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年齢 年齢 1. 柏 2. 名古屋 3. G 大阪 4. 仙台 5. 横浜 FM 6. 鹿島 -19 歳 0 0.0% 0 0.0% 2 2.7% 1 1.4% 3 4.0% 3 4.6% 歳 4 5.0% 5 6.7% 7 9.6% 2 2.7% 2 2.7% % 25-2

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小型科学衛星シリーズにおける標準バスシステムの開発について 2007 年 11 月 5 日 小型科学衛星プリプロジェクトチーム

標準バス開発の目的 JAXA 宇宙科学研究本部では 従来の中型科学衛星の補完的な位置付けとして 小型科学衛星計画を立ち上げ 特徴ある宇宙科学ミッションを迅速かつ高い頻度で実現することを目指している そこでは 宇宙科学コミュニティが提案するミッションの多様性を十分吸収しつつ 低コストで短期に小型衛星を開発する必要がある 上記を達成するため シリーズ化衛星 のコンセプトに基づき 提案されているミッションの要求仕様を包含し得る標準バスを開発する ( 過去の内外における標準バス開発の教訓に十分留意しつつ 開発を進める ) 2

小型科学衛星ワーキンググループ ( 参考 ) WG 名称 WGメンバー所属 1 小型衛星の編隊飛行による高エネルギー領域広天走 大阪大 名大 JAXA 神戸大 査衛星 (FFSAT) 2 超小型精密測位衛星 (PPM-Sat) 京大 東大 NICT 極地研 国土地理院 気象研究所 北大 奈良産業大 総合地球環境学研究所 3 高感度ガンマ線望遠鏡 (CAST) JAXA スタンフォード大 東大 埼玉大 理化学研 大阪大 広島大 4 小型重力波観測衛星 (DPF) 東大ほか 5 ダークバリオン探査衛星 (DIOS) 首都大学東京ほか 6 超高層大気撮像観測小型衛星 (IMAP) 京大 名大 東北大 極地研 東大 JAXA NICT 北里大 奈良女子大 島根大 駒澤大 京都女子大 北大 九大 電通大 千葉大 岐阜大 電子光法研 立命館大 7 地球電磁環境モニター衛星 (ELMOS) 首都大学東京 九大 電通大 東海大 千葉大 学芸大 JAXA IPE CNRS UNAM 8 惑星観測用小型宇宙望遠鏡 (TOPS) 東北大 JAXA 極地研 東大 NICT 京大 九大 9 小型衛星によるジオスペース探査 (ERG) 東北大 立教大 JAXA 東大 東海大 金沢大 京大 富山県立大 名大 九大 NICT 極地研 電通大 吉備国際大 理研 大阪府立大 北大 統計数理研 愛媛大 東工大 10 X 線ガンマ線変更観測小型衛星 (POLARIS) 大阪大 金沢大 山形大 理研 京大 JAXA 名大 東工大 立教大 広島大 11 宇宙テザー技術の検証 首都大学東京 静大 東北大 東工大 九大 香川大 九工大 核融合科学研 JAXA ESA/ESTEC, マドリッド大 コロラド州立大 12 小型衛星を用いた太陽発電衛星技術実証 JAXA 13 小型月実験機 JAXA 横国大 金沢大 東大 東北大 九大 京大 14 小型探査機による金星気球技術実証 JAXA 東大 名大 筑波大 15 磁気プラズマセイル JAXA 京大 防衛大 高エネルギー加速器研究機構 静岡大 九大 東京農大 16 小型探査機によるソーラー電力セイルの展開 宇宙実証 JAXAほか 3

標準バスのイメージ 惑星望遠鏡衛星 3 軸姿勢制御太陽同期軌道多様なミッションに適用可能 X 線天文衛星 3 軸姿勢制御 LEO 軌道 標準バス 磁気圏観測衛星スピン姿勢制御長楕円軌道 4

