うつ病・不安障害におけるベンゾジアゼピンの臨床的位置づけ

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別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

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抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

調査結果報告書 平成 29 年 2 月 28 日独立行政法人医薬品医療機器総合機構 Ⅰ. 品目の概要 [ 一般名 ] 別添 1 のとおり [ 販売名 ] 別添 1 のとおり [ 承認取得者 ] 別添 1 のとおり [ 効能 効果 ] 別添 1 のとおり [ 用法 用量 ] 別添 1 のとおり [ 調

平成21年8月30日

第二問 : 睡眠障害 ( 不眠症 ) の種類は大きく分けて 入眠障害 中途覚醒 熟眠障害 早朝覚醒 の四つがあります それぞれの種類についてどのような症状であるか それぞれの図を参考に説明 してください 入眠障害 床についてもなかなか寝付けない症状が入眠障害である 日常的に 1 時間以上眠れずに苦痛

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改訂内容 ( 部追加 改訂 部削除 ) ビ シフロール 錠, ミラペックス LA 錠 共通 改 訂 後 改 訂 前 2. 重要な基本的注意 2. 重要な基本的注意 (5) レボドパ又はドパミン受容体作動薬の投与により 病的賭博 ( 個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず 持続的に

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301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

賀茂精神医療センターにおける精神科臨床研修プログラム 1. 研修の理念当院の理念である 共に生きる 社会の実現を目指す に則り 本来あるべき精神医療とは何かを 共に考えて実践していくことを最大の目標とする 将来いずれの診療科に進むことになっても リエゾン精神医学が普及した今日においては 精神疾患 症

統合失調症における睡眠障害下記疾患における不安 緊張 抑うつおよび筋緊張頸椎症 腰痛症 筋収縮性頭痛 この薬は 体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり 量を加減したりすると病気が悪化することがあります 指示どおりに飲むことが重要です この薬を使う前に 確認すべきことは? 次の人は この薬を使

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別添(手引き)決裁了

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3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

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タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

幻覚が特徴的であるが 統合失調症と異なる点として 年齢 幻覚がある程度理解可能 幻覚に対して淡々としている等の点が挙げられる 幻視について 自ら話さないこともある ときにパーキンソン様の症状を認めるが tremor がはっきりせず 手首 肘などの固縮が目立つこともある 抑うつ症状を 3~4 割くらい

AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

数理システムユーザーコンファレンス 2018 ベンゾジアゼピン系受容体に 作用する睡眠薬の有害事象 発現傾向の類似性と特異性 古山愛紗, 大坪愛実, 野口義紘 *, 上野杏莉, 松山卓矢, 勝野隼人, 戸田有美, 杉岡まゆ子, 村山あずさ, 舘知也, 寺町ひとみ * 岐阜薬科大学病院薬学研究室

助成研究演題 - 平成 27 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 改良型 STOPP を用いた戦略的ポリファーマシー解消法 木村丈司神戸大学医学部附属病院薬剤部主任 スライド 1 スライド 2 スライド1, 2 ポリファーマシーは 言葉の意味だけを捉えると 薬の数が多いというところで注目されがちで

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

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千葉大学病院 平成 30 年度第 1 回薬剤師卒後教育研修講座年間テーマ 日常診療に強い薬剤師 ~ 日々の課題に向き合おう ~ ( 主催 : 千葉大学医学部附属病院薬剤部 大学院薬学研院 薬友会 ) < 高齢者の薬物治療を考える (1)> 睡眠薬の適正使用と ベンゾジアゼピン系薬の減量方法 千葉大学医学部附属病院薬剤部 築地茉莉子 2018 年 4 月 21 日千葉大学西千葉キャンパスけやき会館大ホール

不眠症 ( 睡眠障害 ) 成人の 30% が入眠困難 中途覚醒 早朝覚醒 熟眠困難などの不眠症状をもつ 6~10% が不眠症に罹患している 慢性不眠は 眠気 倦怠 集中困難 抑うつや不眠をともなう 不眠症は 長期欠勤 医療費の増加 生産性の低下 事故の増加など社会経済的損失が大きい

