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表示媒体とフォントが作業成績と印象評価に与える影響 *1 *2 小林梨紗 髙橋尚也 The Effect of Display Devices and Font on Reading Performance and Impression Evaluation KOBAYASHI Lisa and TAKAHASHI Naoya Abstract The purpose of this study was to analyze the influence of display devices (paper and electronic)and font on reading performance and impression evaluation. 28 university students participated in 2(paper / electronic) 2 (normal font / special font)between design experiment. Dependent variables were reading performance (reading time / degree to understand the contents)and impression evaluation. As a result, there was no significant in reading performance depending on display devices and fonts. Participants had a favorable impression of the paper device rather than the electronic device, and the normal font had a preferable impression than the special font. Participants who like paper device preferred special fonts, and participants who like electronic device liked regular fonts. Based on above results, in reading, unfamiliar display device and font lead to undesirable impressions, but it was discussed that combinations of familiar fonts and display device with unfamiliar fonts and display device caused dishabituation. [Keywords] electronic device, font, dishabituation 要約本研究の目的は 表示媒体 ( 紙と電子媒体 ) とフォントが 読みの作業成績と印象評価に与える影響を分析することであった 大学生 28 名が 表示媒体 ( 紙媒体 電子書籍 ) とフォント ( 通常フォント 特殊フォント ) を独立変数 作業成績 ( 読み時間 内容理解度 ) と印象評価を従属変数とする 2 要因参加者間計画の実験に参加した その結果 いずれの表示媒体とフォントにおいても作業成績に有意な差は認められなかった 実験参加者は 電子書籍よりも紙媒体を好ましいと評価し 特殊フォントよりも通常フォントを好ましいと評価した 紙媒体を好むほど特殊フォントを好み 電子書籍を好むほど通常フォントを好むことが明らかとなった 以上の結果から 読書において 不慣れな表示媒体やフォントは好ましくない印象につながるが 慣れたフォントや表示媒体に不慣れなそれらを組み合わせることで脱馴化が生じる可能性が議論された キーワード : 電子書籍 フォント 脱馴化 問 題 現在 電子書籍端末は日本国内においても読書媒体として広く認知され その関心は高まってきている ( 植村,2013) 電子書籍には 資源節約や持ち運びやすさなど紙媒体より優れた点があると認められる一方で 特定の種類の読書には不向きであるという主張も存在する ( 筑瀬,2008) つまり 紙媒体と電子書籍はそれぞれ異なった長所と短所を持つと考えられる 電子書籍と紙媒体を比較する研究はこれまで多くなされてきた たとえば 堀場 上條 (2011) は 異なる表示媒体 * 1 立正大学大学院心理学研究科対人 社会心理学専攻修士課程 * 2 立正大学心理学部准教授 71

