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も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

両面印刷推奨 <4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる 全く確認できない D または E のどちらかを選ぶ D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけ

<4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる全く確認できない D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけて さらに 1 回ワクチン接種を受ける 抗体検査を

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

Vol. 32 Suppl.II,2017 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ( ムンプス ) に関する Q&A の公開にあたって 日本環境感染学会では 平成 21 年 5 月に 院内感染対策としてのワクチンガイドライン第 1 版 を 平成 26 年 9 月に 医療関係者のためのワクチンガイドライン

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

あり 一人の感染者が周囲の免疫のないヒトに感染させる数である基本再生産数は 10 流行を抑制するための集団免疫率は 90% 以上です 水痘の潜伏期間は通常 14~16 日間です 水痘ワクチンの定期接種が行われている米国では 1 回定期接種を行っていた 1996 年から 2004 年までの間に 水痘患

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妊婦の推定感染経路 2 番目は 妊婦さんの推定感染経路です 2011 年は中国 ベトナムなど海外で感染した夫や本人です 海外からの感染に注意が必要でした ところが 2012 年は夫 同僚から妊婦さんへの感染が認められたので 同居家族 同僚のワクチン接種を勧めるよう喚起しました さらに 2013 年に

とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

34 片渕美和子他 表 1 各年度の B 型肝炎, 麻疹, 風疹およびムンプスに対する抗体陽性率 検査年度 HBs 麻疹 風疹 ムンプス 2003 年 3/231(1.3)* 131/217(60.4) 200/217(92.2) 114/217(52.5) 2004 年 0/231( 0) 134

水痘(プラクティス)

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報告風しん

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ハイリスク患者 免疫抑制者における播種性水痘 悪性腫瘍患者の死亡率は 7-17% 成人 妊婦 新生児 肺臓炎 年齢による水痘の頻度と死亡率 0~4 5~14 15~44 45~64 >65 頻度 ( 対人口

針刺し切創発生時の対応

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

検査項目情報 水痘. 帯状ヘルペスウイルス抗体 IgG [EIA] [ 髄液 ] varicella-zoster virus, viral antibody IgG 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

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方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

日産婦誌58巻9号研修コーナー

医療機関での麻疹対応ガイドライン第七版 国立感染症研究所感染症疫学センター 平成 30 年 5 月

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 歳 歳以上 合計 ( 注 ) *

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DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

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定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

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新たに定期接種ワクチンとされたことから 本邦における HPV ワクチンによる免疫獲得状況を把握 して 将来の子宮頸癌予防計画に役立つ基盤データを蓄積することを目的に 14 年度から本事業にて HPV16 抗体価の測定調査を実施することとなった 2. 感受性調査 (1) 調査目的ヒトの HPV16 に

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

1

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

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麻しん 2

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 014 年 10 月 1 日版日本小児科学会 乳児期幼児期学童期 / 思春期 ワクチン 種類 直後 6 週 以上 インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ )

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総合保健科学第 29 巻 2013 統計解析はカイ2 乗検定を用い,p <0.05を有意とした なお, 受診者には予め, 個人を特定できない形での検査結果の解析について同意を得て, 検討を行った Ⅲ. 結果接種者の性 年齢構成は, 男性 439 名, 女性 560 名, 平均年齢は男性 23.1 歳

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

<< インフルエンザ >> 区別 別報告定点当り. 平成 3 年 2 月 5 日 ~ 3 月 日 [ 平成 3 年 ~ ] 鶴見神奈川 西 中 南 港南保土ケ谷 旭 磯子金沢港北 緑 青葉都筑戸塚 栄 泉 瀬谷 定点数

熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

ヒブ ( インフルエンザ菌 b 型 ) 対象者 : 生後 2ヶ月から5 歳未満までのお子さん標準的な接種開始期間は 生後 2ヶ月から7ヶ月未満です 生後 2ヶ月を過ぎたら 早目に接種しましょう 接種方法 : 接種開始時の年齢により接種方法が異なります 接種開始が生後 2ヶ月から7ヶ月未満の場合 (