不眠症治療のエンドポイント 眠れる 日中の機能改善

睡眠薬の適正使用

睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン 2013/06/13 睡眠薬の適正な使用と休薬のための 診療ガイドライン - 出口を見据えた不眠医療マニュアル - 1) 厚生労働科学研究 障害者対策総合研究事業 睡眠薬の適正使用及び減量 中止のための診療ガイドラインに関する研究班 2) 日本睡眠学会 睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループ編 http://www.ncnp.go.jp/pdf/press_130611_2.pdf

睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインより

不眠の薬物療法 薬物療法の前に 評価と睡眠衛生指導 薬物療法が有効であったら 休薬トライアル 薬物療法なしで治療終了

睡眠薬の種類 ベンゾジアゼピン受容体作動薬 薬剤名 半減期 (hr) 分類 ゾルピデム 2.1 トリアゾラム 2.9 超短時間型 エスゾピクロン 5.3 ブロチゾラム 7 リルマザホン 11 短時間型 フルニトラゼパム 6.8 ニトラゼパム 23~29 中間型 クアゼパム 36.6 フルラゼパム 24 長時間型 メラトニン受容体作動薬 ラメルテオン オレキシン受容体拮抗薬 スボレキサント

PMDA からの医薬品適正使用のお願い 平成 22 年 8 月 ~ 平成 30 年 4 月 : 全 11 通

http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html

平成 30 年度診療報酬改定 Ⅳ-6 医薬品の適正使用の推進 -2 向精神薬処方の適正化 向精神薬の多剤処方やベンゾジアゼピン系の抗不安薬等の長期処方の適正化推進のため 向精神薬を処方する場合の処方料及び処方箋料に係る要件を見直す また 向精神薬の多剤処方等の状態にある患者に対し 医師が薬剤師等と連携して減薬に取り組んだ場合の評価を新設する

処方料 処方箋料 薬剤料の減算 現行 3 種類以上の抗不安薬 3 種類以上の睡眠薬 3 種類以上の抗うつ薬又は 3 種類以上の抗精神病薬の投薬を行った場合 改定案 3 種類以上の抗不安薬 3 種類以上の睡眠薬 3 種類以上の抗うつ薬 3 種類以上の抗精神病薬又は 4 種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬を行った場合 処方料 20 点 処方せん料 30 点 薬剤料 100 分の 80 処方料 18 点 処方箋料 28 点 薬剤料 100 分の 80

処方料 処方箋料の減算 ( 新設 ) 現行 なし 改定案 不安又は不眠の症状に対し ベンゾジアゼピン系の抗不安薬 睡眠薬が 12 月以上 連続して同一の用法 用量で処方されている場合 処方料 29 点 処方箋料 40 点

新設 ( 減薬の評価 ) 直近の処方時に向精神薬の多剤処方の状態 あるいはベンゾジアゼピン系の薬剤を 12 月以上 連続して同一の用法 用量で処方されていた患者において 減薬の上 薬剤師または看護師に症状の変化と協働して症状の変化等の確認を行っている場合 向精神薬調整連携加算 処方料 処方箋料 12 点 12 点

抗不安薬 睡眠薬の減量や中止が求められる理由 ベンゾジアゼピン系薬は 承認用量の範囲内でも連用による薬物依存が生じることがある 医療機関で処方された向精神薬を飲んで自殺を図る人が増えている

人口 1000 人当たりの 1 日使用量 2007-2009 年のベンゾジアゼピン系 薬使用量 60 50 40 30 20 10 0 日本の成人の 20 人に一人が服用 Reports published by the International Narcotics Control Board in 2010 を改変

