現在の移植医療と 今後の移植医療について 名古屋第二赤十字病院 鳴海俊治
本日の内容 I. 最近の移植事情 ( 特にドネーション ) II. 肝移植について III. 膵 ( 膵島 ) 移植について IV. 腎移植について V. 今後の移植について
本日の内容 I. 最近の移植事情 ( 特にドネーション ) II. 肝移植について III. 膵 ( 膵島 ) 移植について IV. 腎移植について V. 今後の移植について
45 36 65 31 2013 2013 年 10 月 31 日現在
移植 ( 脳死下 心停止下 ) の成績 すべての臓器で米国の成績より良好 6
世界の脳死ドナー数 ( 対人口 100 万人 ) スペイン 34.2 26.3 USA EU 韓国 日本 16.8 5.5 0.9 絵野沢 移植 2009:44;S221-224 より 8
本日の内容 I. 最近の移植事情 ( 特にドネーション ) II. 肝移植について III. 膵 ( 膵島 ) 移植について IV. 腎移植について V. 今後の移植について
右の肋骨に囲まれている 体重の約 2% 60kg のヒトで約 1.2kg 機能はたくさん 肝臓とは? 代謝 ( 腸で吸収された栄養から蛋白 脂肪 胆汁 ホルモンなどを合成 解毒 ( アルコールや薬の分解 ) 免疫 ( 細菌や異物の処理 ) 症状が出る頃にはかなり悪くなっていることが多い
肝細胞の機能障害 肝硬変になると.. 蛋白合成能低下 むくみ 腹水 凝固因子低下 出血傾向 ( 鼻血が止まらない ) 黄疸 ( かゆみ ) 肝性脳症 ( 意識障害 ) 門脈圧亢進 ( 肝への血行不良 ) 腹水 脾腫 血小板減少 ( 出血傾向 ) 食道静脈瘤 吐血 肝臓癌の発生 C 型肝炎肝硬変では年率 8% 12
肝硬変の成因と頻度 13.0% 4.5% 12.0% 4.3% C 型肝炎 1.2% HBV HBV+HCV HCV アルコール NBNC その他 65.0% 平成 11 年度肝がん白書 13
食道静脈瘤とその破裂 静脈瘤からの出血 14
肝硬変と肝癌 15
肝移植適応疾患 ( 健康保険適応 ) 劇症肝炎 先天性肝胆道疾患 ( 胆道閉鎖症など ) 先天性代謝異常疾患 (Wilson 病など ) 原発性胆汁性肝硬変 (PBC) 続発性胆汁性肝硬変 原発性硬化性胆管炎 (PSC) ウイルス性肝炎肝硬変 (HBV HCV) アルコール性肝硬変 Budd-Chiari 症候群 肝細胞癌 (5cm 1 個以内 最大 3cm 3 個まで ) 小児で多い成人で多い 16
生体ドナー肝切除の方法 左葉グラフト年長児や体重差が少ない場合 ( 肝の約 1/3) 外側区域グラフト乳幼児 ( 肝の約 1/4) 右葉グラフト成人間で体重差がある場合 ( 肝の約 2/3)
肝は血管支配から機能的に分けて切除できる 18
肝は再生するー 1 ドナー肝 CT 肝容量 1244ml 拡大左葉グラフト 515 ml 実際のグラフト 540 g (43.4%) 残肝 704 ml 19
肝は再生するー 2 レシピエント肝術後 3 週 肝容量 1075 ml (1.99 倍 ) 標準肝容量の 96% 20
ドナー肝再生 ( 左葉切除後 ) ドナー肝術後 3 週肝容量 1049ml (1.49 倍まで増大 )
本邦における肝移植数 肝細胞癌に対する適応追加 600 500 400 300 弘前 脳死 生体 200 100 0 22
アメリカにおける肝移植数 7000 6000 5000 生体 脳死体 4000 3000 2000 1000 0 23
本邦における肝移植成績 JOTW 臓器移植ファクトブック 2011 より 24
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膵 ( 腎 ) 移植の方法 膵腎同時移植 Simultaneous pancreas-kidney transplant (SPK) 腎移植後膵移植 Pancreas transplant after successful kidney transplant (PAK) 膵単独移植 Pancreas Transplant Alone in the pre-uremic diabetic (PTA) 27
本邦の膵移植の現状 ( 平成 25 年 9 月 30 日現在 ) 脳死膵移植登録患者 191 ( 全員 1 型糖尿病 ) SPK 希望 149 PAK 33 PTA 9 脳死膵移植施行患者 33 脳死膵腎移植施行患者 129 膵 ( 腎 ) 移植可能施設 18 施設 28
世界における膵移植 29
膵 ( 腎 ) 移植数の変遷 30
膵腎移植の方法 膀胱ドレナージ 回腸ドレナージ John D. Pirsch, Jon S. Odorico & Hans W. Sollinger 31
膵 膵島移植研究会
膵島移植とは? 膵移植に比べより安全でより単純
膵島移植のイメージ 34