審査結果 平成 26 年 2 月 7 日 [ 販売名 ] 1 ヘプタバックス-Ⅱ 2 ビームゲン 同注 0.25mL 同注 0.5mL [ 一般名 ] 組換え沈降 B 型肝炎ワクチン ( 酵母由来 ) [ 申請者名 ] 1 MSD 株式会社 2 一般財団法人化学及血清療法研究所 [ 申請年月日 ]

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

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Transfusion-Transmitted Hepatitis Verified from Haemovigilance and Look-back Study

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

の合併症を起こしたことが分かりました そのなかで一番多かったのは肺炎です 合併症を起こした子どもの約半数が肺炎になりました また 発病者の40% 以上が入院し 9 人の子ども達が脳炎になり いまだに後遺症で苦しんでいる子どももいます 2007 年度の麻しん流行においては 子どもたちよりも10 代 2

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平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

H30_業務の概要18.予防接種

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平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

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医療系学部生に対する B 型肝炎ウイルス (HBV) ワクチン接種の管理 はじめに慶應義塾大学保健管理センター ( 当センター ) では, 当大学病院の医療従事者と医療系学部学生を対象に B 型肝炎ワクチン (HBVV) 接種管理 (HBVV administration: HBVVA) を行ってい

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中医協総会の資料にも上記の 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス から一部が抜粋されていることからも ガイダンスの発表は時機を得たものであり 関連した8 学会が共同でまとめたという点も行政から高評価されたものと考えられます 抗菌薬の適正使用は 院内 と 外来 のいずれの抗菌薬処方におい

Transcription:

第 30 回インフェクションコントロール研究会平成 25 年 9 月 14 日 感染管理とワクチン 職員のワクチン接種と ワクチン接種基準の妥当性について 川崎医大小児科 & 院内感染対策室寺田喜平

1) 抗体検査 ワクチン接種の必要性

職員や学生へのワクチン接種 1) 入院患者や外来患者への感染防止 小児 ; 免疫抑制児では重症化や死亡 成人 ; 重症化 院内感染防止 医療従事者から患者への感染は避けなければならない 2) 医療従事者 学生への感染防止 成人 ; 重症化 職業感染防止 妊婦 ; 重症化 流産や早産 先天性奇形症候群

麻疹 ; 流早産 妊婦や胎児への影響 風疹 ; 先天性風疹症候群妊娠 1 ヶ月以内 50% 以上妊娠 2 ヶ月以内 20~30% 妊娠 3 ヶ月以内 5% 以内 水痘 ; 先天性水痘症候群妊娠 20 週以内 2% 妊婦の水痘肺炎 ; 妊娠後期 新生児水痘 ; 出産前 5 日以内あるいは出産後 48 時間以内 伝染性紅斑 ; 胎児水腫 流産 死産

わが国での伝染性紅斑の影響 ( 厚生労働省研究班による調査 ) 全国の産科施設を対象にした調査 2011 年 146 例 中絶 流産 死産 3 例 35 例 14 例 わが国の成人の抗体保有率 ;20~50%

各種感染症の基本再生産数 ( 免疫を持っていない周囲の人何人へ感染させるか ) インフルエンザ (A/H1N1pdm09) は 1.4~1.6 麻疹風疹ムンプス水痘 16~21 7~9 11~14 8~10 空気感染飛沫感染飛沫感染空気感染 麻疹 ; 医療従事者は一般人に比較し 約 13 倍リスクが高い

既往歴は不正確である ワクチン未接種者で 既往歴ある人の抗体陰性率 麻疹 ;10% 風疹 ;45% 理由 ; 診断の不正確さ + 記憶の間違い 風しんは診断が困難 風しんの別名が三日ばしか ( 寺田ら 日児誌 110:767, 2006)

臨床診断はあてにならない ムンプスー反復性耳下腺炎 水痘ー手足口病 (Cox A6) 2011 年 2013 年流行の非典型例 風疹ー修飾麻疹 伝染性単核球症 ( 抗菌薬使用後 ) ワクチン予防可能疾患では迷ったら確定診断 五類の全数把握疾患は確定診断が必要

麻疹が流行すると風疹届出数が増加 風疹定点あたり患者届出数 r=0.67 ( 寺田, 総合臨牀 60:2233, 2011)

