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平成 25 年度遠賀川河川事務所第 3 回建設技術講習会講習 1 鉄筋コンクリート構造物の 劣化調査 試験 建設技術講習会 1

コンクリートはメンテナンスフリー? 2

コンクリートはメンテナンスフリー? コンクリートの歴史は古く 約 2000 年前にローマで使用されていた 古代コンクリート = ローマンコンクリート 我が国のコンクリートの歴史は約 100 年 消石灰 火山灰 ( ホ ソ ラン ) 岩石レンガ 水海水? 油 再現した配合で強度試験を行った結果 材齢 1 年の圧縮強度は 10~20 N/mm 2 材齢 2000 年の圧縮強度 ( 実強度 ) は 3~6 N/mm 2 2000 年もの間の経年劣化を考慮しても 強度の低下は小さい! 構造物として自立しているものも多い コンクリートは 優れた耐久性を持った材料といえる しかし 3

コンクリートはメンテナンスフリー? コンクリートも劣化する 現代の鉄筋コンクリートは過酷な環境下に晒されたり ライフラインを支えるべく高耐久性能が要求されている 設計段階で 耐用年数を設定している 4

コンクリートはメンテナンスフリー? 設計段階で 耐用年数を設定している 更新時期を迎えたコンクリート構造物が急増! 全部造り替える? NO! 適切な診断と 予防対策 補修や補強を適切な時期に行い 長寿命化させる 対処療法から予防保全への思想転換 ストックマネジメント アセットマネジメントといった長寿命化計画 LCC( ライフサイクルコスト ) の低減に繋がる 5

コンクリートはメンテナンスフリー? 適切な診断と 予防対策 補修や補強を適切な時期に行い 構造物を長寿命化させる 劣化を見つける だけではなく 劣化要因 劣化進行予測 が重要 構造物一つ一つにどのような方法で補修や補強をいつ頃行うべきなのか といったストーリーがある ストーリーを精度良く策定するために 調査 予測 検討 判断 をしっかり行う 適切な補修 補強工事が実施できる 6

コンクリートはメンテナンスフリー? 調査 予測 検討 判断 調査はどのようなことをするのか? 過去の劣化履歴 補修履歴等の情報収集 構造物周囲調査 構造物の近接目視調査 非破壊 はつりによる健全度把握 品質試験など 予測は? 劣化要因の予測 今後の劣化進展予測 など 検討 判断は? 損傷の規模や深刻度 補修時期や工法の選定 更新が必要か否か など 7

鉄筋コンクリート構造物の劣化現象 コンクリートも劣化する! 8

鉄筋コンクリート構造物の劣化現象 原点 コンクリート 引張強度 = 圧縮強度 1 圧縮 引張 コンクリート 鉄筋 コンクリートで鉄筋を包むことにより 鉄筋の錆を防ぐ熱から鉄筋を守る鉄筋とコンクリートの十分な付着 } } 10~13 一体となって外力に抵抗 かぶりが必要な理由 鉄筋コンクリートが要求される力学的及び機能的な性能が低下する方向に変化していくこと 9

鉄筋コンクリート構造物の劣化現象 コンクリートも劣化する 化学的なもの中性化塩害アルカリ骨材反応化学的浸食 物理的なもの凍害すりへり作用振動による疲労 実際の劣化現象は これら複数の劣化外力の複合作用で進行 10

鉄筋コンクリート構造物の劣化現象 コンクリートも劣化する 中性化 空気中の二酸化炭素の作用を受けて コンクリート中の水酸化カルシウムが徐々に炭酸カルシムになり コンクリートのアルカリ性が低下する現象 Ca(OH) 2 +CO 2 CaCO 3 +H 2 O クリンカー化合物水水和生成物 3CaO SiO 2 2CaO SiO 2 3CaO Al 2 O 3 + H 2 O ケイ酸カルシウム水和物 ncao SiO 2 mh 2 O Ca(OH) 2 4CaO Al 2 O 3 Fe 2 O 3 11

鉄筋コンクリート構造物の劣化現象 コンクリートも劣化する コンクリート単体では中性化は劣化とは言わない なぜ? 中性化によって コンクリートの強度は増進するのに 一般に 密実なコンクリートは アルカリ性が高く コンクリート中の鋼材表面には緻密な不動態皮膜が生じるので鋼材は腐食しにくい コンクリートのアルカリ性が失われて中性化 不動態皮膜が破壊 水と酸素の存在で 鋼材が表面から酸化 腐食 鉄筋が腐食し 耐力の低下につながる可能性 12

