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Transcription:

第 1 章品質管理序論 禁無断転載 品質管理を学ぶ上でのポイント (1) 品質管理の基本的な思想や考え方を確実に理解する (2) 品質管理で使用されている用語の意味を理解する (3) 手法は他のいろいろな面 ( 研究開発 社会科学 人間科学 経済等 ) にも応用できる 確実にマスターをする ただし 前提条件等があること 活用する上での注意点等を忘れないように (4) 実際の場面を想定して取り扱う できるだけ演習を行ってみる ( 品質管理は現場で応用する学問である 応用できなければ意味がないし 上手に応用すれば必ず効果が出る ) 第 1 節品質管理の体系 1. 品質とは (1) 品質とは何か初めに 品質 (quality) とは何かを考えましょう 近年の考え方で 品質とは 消費者を満足させる特性のことを言います これには ディスプレイの画像がきれい 製品の音が静か 耐久性があるなどがあります なお 古典的な考え方は 製品提供側の論理による製品規格に対する適合度でした 品質に関する JIS の定義は 品物またはサービスが 使用目的を満たしているかを決定するための評価の対象となる固有の性質 性能の全体 (JISZ8101) とされています (2) 品質の構成 尺度品質を論じる時には 品質を示す構成や尺度が必要となります この品質の構成 尺度となるのが品質特性 (Quality characteristics) です 品質特性とは 品質評価の対象となる性質 性能を示します これは個々の品質要素に対して 具体的数値を与えるための尺度です この品質特性には 真の特性と代用特性があります 真の特性とは 製品の騒音など直接その品質の尺度となる特性です 代用特性とは 画像がきれいというような感覚的なものは 直接 具体的な尺度では表現できないため 物理的な精細度 明るさなどで代用する特性のことです (3) ねらいとできばえ- 設計品質と製造品質品質には 事前にねらうものと結果として作り込まれるものがあります ねらいの品質とされるものは 設計品質です あらかじめ標準として定められた品質であり これは設計段階で決まってしまいます 一方 できばえの品質とされるものは 製造品質です 製造によって 製品に実際に作り込まれる品質です -1-

設計品質 ( ねらいの品質 ) 製造品質 ( できばえの品質 ) あらかじめ標準として製造によって製品に作定められた品質り込まれる品質設計段階で決まってしまう図 1-1 設計品質と製造品質 (4)4つの品質レベル品質を適正に管理するためには 企業のそれぞれの活動や消費者に対する品質レベルは変える必要があります これらの品質レベルには 目標 標準 基準 保証品位の4つのレベルがあり それぞれ以下の用語が用いられます 品質目標品質標準検査判定基準 研究 技術部門に与える品質の目標製造部門に与える品質の標準検査部門に与える検査の判定基準 品質レベルは高くなる これ以下の水準の製品は出荷されない 保証品位 消費者に与える保証品位 図 1-2 4 つの品質レベル (5) 品質特性のばらつきを作る主な要因とは品質特性は ある要因によってばらつきが発生します 通常の製品は いくつかの工程を経て作り上げられますが その工程における主な要因には 4 M があります 4 M とは 人 (Man) 機械設備(Machine) 方法(Method) 材料(Material) のことです Man 人 Material 原材料 4M ( 品質特性ばらつきの要因 ) Machine 機械設備 Method 方法 図 1-2 品質特性ばらつきの主な要因 4 M -2-

歩2. 品質管理とは 禁無断転載 (1) 品質管理とは品質管理 (quality control) に関する JIS の定義は 買い手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系 (JISZ8101) とされています (2) 品質管理の段階品質管理の活動には 図 1-3 に示すように その進歩に応じた段階があります 最初は 無管理段階から 検査により不良品を外部に流出しない段階 次に それぞれの工程で品質を作り込む段階 最終的な段階は 新製品開発から全社的に品質管理を行う段階へと進歩します 品質無管理段階検査による品質管理段階工程における品質管理段階新製品開発からアフターサービスまで全社的な品質管理段階進全社的な品質管理段階 品質管理がなされていない段階 不良品が外部に流出 そして外部失敗コストの発生し 企業の信用が失墜する 検査により 不良品の外部流出のみを防止している段階 社内では 品質管理はされていないので 工程内で不良品が発生 その結果 検査コスト 内部失敗コストが大きい 製造の各工程内で品質管理が行われている段階 工程管理で品質保証予防コストが発生するが トータルのコストは低減される この段階以降が 問題の少ない品質管理がなされていると言える 企業における全活動に品質管理が展開されている段階 これからの全社的品質管理活動であり 顧客満足につながる品質保証がなされる 最も望ましい段階である 図 1-3 品質管理の段階 尚 近年は品質管理の広義の概念として企業の製造部門のみならず 企業の商品企画 事務 営業その他あらゆる部門へ また企業のみならず行政機関 公的機関等まで展開さ れています 3. 品質管理活動 (1) 品質管理活動の意義 品質管理の活動は 図 1-4 に示すように 統計的手法を用い 最も経済的な水準で消費 者の満足を得る製品を提供するために全社的に行うものです -3-

