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P60 コンクリート構造物の耐久性 ( 設計編 5 章 ) 構造設計 終局耐力 かぶり 設計基準強度材料の特性値 鋼材腐食に関する環境条件 使用条件設計強度設計断面耐力設計断面力 ひび割れ幅の限界値 ひび割れ幅 設計作用荷重 荷重の特性値 環境条件 鋼材腐食に対する 大阪工業大学 三方 康弘 暴露試験場 ( 三重県熊野市 ) 1 中性化 塩害 凍害 化学的 侵食 アル骨 中性化速度 係数の特性値 塩化物イオン 拡散係数の 特性値 相対動弾性係数 中性化速度 係数の設計値 塩化物イオン 拡散係数の 設計値 相対動弾性係数の設計値 コンクリートの化学的侵食に関する 中性化深さの設計値塩化物イオン濃度の設計値 コンクリートのアルカリ骨材反応に関する 鋼材腐食発生限界深さ 鋼材腐食発生限界濃度 相対動弾性係数の最小限界値 設計耐用年数 要求性能 図 5.1.1 コンクリート構造物の耐久性の流れ 構造設計 終局耐力 耐久性 設計基準強度 安全係数 圧縮強度の予測値 ( 配合強度 ) かぶりひび割れ幅の限界値ひび割れ幅の検討 中性化 塩害 凍害 化学的侵食 アル骨 中性化速度係数の特性値 安全係数 塩化物イオン拡散係数の特性値 安全係数 相対動弾性係数の特性値 安全係数 膨張率の最大限値 安全係数 侵食状況の確認実験の実施 中性化速度係数 の予測値 塩化物イオン拡散係数の予測値 相対動弾性係数の予測値 膨張率の予測値 図 5.1. コンクリートの耐久性の流れ W/ 使用時荷重 W/ 諸材料の種類 P60 3 P61 通常, 硬化コンクリートは,1に示すようにコンクリート中の水和生成物 ( 水酸化カルシウム等 ) が細孔溶液中に電離し飽和しているため, 強いアルカリ性 (ph1~13) を示している ). しかし, 大気中の二酸化炭素が, コンクリート表面から侵入すると,に示すように二酸化炭素は炭酸イオンおよび炭酸水素イオンとなる. そして,3に示すように細孔溶液中で炭酸イオンと水酸化物イオンが反応する. その結果, 細孔溶液の水酸化物イオンが減少しアルカリ性は低下する. この現象を一般に中性化という. - 1 コンクリート中の水酸化カルシウムの電離 a(oh) a OH - コンクリート中に侵入した二酸化炭素 O HO HO3 H HO3 H O3 3 炭酸化反応 - - a OH H O3 ao3 HO O H O O O H O O O H O O O H O O ph>1 不動態被膜 鉄筋 中性化部 鉄筋 不動態被膜の破壊錆 鉄筋 鉄筋 ひび割れ 図 5..1 中性化のイメージ 4 錆 - 1

P6 P6 写真 5..1 中性化深さの測定状況 5 写真 5.. かぶりのはく落 6 P6 中性化に対する構造物の維持管理 P6 中性化化による劣化 部材のの性能低下 錆汁 はく離 はく落 ( 部分的 ) 鉄筋に沿ったひび割れ 鋼材の腐食開始 コンクリートに腐食ひび割れ発生 潜伏期進展期加速期劣化期 鋼材の断面欠損 はく落 ( 広範囲 ) 使用期間 中性化による劣化化 能低下 部材の性 中性化の進行と鋼材の腐食による劣化過程 コンクリートに腐食ひび割れ発生 鋼材の腐食開始 潜伏期 進展期 美観の低下 中性化による劣化化 鋼材の腐食開始 使用期間 加速期劣化期 潜伏期 進展期 部材の性能能低下 コンクリートに腐食ひび割れ発生 加速期 耐荷力の低下 剛性の低下 使用期間 劣化期 (a) 美観 景観に着目した場合 (b) 安全性に着目した場合 図 5..3 中性化による劣化進行過程と劣化 7 解説図 9.1.1 中性化による劣化進行過程の概念図の一例 8

