Ⅱ 外国為替市場と為替レート

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1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

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1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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ミクロ経済学Ⅰ

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日経225オプション取引・投資戦略 基礎編

企業活動のグローバル化に伴う外貨調達手段の多様化に係る課題

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Ⅱ 外国為替市場と為替レート 1. 外国為替市場の構造 2. 為替レートのフロー アプローチ 3. 変動相場制と固定相場制 4. 名目為替レートと実質為替レート 5. 二国間為替レートと多国間為替レート ( 実効為替レート ) 6. 直物為替レートと先物為替レート Ⅱ-4 の補論 : 裁定取引 一物一価 ユーロ危機 1

1. 外国為替市場の構造 2

1. 外国為替市場の構造 (cont.) (1) 外国為替市場の構成者 1 顧客 ( 輸出入業者など ) 2 銀行 ( ディーラー = トレーダー ) 3 為替ブローカー 4 中央銀行 (2) 外国為替市場の分類 3

2. 外国為替市場の需給均衡 ( 為替レートの変化とドル需要 供給の変化 ) リンゴの需要曲線は右下がり 供給曲線は右上がり リンゴの価格が下がれば リンゴの需要は増え ( 安いときに買い ) 価格が上がれば供給は増える ( 高いときに売る ) ドルの需要曲線は右下がり 供給曲線は右上がり ドルの価値が下がれば ドル需要は増え ( 安いときに買い ) 価値が上がれば供給が増える ( 高いときに売る ) ドル安 円高 ( ドル高 円安 ) 輸出の減少 ( 輸出の増加 ) 輸入の増加 ( 輸入の減少 ) ドル供給の減少 ( ドル供給の増加 ) ドル需要の増加 ( ドル需要の減少 ) 4

2. 外国為替市場の需給均衡 (cont.) ( 為替レートの増価と減価 ) 為替レート ( 自国通貨 [ 邦貨 ] 建て ) 外国通貨 1 単位 (1 ドル ) の価値を 自国通貨 ( 円 ) で表示した値 1 ドル =100 円 ( リンゴ 1 個 =100 円 ) S=100 (p=100) 自国通貨の増価 (appreciation) 自国通貨 ( 円 ) の価値が上昇すること (= 円高 ) 1 ドル =90 円 ( リンゴ 1 個 =90 円 ) S=90 (= ドル安 ) S 自国通貨の減価 (depreciation) 自国通貨 ( 円 ) の価値が下落すること (= 円安 ) 1 ドル =110 円 ( リンゴ 1 個 =110 円 ) S=110 (= ドル高 ) S ( 注 ) 固定相場制の場合切り上げ (revaluation) or 切り下げ (devaluation) 5

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2. 外国為替市場における需給均衡 (cont.) [ フロー ( 国際収支 ) アプローチによる円高 円安要因 ] 円高要因 = 国際収支表の貸方 ( 受取項目 +) 円安要因 = 国際収支表の借方 ( 支払項目ー ) 貸方 ( 受取項目 +) 資産の減少 負債の増加商品輸出による受取自国への投資 = 資本流入 借方 ( 支払項目 -) 資産の増加 負債の減少商品輸入による支払外国への投資 = 資本流出 7

世界の外国為替市場の規模 8

3. 固定相場制と変動相場制 固定相場制 ( 数量調整 ) 外国為替市場における外貨 ( ドル ) の超過供給 超過需要を 通貨当局が公定価格 ($1= 360) で無制限に売買すること ( 為替平衡操作 = 為替介入 ) によって 需給調整を行う制度 外貨準備の大きさは 受動的に決まる 変動相場制度 ( 価格調整 ) 外国為替市場における外貨 ( ドル ) の超過供給 超過需要を 為替レートの変化 ($1 360) によって 需給調整を行う制度 外貨準備は 原則として 必要としない 9

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4. 名目為替レートと実質為替レート 名目為替レート (nominal exchange rate) :$1= 100 日本で 100 円を支払えば 1 ドルに両替して アメリカ旅行をすることはできる 実質為替レート (real exchange rate): 外国財 1 個 = 国内財 1.5 個 日本で 100 円を支払えば購入できる財が アメリカでも 1 ドルを支払って購入できるとは限らない 例えば 日本では 200 円で購入できるハンバーガーが アメリカでは 3 ドルで販売されているとしよう この場合 日本において 200 円で購入できるハンバーガーは アメリカでは 300 円 (100 円 3 ドル ) も支払わなければならない アメリカのハンバーガー 1 個は 日本では 1.5 個に相当する 円高になれば 外国旅行をするには名目的には ( 両替だけを考えると ) ありがたいが 日本よりも外国の物価水準の方が高ければ 外国旅行をしても実質的な ( 両替したドルで実際にどれだけの買い物ができるかを考えると ) ありがたみは少ない 12

