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Transcription:

群馬県立産業技術センタ - 研究報告 (2011) 食品中の脂質分析における前処理と分析手法の影響 吉野功 木村紀久 関口昭博 清水浩二 * Influence of a pretreatment and tools of analysis on food lipid analysis Isao YOSHINO, Norihisa KIMURA, Akihiro SEKIGUCHI and Koji SHIMIZU 脂肪酸を指標として 脂質の抽出 前処理法を評価した 凍結乾燥後にソックスレー抽出することで 多水分試料でも妥当性のある分析結果が得られた 脂肪酸組成は 抽出手法によりやや違いがあり ご飯ではの適用が妥当であった 豆腐では複合脂質の抽出力の有無が測定結果に大きく影響していた チョコレートアイスの分析結果からは原料それぞれの抽出法の傾向が見られた キ-ワ-ド : 脂質分析手法 前処理 凍結乾燥 脂肪酸組成 We evaluated extraction of lipid, and the pretreating method based on fatty acid composition. By carrying out the Soxhlet extraction after freeze-drying, the analysis result in which a sample with many amounts of moisture also has validity was obtained. Fatty acid composition had a difference a little with the extraction technique, and the acid decomposition technique was appropriate to it of boiled rice. With tofu, the existence of the extraction power of complex lipid had influenced the measurement result greatly.the tendency of the sampling process of each materials was seen from the analysis result of chocolate ice. Keyword: Lipid analysis method, Pretreating method, Freeze-drying, Fatty acid composition 1 はじめに食品中の脂質定量法はジエチルエーテルを溶剤とするソックスレー抽出法が一般的な方法として知られ 多数の食品の代表的な脂質定量法として用いられている しかし 穀類 野菜類などの食品では食品組織と強固に結合している脂質を抽出するため酸加水分解後に脂肪分離用遠心器を用いて分析するが推奨され 大豆などではリン脂質を考慮した手法を用いるなど 食品の種類により公定法も異なっている また 前処理の方法によっても定量精度に影響があることが考えられる 公定法では水分の多い食品に対する凍結乾燥処理の利用は想定されていないが この処理により多くの食品にソックスレー抽出法が適用される 日本食品標準成分表 2010 1) に バイオ 食品係 * 企画管理係 おいては脂肪酸含量の総量としてのトリアシルグリセロール当量の項目が新設され 脂肪酸組成および含量の分析も必須になってきている 本研究では 脂質定量法や前処理法が与える定量精度や脂肪酸組成への影響を明らかにし さらに公定分析法の異なる2つ以上の組み合わせ食品の適切な定量法を見いだすことを目的とした 2 方法 2.1 分析試料以下の市販食材を購入し分析した レトルトごはん ( 穀類 ) ブロッコリー( 野菜 ) 里いも煮 ( 野菜加工品 ) 豆腐( 大豆類 ) バニラアイス ( 乳類 ) チョコレート( 菓子類 ) チョコアイス( 乳類と菓子類の複合 )

