けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成 20 年 9 月の米国におけるリーマン ブラザーズの破綻 ( リーマン ショック ) を契機に発生した世界的な金融危機と世界同時不況の影響から 生産指数は 半年で約 4 割と大幅な低下を示し 平成 21 年 2 月には 66.6 と 現行基準で最低値を記録した その後は 主要国で実施された経済対策の効果や 新興国をはじめとする海外景気の改善から輸出が持ち直し 国内でもエコカー減税 補助金や家電関係のエコポイント制度などの政策もあって個人消費も持ち直したことなどから 生産指数は 平成 21 年 2 月を底に再び上昇傾向となり 平成 22 年初には リーマン ショック発生時点の約 9 割の水準まで回復した (3) 東日本大震災による落ち込みとその後の回復局面平成 23 年 3 月に発生した東日本大震災は 生産設備に直接の被害がなかった当地域においても 東北地域からの部品供給の寸断によって大きな影響を及ぼし 同月の生産指数は 前月比 17.4% と 比較可能な昭和 34 年 2 月以降で最大の低下率となった ( リーマン ショック時の最大の低下率 ( 平成 21 年 2 月の前月比 15.4%) や 伊勢湾台風時の低下率 ( 昭和 34 年 10 月の前月比 13.5%) をも下回った ) 生産指数は 4 月も低下し 2か月間で約 2 割と短期間での急激な低下となったが サプライチェーン復旧に伴い急速に回復した その後は 同年秋に発生したタイ洪水によって 再び部品供給制約による生産への影響があったものの 平成 24 年年初になると 自動車関連産業での挽回生産やエコカー補助金等の政策効果などもあり リーマン ショック発生時点の水準まで上昇した 同年後半には エコカー補助金終了の影響や 欧州 中国経済の減速から 低下したものの 翌 25 年には上昇に転じている 足元の指数は おおむね横ばいで推移しており 指数の水準は リーマン ショック前のピークと比べて9 割程度となっている 298
2.2 度のショックであらためて浮き彫りとなった当地域製造業の特徴 (1)2 度のショックによる業種別指数の変動要因分析業種別生産指数の推移と前年同月比寄与度分解 ( 図 2 図 3) を見ると リーマン ショック前までは ほぼ全ての業種が上昇基調で推移しており 寄与度で見ると 特に 輸送機械工業 電子部品 デバイス工業 はん用 生産用 業務用機械工業の3 業種が生産指数の上昇をけん引してきた 生産指数が大きく低下した平成 20 年後半から平成 21 年前半にかけては それまでとは一転してほぼ全ての業種が低下しており 中でも輸送機械工業 生産用機械工業の低下寄与の大きさが際立っている その後は 輸送機械工業を中心に各業種が上昇に転じている 平成 23 年の東日本大震災では 一部を除き一時的な指数の低下が見られ 中でも輸送機械工業の低下幅 寄与度が突出している 一方で 生産用機械工業については 大きな影響がなく同年央まで上昇傾向となっている様子もみられる この 10 年の生産指数の変動に対する輸送機械工業 はん用 生産用 業務用機械工業及び電子部品 デバイス工業の3 業種の寄与率 ( 平均 ) は おおむね8 割を占めており 上昇局面 低下局面のいずれの局面においても これら3 業種 ( 以下 主要 3 業種 という ) による影響が大きい 299
主要 3 業種の生産指数の推移を見ると 平成 20 年前半までは いずれも上昇基調で推移しているものの リーマン ショック以降 その動向に差がみられる そこで 平成 20 年 2 月 ( いざなみ景気の山 ) 時点の生産指数を比較時点とした各指数の推移 ( 図 4) により 主要 3 業種の生産指数の動きを比較する 1 輸送機械工業の動き輸送機械工業については リーマン ショック時の低下率は 比較時点から約 6 割と鉱工業全体と比べても大きい その後は 鉱工業全体と同じく平成 21 年 2 月に底入れしており 比較時点から1 年後の平成 22 年 2 月には 比較時点の約 9 割の水準まで回復している 平成 23 年の東日本大震災では 輸送機械工業が最も大きな影響を受けた 輸送機械工業の生産指数は 平成 23 年 4 月には 48.2 と