名目為替レートと実質為替レート 名目為替レート(nominal exchange rate):s 1 単位の外国通貨 (1ドル) が 何単位の自国通貨 (100 円 ) と交換されるか を意味する比率 (2 国間の通貨の相対価格 ) = 名目 ( 貨幣 ) タームで定義された為替レート 実質為替レート(real exchange rate):q 1 単位の外国財 ( ハンバーガー 1 個 ) が 何単位の自国財 ( ハンバーガー 1.5 個 ) と交換できるか を意味する比率 (2 国間の財の相対価格 ) = 実質 ( 実物 ) タームで定義された為替レート自国通貨で測った外国財の価格 100[ /$] 3[$] 実質為替レート= = = 1.5 自国通貨で測った自国財の価格 200[ ] Q * * P S P 自国通貨で測った外国の物価水準 = S = = P P 自国通貨で測った自国の物価水準 Sの値が小さく ( 大きく ) なること= 自国通貨の名目増価 ( 名目減価 ) 1 単位の外国通貨を得るために より少ない自国通貨を交換すればよくなる ( より多くの自国通貨を交換しなければなくなる ) こと Qの値が小さく ( 大きく ) こと= 自国通貨の実質増価 ( 実質減価 ) 1 単位の外国財を得るために より少ない自国財を交換すればよくなる ( 13 より多くの自国財を交換しなければなくなる ) こと

裁定取引と一物一価 自動車価格名目為替レート実質為替レート 日本 アメリカ 200 万円 ( 225 万円 ) 1ドル =100 円 3 万ドル ( 90 円 ) ( 2.5 万ドル ) 1.5( 1)

実質為替レート ( 自国財に対する外国財の相対価格 ) 自国通貨で測った外国財の価格実質為替レート= 自国通貨で測った自国財の価格 アメリカ製自動車 3万ト ル 100( 円ト ル / ) 300万円 = = = 日本製自動車 200万円 200万円 1.5 アメリカ製自動車 2.5万ト ル 90( 円ト ル / ) 225万円 = = = 1 日本製自動車 225万円 225万円 一物一価になったときの名目為替レート= 購買力平価 (PPP) PPP=225 万円 /2.5 万ト ル=90 円 / ト ル

実質為替レートの数値例 ケース 1 ケース 2 ケース 3 ケース 4 ケース 5 1 名目為替レート (S) 100 円 90 円 ( 名目増価 ) 100 円 100 円 90 円 ( 名目増価 ) 2アメリカ製自動車 (P * ) 2 万ドル 2 万ドル 2 万ドル 3 万ドル ( 外国のインフレ ) 3 万ドル ( 外国のインフレ ) 3アメリカ製自動車 (SP * ) 200 万円 180 万円 200 万円 300 万円 270 万円 4 日本製自動車 (P) 200 万円 200 万円 250 万円 ( 自国のインフレ ) 200 万円 200 万円 5 実質為替レート (SP * /P) 1 0.9( 実質増価 ) 0.8( 実質増価 ) 1.5( 実質減価 ) 1.35( 実質減価 ) 16

実質為替レートと交易条件 実質為替レートは 次のように定義される交易 条件 (terms of trade) の逆数である tt = = = 輸出財物価水準交易条件輸入財物価水準 1 Q 自国通貨の実質増価 (Qの値が小さくなること) = 交易条件の改善 (ttの値が大きくなること) 自国通貨の実質減価 (Qの値が大きくなること) = 交易条件の悪化 (ttの値が小さくなること) 17

5. 実効為替レート (Effective Exchange Rate) 実効為替レートとは 多数の外国通貨に対する自国通貨の価値を加重平均した指数 自国通貨の外国通貨に対する全般的な変動を表す値 加重平均する時のウェイトは 貿易量や経済関係の密接さなどから求められる 一口に 円高 と言っても ドルに対してのみ上昇している場合と 他の多くの通貨に対して上昇している 円の独歩高 の場合では 円高の原因が 円にあるのかドルにあるのかが違うし また円高が日本の対外競争力に及ぼす影響も異なってくる 名目実効為替レート : 名目為替レートの変化を加重平均した指数 実質実効為替レート : 実質為替レートの変化を加重平均した指数 総合的な通貨価値の判断材料としては後者がより正確 当該国の総貿易量に占める i 国への貿易量の割合 ( ウェイト ) を w i とし 当該国通貨の第 i 国通貨に対する為替レートを e i とすると 実効為替レート= w e 実効為替レート= Π( e ) i i i w i = = w e e 1 w 1 1 1 + e w e 2 w 2 2 2 + + w e e w n n n n ( ( w w i i = 1) = 1) : 算術加重平均 : 幾何加重平均 18

