灰色と緑の雄大なコントラスト( 阿蘇山) 阿蘇山は 南北二十五キロ 東西十八キロ 周囲百二十八キロの世界最大級のカルデラに囲まれた活火山だ 中央部には根子岳 中岳 高岳 杵島岳 烏帽子岳の阿蘇五岳があり 最高峰の高岳の標高は 一五九二mで語呂合わせで ひごのくに と覚えやすい 今回は 五月の最後の日に仙酔峡から登る 例年なら一面に群生したミヤマキリシマが見られるらしいが 今年は 火山ガスの影響か ほとんど枯れておりピンクの花は全く見られない バカ尾根とも呼ばれる急登の仙酔尾根を登る 尾根の下部は赤茶色の金属でメッキしたような岩が溶岩で固められて歩きやすい登山道だが 上部は噴火の堆積物が風化した滑りやすいザレた登りになる 木々もなく遮るものが何も無いので 強い日射に体が焼かれる 熱中症にならないように水分を小まめに補給しながら登る 尾根の左側には鷲ヶ峰と呼ばれるギザギザの岩峰が見える 尾根を登りきると高岳の火口壁の縁に出る 南側の眼下には大鍋と呼ばれる高岳の噴火口が広がり それを取り巻くように火口壁が聳えている まず 天狗の舞台と呼ばれる大きな円柱状の岩がそそり立つ高岳の東峰に向かう 東峰からは北側の眼下にギザギザの鷲ヶ峰が見え 東側には阿蘇五岳で唯一の尖った岩峰の根子岳が見える その後方には裾の緩やかな金字塔( ピラミッド) のような形をした祖母山が薄らと見える 東峰の周辺にはミヤマキリシマが群生し ピンクの花々が一面に咲いている ここからもう一度火口壁を戻り 最高峰の高岳へ 高岳から一旦下り登り返すと中岳頂上 中岳からは火口原が一望でき 灰色の砂漠のように広がる砂千里ヶ浜 ぽっかりと巨大な口を開けた噴火口と荒涼とした草木が一本もない灰色の世界が広がっている 一方その後方には 烏帽子岳 杵島岳 草千里ヶ浜と緩やかな緑の草原が広がっている 灰色の死の世界と緑色の生の世界が絶妙のコントラストで眼前に広がっている 自然の不思議を実感する 現在の噴火警戒レベルは1( 平常) なので 火口東の展望台に向かう 中岳からの急なザレた下りを滑らないように気をつけながら下る 展望台からは 大きく口を開いた噴火口が目の前に見える 直径六百m 深さ百三十m 周囲四キロの巨大な噴火口であり 中には四つの火口がある 残念ながらここからは 湯だまりは見えないが水蒸気と火山性ガスが吹き上がっている この湯だまりの供給源は雨水だけではなく 地下のマグマから水蒸気や火山性ガスが湖底を通じて供給され それがバランスを保っていることで火口湖が維持されているらしい 展望台からは 急な遊歩道を下る 仙酔峡ロープウェイは運休中というが 火口東駅の建物は窓ガラスが割れ 廃墟のような佇まいで とても運転が再開できるようには感じられない 仙酔峡の駐車場までは ここから約一キロ半の下り 舗装された歩道の急な下りは割と疲れる 火口東から四十分弱で無事駐車場に到着 初夏の暑い中の登山でかなり疲れたが 灰色と緑色の世界から死と生の儚さを感じるとともに 阿蘇山の雄大な自然を実感する登山だった 中岳からの巨大な噴火口と緑の烏帽子岳 杵島岳東峰からの根子岳とミヤマキリシマ
口展望台阿蘇山は 熊本県にある活火山で 日本百名山の一つ 典型的な二重式の火山で 中央部にある阿蘇五岳 ( 根子岳 (1,433m) 中岳(1,506m) 高岳(1,592m) 烏帽子岳(1,337m) 杵島岳(1,321 m)) を阿蘇山と呼ぶことが多いが 広い意味では外輪山 火口原も含めて阿蘇山と呼ばれる 外輪山は東西 18Km 南北 25Km 周囲 128Km もある世界最大級のカルデラである 阿蘇山の外輪山と中央部の阿蘇五岳 1 日時 : 平成 26 年 5 月 31 日 ( 土 ) 2 天気 : 晴れ 3 行動の概要及び概念図 羽田空港熊本空港 SNA11 便 9 時頃 11 時頃 せんすい仙酔 せんすい熊本空港 ~ 阿蘇山 ( 仙酔峡 ) へ移動 レンタカーを借りて 11 時半過ぎに出発 峡高岳 ( 東峰経由 ) 中岳火口展望台仙酔峡 12:48 2h12 15:00-10 15 15:25 17 15:42 38 16:20 せんすい せんすい阿蘇山 ( 仙酔峡 ) から熊本市内へ移動 リバーサイドホテル着 仙酔峡ロープウェイ ( 運休中 ) 火口東火仙酔峡 P 鷲見平 ミヤマキリシマ群生地 虎ヶ峰 鷲ヶ峰 阿蘇山ロープウェイ 火口西 中岳 (1506m) 天狗の舞台大鍋 ( 高岳東峰 ) 高岳 (1592m) 高岳火口壁 阿蘇山公園道路 砂千里ヶ浜