2.2 分析方法ブロッコリーについてはミキサーで粉砕後 その他の食品はポリ袋内で手でつぶした後凍結し 真空凍結乾燥機 (LDF-600LS: レイタント社 ) により水分を除去したものをすりつぶして凍結乾燥後試料とした 水分は 凍結乾燥法により求め 凍結乾燥後試料の換算値として用いた 脂質量については 五訂増補食品成分表分析マニュアル 2) に準じて クロロホルムメタノール法を用いて分析した については試料を直接分析したものと 凍結乾燥後の試料を用いたものとに分けて分析した についてはジエチルエーテル8 時間抽出とした 脂肪酸量については脂質量測定で抽出した試料を用い五訂増補食品成分表分析マニュアルの脂肪酸量測定方法に準じて ヘプタデカン酸を内部標準とした三フッ化ホウ素メタノールによるメチルエステル化後のガスクロマトグラフ定量分析を行った バニラアイス チョコレート チョコアイスについてはナトリウムプロピラートによるプロピルエステル化後のガスクロマトグラフ分析を行い 酪酸 カプロン酸 カプリル酸の定量を行った 定量した脂肪酸の合計量から 試料の脂質量を乗じて 脂肪酸合計量からの脂質当量を求めた ガスクロマトグラフ分析の分析条件は以下のとおり 機器 :GC-2010( 島津製作所 ) カラム :DB-WAX 30m 0.25 mm 0.25μm (J&W) 気化室温度 :220 検出器 (FID) 温度 :240 昇温条件 :50 (2min) (10 /min) 17 0 (1.2 /min) 230 64 分サイクル 3 結果 3.1 多水分食品の凍結乾燥前処理が脂質抽出に与える影響本来 を適用するが 凍結乾燥によりソックスレー抽出適用可能な食品としては 野菜類 穀類 芋類等があげられる 食品成分表の野菜の中でもの高いブロッコリー および里いも加工品 レトルトごはんについて 直接および凍結乾燥後の脂質の定量および脂肪酸定量を行い の脂質 脂肪酸量と比較した ブロッコリーの分析結果を表 1 図 1に示す ブロッコリーのは が最も多く ついで 凍結乾燥ソックスレーとなった しかし 脂質当量では法が少なくなった これは色素など脂質以外の成分が含水下でのジエチルエーテル抽出では多く抽出されたためと考えられる は脂質抽出量としてはよりも少ないものの 脂質当たりの脂肪酸合計量は多く と当量としては差がなかった 脂肪酸の組成は大まかにはかわらないが 酸分解ではパルミチン酸 (C16 :0) 含量が多く 乾燥ソックスレーではリノレン酸 (C18:3) 含量が多い傾向にあった 表 1 ブロッコリーの水分 脂質量 ブロッコリー水分量 84.1% 20 18 16 14 12 8 6 4 2 図 1 ブロッコリーの主要脂肪酸量 0.6 0.8 0.4 (mg/g) 354 111 419 0.2 0.1 0.2 法 里いも煮の分析結果を表 2 図 2に示す は各方法で差がないものの の脂肪酸当量はかなり少なく 凍結が最も脂肪酸当量が多くなった レトルトごはんの分析結果を表 3 図 3に示す 脂質量 脂質当量ともでもっ

とも多くなった 理由として ごはんの脂肪酸組成ではパルミチン酸含量が高いために その抽出に有利なが有効であったと考えられる 凍結は よりも脂質抽出量が多いが よりも少なかった 多水分食品については 凍結乾燥後の試料をソックスレー抽出することによりよりも 当量とも多く妥当性のある分析が可能と考えられた ただし ごはんなどパルミチン酸が多い試料はが必要と考えられる 表 2 里いも煮の水分 脂質量 里いも煮水分量 77.4% 20 18 16 14 12 8 6 4 2 0.1 0.1 0.1 (mg/g) 180 41 350 法 3.2 複合脂質を多量に含む食品に対する脂質抽出法の影響大豆類はリン脂質などの複合脂質を多く含み 脂質の総量の分析としてはクロロホルムメタノール抽出法が分析法として用いられている 今回の研究では 直接および凍結 とクロロホルムメタノール法との脂質量 脂肪酸量について比較した 豆腐の分析結果を表 4 図 4に示す 法はクロロホルムメタノール法と同等のであったが クロロホルムメタノール法ではリン脂質などの複合脂質が抽出されるため 脂肪酸合計量としては低めになったと考えられた 表 4 豆腐の水分 脂質量 豆腐水分量 83.1% クロロホルム - メタノール法 3.5 2.9 5.0 5.0 (mg/g) 193 715 1001 747 0.7 2.1 5.0 3.7 60 50 40 30 20 法クロメタ法 ご飯水分量 63.7% 図 2 里いも煮の主要脂肪酸量 表 3 レトルトご飯の水分 脂質量 図 3 レトルトご飯の主要脂肪酸量 0.3 0.1 0.1 (mg/g) 223 29 183 0.1 16 14 12 8 6 4 2 法 図 4 豆腐の主要脂肪酸量 3.3 複数の公定法が適用される食品に対する脂質抽出法の影響脂質の抽出については前述までのとおり食品分析法に様々な方法がある 複数の材料を用いた食品については 主となる食品の分析法に従うということになっているが 実際に複数の公定法にまたがる食品についてはその寄与は不明である 今回はチョコアイスを組み合わせ食品として選定し その原料であるが公定法であるアイスとが公定法であるチョコの脂質 脂肪酸量をそれぞれの方法で測定し またでも比較を行って チョコアイスの分析に適した分析方法を明らかにすることを目的とした 原料の一つであるバニラアイスの脂質量 脂肪酸量の分析結果を表 5 図 5に示す バ

