平成  年(オ)第  号

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平成  年(オ)第  号

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

平成 30 年 ( 受 ) 第 269 号損害賠償請求事件 平成 31 年 3 月 12 日第三小法廷判決 主 文 原判決中, 上告人敗訴部分を破棄する 前項の部分につき, 被上告人らの控訴を棄却する 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする 理 由 上告代理人成田茂ほかの上告受理申立て理由第

平成18年1月13日 最高裁判所は,貸金業者の過払い金の受領は違法と知りつつなされたことを推定するとした判例です

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

平成  年(オ)第  号

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

平成  年(あ)第  号

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

た本件諸手当との差額の支払を求め ( 以下, この請求を 本件差額賃金請求 という ),2 予備的に, 不法行為に基づき, 上記差額に相当する額の損害賠償を求める ( 以下, この請求を 本件損害賠償請求 という ) などの請求をする事案である 2 原審の確定した事実関係等の概要は, 次のとおりであ

裁判所は, 同年 9 月, 被上告人に対し, 米国に被拘束者を返還することを命ずる旨の終局決定 ( 以下 本件返還決定 という ) をし, 本件返還決定は, その後確定した (4) 上告人は, 本件返還決定に基づき, 東京家庭裁判所に子の返還の代替執行の申立て ( 実施法 137 条 ) をし, 子

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

本件合併時にA 信用組合に在職する職員に係る労働契約上の地位は, 被上告人が承継すること,3 上記の職員に係る退職金は, 本件合併の際には支給せず, 合併後に退職する際に, 合併の前後の勤続年数を通算して被上告人の退職給与規程により支給することなどが合意された また, 本件合併の準備を進めるため,

平成  年(行ツ)第  号

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

利子相当額 という ) を加えた額に相当する金額 ( 以下 退職一時金利子加算額 という ) の返還に関し, その経過措置を定める 厚生年金保険法等の一部を改正する法律 ( 平成 8 年法律第 82 号 以下 厚年法改正法 という ) 附則 3 0 条 1 項の委任に基づいて定められた, 厚生年金保

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

Taro-婚姻によらないで懐妊した児

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

最高裁○○第000100号

平成  年(オ)第  号

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

民事訴訟法

べき標準的な事例における処分の標準例を定めたところ, 公務外非行関係の事由である 痴漢 わいせつ行為 による処分の標準例は, 免職又は停職とされている そして, 本件指針においては, 具体的な処分の量定を決定するに当たり,1 非違行為の動機, 態様及び結果,2 故意又は過失の度合い,3 職員の職務上

対象とならないなどとした上で, 抗告人が本件不動産を取得すべきものとした 4 しかしながら, 原審の上記判断は是認することができない その理由は, 次のとおりである (1) 相続人が数人ある場合, 各共同相続人は, 相続開始の時から被相続人の権利義務を承継するが, 相続開始とともに共同相続人の共有に

し, これを評点 1 点当たりの価額に乗じて, 各筆の宅地の価額を求めるものとしている 市街地宅地評価法は,1 状況が相当に相違する地域ごとに, その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し,2 標準宅地について, 売買実例価額から評定する適正な時価を求め, これに基づいて上記主要な街路の

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

するためには, その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを要するとした昭和 45 年判例と相反する判断をしたと主張するので, この点について, 検討する (3) 昭和 45 年判例は, 被害者の裸体写真を撮って仕返しをしようとの考えで, 脅迫により畏怖してい

最高裁○○第000100号

除されたものを除く ) について 1 本件は, 被上告人を定年退職した後に, 期間の定めのある労働契約 ( 以下 有期労働契約 という ) を被上告人と締結して就労している上告人らが, 期間の定めのない労働契約 ( 以下 無期労働契約 という ) を被上告人と締結している従業員との間に, 労働契約法