普通ポルトランドセメントを用い 一般的な環境下に立地し 表 5..1に示す最小かぶりと最大水セメント比の値を満足する かつ ひび割れ幅が表 5..に示す一般の環境に対するひび割れ幅の限界値を満足する の条件 対象構造物の種類 構造物係数 γ i 重要構造物 =1.1 一般構造物 =1.0 設計かぶり コンクリートの配合等 鋼材腐食発生限界深さ lim lim= - k : 耐久性に関するに用いるかぶりの設計値. 施工誤差をあらかじめ考慮し下式で求める. =- e : かぶり e: 施工誤差 k: 中性化残り 通常環境下 =10mm 塩害環境下 =10~5mm 図 5..4 no ばらつきを考慮した安全係数 γ b 一般 =1.15 高流動コンクリート =1.1 es γi 1.0 lim es OK 中性化速度係数の特性値 α k (mm/ 年 ) γp αp αk α p: コンクリートの中性化速度係数の予測値 (mm/ 年 ) γ p:α p の精度に関する安全係数. 一般に1.0~1.3 環境 環境作用の程度を表す係数 β e 乾燥しやすい環境 =1.6 乾燥しにくい環境 =1.0 中性化速度係数の設計値 (mm/ 年 ) α =α k β e γ 中性化深さの設計値 =γ α t 部位等 不要 耐用年数 t ( 年 ) コンクリートの材料係数 γ 一般 =1.0 上面の部位 =1.3 上限を100 年とする 中性化に関するのフロー no 9 P63 表 5..1 標準的な耐久性 * P64 を満足する構造物の最小かぶりと最大水セメント比 W/** の最大値 (%) かぶり の最小値 施工誤差 柱 50 45 ±15 梁 50 40 ±10 スラブ 50 35 ±5 橋脚 55 55 ±15 * 設計耐用年数 100 年を想定 ** 普通ポルトランドセメントを使用 表 5.. 鋼材の腐食に対するひび割れ幅の限界値 W a 鋼材の腐食に対するひび割れ幅の限界値 w a 鋼材の種類 一般の環境 腐食性環境 特に激しい腐食環境 異形鉄筋 0.005 0.004 0.0035 普通丸鋼 P 鋼材 0.004 : かぶり 10 ただし, 適用できるかぶりは100mm 以下を標準とする. かぶりは, 施工による誤差を考慮した値である. 中性化による鋼材腐食がかぶり不足に起因する場合があることや, 実施工では的確なかぶりを確保することが困難な場合があることなどを踏まえて, で使用するかぶりは, 式 (5..3) に示すように施工誤差を差し引いた値を用いる. 鋼材腐食発生限界深さ k Δ e lim k (5..) : 耐久性に関するに用いるかぶりの設計値 であり, 施工誤差を予め考慮して式 (5..3) で求める. Δ (5..3) e : 中性化残り : かぶり : 施工による誤差 11 P63 かぶりが不足する量は, 施工時の管理レベルに応じて異なり, 一様ではない. 設計時のかぶりと実測かぶりを比較した結果によると, 設計時のかぶりからの不足量は, 最大値でそのかぶりの10% 程度である. かぶりの施工誤差の値については, 表 51 5..1 を参照して設定する. 表 5..1 標準的な耐久性 * を満足する構造物の最小かぶりと最大水セメント比 W/** の最大値 (%) かぶり の最小値 施工誤差 柱 50 45 ±15 梁 50 40 ±10 スラブ 50 35 ±5 橋脚 55 55 ±15 * 設計耐用年数 100 年を想定 ** 普通ポルトランドセメントを使用 1 P64 3

中性化残りは, 一般に, 通常環境下では10mm, また塩分環境下では10~5mmとする. 