鉄筋コンクリート構造物の劣化現象 コンクリートも劣化する 塩害 コンクリート中に存在する塩化物イオンの作用により鋼材が腐食し コンクリート構造物に損傷を与える現象 中性化の場合と同じく 鋼材が腐食することで 構造物の耐力に影響を及ぼす劣化 コンクリート中に塩化物イオン Cl - が一定量以上存在 不動態皮膜が部分的に破壊 一旦塩害による鋼材腐食が生じると 中性化の場合よりも腐食進行速度は早い コンクリート中の不均一性によって 鋼材表面の電位も不均一となり 陽極と陰極が生じて電流が流れ腐食が生じる水と酸素の存在で 鋼材が表面から酸化 腐食 13

鉄筋コンクリート構造物の劣化現象 コンクリートも劣化する ASR( アルカリシリカ反応 ) コンクリート中の細孔溶液中の水酸化アルカリ (KOH や NaOH) と骨材中のアルカリ反応性鉱物との間の化学反応をいう 広義には 反応生成物 ( アルカリ シリカゲル ) の生成や 吸水膨張によってひび割れが発生する現象をも含めてアルカリ骨材反応という場合も多い セメント 主たる供給源セメント原料の粘度鉱物などからの Na 2 O や K 2 O 単位セメント量の多い配合では ASR に不利 海砂 混和剤 飛来塩分 融雪剤などの浸入塩化物 ASR による鉄筋破断 14

鉄筋コンクリートの劣化調査 現場は重要な情報の宝庫! 15

鉄筋コンクリートの劣化調査 近接目視調査 構造物になるべく近づいて 目視観察により劣化の種類や劣化の規模を確認する 打音による浮きや空洞の確認 ひびわれや欠損 鉄筋露出の位置や規模を確認 土砂詰りなどの機能障害が生じていないか確認 鋼製の構造物の場合 腐食 亀裂や破断などの有無の確認 16

鉄筋コンクリートの劣化調査 近接目視調査 ( 橋梁の場合 ) 構造物になるべく近づいて 目視観察により劣化の種類や劣化の規模を確認する点検手法 : 地上 梯子点検手法 : 足場 17

鉄筋コンクリートの劣化調査 近接目視調査 ( 橋梁の場合 ) 構造物になるべく近づいて 目視観察により劣化の種類や劣化の規模を確認する 点検手法 : リフト車 点検手法 : 橋梁点検車 18

鉄筋コンクリートの劣化調査 現場で確認された損傷 その他の情報を劣化損傷図としてまとめる 近接目視調査の結果 19

鉄筋コンクリートの劣化調査 非破壊による健全度把握 赤外線装置で コンクリート表面温度を測定し 温度変化を観測することで 背面の空洞位置などを予測する サーモグラフィー ( 熱赤外線解析 ) による うきや背面空洞位置の予測 その他 JPEG 画像によるひびわれ抽出システムなども使用されている 現場では 写真を撮影するだけ 20

鉄筋コンクリートの劣化調査 非破壊による健全度把握 鉄筋探査計による配筋調査 ( 推測かぶり厚さ測定にも適用 ) 電磁波レーダー法 電磁誘導法 鉄筋 21

鉄筋コンクリートの劣化調査 非破壊による健全度把握 リバウンドハンマー = シュミットハンマー = テストハンマー 超音波法によるひびわれ深さの推定 表面の反発度を測定し その値から圧縮強度を推定する手法 (JIS では測定方法のみ ) Fc=-18+1.27R 日本材料学会式 Fc: コンクリート推定強度 (N/mm 2 ) R: 反発硬度 超音波の伝播性質を利用した ひびわれ深さの測定 発信 L/2 L/2 受信 超音波は 固体中は伝播しやすい 超音波は 気体中は伝播しずらい 超音波は回折する H= 深さ 健全部における伝播時間 Tc とひびわれ部の伝播時間 To H = L/2 ( Tc / To ) 2-1 22

鉄筋コンクリートの劣化調査 はつりによる鉄筋健全度把握 コンクリートの一部をはつり 鉄筋を露出させ 鉄筋の健全度やかぶり 鉄筋種および中性化深さの確認などを行う 23

鉄筋コンクリートの劣化調査 はつりによる鉄筋健全度把握 鉄筋かぶり コンクリート表面から 最も外側の鉄筋表面までの深さを測定 各種規定されたかぶり厚さが確保できているかを確認 同時に鉄筋の種類 ピッチ等も測定する 鉄筋健全度 ( 腐食度 ) 目視による観察の結果を下表のような腐食グレードに区分する グレード Ⅳ 鉄筋の腐食グレード区分鉄筋の状態グレードⅠ 黒皮の状態, またはさびは生じているが全体的に薄い緻密なさびであり, コンクリート面にさびが付着していることはない グレードⅡ 部分的に浮きさびがあるが, 小面積の斑点状である グレードⅢ 断面欠損は目視観察では認められないが, 鉄筋の全周または全長にわたって浮きさびが生じている グレードⅣ 断面欠損を生じている 24