膵島分離作業 35
分離された膵島 36
膵島移植の問題点 ( 他家移植 ) 膵島は拒絶されやすい 自己免疫性反応 移植免疫反応 免疫抑制剤が膵島細胞に対して有害 1 人のドナーから十分な膵島細胞が回収できない 複数のドナーが必要となる 感作の危険性 膵島を回収する装置が高価 施設限定 長時間を要する 保険適応外で約 400 万円前後の費用 37
本日の内容 I. 最近の移植事情 ( 特にドネーション ) II. 肝移植について III. 膵 ( 膵島 ) 移植について IV. 腎移植について V. 今後の移植について
腎移植件数の年次推移 症例 ) 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 759 637 866 904 995 835 728 731 1139 942 1230 1043 1204 994 1313 1124 1485 1277 1601 1389 1605 1412 総数 生体腎 400 200 0 112 134 167 144 181 163 184 175 146 116 126 10 4 6 16 16 24 26 62 14 86 77 献腎 ( 心停止 ) 献腎 ( 脳死 )
症例数 名古屋第二赤十字病院における移植件数 120 100 80 ABOi & DSA 抗ドナー抗体陽性腎移植 (DSA) ABO 血液型不適合腎移植 (ABOi) ABO 血液型適合腎移植 (ABOc) 献腎移植 (DCD&DBD) 膵臓移植 (PAK) 膵腎同時移植 (SPK) 2 27 1 7 22 2 23 3 4 27 2 3 39 60 19 18 6 13 40 20 4 6 3 33 27 6 37 36 38 43 46 52 51 65 58 52 0 18 9 8 2 2 4 2 5 7 4 5 7 7 3 2 1 1 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
高齢腎移植数の増加 ( 人 ) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 <60 歳平均年齢 60 歳 70 67 75 66 73 65 60 45 53 40 43 31 32 33 25 25 18 15 0 4 3 2 6 3 4 8 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 ( 歳 ) 50 45 40 35 30 Nagoya Daini Red Cross Hosp
レシピエント年齢別 ( 生体腎 ) ( 症例数 ) 350 300 250 200 150 100 30-39 50-59 40-49 60-69 20-29 0-9 10-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 80-50 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 10-19 0-9 70-79
ドナー年齢別 ( 生体腎 ) ( 症例数 ) 600 500 400 300 200 60-69 50-59 40-49 0-9 10-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 80-100 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 70-79 30-39 20-29
生体腎ドナー続柄 (%) (%) 70 66.6 両親 65 非血縁 夫婦 60 56.2 55.2 56.5 兄弟姉妹 52.2 その他 50 46.7 46.5 40 30 20 10 0 14.6 12.5 6.3 17.5 14.6 3.2 21.3 15.8 6.6 24.2 25.3 15.7 28.7 13.7 14.2 5 4.7 4.1 34.9 44.7 37.2 43.9 35.8 37.1 42.4 40.6 12.2 12.8 12.4 13.3 12.1 6.2 5.2 5.3 5.7 4.9
ABO 血液型適合度 (%: 生体腎 ) (%) 70 66.4 64.6 65.7 適合一致 61.5 59.4 不適合 60 55.1 56.8 適合不一致 52.3 52.9 51.5 48 50 40 30 20 10 21.7 11.9 19.9 18.6 15.5 14.6 23.3 23 24.2 20.4 20.9 17.7 19.7 21.3 23.5 20.2 26.2 26.3 31 20.3 22.1 21 0