具体的な中性化残りの値は, 環境条件 ( 温度, 湿度, 塩分供給条件など ) やコンクリートの品質に依存し, 現時点では必ずしも明らかになっていないが, 中性化残りの上限値である 5mm は, あらかじめコンクリート内に塩分が存在する場合の値である. また, 類似条件の構造物の調査結果や実験によって十分確認されている場合には, その結果を参考にして5mmより小さくすることもできる. P64 中性化深さの設計値 α γ α t (5..4) P64 γ : 設計値 のばらつきを考慮した安全係数一般に 115 1.15 とする. ただし, 高流動コンクリートを用いる場合には構造物中のコンクリートの均一性が高まることから1.1とする. : 中性化速度係数の設計値 t : 中性化に対する耐用年数 ( 年 ) αk βe γ (5..5) α k : 中性化速度係数の特性値 β : 環境作用の程度を表す係数 (5..6) γ e : コンクリートの材料係数 13 14 γ p α α (5..6) p k P65 α p : コンクリートの中性化速度係数の予測値 (mm/ 年 ) p : α p の精度に関する安全係数, 一般に1.0~1.3としてよい コンクリートの中性化速度係数の予測値 p はコンクリートの有効結合材比と結合材の種類から予測できる. α p a b W B (5..7) a,b W B : セメント ( 結合材 ) の種類に応じて, 実績から定まる係数 : 有効水結合材比 ただし, 式 (5..7) における係数 a および b は, 厳密には環境条件にも依存するので, 特に中性化に関して厳しい環境と考えられる場合には, 環境条件の影響を適切に考慮しなければならない. 15 P65 参考として, 土木学会フライアッシュ研究小委員会が普通ポルトランドセメントあるいは中庸熱ポルトランドセメントを用いた17 種類の実験データに基づいて求めた回帰式を示す. α p 3.57 9. 0W B (5..8) p W B : 有効水結合材比 W p k A (5..9) W : 単位体積あたりの水の質量 B : 単位体積あたりの有効結合材の質量 p : 単位体積あたりのポルトランドセメントの質量 A: 単位体積あたりの混和材の質量 k : 混和材の影響を表す係数フライアッシュの場合 :k =0 高炉スラグ微粉末の場合 :k =0.7 式 (5..7) の係数 a,b を定めるにあたってはこれらも参考にすると良い 16 4

環境作用の程度を表す係数 β e コンクリートが乾燥しやすい条件ほど 二酸化炭素がコンクリート中に侵入しやすい 表 5..3 コンクリートの中性化の進行予測に及ぼす環境作用の程度 環境条件 環境作用の程度を表す係数 β e 乾燥しやすい環境 1.6 乾燥しにくい環境 1.0 P65 コンクリートの材料係数 γ 一般に 1.0 としてよい. ただし, 上面の部位に関しては1.3 とするのがよい. なお, 構造物中のコンクリートと標準養生供試体の間で品質に差が生じない場合は, 全ての部位において1.0としてよい. 中性化に対する耐用年数 t ( 年 ) 式 (5..) で求める中性化深さに対しては, 耐用年数 100 年を上限とする. 17 中性化に関する γi 1.0 lim 中性化深さの設計値 (5..1) γ α t (5..4) 鋼材腐食発生限界深さ lim k γ i: 構造物係数 (5..) P63 一般に,1.0 としてよいが, 重要構造物に対しては 1.1 とする. 18 加速期前期の例 加速期後期の例 劣化期の例 写真 塩害による劣化の例 劣化期の例 19 図飛来塩分量の実態調査 ( 建設省総合技術開発フ ロシ ェクト ) 0 5

害による劣化材の性能下図 5.3.1 塩害による劣化進行過程低O 不動態被膜 l - H O 図 1.3.1 Fe(OH) Fe + Fe アノード部 P6 e - +H O+1/O OH - 鋼材 カソード部 アノード反応 :Fe Fe + + e - カソード反応 :H O +1/O +e - OH - 鋼材の不動態被膜の破壊 1 塩鋼材の腐食開始 潜伏期 コンクリートに腐食ひび割れ発生 進展期 美観の低下 加速期劣化期部使用期間 耐荷力の低下剛性の低下 P67 の条件 P68 鋼材腐食発生限界濃度 lim P69 対象構造物の種類 構造物係数 γi 重要構造物 =1.1 一般構造物 =1.0 塩化物イオン濃度 ( kg /m 3 ) コンクリートの配合等 