4 行動計画九重連山の一面のミヤマキリシマ (5 月末から 6 月中旬 ) が見たくて この時期に計画をたてる 今年の 2 月に利用した航空券 レンタカー 宿泊代がセットで 3 万円台のツアーを再び利用する 3 日間で 九州中部の三つの百名山を巡る 九重連山では 法華院温泉に是非宿泊したかったので 少しでも空いてそうな日曜日に宿泊するよう計画する 初日は早朝の飛行機で熊本へ まず阿蘇山に登った後 熊本市内のホテルで宿泊 2 日目は 午前中に祖母山に登り 九重山に移動して坊ガツルへ その後平治岳のミヤマキリシマを見に行き 時間があれば頂上へ 最終日は 中岳 久住山へ登った後に下山 温泉に入った後 熊本空港に戻り帰宅の途に就く 3 日間で盛りだくさんの計画だが 体調や天候が悪いときは中止も考慮し 無理のない行動を心掛ける 特に阿蘇山の火山規制情報には注意する ( 計画段階では平常の 噴火警戒レベル 1 ) 5 行動記録 平成 26 年 (2014 年 )5 月 31 日 ( 土 ) 5 月 31 日 ( 土 ) 早朝に自宅を出発し 羽田空港に向かう 土曜の朝 5 時頃の渋谷は朝まで飲んでた人とこれから仕事に向かう人が混在し雑然としている その中を違和感を感じながら登山用の荷物を持って移動する 6 時過ぎに羽田空港に到着 受付でツアーの手続きを行い 07:05 発のソラシド便に乗る 乗客の搭乗が終わり飛行機が移動を始めた直後に停止し動く気配がない 機長からのアナウンスによると右エンジンから燃料が漏れているらしく 整備後の出発になるようだ 消防車が来て安全確認し 駐機場に戻り 整備 燃料補給 エンジンの異常の有無を確認し 約 2 時間遅れで出発 今日の予定 ( 阿蘇山登山 ) がタイトなだけに やや不安になる 熊本空港に到着後 レンタカーを借りて仙酔峡に移動する 羽田空港の消防車 せんすいきょう 仙酔峡 12:48 仙酔峡の駐車場に到着後 準備 出発する この時間から登る人は少ないと思っていたが ツアーの団体が登り始 めている 約 2 時間遅れで出発 気温も 30 度近くまで上がっており もの凄く暑い 仙酔峡は約五万本のミヤマキリシ マが群生しており この時期は一面がピンクに染まるらしいが 火山性ガスの影響か 今年は全滅で全く咲いていな い ミヤマキリシマを観賞するための遊歩道を過ぎ 別名 バカ尾根 とも呼ばれる急登の仙酔尾根を登る 下部の登 山道は 赤茶色の金属メッキをしたような岩がしっかりと固まっていて歩きやすいが 上部は噴火の堆積物が風化し た脆くて滑りやすい登山道になる 高岳の火口壁が覆いかぶさるように見える急登を浮石に気をつけながら登る 左 側には鷲ヶ峰と呼ばれるギザギザのピークが見える 尾根を登りきると高岳の火口壁の縁に出る 南側の眼下には大鍋と呼ばれる高岳の噴火口が広がっている 仙酔峡の駐車場登山口花酔い橋 仙酔尾根と後方に広がる外輪山 ( ミヤマキリシマは全く咲いていない )
赤茶色の金属メッキされたような岩左に見えるギザギザの鷲ヶ峰ザレた登りの上部 高岳東峰 14:37-44 まず 高岳の火口壁上を天狗の舞台と呼ばれる東峰に向かう 天狗の舞台は 円柱状の大きなテーブルような岩がそそり立っており 確かに舞台のように見える 一旦下り 岩の基部を南側から巻いて東側から舞台の上に上がる さらに東に進むと五岳の中で唯一ギザギザに尖った根子岳が正面に見える この付近はピンクのミヤマキリシマが群生しており ピンクの花と根子岳の緑のコントラストが美しい 根子岳の後方には 緩やかに裾野が広がる三角形のピラミッドのような形をした祖母山が薄らと見える 天狗の舞台に戻って 急激に切れ落ちた北側を見下ろすと 仙酔尾根を登っている時に左側に見えた鷲ヶ峰が眼下に見える かなりの高度感だ 東峰から火口壁上を戻り高岳に向かう 火口壁の高岳と東峰への分岐高岳と大鍋と言われる高岳火口天狗の舞台と呼ばれる高岳東峰 祖母山 根子岳後方のピラミッド形の祖母山 ギザギザに尖った根子岳とミヤマキリシマ 天狗の舞台から北側眼下に鷲ヶ峰のギザギザが見える