標準バスのイメージ 5

標準バス開発の方針 提案ミッションの要求を十分に吟味して 包括的なバス仕様を設定する - 将来の匿名的なミッション要求に基づいた議論は 標準バス構想の破綻のもとであることに留意して進める Mission Payload Bus 安易な民生部品の使用などによる低コスト化ではなく - 標準化レベルの階層化 - 仕様のカタログ化 / メニュー化 - モジュール化などの方法を積極的に採用し 衛星バスコア部 + バス部オプション + ミッション部 の構成におけるバスコア部の再利用性を高めることでコストを下げる キーワード多様なミッション要求を支える柔軟な標準バス (Flexible Standard Bus) 6

標準バス開発の方法 1 標準化階層の定義 目指すべき標準化の階層を右図の Ⅰ~Ⅳ のように定義する - 各ミッションへの標準バスの適用性について 提案全体の 割に適用可能 といった画一的な考え方は採らず 右図の階層レベルで仕分けする 多くの理学観測ミッションは衛星形態の標準化 ( 階層 Ⅳ) までを狙うことができる 大規模な推進系を要するなどの理由で形態の標準化が困難な場合には ( 例 : 深宇宙ミッション ) 計算機や姿勢センサなどの機器を標準バスから使用する ( 階層 Ⅲ) 標準化のレベル衛星形態の標準化 ( 階層 Ⅳ) 搭載機器の標準化 ( 階層 Ⅲ) 電気 熱 機械 I/F の標準化 ( 階層 Ⅱ) 設計開発手法の標準化 ( 階層 Ⅰ) 上記を満たすため データ処理における SpaceWire の採用など 各所の I/F を標準化する ( 階層 Ⅱ) シミュレーションや試験 文書管理などの手法は 大前提として標準化し 開発 製造に係る工数を削減する ( 階層 Ⅰ) 7

標準バス開発の方法 2 仕様のカタログ化 / メニュー化 仕様をカタログ化 / メニュー化し ミッション要求の幅を吸収する - 太陽電池パネルの枚数 - リチウムイオン電池の容量 - 姿勢センサ ( ジャイロやスタートトラッカなど ) の精度従来の中型科学衛星を オーダーメイド 古典的な標準バスを 既製品 とすれば セミオーダーメイド 的な位置づけを狙う 機器を容易に換装するためには 標準 I/F が必須となる 太陽電池パネル = 2 枚 / 翼 太陽電池パネル = 3 枚 / 翼 太陽電池パネル = 1 枚 / 翼 8

標準バス開発の方法 3 モジュール化 設計のアプローチとして 衛星機能をグループ / モジュール的な単位に分け その組み合わせとして 衛星機能を実現していく手法をとる - モジュール化を支える機能素子 (SpaceWire ASIC など ) は JAXA 横断的な枠組みで開発を進めている 従来衛星のコスト分析では 機器の個数がコストに強い感度を持っており 低コスト化には一定の 統合化 が必要となるが モジュール化の効果と十分なトレードオフを行った上で 設計を再帰的に収斂化させることが必要となる Subsystem A TypeⅡ Modularization Cost? Integration Cost? Integration TypeⅠ TypeⅠ Subsystem B (a) Conventional (b) Modularization (c) Reconfiguration 1 (d) Reconfiguration 2 9

標準バス開発の進捗状況 ( 仕様案 ) ミッション要求を包括する標準バスの仕様案 ペイロード重量 200kg 以下 ( 衛星全体で 400kg 以下 ) ペイロード電力 ペイロード機器サイズ 姿勢制御方式 三軸姿勢制御精度 三軸姿勢制御安定度 三軸姿勢決定精度 姿勢マヌーバ能力 データレコーダ量 ダウンリンクレート 推進系 300W 以下 取り付け面積 1m 1m 程度 ( 高さは TBD) 三軸 / スピンの両方式に対応可能 1 分角以下 10ms で 0.1 秒角以下 0.5 分角以下 10 分間で 180 度の姿勢マヌーバ可能 1GB 以上 LEO で 8Gbit/day のミッションデータをダウンリンク可能 搭載の有無を検討中 ( オプションとして燃料 15kg 程度の 1 液推進系を搭載する案など ) 耐放射線性 電磁環境 通常の近地球衛星に準じるレベル ( より要求の厳しいミッションには付加的な対応が可能なように設計 ) 特に要求の厳しいミッションには適宜付加的な対応が可能なように設計 10