先行的腎移植症例数の年次推移 ( 人 ) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 先行的腎移植 70 62 72 66 64 50 63 45 44 39 38 32 38 21 32 28 18 20 22 4 5 2 7 7 11 6 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 Nagoya Daini Red Cross Hosp
名古屋第二赤十字病院における生体移植腎生着率 (2013/1/31 まで n=1303) 100 80 2010~2012 2005~2009 2000~2004 免疫抑制剤の進歩 60 1995~1999 40 1990~1994 1985~1989 20 ~1974 1980~1984 1975~1979 移植後年数
本日の内容 I. 最近の移植事情 ( 特にドネーション ) I. 肝移植について II. 膵 ( 膵島 ) 移植について III. 腎移植について IV. 今後の移植について
今後の腎移植の動向 透析未導入患者への先行的腎移植の増加 高齢者への腎移植の増加 高齢者ドナーの増加 慢性拒絶反応の克服による生着率の延長 Paired Kidney Programの導入? 血液型が違うペアのドナーを交換する 再生医療の導入
今後の腎移植の動向 透析未導入患者の腎移植の増加 高齢者への腎移植の増加 高齢者ドナーの増加 慢性拒絶反応の克服による生着率の延長 Paired Kidney Programの導入? 血液型が違うペアのドナーを交換する 再生医療の導入
ドナー交換プログラム ドナー候補 レシピエント候補
アメリカ国内でのドナー連鎖 アメリカ国内での生体腎移植ドナーの約 10% を占める
今後の腎移植の動向 透析未導入患者の腎移植の増加 高齢者への腎移植の増加 高齢者ドナーの増加 慢性拒絶反応の克服による生着率の延長 Paired Kidney Programの導入? 血液型が違うペアのドナーを交換する 再生医療の導入
腎を再構築して移植 腎臓の細胞を一度バラバラにしてしま Regeneration and experimental orthotopic transplantation of a bioengineered kidney. Song JJ, et al. Natr Med 2013; 19: 646
幹細胞 (Stem cell) 自己複製 + 他の細胞に分化できる細胞 ES 細胞 ヒトの受精卵 : すべての細胞に分化可能 倫理の問題 拒絶反応の問題 ips 細胞 レトロウイルスを使って自己細胞の分化能を向上 自分の細胞 癌化の問題
人工多能性幹細胞 ips 細胞って? induced pluripotent stem cell 様々な組織や臓器の細胞に分化する能力ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞に変化 http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/osafune/object.html
ips 細胞 http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/osafune/object.html
ips から臓器ができるようになる?
腎の再生医療はまだ難しそう... ですから腎臓を長持ちさせるために 免疫抑制剤の内服 高血圧の予防 管理 肥満予防 脂質異常症の予防 管理 禁煙の徹底
高血圧を予防する生活習慣 肥満を防ぐ BMI( ボディ マス インデックス ) 25 kg/m 2 以下 BMI = 体重 身長 身長 適度な運動 ウォーキングや軽いジョギング 平らなところでのサイクリング ゆっくりと長い距離を泳ぐ 階段を使う 食生活の改善 塩分を減らす 脂質の制限 アルコールの制限 禁煙 ストレスを避ける 厚生労働省 HP: 高血圧ホームページより
生活習慣改善による降圧の程度 平均血圧減少度 減塩 *1 食塩摂取減少量 =4.6g/ 日 0-2 -4-6 (mmhg) -5.0-2.7 減量 *2 体重減少量 =5.1kg -3.6-4.4-4.6 運動 *3 30-60 分間の有酸素運動 -2.4 節酒 *4 飲酒減少量 =76% -3.3-2.0 収縮期血圧 拡張期血圧 *1 He FJ and MacGregor GA, J Human Hypertension 16: 761-770, 2002 *2 Neter JE et al. Hypertension 42: 878-884, 2003 *3 Dickinson HO et al. J Hypertens 24: 215-233 *4 Xin X et al. Hypertension 38:1112-1117, 2001 日本高血圧学会 : 高血圧ガイドライン 2009
レシピエントとドナーが一緒に長生き をしてもらうのが移植医の願いです 一緒に食事管理 一緒に運動 一緒に 長生き 一緒に体重管理