修飾麻疹 1 二次性ワクチン効果不全 (secondary vaccine failure) や 2γ グロブリン投与後に 3 残存する免疫によって軽症化された麻疹 カタル症状がない熱が低いコップリック斑がない発疹が非典型的 軽症非典型的 風疹様色素沈着がない

2) ワクチン接種に関する問題点 1) どこまで対象を拡大するか 2) 抗体測定方法ー費用と感度ー 3) 接種基準をどうする 4) ワクチン接種してもらうためには 5) 抗体価の管理をどうする

環境感染学会 院内感染対策としてのワクチンガイドライン 対象者医療従事者全員 ( 患者と接種する可能性のある実習の学生を含む ) 医療機関での麻疹対応ガイドライン ( 第 4 版 ) 対象者 職員 実習生 平成 25 年 3 月 8 日 職員とは事務職 医療職にかかわらず 当該医療機関を受診する外来および入院患者と接触する可能性のある常勤 非常勤 派遣 アルバイト等のすべての職種を含む

罹患防止のための抗体測定方法と 費用の比較 測定方法 EIA 法 HI / IAHA 法 CF 法 / NT 法 費用 2600 円 850 円 850 円 測定方法の感度は問題ないのか?

抗体測定法と感度 -EIA 法との比較 - 麻疹風疹水痘ムンプス HI 法 75% 100% 102% 69% (IAHA 法 ) (IAHA 法 ) CF 法 21% 11% 39% 8% NT 法は時間がかかり 多数の検体処理ができない ( 寺田ら 感染症学雑誌 74:670, 2000) (Terada et al. Pediatr Infect Dis J 19:104-108, 2000)

3) 接種基準の問題点

環境感染学会 院内感染対策としての ワクチンガイドライン接種基準 ( 日本環境感染学会誌 24:S4-8, 2009)

環境感染学会 院内感染対策としてのワクチンガイドライン 接種基準の要点 ( 日本環境感染学会誌 24:S4-8, 2009) 既往歴あり 1 抗体価が基準値以上の確認 2 基準値未満は接種 3 陰性は 2 回接種 既往歴なし 1 ワクチン接種歴 2 回の確認 2 接種歴 1 回では毎年抗体価確認 32 回の確認後は抗体検査不要 予防接種手帳の確認ができたのは 6 割のみ

院内感染対策としてのワクチンガイドライン 抗体価の接種基準 ( 日本環境感染学会誌 24:S4-8, 2009) 測定方法接種基準陰性 (-) (±) 麻疹 NT 法 4 倍以下 4 倍未満 PA 法 128 倍以下 16 倍未満 EIA 法 16.0 未満 2.0 未満 2.0~4.0 未満 風疹 HI 法 16 倍以下 8 倍未満 EIA 法 8.0 未満 2.0 未満 2.0~4.0 未満 水痘 IAHA 法 4 倍以下 2 倍未満 EIA 法 4.0 未満 2.0 未満 2.0~4.0 未満 皮内反応陰性陰性 抗体価で判断せざるを得ないが 麻疹と風疹ワクチンの接種基準が高い ムンプス EIA 法 4.0 未満 2.0 未満 2.0~4.0 未満

国際的な protective antibody 基準 風疹 麻疹 10 IU/ml (EIA 法で 4.0 未満 HI 法で 8 倍未満に相当 ) 200 miu/ml (EIA 法で 4.0 未満に相当 ) わが国では IU/ml で表示されていない わが国では 基準が麻疹は EIA 法カットオフ値の 4 倍 風疹は 2 倍も高い 水痘およびムンプスについては基準はない

4) 風疹ワクチン接種基準の問題

わが国の風疹ワクチン接種基準 風疹研究班 ( 厚労省 )2004 年 2013 年 HI 抗体価 16 倍以下 ( 陰性 ;8 倍未満 ) EIA-IgG 抗体価 8.0 未満 (- or +;4.0 未満 ) 環境感染学会ガイドライン 2009 年 確定された既往歴 ( 抗体価基準値以上 ) ワクチン 2 回接種を確認 1 回接種の場合 上記の基準で接種 2 回接種の確認は困難 判明したのは約 6 割 抗体価で判断せざるを得ない

