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平成 29 年 1 月 1 日発行 89 MEKO フリータイプシリコーン FIPG の開発 はじめに シリコーン FIPGは 硬化後に柔軟性があり 耐熱性 耐薬品性にも優れることから 自動車のエンジンやミッションをはじめ 様々なシール 接着用途で使用されており スリーボンドでもお客様のニーズに合わせた商品開発を進めています 一方で 近年 各国において環境規制がより厳しくなってきており 化学物質のリスクアセスメントの義務化など日本国内でも労働災害を未然に防ぐための法改正が施行されました 特に欧州圏は作業環境に対する意識が高く 世界に先駆けて環境規制や化学物質の登録 管理体制を確立しています 現在 広く普及しているシリコーン FIPGは 硬化反応時にメチルエチルケトオキシム ( 以下 MEKOと略します ) を副生成物として放出しますが MEKOは欧州で有害物質に指定されています ( 法規出典 1 2 3) 本稿では 欧州圏における作業環境に配慮した MEKOフリーのシリコーン FIPGを紹介します 目 はじめに 1 1. 背景 2 2.FIPGについて 2 3. 求められる特性 3 次 4. 商品紹介 5 5.ThreeBond1227H 各種評価 6 6.ThreeBond1217P 各種評価 7 おわりに 8 1

1. 背景 1-1 環境法規制近年 化学物質を取り巻く環境は厳しくなってきています これは化学物質を適切に管理し 作業環境の改善と地球環境を保護するための世界的な取り組みとなっています 特に欧州圏は 世界に先駆けて化学物質の管理を進めており 各種環境規制 法規制を実施し さらに随時改正することで世界の化学物質の環境基準をつくり出しています 自動車産業をはじめとした製造業も各国の環境法規制に対応しており 化学物質を取り扱う化学工業メーカーとしても これらの規制に対応しながら商品開発を進めていく使命があります 1-2 自動車産業界の取り組み自動車産業をはじめとした製造業においては CO 2 の排出量の削減対策や石油代替エネルギーへの転換のため ハイブリッド自動車 (HV/PHV) 電気自動車 (EV) 燃料電池自動車(FCV) 等の環境対応車輌が順次市場投入されシェアを伸ばしております 併せて 車輌の省燃費化競争が激化する等 環境への配慮がますます高まってきています また 地球環境保全への対応は 完成車輌 ( 製品 ) にとどまらず 製造ラインにおいても工数削減や作業工程の簡略化等の見直しが進められています 有機溶剤なども含めた環境規制物質の低減に注目が集まってきています 2.FIPG について 2-1 FIPG FIPGとは液状ガスケット (FIPG:Formed In Place Gasket) のことで 液状の材料をフランジ面に塗布 貼り合わせた後 硬化させて接着 シールする手法です 現在は RTVシリコーン系の材料が FIPGの主流で その中でも硬化反応時にMEKOを放出する脱オキシムタイプが広く普及しています RTV(Room Temperature Valcanizing) 2-2 FIPGのシール理論固形ガスケットがフランジ面に対する反発力でシール性を確保するのに対して FIPGは主にその密着性 接着性 粘弾性 凝集力により オイルなどの媒体をシールします FIPGがシール性能を十分に発揮するためには これらの特性に優れていることがポイントとなります ( 図 -2-1 図 -2-2) 用途例 オイルパン チェーンケース等の接着シール 図 -1 FIPG の使用部位 2