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

7265BB4891EFF48E A000659A

れぞれ求める住民訴訟である 2 原審の確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 市は, 鳴門市公営企業の設置等に関する条例 ( 平成 16 年鳴門市条例第 3 8 号 ) により, モーターボート競走法に基づくモーターボート競走の開催及びこれに附帯する業務を行うため, 競艇事業を設置し

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

(イ係)

〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

裁判年月日 平成 20 年 4 月 16 日 裁判所名 大阪高裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ツ )7 号 事件名 管理費等請求上告事件 裁判結果 上告棄却 文献番号 2008WLJPCA 兵庫県西宮市 以下省略 上告人大阪市 以下省略 被上告人上記代表者理事長上記訴訟代理

4. 韓国併合後の我が国においては 内地 朝鮮 台湾等の異法地域に属する者の間で 身分行為 があった場合 その準拠法は 共通法 ( 大正 7 年法律第 39 号 )2 条 2 項によって準用される法例 ( 平成元年法律第 27 号による 改正前のもの 以下同じ ) の規定によって決定されることとなり

かった その後, 市は, 同年 11 月 14 日, 本件土地につき, 予定価格を非公表とし, 再度一般競争入札に付したが, 申込みをした者はいなかった (3) ア大願寺地区には, 平成 25 年 4 月までに小中学校を移転することとされていたところ, 市議会においては, 防犯や児童生徒の安全のため

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

1を原告 Aの負担とし, 原告 A 以外の原告らに生じた各費用の5 分の4と被告に生じた費用の3 分の2を被告の負担とし, その余を原告 A 以外の原告らの負担とする 4 この判決は, 第 1 項 ~に限り, 仮に執行することができる 事実及び理由 第 1 請求 被告は, 原告 A に対し,158

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

ても認知者による認知の無効の主張を許さないという趣旨まで含むものではないなどとして, 被上告人による本件認知の無効の主張を認め, 被上告人の請求を認容すべきものとした 4 所論は, 認知者自身による認知の無効の主張を認めれば, 気まぐれな認知と身勝手な無効の主張を許すことになり, その結果, 認知に

る事案である 2 原審は, 控訴人 Aらの債権者代位権に係る訴えを却下し, 控訴人 Aらのその余の請求及び選定当事者らの請求をいずれも棄却した これに対し, 控訴人らは, 控訴人 Aら及び選定当事者らの別にそれぞれ控訴を提起した 3 基本的事実並びに争点及びこれに関する当事者の主張は, 次のとおり補

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

債務者 代理人弁護士 債権者一般 債務整理開始通知 送付 支払 停止 債務者の代理人弁護士から債権者一般への債務整理開始通知の送付と 支払の停止 最二判平成 79 年 65 月 69 日判時 7669 号 頁 判タ 6889 号 685 頁 金法 6967 号 65 頁 金判 6956 号 76 頁

平成  年(オ)第  号

務が残っているが,E,F 及びGに対しては過払金が発生していることが判明した そこで, 被上告人は, 平成 17 年 9 月 27 日までに,Aの訴訟代理人として, E,F 及びGに対して過払金返還請求訴訟を提起し, その後, 上記 3 社とそれぞれ和解をして, 平成 18 年 6 月 2 日までに

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

 

Microsoft Word - 一弁知的所有権研究部会2017年7月13日「商標登録無効の抗弁」(三村)

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

9( 以下, 併せて 上告人 X1ら という ) は, 平成 19 年 9 月 30 日まで, 旧公社の非常勤職員であったが, 同年 10 月 1 日, 被上告人との間で有期労働契約を締結して, これを7 回から9 回更新し, 上告人 X1, 同 X2, 同 X3, 同 X5, 同 X6 及び同 X

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

過払金等請求事件

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

0A8D6C A49256C A0

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

きる ( 改正前民法 436 条 ) 1 改正法と同じ 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる 本条は 負担部分の限度で 他の連帯債務者が債権者に対して債務の履行を拒むことができると規定したものであり 判