費者の満足禁無断転載 消費者消費者の満足を得る高度の有用性を有する製品 生産者最も経済的な水準において生産する経営活動 最小のコストで消費者の満足を得る製品を提供 ばらつきを考慮して最適な範囲を設定 設計 製造 検査 サービス各部門が協同して行う活動生産のコスト消図 1-4 品質管理活動の考え方 (2) 管理活動とは 管理とは 一般に言われている PDCA のサイクルを回すことです 図 1-5 に示すように 計画 (P) 実行(D) チェック(C) 修正 (A) のサイクルを常に回し 活動の方向を適正に保ち 効率的な活動を進めるようにすることです 修正 ACTION 計画 PLAN 実行 DO チェック CHECK 図 1-5 管理 (PDCA) のサイクル (3) 品質管理活動の体系品質管理活動は 扱う製品 品質の内容 作業や職場などで その活動の体系は異なることになります ここでは 効果的に行うための 品質管理活動の体系の例を図 1-6 に示します -4-

(1) 標準品質の決定 品質標準の作成 禁無断転載 消費者の要求 製造面からの要求 ( 技術と管理の状況 ) (2) 標準作業の決定 作業標準の作成要因 - 特性値に変動を及ぼすべき製造の条件特性値 - 製造品質をあらわす数値 (3) 作業標準による作業要因の測定要因に対する調節 (4) 作業の結果を知るための測定 (5) 管理標準の作成 (6) 管理標準による特性値のチェック (7) 異常原因を除くための処置 ( アクション ) 異常が一般的であれば作業標準の改訂一時的であれば処置をとり記録再発防止の実施 図 1-6 品質管理活動の体系の例 4. 品質管理の手法 製品を市場に出すためには できるだけ品質の均一な製品とすることが望まれます ところが 製品の工程の中に品質に影響を与える要因は ほぼ無数に存在することから 現実には ばらつきのない製品を作ることはできません したがって 製品の工程の中では 品質自体を集団としての品質 分布をもった品質としてとらえ 固有技術 ( 専門技術 ) を基盤に 統計的手法を用いることになります この統計的手法を用いた品質管理を統計的品質管理 (SQC:Statistical Quality Control) と言います 最小のコストで消費者の満足を得る製品を提供するためには このような科学的手法が不可欠です -5-

消費者 生産者 禁無断転載 品質が均一な製品を望む 影響を与える要因は無数にある ばらつきのない製品をつくることはできない 集団としての品質 分布をもった品質としての取扱いが必要 固有技術 ( 専門技術 ) を基盤に統計的手法を応用した品質管理 図 1-5 統計的品質管理がなぜ必要なのか 5. 活用する人から見た品質管理の体系 品質管理は従来 もの作りの品質確保からスタートしているが その理念や活動は社会の人間活動全般に広く展開されてきている そのため 品質管理の取り扱う範囲も拡大し 多岐に渡るようになっています 品質管理の体系を活用しようとする人達の立場から整理すると次の表に示すようになります 表 1-1 活用する人の立場から見た品質管理の体系 No 項目内容 1 品質管理概論 2 全社的品質管理 3 4 データ収集 解析 検証手法 製造部門の QC 手法 品質管理関係用語の理解 品質管理の意義 科学的ものの見方 品質管理の全社的展開 TQM の基本理念と活動 グローバル スタンダード ISO9000 とは MB 賞 経営品質賞とは 統計的品質管理とは 各種統計的手法の理解と応用 実験計画法の理解と応用 品質工学 田口メソッドと応用 QC 活動の理解 QC 問題解決手法 QC 7つ道具他の理解と応用 -6- 一般 企業全般 技術関係 製造関係 ( 注 ) 目安として は必須充分な理解が必要 は概要の理解で可