鉄筋コンクリートの劣化調査 はつりによる鉄筋健全度把握 はつり位置における中性化深さ試験 はつり面にフェノールフタレイン 1% エタノール溶液を霧吹きで噴霧する 中性化していない断面は 赤紫色に呈色し 中性化している断面は呈色しない 中性化はコンクリート表面から進行するため 表面からの呈色していない断面の深さを測定し 中性化深さとする 中性化深さは 鉄筋のかぶりと照査し 中性化残りの算出や 鉄筋に到達するまでの年数算出を行う 一般的な予測式 C=a t C: 中性化深さ a: 中性化速度係数 t: 経過年数 例えば 経過年数 9 年のコンクリートの中性化深さが12mm 中性化速度係数は a=c/ t=12/3=4 かぶりが28mmであった場合 中性化残りは16mmなので これに到達するには 16=4 t t=(16/4) 2 = 16 年と予測できる 25

鉄筋コンクリートの劣化調査 その他の現地調査手法 中性化深さ測定 ( ドリル法 ) ( 一社 ) 非破壊検査協会 Φ10mm のドリルで削孔し 発生するドリル粉末をフェノールフタレイン 1% エタノール溶液を染みこませたろ紙で 受ける 中性化していない断面に到達し ドリル粉がろ紙に触れた時点で 赤紫色に呈色する 直ちに削孔を中止し 削孔深さを測定し 中性化深さとする 豆板や骨材の影響を受けるため 複数箇所 (3~5 箇所 ) 削孔し確認する 自然電位法による鉄筋健全度確認 鉄筋腐食度モニターを用い 非破壊探査で確認した鉄筋直上におけるコンクリート表面の電位を 1~2m 2 の範囲測定する 測定値は 評価規準と照合し 鋼材腐食の予測を行う 測定に際し コンクリートの一部をはつり 電極の一端を鉄筋に直結する 土木学会では 2000 年に試験方法制定 (JSCE-E601) 腐食度評価基準 ASTM C-876 ( 照合電極 : 飽和硫酸銅電極 ) -200mV < 測定値 90% 以上の確率で腐食が生じていない -350mV < 測定値 -200mV 不確定 26 測定値 -350mV 90% 以上の確率で腐食が生じている

試験室におけるコンクリートの品質試験 劣化現象を裏付けるデータ! 27

試験室におけるコンクリートの品質試験 現地調査では知り得ない情報を 試験室における品質試験で把握する 力学的特性 塩分含有 ASR 特性 圧縮強度試験静弾性係数試験など 塩化物イオン含有量試験 ( 定量的 ) EPMA による面分析 ( 定性的 ) 残存膨張量試験 ( 定量的 ) SEM-EDS による生成物分析 ( 定性的 ) など もちろん 闇雲に試験を行うのではなく 現地調査結果や構造物がおかれた環境等を考慮した試験項目を選定する必要がある また 試験によっては時間を要するものもあるため 計画の際は 工期を意識することも重要 28

試験室におけるコンクリートの品質試験 試料採取 現地では主に コンクリートコアボーリング によりコア試料を採取する コア採取の際は その直径や長さに留意して採取する必要がある 1. 供試体高さと直径の比圧縮強度試験に供する供試体の直径 d と高さ h の比は原則 1:2 とする 1:2 を確保できない場合は 補正を行うが それでも 1:1 以上は必要 ( 静弾性係数試験の場合 1:1.5) これは両端をカットした成形供試体とした場合なので 採取するコアは長めに採取する 両端はカット 研磨するため 供試体は短くなる! 他にも留意事項はあるため採取の際は 試験機関にお問い合わせを!! 29

試験室におけるコンクリートの品質試験 力学的特性 圧縮強度試験 (JIS A 1107) コンクリートの現有実強度を把握するために行う 設計基準強度との照査や試験前の供試体では 単位容積質量の測定も可能 両端研磨状況 圧縮強度試験状況 30

試験室におけるコンクリートの品質試験 力学的特性 静弾性係数試験 (JIS A 1149): ヤング係数 圧縮強度および気乾単位容積質量と密接な関係があり コンクリート構造物の部材剛性を算出する場合などに用いられるまた ASR が生じたコンクリートは静弾性係数が著しく低下することから ASR 判定の一試験として行われることもある ひずみゲージ 静弾性係数試験状況 31