2(1) 所得税法 34 条 2 項は, 一時所得の金額は, その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額 ( その収入を生じた行為をするため, 又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る ) の合計額を控除し, その残額から所定の特別控除額を控除した金額とす

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

 

1. はじめに 1 日常生活や事業活動をめぐる様々なリスクに対応する損害保険の中で 賠償責任保険の存在は 我が国の損害賠償制度において今や欠かすことができないものとなっています 損害保険業界では 数多くの種類の賠償責任保険をご提供することを通じて損害賠償制度にのっとった被害の回復に向けたお手伝いをす

債権法改正が損害保険に及ぼす影響 ~ 中間利息控除に関する規律の見直しについて ~

〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

20 第 2 章 遺留分減殺請求権の行使 遺留分侵害行為の特定 () 遺言遺言のうち 相続分の指定 相続させる遺言 包括遺贈 特定遺贈 が遺留分を侵害する行為です (2) 生前贈与生前贈与のうち 相続開始前 年間になされた贈与 遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与 特別受益 不相当な対

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

〔問 1〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

CEF A000659D

(4) 上告人 X 5 x 5 ( 戸籍上の氏名は Cx 5 である ) は,Ccとの婚姻の際, 夫の氏を称すると定めたが, 通称の氏として X 5 を使用している 第 2 上告理由のうち本件規定が憲法 13 条に違反する旨をいう部分について 1 論旨は, 本件規定が, 憲法上の権利として保障される

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

平成 22 年 ( 行ヒ ) 第 102 号神戸市外郭団体派遣職員への人件費違法支出損 害賠償等, 同附帯請求事件 平 24 年 4 月 20 日第二小法廷判決 主 文 1 原判決中上告人敗訴部分を破棄し, 同部分につき第 1 審判決を取り消す 2 前項の部分に関する被上告人らの請求をいずれも棄却す

うものと推認することができる しかしながら, 被告人は, インターネットを通じて知り合ったAから金を借りようとしたところ, 金を貸すための条件として被害女児とわいせつな行為をしてこれを撮影し, その画像データを送信するように要求されて, 真実は金を得る目的だけであり, 自分の性欲を刺激興奮させるとか

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

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税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

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平成 24 年 ( 受 ) 第 1478 号損害賠償請求事件 平成 27 年 3 月 4 日大法廷判決 主 文 本件上告を棄却する 上告費用は上告人らの負担とする 理 由 上告代理人川人博ほかの上告受理申立て理由第 2について 1 本件は, 過度の飲酒による急性アルコール中毒から心停止に至り死亡したA の相続人である上告人らが,Aが死亡したのは, 長時間の時間外労働等による心理的負荷の蓄積によって精神障害を発症し, 正常な判断能力を欠く状態で飲酒をしたためであると主張して,Aを雇用していた被上告人に対し, 不法行為又は債務不履行に基づき, 損害賠償を求める事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) A( 昭和 55 年 月 日生まれ ) は, ソフトウェアの開発等を業とする会社である被上告人にシステムエンジニアとして雇用されていた Aは, 長時間の時間外労働や配置転換に伴う業務内容の変化等の業務に起因する心理的負荷の蓄積により, 精神障害 ( 鬱病及び解離性とん走 ) を発症し, 病的な心理状態の下で, 平成 18 年 9 月 15 日, さいたま市に所在する自宅を出た後, 無断欠勤をして京都市に赴き, 鴨川の河川敷のベンチでウイスキー等を過度に摂取する行動に及び, そのため, 翌 16 日午前 0 時頃, 死亡した 被上告人は,Aの死亡について, 被上告人の従業員がAに対する安全配慮義務を怠ったことを理由として, 不法行為 ( 使用者責任 ) に基づく損害賠償義務を負う - 1 -