第 2 節企業における品質管理 1. 企業における品質管理の歩み 企業における品質管理の活動は 年代とともに変遷しています その歩みを振り返って みましょう (1) 品質管理の誕生 ( 昭和初期 ) 昭和初期に初めて科学的管理方法が誕生しました これには 米国ベル研究所のシュ - ハート博士がバラツキの管理のために管理図を適用したなどがあります (2) アメリカ軍が持ち込んだ QC( 昭和 20 年代 ) 戦後 電気通信工業者を対象に アメリカ軍から品質管理指導が行われました また デミング ジュラン博士が来日し 統計的品質管理 (SQC) の指導が行われました (3) 研究から成果へ ( 昭和 30 年代 ) 昭和 30 年代の高度成長時代に入り 品質管理は実際に企業活動として根付き始めました そして 今では当然と思われることですが 企業内に QC 部門を組織化する動きが始まりました (4) 日本的 QC への展開 ( 昭和 40 年代 ) 昭和 40 年代に入り これまで品質管理の手法や活動は米国から導入して来ましたが 日本的な QC 活動が生まれ 展開されるようになりました この時代に 製造現場を中心に ZD(Zero Defect) 運動 QC サークル活動が開始されました (5)TQC 時代へ ( 昭和 50 年代 ) 昭和 50 年代には 品質管理の概念が拡大されました それまで 品質管理の対象は 製品 そして活動は製造現場が中心でしたが この時代には 品質の概念は 各種サービス 企業のそれぞれの活動に拡張され また活動も製造現場中心から企業のトップから行われるトップダウンも含めた全社的活動を展開するようになりました 全社的品質管理 (TQC :Total Quality Control あるいは CWQC :Company Wide Quality Control) を各企業が導入したのはこの時代です (6) 品質管理のグローバル化 ISO9000 取得へ ( 平成初期 ) 企業活動のグローバル化に伴い 国際条約に基づいて各種国際規格が作られています 品質関係についても 世界的に統一した規格が必要ということで ISO(International Standard Organization) にて規格を作成しました この ISO の規格化に伴い ISO9000 認証の活動が盛んとなりました 2. 世界一の品質を作り上げた日本の QC 活動 昭和 40 年から 50 年代に 日本では QC 活動が活発に行われました これまでは 品質 -7-

管理の手法や活動は 米国から導入してきていたのですが 日本独特の QC 活動が生まれ 広く展開されました そして この時代には 日本の品質は世界一と称され 諸外国から注目されていた時期でもあります 以下に 世界一の品質を作り上げた日本発の QC 活動を整理してみましょう (1) QC 活動の概要と考え方 QC 活動は 日常的 継続的に品質改善を行うことです なお このカイゼン ( 改善 ) という用語は有名となり 海外でもそのまま使われている用語として定着しています 活動としては 製造現場で ボトムアップ形式で行われます 特に 小集団で自発的に行う活動のことを QC サークル活動と言います QC 活動の考え方は以下によります <QC 的な考え方 > 1 現場主義 2 管理のサイクルをまわす 3 後工程はお客様 4ばらつきに目をつける 5 重点指向をする 6 原因追求を徹底なぜなぜを繰り返す 7プロセスを重視する (2) QC 7つ道具 QC 問題解決を手助けするわかりやすいツールで 7つあることから QC 7つ道具と呼ばれています QC7 つ道具には図 2-1 に示すものがあります -8-

QC7 つ道具 QC の問題解決のために よく用いられる便利なツール ( 図表 シート ) と手法のことで 7 つあることからこのように呼ばれる パレート図要因を大きなものから配列した棒グラフ 重要な要因を見つけやすい このため 重点指向を行うために用いられる 特性要因図要因を抽出し 因果関係を魚の骨のように整理した図 要因をもれなくリストアップすることとそれぞれの因果関係を整理することができる 層別ばらつきの要因を把握するために 要因別に事象やデータを分ける手法 データ解析の基本である 管理図工程が管理状態にあることを監視 早期に異常の発見 対策を行うための図 散布図 2 変数間の関係をみる図 関係の強度は相関係数で評価する チェックシート管理項目を確実に実施するために項目をリストにしたシート ヒストグラムデータのばらつきを把握 分布の特徴をみる 規格値との関係を確認する 統計的手法の基本であり 最も多く用いられる 図 2-1 QC7 つ道具 (3)QC 問題解決手法 QC 問題の解決には 基本的な手順があります 本手順を踏めば 自然と問題解決が図 られるようになっています QC ストーリィと呼ばれることもあります -9-

