泌尿器科 2017 年診療実績 疾患別入院患者数病名 病名コード 患者数 膀胱癌 C670~C679 291 前立腺癌 C61 214 透析シャント狭窄 閉塞 T825,T828 100 腎尿管結石 N200~202 99 前立腺癌の疑い Z031 86 慢性腎不全 N180,N189 78 腎盂癌 C65 69 腎癌 C64 45 腎盂腎炎 N10,N12 45 尿管癌 C66 42 水腎症 N130~N133 27 前立腺肥大症 N40 24 骨盤臓器脱 N811,N814, 23 N819 腎移植後 Z940 19 膀胱結石症 N210 16 腎移植ドナー Z524 16 右停留精巣 Q531,Q539 15 転移性肺腫瘍 C780 11 神経因性膀胱 N319 9 脱水症 E86 9 前立腺炎 N410,N419 8 副腎腫瘍 D441 8 膀胱尿管逆流 N137 8 陰のう水腫 N433 7 膀胱タンポナーデ R33 7 血管透析カテーテルの機械的合併症 T824 7 病名 病名コード 患者数 グラム陰性菌敗血症 A415 6 精巣癌 C629,D401 6 膀胱腫瘍 D414 5 リンパ節転移 C772,C775, 5 C779 腸炎 A09 5 急性腎不全 N178,N179 5 腎移植急性拒絶反応 T861 5 CAPDカテーテルトンネル T856,T857 5 感染 位置異常 イレウス K566,K913 5 腎盂尿管移行部狭窄 Q621 4 精巣上体炎 N459 4 転移性骨腫瘍 C795 4 敗血症 A419 4 精巣捻転症 N44 3 先天性水腎症 Q620 3 腎のう胞 Q610,Q612 3 重複腎盂尿管 Q625 3 膀胱癌の疑い Z031 3 尿道下裂 Q542,Q549 3 尿路感染症 N390 3 外尿道口のう腫 D304 3 誤嚥性肺炎 J690 3 腎出血 N288 3 膀胱出血 N328 3 その他 107 合計 1,486 2017 年の総手術件数は 1,104 件であり うち泌尿器科標準手術 637 件でした ( 体外衝撃波尿路結石治療を除く )
主な手術実績根治的前立腺全摘除術 85 ( ロボット支援手術 85) 膀胱全摘除術 12 ( 腹腔鏡下手術 12) 腎摘除術 23 ( 腹腔鏡下手術 21) 腎部分切除術 18 ( ロボット支援手術 18) 腎尿管全摘除術 26 ( 腹腔鏡下手術 26) ドナー腎摘出術 17 ( 腹腔鏡下手術 17) 腎移植術 17 副腎摘除術 5 ( 腹腔鏡下手術 5) 経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TURBT) 211 経尿道的前立腺切除術 (TURP) 21 前立腺レーザー手術 (HoLEP) 10 経尿道的尿管砕石術 (TUL) 76 経皮的腎砕石術 (PNL) 7 高位精巣摘除術 3 精巣固定術 16 精巣 ( 精索 ) 水瘤根治 8 尿道形成術 ( 尿道下裂手術 ) 6 膀胱尿管逆流防止術 10 ( 腹腔鏡下手術 1) 腹腔鏡下仙骨膣固定術 (LSC) 17 後腹膜腫瘍摘出術 4 ( 腹腔鏡下手術 4) 内シャント造設術 124 ( 人工血管 4) CAPDカテーテル留置術 9 (1) 治療成績など 1) 鏡視下手術を中心にした低侵襲治療泌尿器科領域では 開放性手術に代わって腹腔鏡手術が広く行われるようになりました 術後の疼痛が軽く 回復が早いなど低侵襲であるだけでなく拡大された視野で行うことでより丁寧な手術が可能となるなどの利点があります 泌尿器科領域で対象となる疾患は副腎腫瘍 腎腫瘍 腎盂尿管腫瘍 前立腺癌 膀胱癌などの腫瘍性病変 尿路結石症 先天性疾患などがあり 今後も適応範囲は拡大していくと考えられます 当院では 1999 年より副腎腫瘍 腎腫瘍などを対象に鏡視下手術を開始し 2017 年 12 月までに 1,200 件以上の鏡視下手術を施行しています 経験を重ねることで比較的困難な症例もその適応となっており 当院腹腔鏡手術での開腹移行率は 1% 未満と非常に良好な成績をあげております 2009 年 5 月前立腺癌に対し腹腔鏡下前立腺全摘除術を開始し 2010 年以降 手術症例は全例腹腔鏡下に行っております さらに 2012 年 11 月よりロボット支援腹腔鏡下前立腺手術を愛媛県下で最初に導入し 現在 350 症例を超え良好な成績をあげています また 2010 年より放射線科と協力し 前立腺癌の放射線治療に IMRT を導入し特に低分化型癌などの治療成績の向上を目指しています 前立腺癌に対する種々の低侵襲手術が選択可能な全国的にも数少ない施設です 浸潤性膀胱癌に対しても 2012 年 6 月より腹腔鏡手術を導入し良好な成績をあげています