実効為替レート (cont.) 具体的には ある通貨と主要な他通貨間の為替レートを 当該相手国 地域間の貿易量などでウェイトづけた加重平均し 基準時を 100 とした指数として算出 例えば 日本がアメリカ ヨーロッパ 中国の 3 カ国 地域とだけ経済関係を持ち 各国の占めるウェイトを 50 30 20% 円が基準時 (100) からドル ユーロ 元に対して 30 20 10% 増加したとすると 現時点での円の EER は (130) 0.5 (120) 0.3 (110) 0.2 =123 円の実効為替レートは 下記の日銀の HP を参照 http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/exrate.htm 19

実質実効為替レートの数値例 ( 算術加重平均 ) 1 日本製自動車 ( ) 2 対ドル名目為替レート ( /$) 120 3 米製自動車 ($) 4 米製自動車 (2 3= ) 250 万 $2.5 万 300 万 5 対ドル購買力平価 (1/3= /$) 100 6 対ドル実質為替レート (4/1=2/5) 1.2 7 対米輸入額 / 日本の総輸入額 ( ウェイト ) 70%(0.7) 8 対ユーロ名目為替レート ( / ) 80 9ドイツ製自動車 ( ) 10ドイツ製自動車 (3 8= ) 3.4 万 272 万 11 対ユーロ購買力平価 (1/9= / ) 73.5 12 対ユーロ実質為替レート (10/1=8/11) 1.088 13 対独輸入額 / 日本の総輸入額 ( ウェイト ) 30%(0.3) 14 外国車の平均価格 (4 7+10 13= ) 300 万 0.7+ 272 万 0.3= 291.6 万 15 実質実効為替レート (14/1=6 7+12 13) 291.6/250=1.2 0.7+1.088 0.3=1.1664 20

名目実効為替レート (NEER) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 実効為替レートの推移 (1973 年 3 月 =100 とした指数 ) 1970 1971 1973 1975 1977 1978 1980 1982 1984 1985 1987 1989 1991 1992 1994 1996 1998 1999 2001 2003 2005 2006 実質実効為替レート (REER) 400 375 350 325 300 275 250 225 200 175 150 125 100 75 50 25 0 年 名目実効為替レート (NEER) 実質実効為替レート (REER) 資料日本銀行 (http://www.boj.or.jp/type/stat/dlong/fin_stat/rate/eer.csv) 21

5. 直物為替レートと先物為替レート為替ポジションと為替リスク 外国為替市場の参加者は 外国通貨建ての債権や債務を保有 この外貨建て債権と債務の残高 ( 差額 ) を為替ポジション ( 為替持高 ) と言い この部分は為替リスクにさらされている 1 輸出企業が被る為替リスク 1 万ドルの商品の輸出現在の為替レート :$1= 100 100 万 3カ月後の為替レート :$1= 90 90 万 ドル建て債権を持っている ( ロング ) と 為替レートが下落 ( 円高 ) すると為替差損を被る この場合 先物売りをしておけば良い 2 輸入企業が被る為替リスク $1 万ドルの商品の輸入現在の為替レート :$1= 100 100 万 3カ月後の為替レート :$1= 110 110 万 ドル建て債務を持っている ( ショート ) と 為替レートが上昇 ( 円安 ) すると為替差損を被る この場合 先物買いをしておけば良い 22

為替ポジションと為替リスク (cont.) 為替リスク回避の基本 3 為替リスクを回避するためには 外貨建て債権 と 外貨建て債務 を同額にしておけばよい $1 万ドルの商品の輸出現在の為替レート :$1= 100 100 万 3カ月後の為替レート :$1= 90 90 万 (10 万円の為替差損 ) $1 万ドルの商品の輸入現在の為替レート :$1= 100 100 万 3カ月後の為替レート :$1= 90 90 万 (10 万円の為替差益 ) 23

為替ポジション ( 為替持高 ) (1) オープン ポジション (open position) 債権 債務 のポジション 1 買持ち ( ロング ポジション long position) 債権 > 債務 のポジション 先物売り ( ドル建て債務を負う = 先渡しでカバー ) をしておけば良い 2 売持ち ( ショート ポジション short position) 債権 < 債務 のポジション 先物買い ( ドル建て債権を持つ = 先渡しでカバー ) をしておけば良い (2) スクェア ポジション (square position) 債権 = 債務 のポジション 為替リスクなし 24