ステップ 1: テーマの選定 ステップ 2: 現状の把握 ステップ 3: 目標の設定 ステップ 4: 原因の分析 ステップ 5: 対策の立案と実施 ステップ 6: 効果の測定 ステップ 7: 標準化 再発防止 ステップ 8: その他の問題と今後の計画 QC(Quality Control) 問題解決のステップ 図 2-2 QC 問題解決手法 (QC ストーリィ ) 昭和 60 年代に入り 企業の QC 活動は低調になりました これは 従来の QC 活動が製造部門を中心とした不良品撲滅 コストダウン主体の活動であり 事業戦略と密着した顧客指向 パートナー連携の活動等の面については限界があったことによります 作れば売れる時代から 顧客満足を考えた製品でなければ売れない時代に変わり 企業が抱える重要な課題も変わってしまったのです 3. 最近の全社的品質管理活動 昭和 50 年代以降 品質管理の概念が拡大されました 品質の概念は 各種サービス 企業のそれぞれの活動に拡張され また活動も製造現場中心から企業のトップから行われるトップダウンも含めた全社的活動を展開するようになりました その幕開けが全社的品質管理 (TQC) でした その後 最近までの動きをまとめてみましょう (1) グローバル スタンダート ISO9000 規格の登場様々な取引の国際化からグローバル スタンダードとして ISO9000 が制定されました 審査機関から認証されると国際的に品質を確実にするシステムが有効に機能していることが証明されたことを意味するため 最近は取引先の選定に認証を条件とするケースが増えています このため 各企業がこぞって認証取得の取り組みを始めました ISO9000 認証取得については 要求事項を満たす品質システムを作り上げ それが働いている記録が示されることが必要となります なお 品質を確保するシステムであり 向上させていくものではありません -10-

(2)TQC から TQM へ 1)TQC(Total Quality Control: 総合的品質管理 ) 方針管理 ( トップダウン ) と QC サークル活動 ( ボトムアップ ) と組み合わせた活動として発展しました 企業の経営活動との一体化の必要性 経営課題が製品 サービスの適合品質確保から一層顧客志向となる等により現在は TQM 活動に置き換わっています 2)TQM(Total Quality Management: 総合的品質経営 ) 製品 サービスの品質から経営のすべての面における品質を高め 顧客を含むすべての利害関係者に認められる価値を作り出すことを目的とする経営手法です TQC との主な相違点として 経営に組み込んだツール 一人一人のコミットメントを持った参加 顧客志向と信頼関係創造等があります (3)TQM 活動を審査する MB 賞と経営品質賞 1)MB 賞 ( マルコム ボルドリッジ国家品質賞米国 ) 米国の大企業 製造業の競争力強化を目指した国家品質賞で TQM の推進を図るモデルです 米国の経済復興の原動力になったとも言われています 2) 経営品質賞 ( 社会経済生産性本部日本 ) 1995 年米国 MB 賞の日本版です MB 賞の審査基準を下敷きにしているが 日本 企業用に一部修正が入っている (4) シックスシグマ最近 一部の日本企業に導入され始めた経営 品質管理手法に シックスシグマと呼ばれる手法があります シックスシグマ手法は 1980 年代初頭に アメリカの通信機器会社のモトローラ社で開発され 生産プロセス改革に用いられた手法です 一般的に シックスシグマ方は経営 品質管理手法と呼ばれており トップダウンで行う手法としては TQM 活動と同じです 品質管理手法としては田口メソッド 管理システムはプロセス マネージメントを導入して簡素化を行っています しかし シックスシグマの名前にあるように 数値で表される品質特性値のみを扱っています つまり それまでカン頼みの改善活動に代わるものとして 統計学的な品質改善を採用しています -11-