ベンゾジアゼピン系薬を 処方する理由 広い対象疾患不安 緊張 抑うつ 神経衰弱症状 睡眠障害 筋緊張 ( 神経症 うつ病 心身症 頸椎症 腰痛症 筋収縮性頭痛 ) 安易な処方 マイナートランキライザーという名称 迅速に得られる安心感や睡眠 ( 効果 ) 自覚されにくい有害作用 ( 口渇や便秘 不快感 依存性など ) 一般診療科での処方

ベンゾジアゼピン系薬の 用量と反応 奇異反応 少量 抗不安作用 大量 鎮静作用 催眠作用 脱抑制記銘力低下認知機能低下 奇異反応

ベンゾジアゼピン系薬による奇異反応 本来鎮静作用を示すはずのベンゾジアゼピン系薬の投与により, かえって不安, 焦燥が高まり, 気分易変性, 攻撃性, 興奮などを呈すること 発生頻度 :0.2~0.7% 症状 1 抑うつ状態 抑うつ症状の発現や増悪 希死念慮 自傷行為 2 精神病状態 躁状態 幻聴 幻視 被害妄想 悪夢 躁状態 3 敵意 攻撃性 興奮 上田幹人 下田和孝臨床精神医学. 35, 1663-1666, 2006

ベンゾジアゼピン系薬が認知機能に与える影響 Bz 系薬の長期使用における認知機能 Bz:Benzodiazepine( ベンゾジアゼピン ) Bz 系薬中止後の認知機能 高瀬勝教ほか. 臨床精神医学. 35, 1653-1658, 2006

ベンゾジアゼピン系薬が自動車運転に及ぼす影響 Zaleplon ゾルピデム Verster JC, Veldhujizen DS, Patat A et al. Current Drug Safty 1 : 63-71, 2006 Verster JC, Veldhujizen DS, Volkers ER. Sleep Medication Reviews 8 : 309-325, 2004

依存を形成するメカニズム BZ 系薬 α3gaba A 受容体 α1gaba A 受容体 http://ellelouisa2.blogspot.jp/2012/06/blog-post.html 改

依存 耐性および離脱症状 依 耐 存 : 薬剤投与が行われないと 我慢できないほどその薬剤がほしくなる ( 精神依存 ) または激しい身体障害を生じる ( 身体依存 ) 状態 性 : 同じ効果を得るために さらに高用量の薬剤投与が必要になる状態 離脱症状 : 薬剤投与の中断により 薬剤投与前にはなかった症状が出現する状態 ( 再燃 反跳現象 )

服用中断における症状 再燃 投与終了後に症状が元の状態に戻る 反跳現象 投与前より症状が悪化する 離脱症状 治療前にはなかった症状が新たに発生する ( 不快感 離人症状 知覚障害 睡眠障害 頭痛 筋痛 攣縮 振戦 大発作 食欲不振 嘔吐 )

ベンゾジアゼピン系薬の退薬症候 1.4 1.2 1 血中濃度短半減期長半減期 反跳現象 薬物欲求 離脱症状 0.8 0.6 0.4 0.2 0-5 0 5 10 15 20 25 30 時間

ベンゾジアゼピン系薬の長期投与後にみられる離脱症状 A. 非特異的症状睡眠障害不安不快 / 被刺激性筋肉痛 / 筋攣縮振戦 / 震え頭痛嘔気 / むかつき / 食欲 体重減少発汗霧視 B. 知覚変化 ( 量的 ) 感覚過敏 ( 音 光 臭い 触覚 ) 感覚鈍麻 ( 味 臭い ) 知覚異常 / 麻痺感 / 微痛感 C. 知覚変化 ( 質的 ) 運動感覚 ( 動揺感 運動知覚障害 ) 視覚 ( 対象動揺 平面のうねり 小視症 大視症 ) 味覚 ( 金属性味覚 奇妙な味覚 ) 聴覚 ( 反響そして共鳴現象 ) 嗅覚 ( 奇妙な臭い ) D. 他の現象離人症 / 現実感消失 E. 主な付随現象精神病てんかん様発作 Schöpf J. Pharmacopsychiatria 16(1), 1-8, 1983