もっとも,Aにも過失があり, 過失相殺をするに当たってのAの過失割合は3 割である (2) Aの死亡による損害は,Aの逸失利益 4915 万 8583 円及び慰謝料 1 800 万円,Aの父母である上告人らの固有の慰謝料各 200 万円並びに上告人 X1の支出に係る葬儀費用 150 万円である Aの相続人は, 上告人らのみである (3) 上告人 X1は, 平成 19 年 10 月 16 日, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく葬祭料として68 万 9760 円の支給を受けたほか, 原審の口頭弁論終結の日である平成 24 年 2 月 9 日の時点で, 労災保険法に基づく遺族補償年金 ( 以下, 単に 遺族補償年金 という ) として原判決別紙 1 の受給額欄記載のとおり合計 868 万 9883 円の支給を受け, 又は支給を受けることが確定している 上告人 X2は, 原審の口頭弁論終結の日である上記同日の時点で, 遺族補償年金として原判決別紙 2の受給額欄記載のとおり合計 151 万 6517 円の支給を受け, 又は支給を受けることが確定している 3 原審は, 上記事実関係等の下において, 遺族補償年金についての損益相殺的な調整につき, 次のとおり判断して, 上告人 X1の請求を1817 万 5861 円及びこれに対するAの死亡の日である平成 18 年 9 月 16 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で, 上告人 X2の請求を2 568 万 8987 円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の支払を求める限度で, それぞれ認容した (1) 遺族補償年金は, これによる塡補の対象となる損害と同性質であり, か - 2 -

つ, 相互補完性を有する関係にあるAの死亡による逸失利益の元本との間で損益相殺的な調整をすべきであり, 同元本に対する遅延損害金を遺族補償年金による塡補の対象とするのは相当ではない (2) 遺族補償年金は, 制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り, その塡補の対象となる損害が不法行為の時に塡補されたものとして損益相殺的な調整をすることが相当である そして, 本件の事実関係によれば, 不法行為の時に損害が塡補されたものと法的に評価して上記の調整をすることができる 4 所論は, 遺族補償年金についてAの死亡による逸失利益の元本との間で損益相殺的な調整をした原審の判断は, 遺族補償年金等がその支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは, 遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであるとした最高裁平成 16 年 ( 受 ) 第 525 号同年 1 2 月 20 日第二小法廷判決 裁判集民事 215 号 987 頁に反するというものである 5(1) 被害者が不法行為によって死亡し, その損害賠償請求権を取得した相続人が不法行為と同一の原因によって利益を受ける場合には, 損害と利益との間に同質性がある限り, 公平の見地から, その利益の額を相続人が加害者に対して賠償を求める損害額から控除することによって損益相殺的な調整を図ることが必要なときがあり得る ( 最高裁昭和 63 年 ( オ ) 第 1749 号平成 5 年 3 月 24 日大法廷判決 民集 47 巻 4 号 3039 頁 ) そして, 上記の相続人が受ける利益が, 被害者の死亡に関する労災保険法に基づく保険給付であるときは, 民事上の損害賠償の対象となる損害のうち, 当該保険給付による塡補の対象となる損害と同性質であり, か - 3 -

つ, 相互補完性を有するものについて, 損益相殺的な調整を図るべきものと解される ( 最高裁昭和 58 年 ( オ ) 第 128 号同 62 年 7 月 10 日第二小法廷判決 民集 41 巻 5 号 1202 頁, 最高裁平成 20 年 ( 受 ) 第 494 号 第 495 号同 22 年 9 月 13 日第一小法廷判決 民集 64 巻 6 号 1626 頁, 最高裁平成 21 年 ( 受 ) 第 1932 号同 22 年 10 月 15 日第二小法廷判決 裁判集民事 235 号 65 頁参照 ) 労災保険法に基づく保険給付は, その制度の趣旨目的に従い, 特定の損害について必要額を塡補するために支給されるものであり, 遺族補償年金は, 労働者の死亡による遺族の被扶養利益の喪失を塡補することを目的とするものであって ( 労災保険法 1 条,16 条の2から16 条の4まで ), その塡補の対象とする損害は, 被害者の死亡による逸失利益等の消極損害と同性質であり, かつ, 相互補完性があるものと解される 他方, 損害の元本に対する遅延損害金に係る債権は, 飽くまでも債務者の履行遅滞を理由とする損害賠償債権であるから, 遅延損害金を債務者に支払わせることとしている目的は, 遺族補償年金の目的とは明らかに異なるものであって, 遺族補償年金による塡補の対象となる損害が, 遅延損害金と同性質であるということも, 相互補完性があるということもできない したがって, 被害者が不法行為によって死亡した場合において, その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け, 又は支給を受けることが確定したときは, 損害賠償額を算定するに当たり, 上記の遺族補償年金につき, その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり, かつ, 相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で, 損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である - 4 -