ばらつきを考慮した安全係数 γγl l 一般般 =1.3 =1.3 13 高流動コンクリート =1.1 鋼材腐食発生限界濃度 ( kg /m 3 ) lim 一般に 1. kg /m 3 部位等 コンクリートの材料係数 γ 一般般 =1.0 100 上面の部位 =1.3 13 塩化物イオンに対する特性値 Dk(m / 年 ) ひび割れ ひび割れ幅 w ひび割れ幅の限界値許容ひび割れ幅 wa wa ひび割れ間隔 l 塩化物イオンの移動に及ぼすひび割れの影響を表す定数 D0 塩化物イオンに対する設計拡散係数 w w D Dk D0 l w a 環境 耐用年数 t( 年 ) 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値 ( kg /m 3 ) (1 0.1 l 0 erf ( )) D t γi 1.0 lim es OK かぶりの期待値設計値 ( mm ) 誤差関数 s コンクリート表面に erf ( s) e 1/ おける想定塩 0 化物イオン濃度 o( ( kg /m 3 ) 環境が特に厳 1.5~13.0 設計値しい, 腐食が 1.0~13.0 10 ~ 一般に設許容できない 場合計かぶり =-Δ Δ e エポキシ樹上限 :100 年脂塗装鉄筋等 表面処理 電気防食法 no 鋼材位置における塩化物イオンの鋼材腐食発生限界濃度は, コンクリート単位容積当りの量として0.3~.4kg/m 3 程度である. この値は構造物の設置環境条件や鋼材腐食許容量などの条件によって異なる. たとえば, あらかじめ塩化物を混入した供試体による促進試験などでは,0.3~ 03~ 0.6kg/m 3 程度であり, 実環境での暴露実験では,1.~.4kg/m 3 程度とされている. 促進試験と実環境から得られる限界濃度の差異は, 試験供試体と実構造物のかぶりや水セメント比の違い, また促進試験時に設定される高温環境等の温度の影響が考えられる. このように, 塩化物イオンの鋼材腐食発生限界濃度は, 諸条件によって異なるのが実状であるので, 個別の構造物のにあたっては, 使用材料, 環境等の条件が対象構造物と近い条件下での実測結果や試験結果を参考に定めることが望ましい. それらによらない場合, 安全側の値として1.kg/m 3 を限界値としてを行ってよい. 図 5.3. 塩害に関するのフロー 3 4 6

鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値 P69 塩化物イオンは, 時間の経過とともにコンクリート表面から内部へ浸透拡散するが, 塩化物イオンの浸入状況の予測式としては, 拡散理論に基づくものを用いるのが一般的である. 拡散は, 塩化物イオンの濃度差が駆動力となって生ずる現象であることから, コンクリート中の液相の塩化物イオン濃度差による拡散として構成される予測式が望ましい. なお, コンクリート中の塩化物イオンは, セメント水和生成物やセメント成分に固定あるいは吸着される. この現象は中性化など液相のpHの変化により影響を受けることから, これらの現象も考慮されたモデルが望ましい. 5 塩化物イオンの浸入に対する耐用年数時点の鋼材位置における塩化物イオP69 ン濃度は, 式 (5.3.) に示すフィック (Fik) の拡散方程式の解をもとに推定してよい. 0.1 γl 0 1 erf (5.3.) D t : 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値 0 : コンクリート表面における想定塩化物イオン濃度 (kg/m3). 類似の構造物の実績や実測データに基づき, 対象とする構造物の環境条件をよく表すコンクリート表面における塩化物イオン濃度の値を用いることが望ましい. それらによらない場合表 5.3.1により求めてもよい. 