殻変動の影響により沿岸部を中心に最大 80cmにも及ぶ地盤沈下が広域にわたって生じ, それに伴って沿岸部の河川堤防の沈下が生じたことから, 河川下流域における洪水災害リスクや高潮災害のリスクの増大が懸念される状態であった. 本調査では, こうした状況を踏まえ, 宮城県沿岸部を中心とした東日本大震災の被災地における河川管理施設の被災状況を現地で調査することによって, 河川管理施設の被災に伴う上述の洪水災害リスク及び高潮災害リスクが具体的にどのように, あるいはどの程度増大したのかを確認することで, 今後の被災地における河川管理上の課題を見出すとともに, 河川計画時に通常想定がなされないような災害などのイベントによって, 河川堤防などの河川管理施設による治水機能がどの程度失われ, そのことを河川計画時にどの程度考慮する必要があるのかについての検討の礎とすることを目的とした. 調査経過 1. 概要現地調査は堀, 野原の 2 名により, 以下の順序で行った. 平成 23 年 5 月 15 日 ( 土 ) 1) 旧北上川河口部 ( 宮城県石巻市 ) 2) 旧北上川 ( 宮城県石巻市 ) 3) 北上川 ( 宮城県石巻市 ) 4) 宮城県石巻市万石浦地区 平成 23 年 5 月 16 日 ( 日 ) 5) 名取川 広瀬川 ( 宮城県名取市 仙台市 ) 6) 阿武隈川下流部 ( 宮城県角田市 ) 7) 阿武隈川河口付近 ( 宮城県岩沼市 亘理町 )

2 2. 調査の詳細 1) 旧北上川河口部 ( 宮城県石巻市 ) 旧北上川河口部における河川管理施設の被災状況を調査した. 河口部においては, 津波の遡上の影響により, 左岸 右岸共に河川護岸に大きな損傷があったことが確認できた. 特に, 左岸の河口より約 1km 程度の区間については, 護岸が完全に損壊しており ( 写真 1(a)), 堤内地への河川水の侵入を防ぐことができない状態になっていることから, 従来の護岸の位置よりもさらに堤内地側に新たに土盛りによって仮締切を行う応急復旧工事がなされていた ( 写真 1(b)). また, 周辺地域では, 地盤沈下の影響と推測される浸水が見られるなど ( 写真 1(c)), 地盤の沈下を感じさせるような痕跡が確認できた. 護岸の消失による堤防 護岸強度の低下および地盤沈下による堤防高の低下により, 洪水または高潮時における堤内地側への浸水防御機能が著しく低下している状態にあると見受けられた. 写真 1(a) 旧北上川河口部左岸護岸の被害状況 ( 左 ) 写真 1(b) 旧北上川河口部左岸護岸損壊区間における仮締切工事の状況 ( 右 ) 写真 1(c) 地震に伴う地盤沈下による石巻市内の浸水状況 2) 旧北上川河口部を除く旧北上川では, 河川堤防及び河川護岸の被害状況を中心に調査を行った. その結果, 地震動の影響によるものと思われる堤防上の亀裂が生じているのを数か所で確認することができた. 堤防の法面が堤内地側または堤外地側にずれることによって生じたと考えられる縦断方向の亀裂や ( 写真 2(a)), 堤体の一部分が沈下したことに伴う堤体上の横断方向