(2) ところで, 不法行為による損害賠償債務は, 不法行為の時に発生し, かつ, 何らの催告を要することなく遅滞に陥るものと解されており ( 最高裁昭和 34 年 ( オ ) 第 117 号同 37 年 9 月 4 日第三小法廷判決 民集 16 巻 9 号 1834 頁参照 ), 被害者が不法行為によって死亡した場合において, 不法行為の時から相当な時間が経過した後に得られたはずの利益を喪失したという損害についても, 不法行為の時に発生したものとしてその額を算定する必要が生ずる しかし, この算定は, 事柄の性質上, 不確実, 不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に行わざるを得ないもので, 中間利息の控除等も含め, 法的安定性を維持しつつ公平かつ迅速な損害賠償額の算定の仕組みを確保するという観点からの要請等をも考慮した上で行うことが相当であるといえるものである 遺族補償年金は, 労働者の死亡による遺族の被扶養利益の喪失の塡補を目的とする保険給付であり, その目的に従い, 法令に基づき, 定められた額が定められた時期に定期的に支給されるものとされているが ( 労災保険法 9 条 3 項,16 条の3 第 1 項参照 ), これは, 遺族の被扶養利益の喪失が現実化する都度ないし現実化するのに対応して, その支給を行うことを制度上予定しているものと解されるのであって, 制度の趣旨に沿った支給がされる限り, その支給分については当該遺族に被扶養利益の喪失が生じなかったとみることが相当である そして, 上記の支給に係る損害が被害者の逸失利益等の消極損害と同性質であり, かつ, 相互補完性を有することは, 上記のとおりである 上述した損害の算定の在り方と上記のような遺族補償年金の給付の意義等に照らせば, 不法行為により死亡した被害者の相続人が遺族補償年金の支給を受け, 又は支給を受けることが確定することにより, 上記相続人が喪失した被扶養利益が塡補 - 5 -

されたこととなる場合には, その限度で, 被害者の逸失利益等の消極損害は現実にはないものと評価できる 以上によれば, 被害者が不法行為によって死亡した場合において, その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け, 又は支給を受けることが確定したときは, 制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り, その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当であるというべきである ( 前掲最高裁平成 22 年 9 月 13 日第一小法廷判決等参照 ) 上記 2の事実関係によれば, 本件において上告人らが支給を受け, 又は支給を受けることが確定していた遺族補償年金は, その制度の予定するところに従って支給され, 又は支給されることが確定したものということができ, その他上記特段の事情もうかがわれないから, その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当である (3) 以上説示するところに従い, 所論引用の当裁判所第二小法廷平成 16 年 1 2 月 20 日判決は, 上記判断と抵触する限度において, これを変更すべきである 6 以上によれば, 上記 3の原審の判断は正当として是認することができる 論旨は採用することができない よって, 裁判官全員一致の意見で, 主文のとおり判決する ( 裁判長裁判官寺田逸郎裁判官櫻井龍子裁判官金築誠志裁判官千葉勝美裁判官白木勇裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦裁判官大橋正春裁判官山浦善樹裁判官小貫芳信裁判官鬼丸かおる裁判官木内道祥裁判官山本庸幸裁判官山崎敏充裁判官池上政幸 ) - 6 -