また 4cm 以下の小径腎癌に対しては 2003 年より腹腔鏡下腎部分切除術を行っています 2014 年より一部にロボット支援腎部分切除術を導入し 2016 年 4 月から保険収載されましたので積極的にロボット支援手術で行っています 現在 ロボット支援手術は 40 症例を超え良好な成績です 機能温存をする腎部分切除術は 根治的腎摘と比較して 制癌効果は同等で 慢性腎臓病になる確率が低く生存率が向上します 腹腔鏡で行うことにより低侵襲で QOL の改善にも寄与しています 腹腔鏡下手術件数 215 件 ( 腎尿管 90 副腎 5 前立腺 85 膀胱 12) 1 前立腺癌対象 :2012 年 11 月から 2015 年 2 月までのロボット手術症例 (n=136) 断端陽性 :pt2 7.9%, pt3a 52.6%, pt3b 50.0% PSA 再発 :pt2 0%, pt3a 21.1%, pt3b 16.7% 死亡例は pt3b の 1 例のみでした 2 腎部分切除術対象 :2008 年 1 月から 2016 年 6 月までの手術症例 (n=106) 5 年無再発生存率は 97.7%( 腹腔鏡 ) と 92.7%( 小切開 ) で良好な結果でした 3 腎盂尿管癌対象 :2003 年 4 月から 2013 年 3 月までの手術症例 (n=117) 全生存率 :5 年生存率 79.8% 癌特異的生存率 :5 年生存率 83.2% (0 期 (n=29)94.1% Ⅰ 期 (n=29)100% Ⅱ 期 (n=15)78.8% Ⅲ 期 (n=31)73.6% Ⅳ 期 (n=13)62.3%) 4 腹腔鏡下副腎摘除術対象 :1999 年 2 月から 2014 年 12 月までの手術症例 (n=80) 2) 腎移植当院では 2003 年から慢性腎不全患者に対する最も QOL( 生活の質 ) の高い治療として 腎移植に取り組んでいます 2003 年から 2017 年 12 月までの腎移植件数は 253 件 ( うち生体腎移植 242 件 ) であり 2017 年度には 17 件の腎移植術を行っております 当院の腎移植は 5 年生着率 94.2% 生存率 95.2% 86 か月生着率 91.6% 生存率 94.3% と良好です 3) 小児泌尿器科疾患小児泌尿器疾患の 7 割は停留精巣や水腎症などの先天性疾患 ( 先天異常 ) です 当科では停留精巣では不妊症の発生の低減を目指し可及的早期の精巣固定術を行っています また 泌尿器科手術の中でも合併症比率の高いといわれる尿道下裂の一期的尿道形成術 (OUPF 法など ) にも積極的に取り組み 良好な成績をあげています 4) 前立腺癌前立腺癌には PSA( 前立腺特異抗原 ) という優れた腫瘍マーカーがあり 採血によってこの値を測定することにより 癌の有無についてある程度の目安をつけることが出来ます 一般的に PSA が 4.0 ng/ml 以上であれば癌を疑います 検診などで PSA を測定することで発見された前立腺癌には早期であるものが多く 治療により根治の可能性が十分にあります 治療法についても 限局癌では手術療法 放射線療法 ( 外照射 ) 進行癌では内分泌療法を中心に 充分にその利点や欠点を説明し治療法を選択しております
5) 血液透析透析ベッド 45 台を有する透析室にて常時 90~100 名の血液透析患者および約 20 名の腹膜透析患者を治療しております 2017 年の新規導入維持透析患者数は 105 名です また ICU を中心に多臓器不全患者への持続血液濾過や他の急性血液浄化法にも積極的に関わっております (2) トピックス 1) 前立腺癌の治療実績 1 診断方法当院では PSAが高値であった場合には 経直腸的超音波断層法を利用した前立腺生検を積極的に行い 早期前立腺癌の発見と治療に努めております 2017 年の前立腺生検件数 206 件です 2 進行度に応じた治療方法の選択前立腺癌の治療には 手術療法 放射線療法 内分泌療法 待機療法などがあり病気の進行度や患者さんの状態 希望に合わせて治療法を選択していきます 癌が前立腺内にとどまっている場合は 手術により前立腺を摘除することで完治することが期待できます また 放射線療法も同等の効果があるとされています 進行癌では内分泌療法を中心に治療法を選択していきます 一方 癌がごくわずかで悪性度が低く 進行する心配がないと判断された場合には 定期的な検査で様子を見る待機療法を行っています 根治的前立腺摘除術 従来は 下腹部に十数センチ程度の切開を加えて行う方法が一般的でした 前立腺を取り除き 残された膀胱と尿道をつなぎ直します 手術時の合併症として出血 手術後の合併症として尿の漏れや陰茎の勃起機能の低下が起こりました 当院では 低侵襲で合併症が少ない腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を2009 年 5 月から導入し良好な成績をあげていましたが さらに精巧な手術を可能にしたロボット支援腹腔鏡下前立腺摘除術を2012 年 11 月から導入しました 手術の利点として 傷が小さいため術後の痛みが少なく 