固形ガスケット 浸透 ( 層内 ) 漏洩 ガスケットの内部を透過してリーク ガスケットの耐薬品性不足が主な原因 フランジ ガスケット 図 -2-1 固形ガスケットのシール理論 破壊 ( バースト ) 漏洩 ガスケット自体が破壊され破壊面からリーク ガスケットの追従性 フランジの振動が主な原因 液状ガスケット (FIPG) フランジ ガスケット 密着性 接着性 粘弾性 凝集力 密着性 接着性 接面漏洩 ガスケットとフランジ界面からリーク 密着性や接着性の不足が主な原因 各部材に対する接着性が重要 フランジ 図 -2-2 液状ガスケット (FIPG) のシール理論 ガスケット 2-3 もれ の種類について主に もれ の現象はガスケットの内部を媒体が透過してもれてしまう 浸透 ( 層内 ) 漏洩 ガスケットそのものが破壊されてしまう 破壊 ( バースト ) 漏洩 そしてガスケットとフランジ界面からもれてしまう 接面漏洩 の 3 種類に分けられます ( 図 -3) それぞれもれの要因は異なりますが もれの防止には シール媒体に対する耐久性 フランジ面の振動や口開き等に対する追従性 フランジ面に対する接着性 が FIPGにおいて非常に重要となります 3. 求められる特性 図 -3 もれの種類について 3-1 欧州圏における MEKOの位置付け欧州圏は世界に先駆けて化学物質の管理基準から環境法規制の施行を行っており 管理 基準が非常に厳しい地域です この欧州圏ではMEKOが発がん性区分 2に指定されております ( 法規出典 3) MEKO は世界で一般的に広く用いられている FIPG ( 脱 MEKOタイプ ) の縮合反応ガス成分として 硬化時に空気中に放出されます 3

このように欧州圏の基準に合わせ縮合ガスとして MEKO が発生しないタイプの FIPGが強く求められています 3-2 オイルに対する耐久性シリコーンFIPGは 主にエンジンやトランスミッション等のオイルをシールする目的で使用されます そのため 高温条件下 (120 以上 ) でオイルに浸漬された際に 強度や弾性が大きく低下しないことはもちろんのこと シール剤としての役割を考えると部材に対する接着性 ( 密着性 ) の保持が非常に重要となります 3-3 高伸張性 FIPGは 常に振動や衝撃にさらされる自動車部品 ( エンジンやトランスミッション ) に使用されるため 接着性に加え その部材の振動や口開き ( 変位 ) に対応できる追従性が求められます 接着性が十分でも追従性が不足すると FIPG 自体の破断によりオイルリークの原因となってしまいます 3-4 油分等汚れが付着した部材への接着性エンジンブロック ミッションケースをはじめとする部品は 一般的に鉄やアルミダイカストを鋳造 切削加工して作られます その際に使用される切削油が 洗浄後もフランジ面に一定濃度残ります また エンジン製造工場内では様々な工業設備が稼働していますが それらの設備に使用されている潤滑油等が飛散してオイルミスト ( オイルが微粒子化して空気中に浮遊している状態 ) が発生し 接着面に付着してしまう等 汚れが残った状態になっています これらは FIPGの接着性に対して負に関与し 結果として漏れを招く恐れがあります 現在は接着面に付着したオイルを除去する目的で有機溶媒を使用した脱脂洗浄工程が取り入れられていますが 環境対応に伴い同工程が削減された場合 今までは除去されていた油分や汚れが接着面に残ることになります 接着面に油分や汚れが介在することで 接着性の大幅な低下を招くだけでなく それらを起因としたオイル滲みなど市場不具合につながる恐れがあることは一般的に知られています そのため FIPGにもそうしたリスクに対して接着ロバスト性の向上が強く求められています ( 接着性の判断基準については図 -4) 試験実施 凝集破壊 (CF) (a 面 ) 側面 (b 面 ) 凝集破壊は部材に対し 接着性が保たれていることを示し 接面漏洩の観点からシール剤としてこちらが望ましい正面 (a 面 ) (b 面 ) 両面にシール剤が付着 しっかり接着しているということ 界面破壊 (AF) 側面 正面 せん断試験片を横から見た図 (a 面 ) (a 面 ) 片面のみシール剤が付着 (b 面 ) (b 面 ) 図 -4 凝集破壊と界面破壊 4