ニラアイスでは 公定法であるが脂質抽出量 脂質当量とも多かった とでは当量としては ほぼ変わらなかった 脂肪酸組成も3 種の方法でおなじようなパターンであったが ではよりもパルミチン酸の含量は多かった 表 5 バニラアイスの水分 脂質量 バニラアイス水分量 57.6% 図 5 バニラアイスの主要脂肪酸量 14.1 13.5 16.3 (mg/g) 840 883 860 11.8 11.9 14.0 35 30 25 20 15 5 C4:0 C6:0 C8:0 C10:0 C12:0 C14:0 C14:1 C15:0 C16:0 C16:1 C18:0 C18:1n9c C18:2n6c C18:3n3 もう一つの原料であるチョコレートについては 水分が0.2% だったため 分析に供した 脂質量 脂肪酸分析結果を表 6 図 6に示す 本来はが公定法であるはずだが 脂質抽出量は の方が多かった ただ ソックスレー抽出時には脂肪酸量が少なかったため 脂肪酸当量としては 少ない値となった 脂肪酸組成としてはパルミチン酸 (C16:0) ステアリン酸 (C18:0) オレイン酸(C18:1) の3 種の脂肪酸で大部分を占めていた チョコアイスの脂質量 脂肪酸分析結果を表 7 図 7に示す 最終製品であるチョコアイスについては本来 ととの組み合わせ食品として想定し試料として設定したが 原料分析においてはどちらもが有効であるとの結果であった そのため チョコとアイスとの比率は不明であるが チョコアイスでもが脂質量 脂肪酸当量とも最も多くなった については 脂質量として はに次ぐものの チョコに対して脂肪酸合計量が低く分析されることに影響されたためもあり 脂質当量としてはかなり低くなっていた 個々の脂肪酸をみても ステアリン酸 (18:0) がで低いのはチョコからのソックスレー抽出効率が低いことを表していると考えられる では 原料と同様に の8 割程度の脂質抽出量であった チョコアイスについては の適用が妥当であると考えられた 表 6 チョコの水分 脂質量 チョコ水分量 0.2% 図 6 表 7 図 7 バニラアイスの主要脂肪酸量チョコアイスの水分 脂質量 チョコアイスの主要脂肪酸量 29.2 33.5 35.9 (mg/g) 919 779 978 26.8 26.1 35.1 35 30 25 20 15 5 チョコアイス水分量 54.0% 15.2 18.0 18.5 (mg/g) 816 845 915 12.4 15.2 16.9 35 30 25 20 15 5 C4:0 C6:0 C8:0 C10:0 C12:0 C14:0 C14:1 C15:0 C16:0 C16:1 C18:0 C18:1n9c C18:2n6c C18:3n3

4 まとめ代表的な食品種として レトルトごはん ( 穀類 ) ブロッコリー( 野菜 ) 里いも煮 ( 野菜加工品 ) 豆腐( 大豆類 ) バニラアイス ( 乳類 ) チョコレート( 菓子類 ) チョコアイス ( 乳類と菓子類の複合 ) を選定し 脂質定量 ( 直接および法 クロロホルムメタノール法 ) および脂肪酸定量を行い 適切な分析条件を見いだした が推奨されている食材のうち 里いもについては ソックスレーとも脂質の定量値は変わらなかったが 脂肪酸の合計として定量した脂質量としては 凍結乾燥後のが最も多くなった またブロッコリーでは法の脂質量が最も多かったが 脂肪酸定量値は非常に少なく 脂肪酸定量値としては法が最も多くなった 脂肪酸組成については 大まかには抽出法による差はないが パルミチン酸やリノレン酸などの比率が凍結乾燥ソックスレーとで違う傾向の脂肪酸もあった ごはんについては 脂質量 脂肪酸量ともが最も適していた 豆腐については 推奨されるクロロホルム メタノール抽出法に比べて 凍結でも脂肪量が多くなり また脂肪に占める脂肪酸の割合も高かった クロロホルムメタノール法ではリン脂質などの複合脂質が多く抽出されるため 脂肪酸量基準の脂肪量を測定する場合は凍結が最も適していると考えられた アイス チョコ類についてはが脂質量としては多く定量された 本来 チョコについてはが推奨されているが 測定でははよりも抽出脂質が少なかった また 脂肪酸合計量としてもではチョコの値が少なくなり そのため チョコアイスについても脂肪酸合計量が少なくなった 以上より 脂肪酸定量合計値を指標として 脂質測定前処理法を評価したとき 法では困難であった豆腐 野菜類も凍結乾燥後のソックスレー抽出は有効であると考えられ 分析の妥当性が確認できた 文献 1) 日本食品標準成分表 2010(2010: 文部科学省科学技術学術審議会資源調査分科会 ) 2) 五訂増補日本食品標準成分表分析マニュアル (2006: 建帛社 )