術後回復が早いことや3 次元の拡大視野のもとで丁寧な手術を行うことが可能である点が挙げられます 出血は少量で輸血の必要はなく 神経温存が可能で尿失禁の程度も軽く 従来問題となっている合併症を克服できる可能性があります 2017 年のロボット支援腹腔鏡下前立腺摘除術件数は85 件で 現在 350 例を超えました 当院では腹腔鏡下前立腺全摘除術導入後 現在まで開腹移行例や直腸損傷などの重篤な合併症はなくpT2の断端陽性率 7.9% と良好な成績をあげております ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術 当院では2012 年 11 月からダビンチSを導入し限局性前立腺癌に対しては 全例 ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を行っています 愛媛県下では1 番目に導入しました 2012 年 4 月の保険適応以来全国で急速に普及しています この大きな理由は 腹腔鏡手術同様の気腹や拡大視野によるメリットに加えて ロボット鉗子が持つ操作自由度の高さ 高解像度 3D 視野 手振れ防止などの機能を持ち より緻密な剥離 縫合などの手術操作が可能な点です 出血量の減少は著明で輸血することはありません さらに緻密な剥離縫合による尿禁制の保持 神経温存による勃起機能の保持の頻度が高くなり 従来危惧されていた合併症を克服できる可能性があります 放射線療法 前立腺内にとどまっている腫瘍や 局所的にのみ進行しとどまっている腫瘍が対象となります その他に 転移をした部位の症状を和らげるために放射線療法を行うこともあります 放射線治療には大きく分けて 外部照射と小線源治療があります 外部照射 放射線を体外から前立腺に当てて癌細胞を殺す方法です 一般的には週に5 回 7 週間程度かけて放射線を当て
ます 手術療法にみられる勃起不全や尿失禁は起こりにくい反面 放射線が当たった場所の皮膚のただれ 排尿痛 頻尿などの尿路症状 下痢や下血などの消化器症状が出ることがあります 2010 年より放射線科の協力のもと副作用の少ないIMRT 照射を行っています 小線源治療 前立腺の中に直接放射性物質を埋め込んで治療を行う方法です 癌が前立腺内にとどまっている方が対象となります 特殊な装置が必要であり当院では行っておりませんが相談させていただきます 当院では放射線治療 ( 外照射 ) は手術とほぼ同数の方が選択されております 2) 腎移植について 1 腎移植の利点腎不全に対する他の治療と異なり ( 減塩 低蛋白食が好ましいですが ) 厳しい食事制限はありません 維持透析を受けられている方にみられる頭重感 かゆみ 味覚障害 口渇感などの症状は早期に改善します また 長期間透析を行うことにより出現する合併症も移植をすることにより改善する可能性があります 2 腎移植の問題点腎移植を受けられた方は 拒絶反応の抑制のために免疫抑制剤を内服する必要があります 免疫抑制剤を内服することに伴う問題点として感染症が挙げられますが 早期発見の方法や治療法の改善もあり現在ではさほど心配がなくなってきております また 癌の発生頻度の上昇が指摘されていますが 早期発見 早期治療を心がけることで根治することができます 3 腎移植の治療実績 2003 年から 2017 年 12 月までの腎移植件数は 253 件 ( うち生体腎移植は 242 件 ) であり 2017 年には 17 件の腎移植術を行っております 糖尿病を患っている方 長期に透析療法を受けられている方 ABO 血液型不適合の方に対しても積極的に腎移植術を施行しており良好な成績をあげています 最近は ステロイドの副作用を考慮して 腎移植後の早期にステロイド離脱を行う症例が増加しています 4 ドナー手術について 2003 年 8 月以降 生体腎移植術におけるドナーに対する身体的負担を軽減するために腹腔鏡を用いてドナー腎摘出術を行っております 2017 年 12 月までに 225 件の腹腔鏡下ドナー腎摘出術を施行し開腹手術への移行例はなく通常手術後 5 日で退院可能となるなど良好な成績をあげています 3) レーザー手術について 2013 年 12 月にホルミウムレーザーが導入されました 尿路結石症 特に腎結石や尿管結石に対して細い内視鏡を尿道から挿入してレーザーで破砕し摘出します (f-tul) 当院では体外衝撃波砕石術(ESWL) も行っていますが それで破砕困難な症例には適応があり症例数が増加しています また前立腺肥大症に対する内視鏡手術は現在まで経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) が主流でしたが レーザー導入により合併症が少ない経尿道的前立腺レーザー核出術 (HoLEP) を行っており良好な成績をあげています 術後のバルーン留置期間は約 2 日間と短く 排尿状態は従来の TUR-P より良好です