表 5.3.1 コンクリート表面における塩化物イオン濃度 0 (kg/m 3 ) 海岸からの距離 (km) 飛沫帯汀線付近 0.1 0.5 0.5 1.0 飛来塩分が多い地域飛来塩分が少ない地域 北海道, 東北, 北陸, 沖縄関東, 東海, 近畿, 中国, 四国, 九州 13.0 9.0 4.5 3.0.0 1.5 4.5.5.0 1.5 1.0 海岸付近の高さ方向については, 高さ1mが汀線からの距離 5mに相当すると考えて 0 を求めてよい 6 : 耐久性に関するに用いるかぶりの設計値. 施工誤差を予め考慮して, 式 (5.3.3) で求めることとする. e (5.3.3) : かぶり : 施工誤差 Δ Δ e t : 塩化物イオンの浸入に対する耐用年数 ( 年 ). 一般に, 式 (5.3.) で評価する鋼材位置における塩化物イオン濃度に対しては, 耐用年数 100 年を上限とする. P69 γ l : 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値 のばらつきを考慮した安全係数. 一般に,1.3としてよい. ただし, 高流動コンクリートを用いる場合には 1.1としてよい. D : 塩化物イオンに対する設計拡散係数 (m/ 年 ) s η erf s : 誤差関数 erf ( s) 1/ 0 e η で表される π 出典 : コンクリート診断技術 基礎編 日本コンクリート工学協会 7 8 7

P70 式 (5.3.) は, 塩化物イオンの浸入を鋼材軸方向に均一な現象とみなす考え方に基づいている. そのため, かぶりコンクリートに曲げひび割れが生じている場合は, ひび割れからの距離によって鋼材位置の塩化物イオン濃度は異なると考えられる. しかし, ひび割れ幅が小さい場合には, 一般にひび割れの影響による塩化物イオン浸入の不均一性が小さい. また, 緻密なコンクリートの場合には, ひび割れの影響により塩化物イオンの分布に不均一性が生じる可能性があるが, ひび割れ部分以外の堅牢性の高いことが, 鋼材保護に有効に機能すると考えられる. 以上のことから, ひび割れの影響を平均化して考慮することにより, 塩化物イオン浸入を鋼材軸方向に均一な現象とみなして, 鋼材腐食の発生限界を判定しても工学上不都合は生じないと考えられる. 9 P69 そこで, 曲げひび割れ幅が, 表 5..に示される鋼材の腐食に対するひび割れ幅の限界値以下に抑えられた場合には, 式 (5.3.4) によりコンクリートの品質とひび割れの影響を考慮して, 拡散係数 D を評価することにより, 式 (5.3.) を用いて鋼材位置における塩化物イオン濃度を推定してよい. γ l 0.1 0 1 erf (5.3.) D t 表 5.. 鋼材の腐食に対するひび割れ幅の限界値 W a 鋼材の腐食に対するひび割れ幅の限界値 w a 鋼材の種類 一般の環境 腐食性環境 特に激しい 腐食環境 異形鉄筋 0.005 0.004 0.0035 普通丸鋼 P 鋼材 0.004 : かぶりただし, 適用できるかぶり は 100mm 以下を標準とする. 30 D : 塩化物イオンに対する設計拡散係数 (m/ 年 ) P70 塩化物イオンは, 時間の経過とともにコンクリート表面から内部へ浸透拡散するが, とりわけ, ひび割れが存在すると浸透拡散の速度は速くなる. 拡散係数はフィックの拡散法則に現れる比例係数で, 拡散の早さを規定している. コンクリート中において塩化物イオンに対する設計拡散係数は, 一般に, 式 (5.3.4) により評価してよい. D w w γ Dk D (5.3.4) 0 l w a γ : コンクリートの材料係数. 