国際的な風疹の基準変更の経緯 1985 年 NCCLS が EIA-IgG15 IU/ml をカットオフ値 1992 年暫定的に 10 IU/ml をカットオフ値 1995 年正式に 10 IU/ml をカットオフ値 Vast majority( 大多数 ) では防御できる WHO や主要論文でも 10 IU/ml が protective antibody( 防御抗体 ) 現行の CLSI でも踏襲 (Skendzel LP. Am J Clin Pathol 106:170-174, 1996)

風疹ワクチン接種基準は HI 16 倍以下でよいかを検証 HI 抗体価 32 倍以下のボランティア学生を対象に風疹単味ワクチン接種 1 風疹単独ワクチン接種前と接種 1 か月後および 2 年後における HI 抗体 EIA-IgG および IgM 抗体を測定 2EIA-IgG 抗体で avidity 測定 3 風疹 HI 抗体価によるワクチン接種基準を想定し ワクチン接種直後および長期においてそれら基準を満足できない率や対象者の増加率を検討 4 既往歴なしで 1 回および 2 回接種後 既往歴があって 1 回接種における 2 年後の風疹 HI 抗体価分布の違い ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

参加登録者 残血清で風疹 EIA-IgM 抗体陰性を確認できた者を登録 HI 抗体価 人数 8 倍未満 50 名 8 倍 23 名 16 倍 49 名 32 倍 78 名 計 200 名 ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

風疹ワクチン接種前 1 か月後と 2 年後の HI 抗体価の変動 160 140 120 ワクチン接種前 ワクチン接種後 ワクチン接種 2 年後 該当者数 ( 名 ) 100 80 60 40 20 0 8 倍未満 8 倍 16 倍 32 倍 64 倍以上 HI 抗体価 ワクチン接種後抗体増加するも 2 年後は減少 ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

各 HI 抗体価における接種後の有意な抗体価の増加 有意な増加 ; 抗体価の陽転あるいは 4 倍以上の増加 HI 抗体価対象数有意な増加 8 倍未満 50 名 49 名 (98%) 8 倍 23 名 20 名 (87%) 16 倍 49 名 33 名 (67%) 32 倍 78 名 25 名 (32%) 接種前の抗体が高くなるとブースター効果がかかりにくい ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

各ワクチン接種基準による接種後の 基準不満足の割合 接種基準 (HI 抗体価 ) 接種前対象者接種後 4~6 週接種後 2 年 8 倍未満 50 名 1 名 (2.0%) 2 名 (4.0%) 8 倍以下 73 名 2 名 (2.7%) 16 名 (21.9%) 16 倍以下 122 名 14 名 (11.5%) 52 名 (42.6%) 32 倍以下 200 名 56 名 (28.0%) 147 名 (73.5%) 基準は短期的には 8 倍以下 長期的には 8 倍未満が適当? ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

各接種基準による対象者数の増加 HI 抗体価 8 倍未満の対象者数を基準とすると 8 倍以下 1.5 倍 16 倍以下 2.5 倍 32 倍以下 4.7 倍 ワクチン接種基準を上げると接種対象者が増加する ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

抗体陰性者における B 細胞メモリー HI 抗体陰性者に風疹ワクチン接種後 IgM 抗体陰性 8/50 名 (16%) そのうち 5 名はワクチン既往あり IgG 抗体 avidity 高値 6/50 名 (12%) そのうち 4 名はワクチン既往あり IgM 抗体陰性且つavidity 高値 3/50 名 (6%) そのうち 2 名はワクチン既往あり 抗体陰性でも6~16% はB 細胞メモリーを持ち 多くはワクチン既往あり ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

接種回数および既往歴による分布 接種後 2 年後 既往歴有 n=22 既往歴無で接種歴 2 回 n=111 接種歴 1 回 n=39 60% 50% 40% 接種歴 1 回 接種歴 2 回 既往歴有 30% 20% 10% 0% 8 倍未満 8 倍 16 倍 32 倍 64 倍以上 HI ワクチン2 回接種も2 年後抗体価に差はない 既往歴があると高い ( 寺田ら 感染症学雑誌 in press)

5)HB ワクチンの長期予防効果 HBs 抗体が一旦陽性になれば 陰性になっても本当に有効か?