3 の亀裂 ( 写真 2(b)) などが見受けられた. また, 左岸下流では, 津波による護岸の喪失及び地震による地盤沈下の影響によって堤内地側への浸水が懸念される箇所が見られた. ここでは, 河川管理者により河川沿いに土嚢を積み並べることによって, 応急の浸水 ( 高潮 ) 対策がなされていた ( 写真 2(c)). 河口部に近い旧北上川下流域においては, 護岸 堤防の損傷による堤防強度の低下及び地盤沈下に伴う堤防高の低下により, 洪水 高潮による浸水被害の防御機能が低下していることがうかがえる他, 旧北上川中流部においても堤防の損傷によって堤防強度が低下し, また堤体の部分的沈下に伴い洪水流下能力が低下した状態にあることが確認できた. 写真 2(a) 堤防上の亀裂 ( 縦断方向 ) の様子 ( 旧北上川右岸 )( 左 ) 写真 2(b) 堤防上の亀裂 ( 横断方向 ) と堤防沈下の様子 ( 旧北上川右岸 )( 右 ) 写真 2(c) 大型土嚢積みによる応急の高潮 浸水対策 ( 旧北上川左岸 ) 3) 北上川北上川の旧北上川との分岐点より下流側において調査を行った. 亀裂や裏法面の崩壊など, 地震動によるものと思われる河川堤防の損傷 ( 写真 3(a), (d),(e)) が見られた他, 河川堤防の部分的沈下 ( 写真 3(f)) も見られ, 河川堤防の機能低下や堤防高の低下が懸念される状態であった. また, 北上川では津波が河川を遡上したが, 北上大橋上流右岸側では河川側から堤内地側へ遡上津波が越流したことによって生じた大規模な堤防決壊箇所があり, 河川管理者によって応急復旧工事がなされていたが, 震災から 2 か月が過ぎた本調査時においても復旧工事の途上であり, この間, 本地点における河川の治水能力が大幅に低下した状態であったことがうかがえた ( 写真 3(b)). その他, 北上川河口付近においては, 地震後広範囲にわたって地盤の沈下が生じており, 津波による海岸管理施設の損傷と相まって, 調査

4 時点において未だ広範囲にわたり浸水している状態であった ( 写真 3(c)). 写真 3(a) 北上川右岸における亀裂箇所 ( 雨水侵入防止シート設置済 )( 左 ) 写真 3(b) 北上川右岸における堤防決壊箇所 ( 北上大橋上流地点 )( 右 ) 写真 3(c) 北上川右岸堤内地における浸水状況 ( 左 ) 写真 3(d) 北上川左岸における堤防裏法面の損傷 ( 右 ) 写真 3(e) 北上川左岸における堤防裏法面の損傷 ( 左 ) 写真 3(f) 北上川左岸における堤防の沈下 ( 右 ) 4) 石巻市万石浦地区石巻市万石浦地区では, 地震に伴う地盤沈下のため, 満潮時に海水面よりも低い状態となることから, 大潮の満潮時において最大 60cm~80cm 程度の浸水が生じる状態となっている. 本調査時においても, 大潮のピークではなくかつ満潮時刻を過ぎていたにも関わらず, 概ね 30cm 程度の浸水が見られ, 地震による地盤沈下の状態を確認することができた ( 写真 4).

5 写真 4 万石浦地区における満潮時の浸水状況 5) 名取川 広瀬川一級水系名取川水系の名取川および支川の広瀬川の河川管理施設の被害状況を調査した. 支川の広瀬川においては, 大規模な河川堤防の損傷は確認できなかったものの, 小規模な堤防損傷の痕跡が散見された. 名取川下流左岸においては, 堤内地側からの津波の越流による河川堤防の大規模な損壊の痕跡 ( 写真 5(a)) や堤防の部分的損傷が見られた他 ( 写真 5(c)), 名取川下流右岸においても堤防裏法面の大規模な損傷などの, 河川堤防の損傷被害の形跡 ( 写真 5(d)) が見られた. また, 名取川下流付近においても地震動による地盤沈下が生じていることから, それに伴って河川堤防の高さも海面と比べて低下し, 特に河口付近において, 台風のように出水と高潮が重なる自然現象に対する脆弱性が高まっている状態にある. 現地では, 堤防高を応急的に嵩上げし上記の脆弱性を補完するための大型土嚢の準備がなされていた ( 写真 5(b)). 写真 5(a) 名取川左岸における堤防の損壊箇所 ( 復旧済 )( 左 ) 写真 5(b) 大型土嚢の準備状況 ( 右 )

6 写真 5(c) 名取川左岸における堤防の損傷状況 ( 左 ) 写真 5(d) 名取川右岸における堤防裏法面の損傷状況 ( 右 ) 6) 阿武隈川下流部阿武隈川下流部においても, 地震動によるものと思われる河川堤防の沈下 ( 写真 6(a)) や損壊 ( 写真 6(b),(d)), 堤防法尻における噴砂 ( 写真 6(c)) などの痕跡が確認できた. 特に堤防が 30cm~50cm 程度 ( 目視 ) 大きく沈下している箇所が見受けられ ( 写真 6(a)), 洪水時における河川の通水能力の低下が懸念された. 写真 6(a) 阿武隈川中流部右岸における堤防の沈下状況 ( 左 ) 写真 6(b) 阿武隈川中流部右岸における損壊堤防の復旧作業 ( 右 ) 図 6(c) 右岸堤防の裏法面における噴砂痕 ( 左 ) 図 6(d) 右岸の損壊した堤防の復旧状況 ( 右 ) 7) 阿武隈川河口付近阿武隈川の河口付近においても, 津波越流によると思われる河川裏法面