一般に,1.0としてよい. ただし, 上面の部位に関しては,1.3とするのがよい. なお, 構造物中のコンクリートと標準養生供試体の間で品質に差が生じない場合は, 全ての部位において1.0としてよい. D k : コンクリートの塩化物イオンに対する拡散係数の特性値 (m/ 年 ) D 0 : コンクリート中の塩化物イオンの移動に及ぼすひび割れの影響を表す定数 (m/ 年 ) 一般に,00m/ 年としてよい. w : ひび割れ幅. コンクリート標準示方書 [ 設計編 ](8.3.3) による. 31 D w w P70 γ Dk D (5.3.4) 0 l w a w : ひび割れ幅. コンクリート標準示方書 [ 設計編 ](8.3.3) による. w a : 鋼材の腐食に対するひび割れ幅の限界値. コンクリート標準示方書 [ 設計編 ](8.3.) による. w l : ひび割れ幅とひび割れ間隔の比. 一般に, 式 (5.3.5) で求めてよい. se pe, w l 3 または s E s Ep (5.3.5) 式 (5.3.4) は, かぶりコンクリートの塩化物イオンに関する平均拡散係数を, ひび割れ部分以外のコンクリートの品質と, ひび割れ開口の影響の両者を評価しようとしたものである. ひび割れ幅とひび割れ間隔の比 w l は, ひび割れの影響を平均的に表すために導入した物理量である. このような平均化手法は, ひび割れ幅がひび割れ幅の限界値以下の小さい範囲に抑えられた場合には有効であるが, ひび割れ幅が著しく大きい場合には, 塩化物イオンの浸入に対するひび割れ部分の寄与が急激に増大すると考えられる. ひび割れ幅とひび割れ幅の限界値の比の項 w w a はこのことを表している. 3 8

P71 温度ひび割れや収縮ひび割れなどの施工段階における初期ひび割れに対しても同様に, ひび割れ幅および間隔を求めることにより, 適切に塩化物イオンの浸入に伴う鋼材腐食に関するを行うことを原則とする. しかしながら, これらのひび割れに対して, ひび割れ幅と間隔を精度良く求めることは現状では困難な場合も多い. 初期収縮ひび割れ間隔を求めることが困難な場合で, ひび割れ幅がコンクリート標準示方書 [ 設計編 ] のひび割れ幅の限界値以下であれば, 次式を用いてよい. D Dk γ βl (5.3.6) β l : 初期ひび割れの影響を考慮した係数で,1.5としてよい. γ l 0.1 0 1 erf (5.3.) D t γ l : 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値を考慮した安全係数一般に,1.3としてよい. ただし, 高流動コンクリートを用いる場合には,1.1としてよい. 予測手法の精度, ならびに浸入した塩化物イオンが鋼材腐食に対して局所的に影響を及ぼすことを鑑み, 安全上の余裕を見ている. なお, 高流動コンクリートは, 材料分離に対する抵抗性が高く, 予測手法適用の前提となる構造物中のコンクリートの均一性確保に対する信頼性が高いので, 高流動コンクリートを用いる場合には, 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値のばらつきを考慮した安全係数を割り引いてよい. P70 33 34 塩害に関する γ i 1.0 lim 鋼材腐食発生限界濃度 (kg/m 3 ) (5.3.1) P68 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値 (kg/m3) 0.1 γl 0 1 erf (5.3.) D t lim : 類似の構造物の実測結果や試験結果を参考に定めてよい. それらによらない場合,1.kg/m 3 としてよい. ただし, 凍結融解作用を受ける場合には,1.kg/m 3 よりも小さな値とするのがよい γ i : 構造物係数一般に,1.0としてよいが, 重要構造物に対しては1.1とする. 35 中性化に関する例 < 条件 > 対象構造物 :R 柱設計かぶり :45mm 配合 : スランプ8m, 結合材 = 普通ポルトランドセメントのみ, 水セメント比 W =50% 環境 : 内陸部で, 南向きに面する耐用年数 :100 年 < > (1) 構造物係数 : γi =1.0( 一般構造物 ) lim () 鋼材腐食発生限界深さ : P66 本構造物は, 海岸部のような塩分環境下ではないため, 中性化残りは, k =10mm( 通常環境下 ) とする. しかし, コンクリート内に塩物が存在する場合や凍結防止剤 ( 塩化カルシウム ) が散布されると予想される場合には, 塩分環境下として扱う必要がある. なお, 中性化残り5mmは, あらかじめコンクリート内に塩分が存在する厳しい環境下の場合である. 