試験室におけるコンクリートの品質試験 塩分試験 塩化物イオン含有量試験 (JIS A 1154) スライス 主に コンクリート表面から鉄筋位置に至るまでの塩化物イオン含有量の勾配を確認するため コアを表面から数スライスして試料とする結果は 土木学会で規定されている鋼材の腐食発生限界値の 1.2kg/m 3 と照査する また 将来の塩分拡散の予測にも用いる 試料粉砕状況 0.15mm 以下まで粉砕 電位差滴定状況 塩分量が判る 32

試験室におけるコンクリートの品質試験 ASR 試験 残存膨張量試験 : カナダ法 (CSA A23.2-25A) 供試体を 80 1N 水酸化ナトリウム溶液に浸せきし 材齢 2 週までの膨張量を測定 膨張量が 0.2% を越えた場合は 有害な膨張ありとして判定 0.1% を下回った場合は 膨張無し 0.1~0.2% 未満であった場合は グレーゾーンとして材齢 4 週まで浸せきを続ける 浸せき状況 測定状況 33

試験室におけるコンクリートの品質試験 ASR 試験 コンクリートコアの促進養生試験 :JCI DD2 供試体を 40 湿度 100% の環境下で養生 建設省 ( 現国交省 ) 総プロ コンクリートの耐久性向上技術の開発 では 13 週間養生し 0.05% 以上の膨張量を示すものを有害または潜在的有害と判定 阪神高速道路公団では 全膨張量が 0.1% を越える場合 有害と判定する デンマーク法 供試体を 50 の飽和塩化ナトリウム溶液中に浸せきし 材齢 3 ヶ月での膨張量を測定 膨張量が 0.4% を越えた場合は 膨張ありとして判定 0.1% を下回った場合は 膨張無し 0.1~0.4% 未満であった場合は 不明確と判定する 34

試験室におけるコンクリートの品質試験 ASR 試験 SEM-EDS 走査型電子顕微鏡 (SEM) 及びエネルギー分散型 X 線分析装置 (EDS) によりゲル状の反応物 ( アルカリシリカゲル ) の存在の有無と これらの形態と組識成分を確認する SiO2 Ns2O K2O CaO 分析結果 69.08 5.86 7.2 17.86 アルカリ-シリカ型 60 ~ 90 5 ~ 30 5 ~ 30 5 以下 アルカリ-カルシウムーシリカ型 35 ~ 75 3 ~ 15 3 ~ 15 10 ~ 55 35

試験室におけるコンクリートの品質試験 ASR 試験 ASR 試験では 定性的な試験と定量的な試験を組み合わせることが多い - 例 - 現場で ASR のようなひびわれが発生しているが ASR 由来のものなのか また これからも反応は続くのかを知りたい ASR 由来か? は SEM-EDS 等の定性的な試験で確認する反応は続く? は カナダ法などの定量的な試験で確認する SEM-EDS では ASR 生成物が確認された しかし 膨張性は無害であった ASR は生じているが 膨張は終息している可能性が高い と予測する 36

試験室におけるコンクリートの品質試験 試験所について 国が試験事業者を認定する制度から ISO/IEC 17025 (JIS Q 17025) に適合する試験事業者を 行政裁量の余地のない形で国が登録する制度になった ( 法に基づく制度 ) 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項 JNLA 標章 登録された試験所は 登録区分の範囲内で JIS に規定された方法に従って行った試験の報告書に標章を付して発行することができる ISO17025 の要求事項を満足する試験所であり 公平であり妥当な試験のデータ及び結果を出す十分な能力をもつ試験機関 あることを ( 独 ) 製品評価技術基盤機構 NITE から認定を受け 試験事業者として登録 運営 37

最後にもう一度 38

最後にもう一度 調査はどのようなことをするのか? 予測は? 検討 判断は? 調査予測検討 判断 過去の劣化履歴 補修履歴等の情報収集 構造物周囲調査 構造物の近接目視調査 非破壊 はつりによる健全度把握 品質試験など 劣化要因の予測 今後の劣化進展予測 損傷の規模や深刻度 補修時期や工法の選定 更新が必要か否か など など - 例えば- 沿岸域構造物のがぶり部分の塩分量が腐食限界値を超えており 将来 塩害による腐食が懸念される 鉄筋への塩分の到達時期は 年後であるが 予防的観点から 直ちに補修を行うことがライフサイクルコストも有利である 39

最後にもう一度 適切な診断と 予防対策 補修や補強を適切な時期に行い 構造物を長寿命化させる 劣化を見つける だけではなく 劣化要因 劣化進行予測 が重要 構造物一つ一つにどのような方法で補修や補強をいつ頃行うべきなのか といったストーリーがある ストーリーを精度良く策定するために 調査 予測 検討 判断 適切な補修 補強工事が実施できる をしっかり行う 新設においても役にたつデータ 知見となりうる! 40

以上です ご静聴 ありがとうございました 41