4. 商品紹介 これらの課題を克服した新しい商品として ThreeBond 1 2 2 7 H ThreeBond 1217 P( 以下 TB1227H TB1217Pと略す ) の特長 物性について紹介します ( 表 -1 表 -2) 4-1 TB1227H( 脱アルコールタイプ ) 縮合ガスとしてアルコールガスを放出するタイプのFIPGで 欧州圏で発がん性物質に区分される MEKO を発生させません これまでの脱アルコールタイプのデメリットであった硬化性の遅さを改善しています 従来のFIPGと比べ耐油性と油面接着性に優れ 脱脂工程のバラつきやオイル汚れ等での従来のFIPGでは十分な接着性が得られない部分のシール 接着用途に適しています 4-2 TB1217P( 脱 MIBKOタイプ ) 縮合ガスとして MIBKO( メチルイソブチルケトオキシム ) を放出するタイプの FIPGで 欧州圏で発がん性物質に区分されるMEKO を発生させません 脱アルコールタイプの FIPGよりも硬化性に優れ 従来の脱 MEKOタイプの FIPGと同等の硬化速度を発揮します また 優れた油面接着性を有しており 脱脂工程のバラつきやオイル汚れ等での従来の FIPGでは十分な接着性が得られない部分のシール 接着用途に適しています すべての油種に対して効果があるわけではありません 脱脂洗浄後の使用を前提とし 対応できる油種や濃度については確認が必要です 表 -1 性状 性 状 単位 従来品 A TB1227H 従来品 B TB1217P 試験方法 備 考 硬化形態 脱アルコール脱アルコール 脱 MEKO 脱 MIBKO 外 観 黒色 黒色 灰色 黒色 3TS-2100-002 粘 度 Pa s 200 230 330 260 3TS-2F30-001 SOD 比 重 1.47 1.39 1.36 1.36 3TS-2500-002 指触乾燥時間 min 90 10 5 6 3TS-3130-003 厚膜硬化性 mm 1.7 2.3 3.0 2.9 3TS-3160-005 1 日 試験環境 :23, 50%RH 表 -2 硬化物特性 性状単位従来品 A TB1227H 従来品 B TB1217P 試験方法備考 硬さ A30 A58 A51 A57 3TS-2B00-004 伸び率 % 420 280 470 430 3TS-4190-005 引張強さ MPa 2.1 2.3 2.6 2.4 3TS-4190-005 引張せん断接着強さ MPa 1.7 1.8 2.6 1.9 3TS-4100-023 Al/Al 硬化条件 :23, 50%RH 168h A l: アルミニウム 5

5.ThreeBond1227H 各種評価 5-1 耐薬品性 標準条件 (23,50%RH 168h) で硬化させた 試験片を120 のエンジンオイル及び冷却液に4 日間浸漬させ 物性の変化を確認しました 従来のFIPGと比較し 良好な特性を維持しています ( 図 - 5-1 ) 特に耐エンジンオイル性に優れ 長期間の浸漬試験後も良好な接着性を保持しています ( 図 - 5-2 ) AI せん断接着強さ (MPa) 3.0 2.5 初期耐エンジンオイル耐冷却液 従来品 A 脱アルコール TB1227H 従来品 B 脱 MEKO 図 -5-1 TB1227H の耐薬品性試験結果 (AI/AI) 100 引張従来 FIPG 引張せん断接着強さは著しい低下はないものの 凝集破壊の状態は徐々に下がり 5% 付近でほとんど界面破壊 (AF) となってしまいます ( 図 -6-1 図 - 6-2 ) TB1227H 油面濃度 10% まで 引張せん断接着強さ 凝集破壊率ともほぼ低下がなく 高い接着ロバスト性を維持しています ( 図 -6-1 図 -6-2) 上記の試験結果から TB 1227 Hは従来 FIPGと比較して優れた油面接着性を有していることが見て取れます 従来品 A TB1227H 1.6 1.2 0.8 0.4 凝集破壊率 引張せん断接着強さ 0 250 500 750 1000 1500 浸漬時間 (h) 図 -5-2 TB1227H の長期耐エンジンオイル性試験結果 (AI/AI) 80 60 40 20 凝集破壊率 (%) 凝集破壊率 (%) 10 8 6 4 ブランク 1% 3% 5% 7% 10% 油面濃度 図 -6-1 従来品 A 油面接着試験比較結果 (AI/AI) TB1227H 2 5-2 油面接着性油分等の汚れが付着した部材に対する接着性の確認方法として エンジンオイルを溶剤にて規定濃度に希釈し アルミニウム板に付着させたものを試験片として用いて 引張せん断接着強さを確認しました ブランク 1% 3% 5% 7% 10% 油面濃度 図 -6-2 従来品 ( 脱アルコールタイプ ) の油面接着性試験結果 (AI/AI) 6