施工による誤差のΔ e は表 5..1より最大値の15mmとする. 36 9

Δ e lim = 設計かぶり - 施工による誤差 =45-15=30mm k (3) 中性化深さの設計値 : =30-10=0mm 1 ばらつきを考慮した安全係数 : γ 配合がスランプ8mの普通コンクリートであることから, γ =1.15( 一般 ) とする. P66 中性化速度係数の特性値 : α k 対象構造物と同じ, あるいは類似した材料 配合 環境条件の構造物から得られた値を用いることが望ましいが, 本では, 該当する値がないものとして, 配合から式 (58) (5..8) で求める. α k 3.57 9. 0W B =-3.57+9.0 0.50 =0.93 3 環境作用の程度を表す係数 : β e 本 R 柱は, コンクリート表面が南向きになることから, β e =1.6( 乾燥しやすい環境 ) とする. 37 4 コンクリートの材料係数 : (4) γ α t γ γ コンクリート表面は, 型枠面であることから =1.0( 一般 ) とする. 中性化に対する耐用年数 :t t = 100 年よって, 各値を式に代入すると, α k β e γ =1.15 0.93 1.6 1.0 100 =17.1mm つまり,100 年後, コンクリート表面から17.1mmの深さまで中性化が進行すると予測される. γ i lim 1.0 17.1 0.0 0.86 1.0 t P66 よって 耐用年数中 (100 年 ) における本構造物の所要の性能は, 中性化によって損なわれることはないと考えられる. 38 中性化深さ (mm m) 60 55 50 45 40 35 30 5 0 15 10 5 0 設計かぶり 45mm 鋼材腐食発生限界深さ lim =0mm 供用年数 100 年の中性化深さの設計値 =17.1mm 0 10 0 30 40 50 60 70 80 90 100 110 経過年数 ( 年 ) 図 5..5 材齢と中性化深さの関係 ( 例の場合 ) P67 39 塩害に関する例 P71 条件 γ : コンクリートの材料係数 1.0 D k : コンクリートの塩化物イオンに対する拡散係数の特性値 (m / 年 )0.05m / 年 D 0 : コンクリート中の塩化物イオンの移動に及ぼすひび割れの影響を表す定数 00m / 年 w : ひび割れ幅 0.1mm w a : ひび割れ幅の限界値 0.15mm w l : ひび割れ幅とひび割れ間隔の比.10-3 γ i : 構造物係数.1.0 lim : 鋼材腐食発生限界濃度.1.kg/m 3 0 : コンクリート表面における想定塩化物イオン濃度 (kg/m 3 ).4.5kg/m 3 : かぶりの設計値.50mm t : 塩化物イオンの浸入に対する耐用年数 ( 年 ).50 年 γ l : 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値 のばらつきを考慮した安全係数.1.3 40 10