比較 これまでに JAXA が打ち上げた小型衛星は ピギーバック打上げによるマイクロサット ( マイクロラブサット れいめい ) であったが 本小型科学衛星シリーズはよりミッションを指向したミニサットクラス (250~400kg) である 海外では 標準バスを利用した小型衛星シリーズとして CNES の Myriade が有名である 本小型科学衛星計画と比較すると 最大許容ミッション重量は 80kg( 衛星重量 150kg) 程度と小さいにも関わらず バス部コストは 10M ユーロと同程度である 小型衛星で有名な英 SSTL 社の DMC(Disarster Monitoring Constellation) 衛星群も 衛星重量 100~150kg でバス部コストは 10M ユーロである (TOPSAT など ) 性能 ( 特に姿勢制御精度 ) マイクロラブサット れいめい SDS-1(?) 小型科学衛星 Myriade Platform 中型科学衛星 コスト 重量 DMC+4 ( 中国 ) 11

比較 米国 DOD 衛星との比較 米国 NASA 衛星との比較 Surrey DMC 小型科学衛星 NASA SMEXクラス小型科学衛星 Myriade ( 出典 : http://www.aero.org/publications/crosslink/winter2001/04.html) 比較的類似のミッション機器が搭載される軍事衛星や地球観測衛星と比較しても 本シリーズで開発するバスのコストは同等程度であるといえる 例えば 小型衛星で有名な英 SSTL (Surrey Satellite Technology Ltd) 社の最新バスである DMC (Disarster Monitoring Constellation) 衛星群は 衛星重量 100~150kg に対し バス部コスト 10M ユーロである (TOPSAT など ) 海外の小型の科学プログラムと比較しても 本シリーズの小型科学衛星のコストは同程度か あるいはむしろさらに安いものであるといえる 良い比較対象となる NASA の SMEX (Small Explorer) シリーズは 180~250kg の衛星重量に対して 50M$ である また 標準バスを利用した小型科学衛星シリーズとして有名な CNES の Myriade は 衛星重量 150kg 程度に対して バス部コストは 10M ユーロである 12

ミッション選定のしくみ ( 参考 ) 宇宙科学コミュニティからの設置提案をうけ 宇宙理学委員会 宇宙工学委員会の下に小型科学衛星 WG を設ける ミッション選定の中核を担う 小型科学衛星専門委員会 は 理 工学委員会で指名された委員 及び他本部推薦の委員により構成される 小型科学衛星専門委員会は ミッション意義や検討レベルを鑑み 複数の重点 WG を選定する 理 工学委員会は 重点 WG に対して戦略的開発経費から PrePhase-A 資金を支援する 現在 重点 WG として 小型衛星によるジオスペース探査 (ERG)WG ダークバリオン探査衛星 (DIOS)WG 小型重力波観測衛星 (DPF)WG 磁気プラズマセイル WG が採択されている また 小型月探査技術実験機検討 WG 小型衛星の編隊飛行による高エネルギー領域広天走査衛星 (FFAST)WG も部分的採択の扱いとされ 戦略的開発経費が支給されている 本部長は小型科学衛星専門委員会の報告をうけて 各号機のミッション候補を決定する 但し 1 号機については 標準バス開発と同時並行になる特殊事情により 例外的に宇宙科学研究本部内で惑星観測用小型宇宙望遠鏡 (TOPS) をミッション候補として直接選定している 13

ミッション選定のしくみ ( 参考 ) 本部長 決定 宇宙理学委員会 委員 ( 各 6 名 ) 宇宙工学委員会 小型科学衛星 専門委員会 ミッション候補を選定し 結果報告 戦略的開発経費から重点 WG に PrePhaseA 資金を支援 重点 WG の選定 重点 WG から各号機のミッション候補を選定 WG WG WG WG WG WG WG WG 委員 ( 若干名 ) WG WG WG WG WG WG WG WG 他本部 WG の設置を提案 コミュニティ WG の設置を提案 14