HBs 抗原陽性から見た長期予防効果 ワクチン接種後の抗体陽性率 (HBs 抗体価 10mIU/mL) (%) 抗体陽性率 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 98.0% (97/99 例 ) 1 年 87.3% (55/63 例 ) 海外にて H B VAX Ⅱ 接種例 (0 1 6 ヵ月の 3 回接種 ) を対象とし 22 年間にわたり HBs 抗体価を検証した ワクチン接種後の HBs 抗原陽性例数 81.8% (45/55 例 ) 73.0% (27/37 例 ) 68.2% (15/22 例 ) 76.5% (13/17 例 ) 5 年 10 年 15 年 20 年 22 年 HBs 抗原陽性例数 0 例 0 例 0 例 0 例 0 例 0 例 接種後の期間 1 年 5 年 10 年 15 年 20 年 22 年 HBs 抗原陽性例はなかった (But DY et al. Vaccine 26 : 6587, 2008)

HBc 抗体から見た長期予防効果 解析集団 追跡人数 追跡年数 HBs 抗体 10mIU/L HBs 抗原 + HBc 抗体 + 肝炎発症 中国小児 1 74 9 38 (51%) 0 12 (9%) なし 台湾小児 2 140 5 117 (83%) 0 10 (7%) なし アラスカ小児 & 成人 3 1194 10 907 (76%) 2 ( 一過性 ) 13 (1.1%) なし ブレイクスル 感染の定義 : HBc 抗体および HBV-DNA の検出 ワクチン接種後抗体を獲得した人において 抗体価の減衰 急性 / 慢性肝炎の報告はないがブレイクスルー感染が 1~9% 将来 de-novo 肝炎の可能性 1. Lieming D, et al. Clin Infect Dis 1993; 17: 475-479. 2. Lee PI, et al. Pediatrics 1995; 126: 716-721. 3. Wainwright RB, et al. J Infect Dis 1997; 175: 674-677.

小児における HBs 抗体残存率と追加接種 に対する反応性 期間 n 抗体残存率 1 回追加接種後の抗体陽転率 ニュージーランド 1 5 年後 308 85% 99% アメリカ 2 12 年後 14 100% 100% スペイン 3 7 年後 34 85% 100% 小児に対する接種後 5~12 年において 85~100% の方で抗体が残っていることが示されている 1 回追加接種後 99~100% の抗体陽転率が確認 接種後 5~7 年なら 1 回接種で抗体が陽転する 1 Milne A et al. N. Z. Med. J. 1992,105,336-338 2 West DJ et al. Pediatr Infect Dis J. 1994;13(8):745-747 3 Gonzalez ML et al. Vaccine 1993;11(10):1033-1036

HB ワクチン接種 24 年後における 追加接種の有効性 ワクチン接種により抗体陽転 その 24 年後に陰性化した 103 名を対象に 2 回の追加接種を行い 免疫メモリーについて検証した 追加接種後の HBs 抗体の変化 初回接種 1 ヵ月後 : 例数 (%) GMC(95%CI) 5 歳時 HBs 抗体 (+) n=63 5 歳時 HBs 抗体 (-) n=40 10mIU/mL 55(87.3%)/ 556.2(390.6~795.6) a 32(80.0%)/ 526.9(350.9~791.4) a <10mIU/mL 8(12.7%)/ 5.6(3.1~7.5) 8(20.0%)/ 3.1(2~3.8) p χ 2 =0.994 p>0.05 GMC: 幾何平均濃度 a:p<0.001 ; 初回接種 1 ヵ月後の GMC Hep-B Vax( プラズマ由来ワクチン (Merck) 24 年後でも追加接種 2 回で 84.5% が抗体陽転 (Zhu CL et al. Vaccine; 29: 7835, 2011 )

まとめ 1) 職員 学生に対する抗体検査およびワクチン接種は院内感染防止と職業感染防止のため必要である 2)2 回接種の確認は困難で 接種基準には問題がある 個人的には国際的な基準でよいと考える 3) 細胞性免疫が測定できると 正確に罹患防止が判明するであろう 4)HB ワクチン接種後一旦陽転すれば 針刺し時に抗体測定し 適切に対応できればよいと思われる