7 の大規模な洗掘 ( 写真 7(a),(c)) や, 河川護岸 ( パラペット ) の損傷 ( 写真 7(b)) などの被害が見受けられた. パラペット損傷箇所においては, 大型土嚢を積み並べることによって応急の浸水 高潮対策が取られていた. 写真 7(a) 阿武隈川河口部右岸の堤防裏法面の損傷状況 ( 左 ) 写真 7(b) 右岸の護岸の損傷状況と大型土嚢による応急対策状況 ( 右 ) 写真 7(c) 阿武隈川河口部右岸の堤防裏法面の損傷状況 調査成果 本調査では, 主に宮城県沿岸部を中心に, 東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波による河川管理施設の被災状況を調査した. その結果, 沿岸部では, 津波による河川堤防, 河川構造物の大規模な損壊が見られた他, 地震に伴う地盤沈下により, 河川堤防の海面からの相対高が低下したことから, 当該地域において洪水災害リスクおよび高潮災害リスクが増大していることが確認できた. また, 河口部を除く河川下流域においても, 地震動による河川堤防の損壊や, 河川堤防の部分的な沈下に伴い, 堤防強度の低下や堤防高の低下が生じることとなり, いずれも洪水防御機能の低下により洪水災害リスクを増大させているであろう状態が確認できた. 調査対象河川の河川管理者は, こうした状況を踏まえ, 応急的に水防規準となる河川水位を引き下げるなどの対応を取っているが, 河川堤防などの河川構造物の復旧を進めると共に, 従来の治水安全性が損なわれている分を, 上流の多目的ダムなどの河川管理施設の運用の変更 ( 利水 治水 ) や早期の避難実施などのソフト対策などによって補完する必要があり, 今後こうした対策の具体的方策を検討していくことが被災地における河川流域にとって重要となると考えられる. また, 河川下流の感潮区間においては, 出水と高潮が重なる台風災害に今後注意する必要があるだろう. 一方, 地震動または津波による河川堤防の大規模な損壊については, 震

8 災後 2 か月が経過した本調査実施時点においても, 未だ復旧が完了していない箇所が多々あり, 巨大災害による被害の大きさを感じさせられると共に, こうした災害時における復旧作業が長期化せざるを得ないことがあらためて確認できた. 今回の東北太平洋沖地震は 3 月に発生したことから, 地震発生直後の, 河川管理施設の復旧もままならず洪水防御機能が著しく低下している時期に, 豪雨災害を受けることも無かった. しかし, 巨大災害などの想定外のイベントが, 常にこうした比較的水害の少ない時期に生じるとは限らず, 洪水防御上, 前提として考えられてきた既設河川堤防などの機能が失われた状態で豪雨災害が生起した場合の被害は, 破局的なものとなることが予想される. こうした観点から, 河川計画策定時に直接組み込む必要は必ずしも無いものの, 河川計画を考える上での前提条件とされているような諸条件が何らかの要因で失われた場合も考えて, これに対するフェールセーフ機能を用意することが, 一般的な河川においても重要であると考えられる. また, こうしたフェールセーフ機能を擁しておくことは, 超過洪水に発生時においても役立つと考えられる. 今後に向けた課題 本調査では, 東北地方太平洋沖地震による河川管理施設の被災状況を考慮した被災地河川流域における治水対策手法の確立と, 巨大災害などの想定外の事象が生起した場合における洪水被害軽減のためのフェールセーフ機能の確立という, 二つの課題が得られた. また, 想定外の事象の生起によって, 治水機能だけではなく, 利水補給機能が損なわれることも考えられることから, 利水補給システムの安全性向上のための手段や利水補給機能が損なわれた場合の代替手段を検討 準備することも重要であると考えられる. 今後, これらの具体的方策の提案のための方法論を検討していく予定である.