Interdose Rebound Anxiety 反跳性不安が服用の合間に出現すること 半減期短時間型で高力価ベンゾジアゼピン系薬 1 日数回の投与が必要となるもの 乱用のリスクを伴う 消失半減期主な薬剤力価不安障害の治療における特徴 超短時間型トリアゾラム高 短時間 ~ 中間型 長時間型 アルプラゾラムロラゼパム ジアゼパム クロナゼパムロフラゼプ酸エチル 高 中 高 精神依存 反跳性不安が起こりやすい 依存 反跳性不安が起こりにくい長期投与に適している

ベンゾジアゼピン系薬の消失半減期と依存 耐性 離脱症状の関係 消失半減期の短い薬剤は 消失半減期の長い薬剤に比べ 依存 耐性 離脱症状がでやすい 長期投与には 依存 反跳性不安が起こりにくい長時間型ベンゾジアゼピン系薬が適している ベンゾジアゼピン系薬を中止する際には 一旦長時間型の薬剤に切り替えた後 漸減する

薬物関連障害患者の主乱用薬物 鎮咳薬 4% 多剤 5% 有機溶剤 4% 大麻 2% 鎮痛薬 2% 覚せい剤 27% ( n = 1019 ) 睡眠薬 抗不安薬 17% 危険ドラッグ 35% 松本俊彦. 医学のあゆみ. 254(2), 143-147, 2015

乱用されていた 睡眠薬 抗不安薬のランキング 薬剤名 エチゾラム 120 フルニトラゼパム 101 トリアゾラム 95 ゾルピデム 53 ベゲタミン 48 ニトラゼパム 35 ニメタゼパム 32 ブロチゾラム 32 アルプラゾラム 27 平成 26 年度全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査 n

高齢者に対する ベンゾジアゼピン系薬の使用 高齢者では記憶障害が若年者より起こりやすい 肝機能の低下により連用で体内に蓄積しやすい 高齢者では鎮静作用に注意が必要 消失半減期の短いベンゾジアゼピン系薬は認知障害 前向性健忘 反跳現象の発現のため長期間投与は避けるべき 高齢者には若年成人の 1/2~1/3 量の投与によって長期投与後の抑うつなどを回避できる

周術期 緩和ケアでの不眠 痛み 不安 悩み ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用 ストレス せん妄

せん妄 外因性 ( 疾患 薬物 環境など ) の意識障害 覚醒度の変化が根本的 せん妄予防効果が期待される薬剤 Hatta K, et al. JAMA Psychiatry. 71(4), 2014 Hatta K, et al. J Cli Psychiatry. 78(8), 2017 ラメルテオン スボレキサント

ベンゾジアゼピン系薬の減量方法

依存からの離脱 置換法 依存形成 完全置換 服用開始 短時間作用型薬剤 中止 漸減 併用置換 長時間作用型薬剤 長時間作用型に置換 依存形成 服用開始 短時間作用型薬剤 漸減 長時間作用型を併用 長時間作用型薬剤 中止 ( 離脱 ) 漸減 ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使い方 : 広瀬徹也 ( 帝京大学精神科 ) 監修 / 日経メディカル開発

ジアゼパム換算 ベンゾジアゼピン系抗不安薬 睡眠薬等を等価換算する際に用いる 一般名 一般名 一般名 アルプラゾラム 0.8 ゾルピデム 10 フルニトラゼパム 1 エスゾピクロン 2.5 タンドスピロン 25 フルラゼパム 15 エスタゾラム 2 トフィソパム 125 ブロチゾラム 0.25 エチゾラム 1.5 トリアゾラム 0.25 ブロマゼパム 2.5 オキサゾラム 20 ニトラゼパム 5 ブロムバレリル尿素 500 クアゼパム 15 ニメタゼパム 5 ペントバルビタール 50 クロキサゾラム 1.5 バルビタール 75 メキサゾラム 1.67 クロチアゼパム 10 ハロキサゾラム 5 メダゼパム 10 クロナゼパム 0.25 フェノバルビタール 15 リルマザホン 2 クロラゼプ酸二カリウム 7.5 フルジアゼパム 0.5 ロフラゼプ酸エチル 1.67 クロルジアゼポキシド 10 フルタゾラム 15 ロラゼパム 1.2 ジアゼパム 5 フルトプラゼパム 1.67 ロルメタゼパム 1 ゾピクロン 7.5 稲垣中, 稲田俊也 : 臨床精神薬理 9:1443-1447, 2006