直物為替レートと先物為替レート 直物為替 (spot exchange) 契約も取引も現在行なう外国為替取引 先物 ( 先渡 ) 為替 (forward exchange) 契約は現在行なって 受渡は将来行なう外国 為替取引 25

直先スプレッド ( 先物プレミアム 先物ディスカウント ) S: 直物レート F: 先物レート i: 自国利子率 i * : 外国利子率とすると 直先スプレッド = F S S = i * i F>S i>i * ; 先物プレミアム F<S i<i * ; 先物ディスカウント 直物レート対する先物レートは 2 通貨の金利差により決定金利の安い通貨の為替レートは 先物高 ( 先物プレミアム ) 金利の高い通貨の為替レートは 先物安 ( 先物ディスカウント ) 26

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Ⅱ-4 の補論 裁定取引 一物一価 ユーロ危機 29

市場メカニズム 裁定取引によって実際に一物一価が成立するためには 次のような市場メカニズム (12) が働かなければならない 1 まず 日米の自動車市場 ( 財市場 ) において価格が伸縮的でなければならない すなわち 需要が増加すれば価格が上昇し 供給が増加すると価格が下落するといった市場メカニズム ( 価格メカニズム ) が有効に作用しなければならない 2 また 外国為替市場においても為替レートが伸縮的でなければならない すなわち ドル買いが増えればドル高になり ドル売りが増えればドル安になるといった変動相場制が有効に作用しなければならない

1 のメカニズムを働かせるためには? 価格を下げるためには (a) 労働生産性 (y=y/l) を上げるか (b) コストとりわけ人件費 (W=wL) を下げるかしかない (Y は生産高 L は雇用者数 w は一人あたり賃金率 ) 自動車の生産 Y が全て労働という生産要素 L だけで行われているならば L PY wl P w w = = = = 労働生産性 (y) の上昇は技術進歩を伴わなければならないので 短期的には期待できない したがってコストのうち多くを占める人件費 (W) の削減しかないが それには 賃金 (w) のカットか 雇用 (L) の削減かしかない どちらにしても アメリカ経済の実体経済への痛みを伴う 1 w Y Y / L y

2 のメカニズムを働かせるためには? こうした痛みをともなう 1 の調整メカニズムを拒否すれば 2 の調整メカニズムを利用するしかない 日米間の自動車価格が全く変化しないくらい価格が硬直的ならば 名目為替レートが 1 ト ル =67 円 (200 万円 /3 万ト ル ) へと 大きく円高に動けばよい ただし 1 ト ル =100 円から 67 円へといった大幅な円高には 為替リスクが伴う つまり同じ 3 万ト ルの自動車を販売しても 円建ての受取額が 300 万円から 200 万円へと大きく減少してしまう 同じ財を輸出して 受取額が変動するというのも 日本経済の実体経済への痛みである

欧州債務危機 2009 年のギリシャの財政赤字をきっかけに広がった欧州債務危機は この 12 のメカニズムが全く働かなかった典型的な事例 ユーロという共通通貨を採用しているユーロ圏諸国では 2 のメカニズムは全く作用しない そこでユーロ導入後 1 のメカニズムを作用させるべく 生産性の上昇や労働市場改革を柱とした中期計画 ( リスボン戦略 ) にユーロ圏諸国は合意 そうしなければ ユーロ圏内で一物一価は成立せず 大きな価格差が残存したまま共通通貨を使用することには 困難が伴うからである

ドイツ vs. GIIPS しかし 1 のメカニズムを有効に働かせるための構造改革に成功したのは ドイツなどユーロ圏の一部の国 ギリシャをはじめとするいわゆる PIIGS( または GIIPS) 諸国 ( ポルトガル イタリア アイルランド ギリシャ スペイン ) では この改革がほとんど進まなかった 特に労働人口の 3 分の 1 が公務員で 年金も平均で 61 歳から 前倒しで 55 歳から受給できるギリシャでは 大きな財政赤字へとつながった 財政の破綻が明らかなのに 強い通貨であるユーロ建ての国債を発行でき続けたという矛盾 ( ユーロ建てギリシャ国債の過大評価 ) によって ギリシャ国債は売り捌かれ 国債の価格が急落 ( 利回りは急騰 ) したのである

GIIPS 諸国とドイツの 10 年物国債利回りの推移 ( 対 GDP 比 %) 資料 :Eurostat 35

GIIPS 諸国とドイツの単位当たり労働コスト * の推移 * 単位当たり労働コスト : 賃金を生産性で割って算出した指標 36