6.ThreeBond1217P 各種評価 6-1 油面接着性エンジンオイルを溶剤にて規定濃度に希釈し アルミニウム板に付着させたものを試験片として用いて 引張せん断接着強さを確認しました 従来 FIPG 油面濃度 1% 付近から引張せん断接着強さ 凝集破壊率ともに下がり始め 5% 付近でほとんど界面破壊 (AF) になっています ( 図 -7-1 図 -7-2) 3.0 従来品 B 2.5 TB1217P TB1217P 油面 7% 付近まで 引張せん断接着強さ 凝集破壊率ともに低下は見られず 接着性を維持しています ( 図 -7-1 図 -7-3) 左記の試験結果から TB 1217 Pは従来 FIPGと比較して優れた油面接着性を有していることが見てとれます 6-2 長期耐久性標準条件 (23,50%RH 168h) で硬化させた試験片を150 のエンジンオイルに長期間浸漬させ 物性の変化を確認しました 長時間の浸漬条件においても従来 FIPGと比較し同等以上のせん断接着強さを維持しています ( 図 - 8-1 ) また 150 の耐熱性試験も実施し 長期間高温に放置された場合の物性変化も確認しました エンジンオイルの浸漬試験と同様に 従来 FIPGと比較して同等以上のせん断接着強さを維持しています ( 図 -8-2) n=1 n=2 ブランク 1% 3% 5% 7% 10% 油面濃度 図 -7-1 TB1217P の油面接着性評価結果 (AI/AI) 脱脂面 油面 ( ) 3.0 2.5 従来品 B TB1217P n=3 0 200 400 600 800 1000 1200 耐久時間 (h) 1% 3% 5% 7% 10% 図 -7-2 従来 FIPGの凝集破壊率状態 図 -8-1 4.5 4.0 TB1217P の長期耐エンジンオイル性試験結果 n=1 n=2 n=3 脱脂綿油面 1% 3% 5% 7% 10% 図 -7-3 TB1217Pの凝集破壊率状態 P4 図 4を参照 3.5 3.0 2.5 従来品 B TB1217P 0 200 400 600 800 1000 1200 耐久時間 (h) 150 図 -8-2 TB1217Pの長期耐熱性試験結果 7

おわりに 今回は欧州圏での化学物質管理基準に対応し 油面接着性にも優れる脱 MEKOフリータイプの TB1227H TB1217Pをご紹介しました これらの製品は 工場での工程削減 有機溶剤等の使用量低減に貢献でき 地球環境保全の一助となる製品です スリーボンドでは 今後もお客様のニーズに対応した製品開発を進めると共に 作業環境にも配慮した製品の開発を継続して取り組んでまいります < 法規出典 > 1)Dangerous Substances Directive" / Substance Directive 67/548/EEC 2)Dangerous Products Directive" / Preparation Directive 1999/45/EC 3)Classification Labelling and Packaging of substances and mixtures" / Regulation (EU) 1272/2008 株式会社スリーボンド 研究開発部 開発一部 輸送開発課 井上 正雄 小山 昭広 8 株式会社スリーボンド 東京都八王子市南大沢 4-3-3 電話 042(670)5333