高岳 東峰周辺のミヤマキリシマの群生 天狗の舞台の基部から見た大鍋 ( 高岳火口 ) と高岳 高岳 (1,592m) 15:00-10 高岳と東峰の分岐まで戻り 一登りすると阿蘇山の最高峰高岳の頂上に出る 北側には薄らと九重連山が霞んで見え 西側には中岳とその後方に烏帽子岳 杵島岳が見える 中岳の向こうからは水蒸気がもうもうと上がっており 活動の激しさがわかる 烏帽子岳 中岳 杵島岳 高岳頂上 中岳と烏帽子岳 杵島岳 天狗の舞台 根子岳 祖母山 大鍋 ( 高岳噴火口 ) と火口壁 薄らと九重連山が見える 東峰 ( 天狗の舞台 ) 根子岳 祖母山
中岳 (1,506m) 15:25 高岳から少し下って 登り返すと中岳頂上 中岳からは大きな中岳噴火口 ( 直径 600m 深さ 130m 周囲 4Km) と南側に灰色に広がる砂千里ヶ浜が良く見える その向こうには対照的に 烏帽子岳 草千里ヶ浜 杵島岳と緑の緩やかな草原が広がっている 灰色に広がる死の世界と緑の生の世界がコントラストをなし 自然の不思議を感じる 火山ガスで枯れたミヤマキリシマもやがて再生されるのだろう 死と生という自然の摂理を実感する光景だ 中岳頂上 砂千里ヶ浜 大きな噴火口と烏帽子岳 杵島岳 噴火口と後方に広がる草千里ヶ浜 火口展望台 15:42 阿蘇山は活動中の火山なので火山性ガスへの注意が必要で 火山規制情報を事前に確認しておかなければならない 今日の噴火警戒レベルは 1 で 平常の状態なので 火口東の展望台まで行く 中岳から滑りやすいザレた急な登山道を下る 滑らないように小股で 落石を起こさないように気をつけながら下り 火口東展望台へ ここからは 正面に巨大な噴火口が見え 水蒸気がもうもうと上がっている 残念ながら火口の中の湯だまりは見えないが 火山が活動しているのは実感できる この湯だまりは雨水が供給源と考えられていたが 蒸発量の方がはるかに大きく雨水だけでは涸れてしまうらしい 湯だまりが維持されているのは地下のマグマから水蒸気や火山性のガスが湖底を通じて供給され 流入量と蒸発量のバランスが保たれているためらしい 上空を遊覧観光のヘリが何度も飛行している 噴火口を間近に上空から見られれば かなりの迫力だろうと思う 自分もいつか乗ってみたいものだ
火山からの噴出物が堆積して地層を形成しているのがわかる ザレた中岳からの下り 遊覧飛行のヘリ 水蒸気と火山ガスを噴き上げる巨大な火口 仙酔峡 16:20 展望台から急な遊歩道を下る 仙酔峡ロープウェイは現在運休中であるが 火口東の駅の建物は窓ガラスは割れ 朽ちていて まるで廃墟のようになっている とてもこのままでは運転再開はできないだろう 管理されない建物は 一気に朽ちていくことを実感する 中岳と崩れそうな斜面避難壕 ( シェルター )
仙酔峡ロープウェイの火口東駅 仙酔峡ロープウェイの火口東駅 仙酔峡の駐車場 仙酔尾根と後方の鷲ヶ峰を見上げる 飛行機が遅れたため 約 2 時間遅れての行動だったが 計画通りのコースを歩くことができた 日差しが強く暑い中での登山で疲れたが 阿蘇の雄大な自然を満喫できた 特に 火山性ガスによって枯れたミヤマキリシマ 草木一本生えていない灰色の砂千里ヶ浜と噴火口 対照的に一面緑の草原になっている烏帽子岳 草千里ヶ浜 杵島岳 運休になって廃墟のようになっている仙酔峡ロープウェイの火口東駅と死の世界と生の世界をイメージさせるものが共存しており 死と生を考え 自然の厳しさと優しさを感じることができた登山だった この後 火の山温泉 どんどこ湯 で入浴し 熊本のホテルに移動する 夜は馬刺しを食べて栄養を補給し 疲れを 癒して翌日からの登山に備えた
ヶ岳檜洞丸丹沢山南アルプス蛭熊本行きの飛行機からの山の写真 丹沢山 仙丈ヶ岳 甲斐駒ヶ岳 北岳間ノ岳塩見岳 東岳 荒川岳中岳 赤石岳 塔ノ岳聖岳
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