リーマン ショック時 ( 平成 21 年 2 月の 51.8) を下回る水準まで落ち込んでいる しかし その後は急速に回復しており 平成 24 年 4 月に比較時点の水準付近まで上昇している 2 はん用 生産用 業務用機械工業の動きはん用 生産用 業務用機械工業については リーマン ショック時には 鉱工業全体の生産指数が平成 21 年 2 月に底入れする中 同年 6 月まで低下傾向を続けており 低下率も輸送機械工業と同様に約 6 割に達している その後は上昇に転じたものの 比較時点の9 割の水準まで回復したのは平成 23 年 6 月と 底入れしてから2 年を要しており 回復基調は 総じて緩やかとなっている 東日本大震災では 一時的な落ち込みは見られたものの 総じて上昇基調を維持しており 指数は平成 23 年 6 月に当年の最高値となるなど 震災の影響は比較的軽微であった 3 電子部品 デバイス工業の動き電子部品 デバイス工業の生産指数については リーマン ショック時には 主要 3 業種の中でいち早く ( 平成 21 年 1 月 ) 底入れし上昇に転じている 基準時点からの低下率も5 割弱と主要 3 業種の中で最も小さく 平成 22 年年初には比較時点の水準まで回復し その後も上昇傾向で推移している その後 東日本大震災の発生時点からは低下傾向に転じており 同年年末まで弱含んでいたが 平成 24 年に入ると再び上昇基調となり 比較時点より約 3 割高い水準まで上昇している 302
東日本大震災において 特定の業種の生産が大きく低下した要因としては サプライチェーンの中核を担う重要な部素材を供給する企業において 被災により建物損壊等の甚大な被害が生じ 部品供給がストップしたことで それらを原材料として使用するセクターにおいて生産活動に支障をきたした点が指摘されている ( 図 20) ( 図 20) 東日本大震災によるサプライチェーンへの影響 ( 一例 ) ( 資料 ) 経済産業省 厚生労働省 文部科学省 2011 年版ものづくり白書 から抜粋 当地域においては 東日本大震災による直接的な被害はなかったものの 半導体や樹脂など 被災地域の企業から供給を受けて生産を行っていた自動車産業では間接的に大きな影響が生じた 自動車生産は 3 月中旬には生産停止となり 同月下旬から一部車種の生産が再開されたものの 全国規模で生産体制の見直しが行われるなど 正常な生産体制に戻るまでに半年を要している こうした自動車生産の動きに連動して 自動車部品 部材メーカーでも順次生産調整が行われた 自動車関連産業における東日本大震災による影響について 影響が及んだ程度 ( 生産指数の震災前時点との比較 ) と 影響が生じた時期 ( 生産指数の前月比推移 ) を ( 図 21) で見ると 管内の完成車生産拠点の生産停止が 関連部品 部材産業に時間的経過を伴って波及することで 自動車産業全体の大幅な低下につながっていった様子がみられる 315
(5)2 度のショックによる生産指数への影響分析から見る当地域製造業の特徴 ( まとめ ) 以上のとおり この 10 年間の生産指数の動きについて 大きな変動となった2 度のショックを中心に分析を行うと 平成 20 年前半までの当地域製造業は 輸送機械工業やはん用 生産用 業務用機械工業 電子部品 デバイス工業など幅広い業種で生産指数が上昇していた しかし リーマン ショックを契機とした世界金融危機と世界同時不況の影響によって 生産指数は 輸出型産業を中心にほぼ全ての業種 財で低下し 鉱工業全体の落ち込みにつながっていく様子がみられた 一方 東日本大震災では 多くの業種 財においては その影響は比較的軽微であったものの 自動車産業では 完成車生産がリーマン ショック時よりも低い水準まで落ち込んだのをはじめとして 関連部品 部材産業でも大幅に低下する様子が見られた その影響を詳細に分析すると 完成車生産の停止が 関連部品 部材産業に時間的経過を伴って波及することで 自動車産業全体の生産の大幅な低下につながっていく様子が見られた このように 2 度のショックは それぞれ外需の減少とサプライチェーンの寸断が大きな影響を及ぼすことで 裾野の広い自動車産業を中心に多くの産業が集積し 輸出に依存している当地域製造業の特徴を あらためて浮き彫りにすることとなった 以上 317