D w w γ Dk l w a 0.1 0.15 = 1.0 0.05+10-3 00 = 0.139 γ l D 鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値 0.1 1 erf D t 0. 1 0. 1 50 0. 95 t 0. 139 50 D 0 (5.3.4) 0 (5.3.) P71 = 1.3 4.5 1 0.8 =1.05 γ i lim 1.05 1.0 0.88 1.0 1. よって 耐用年数中 (50 年 ) における本構造物の所要の性能は, 塩害によって損なわれることはないと考えられる. 誤差関数表より erf 0.95 = 0.8であるから 41 4 に合格することが困難な場合の対応 P71 外部から塩化物の影響を受けない環境条件の場合の対応 P71 環境が特に厳しい場合や, 腐食を許容できない場合は, 拡散係数の小さいコンクリートを用いかぶりを大きくしてもに合格することが困難なことがある. このような場合には, 防錆処置を施した補強材 ( エポキシ樹脂塗装鉄筋等 ) の使用や飛来塩分の浸入を防ぐコンクリートの表面被覆, あるいは電気化学的手法 ( 電気防食法 ) を用いて腐食を発生させないなどの対策を行う方が経済的となることがあり, 構造物の形態と置かれる環境, およびライフサイクルコストなどを考慮して決めることが重要である. これらの各工法を適用する際には, 電気化学的防食工法設計施工指針案 ( コンクリートライブラリー 107), エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工指針改訂版 ( コンクリートライブラリー 11), 表面保護工法設計施工指針案 ( コンクリートライブラリー 119) に従うとよい. 43 基本的には, コンクリート中の塩化物イオンが供用期間中に鋼材表面において鋼材腐食発生限界濃度を超えなければ, 鋼材腐食が構造物の性能を低下させることはないものと考えられる. したがって, 練混ぜ時に塩化物が含まれる可能性があるコンクリートにおいても, 供用期間中にその量が鋼材腐食発生の限界濃度を超えなければ問題が生じないことになる. しかし, コンクリート打設時のブリーディングなどの影響によりコンクリート中に塩化物イオンが移動し, 部分的に濃縮する可能性もあることなどを考慮すると, 鋼材腐食発生限界濃度をそのまま練混ぜ時の塩化物イオン量の限界値として適用することは必ずしも適切であるとは限らない. このため, 練混ぜ時のコンクリート中の塩化物イオン量は, 鋼材腐食による構造物の劣化を容認できる程度以下に抑え得る実現可能な値として, 従来から用いられている値である, 総量が0.30kg/m 3 以下となることを原則とした. ただし, 供用後に外部からコンクリート中への塩化物イオンの浸入が予想されない場合については, 水セメント比や単位水量などをできるだけ小さくし, コンクリートの打ち込みを入念に行うことで, 材料分離がなく, 塩化物イオンが自由に移動できないような緻密なコンクリートを施工すれば, 塩化物イオン量の許容値を0.6kg/m3まで増加させてもよい 44. 11

凍結防止剤を用いることが予想される コンクリート構造物の場合の対応 P7 冬季の安全な交通路確保のための一つの方法として凍結防止剤の散布がある. しかし, 凍結防止剤の散布は, コンクリート構造物に塩化物イオンによる鉄筋腐食を発生させ, 北米ではコンクリート橋の深刻な被害が報告されてきた. 近年は, 日本においても凍結防止剤が多用されるようになり, コンクリート中の塩化物イオンの量が鋼材の腐食発生限界量を大きく超えて, 既に被害が発生している事例もあり, 今後, 拡大する可能性もある. 凍結防止剤の影響に対するも基本的には 5.3.3 塩害に関する方法 の方法で行うことができるが, コンクリート表面における塩化物イオン濃度の設定が困難であることから, 防水工や排水工を適切に行うとともに, 伸縮装置部のない構造形式を採用するなどして, 塩化物イオンを含む水分がコンクリートに伝達しない工夫をすること, あるいは塩化物イオンを含まない凍結防止剤を用いることの方が現実的である. 45 1