ベンゾジアゼピン系薬剤の減量法 1-2 週間毎に 服用量の 25% ずつ 4-8 週間かけ て減薬 中止する 睡眠薬の適正使用 休薬ガイドラインより ジアゼパム換算 40mg を内服していた場合は 1-2 週間毎に 2mg ずつ 20mg からは 1-2 週間毎に 1mg ずつ減薬する アシュトンマニュアルより 半減期の短いものから減薬する 半減期のより長いものに置換する いずれにせよ 緩徐な減薬が必要

漸減法

生涯有病率 双極 Ⅰ 型障害 0-2.4% 双極性感情障害 双極 Ⅱ 型障害 0.3 4.8% 生涯自殺企図率 32.4 36.3% 自殺の絶対リスク男性 7.8% 女性 4.8% 自殺率 : 年間 0.4%( 一般人口 0.017% 比 22 倍 ) Benazzi F., Lancet. 369, 935 45, 2007 Novick DM, et al., Biporlar Disorders. 12, 1-9, 2011 Nordentoft M et al., Arch Gen Psychiatry. 68, 1058-1064, 2011 Tondo L, et al., CNS Drugs. 17, 491-511, 2003 プライマリーケアを受診しているうつ状態患者の 5 人に一人が実は双極性感情障害 48% の患者は正しい診断に達するまで 3 人の専門医を受診し 正しい診断までは 34% で 10 年を要した Hischfeld RMA et al., J. Clin. Psychiatry. 64, 161-174, 2003

双極性感情障害 (n = 73) におけるアルコール及び不安障害の併存 双極性感情障害発症年齢 20.9±9.3 歳 罹病期間 17.3±12.3 年 アルコール症障害有病率 42.5% 依存症 34.2% 不安障害生涯有病率 60.3% パニック障害 27.4% 社交不安障害 17.8% 強迫性障害 11% PTSD 21.9% 全般性不安障害 20.5% Nery FG, et al., J Psychiatr Res. 2008

ベンゾジアゼピン系薬からの離脱を目指して

眠れない 不眠の改善 落ち着かない 不安の改善 ベンゾジアゼピン系薬による治療 各種ガイドラインにおける記載 英国 カナダ ドイツ デンマーク ニュージーランドなど (2)~4 週間以上の処方について許可しない or 制限する 仏国 不眠症治療では 4 週を超えてはならない オーストラリア スケジュール 8( 麻薬 ) に分類 長期にわたる処方について強く注意喚起されている

日本人の睡眠薬アドヒアランスは低い 日本人の睡眠薬使用への不安 安心できる服用期間 睡眠薬の適正な使 用と休薬のための診療療ガイドライン

ベンゾジアゼピン系薬からの離脱 症状緩和のために 必要な薬剤は使う 使うことの不安をやわらげる 中止する時期を見据えておく 中止するときの注意点を初期から伝える 睡眠衛生指導も取り入れる 現在使用しているものは減量 中止する

まとめ 不眠症の治療 = 睡眠衛生指導 + 薬剤の使用と休薬 依存 耐性 乱用 せん妄 認知機能障 害をきたしやすいベンゾジアゼピン系薬の使用は避ける 多剤併用となっている場合は 疾患の再考も視野に入れる ベンゾジアゼピン系薬を始めるときは 中止する時期や方法を考えておく