立正大学心理学研究年報第 9 号 (Kindle を模したタブレット端末 A 4 用紙 ) を用いて読書させ 作業成績 ( 内容理解度 読み速度 誤字検出率 ) を測定し 各媒体を読書媒体としてどのように感じるかを評定させる実験を行った その結果 いずれの作業成績においても 電子書籍と紙媒体の間に有意な差は見られなかった 一方 新規性 楽しさ という項目において電子書籍が紙媒体より高く 美しい という項目で紙媒体が電子書籍より高く評定されることがわかった さらに 小林 池内 (2012) が行った異なる表示媒体 (ipad 2 A 5 用紙 ) を用いた読書実験では 読み速度において電子書籍の方が紙媒体よりも有意に速く 記憶成績と内容理解度において紙媒体の方が電子書籍よりも有意に高いという結果が報告されている また 八木 菊地 (2010) は スクロール提示された文章の読みやすさを検討し 紙面での読みと快適な速度でディスプレイ上にスクロール提示された文章の読みとでは同程度の情報処理が可能であることを示している 読書における作業成績や印象評価に影響を与える要因の 1 つとして フォントが考えられる 清原 中山 木村 清水 清水 (2003) は 異なるフォントを使用した文章を読ませ 内容理解度を測定した その結果 ゴシック体のほうが明朝体よりも成績が高いことが明らかになった しかし こうしたフォントの及ぼす効果が常に報告されるかについては不明な点も存在する たとえば 現代のフォントには多様なデザインが存在し 使用場面によって適切もしくは不適切なフォントが変わるため ( 本橋,2002) 表示媒体の違いによっても フォントの効果や印象が変わる可能性が示唆される そこで 本研究では表示媒体とフォントが作業成績と印象評価に与える影響を分析し 表示媒体とフォントの関連を検討することを目的とした 本研究を通して 効果的な広報戦略に関する基礎資料を得ることをめざす 方 法 実験参加者大学生 28 名が実験に参加した 実験参加者の平均年齢は21.43 歳であった (SD = 0.96) 装置と刺激電子書籍としてアマゾン社の Kindle Paperwhite(2015) 紙媒体として本の形状にした A 5 用紙を用いた また 文章の呈示に 2 つのフォントが用意された 通常フォントとして Microsoft Office の標準フォントの 1 つである MS 明朝体 特殊フォントとしてフリーフォントサイトでダウンロード数の多い しねきゃぷしょん を用いた また 実際の文庫本を参考に フォントサイズは 9 pt 1 ページあたりの行数は16 行 1 行あたりの文字数は39 字に設定された 文章課題は 2 種類用意された 説明的文章である 悩み の正体 ( 岩波新書,2007) 文学的文章である トリップ ( 光文社文庫,2004) から一部抜粋して課題が作成された それぞれの合計文字数は 説明的文章は2310 字 文学的文章では2027 字であった また どちらの文章においても総ページ数は 4 ページであり ページ数はすべてのページの左下に印字された 手続き本研究の手続きの流れを図 1 に示す 図 1 実験の流れ 本実験は 4 種類の段階に分類された そのうち 読書段階 テスト段階 評価段階は 1 タームとされ 各実験参加者は 2 タームを繰り返して行った このとき 2 ターム目は 1 ターム目と異なる媒体 フォント 文章で課題を実施することとした また 媒体 フォント 文章の呈示する順番についてはカウンタバランスが取られた 1 ターム目と 2 ターム目の間には 3 分間の休憩時間が取られた さらに 2 タームが終了した後の調査段階において 質問紙調査が行われた 以下に 各段階における実験参加者の課題および質問項目の内容を記述する 読書段階における実験参加者の課題は 呈示された文章をできるだけ速く正確に読むことであった その際 自由な姿勢で読むこと 最後まで読み終えたら手を挙げて実験者に知らせること 終了後に文章内容に関するテストを行うことを教示した 実験者は 実験参加者が課題を読み終えた時間を記録した 72

表示媒体とフォントが作業成績と印象評価に与える影響 テスト段階における実験参加者の課題は 読書内容の理解を問う正誤問題に解答することであった テストは 文章によって異なる 2 種類が用意され それぞれ 解答式の10 題を実験者が自ら作成した 評価段階における実験参加者の課題は 読書段階で使用された表示媒体とフォントに対する印象が 対になった形容詞のどちらにより近いかを 6 件法で評定することであった 大山 瀧本 岩澤 (1993) を参考に作成された17 項目の形容詞対が用いられた 調査段階における実験参加者の課題は 質問紙に回答することであった 質問紙の構成を表 1 に示す 表 1 質問紙の構成 調査内容 たずね方 1 普段の読書頻度 1 項目 7 件法 2 読書媒体の所持 2 項目 2 件法 3 媒体の使用頻度 2 項目 4 件法 4 新規性追求尺度 ( 小塩 中谷 金子 長峰,2002) 7 項目 5 件法 5 こだわり意識尺度 ( 花井 八城 田中,2006) 12 項目 4 件法 6 フェイスシート 実験デザイン本実験は 表示媒体 ( 紙媒体 電子書籍 ) とフォント ( 通常フォント 特殊フォント ) を独立変数 作業成績 ( 読み時間 内容理解度 ) と印象評価を従属変数とする 2 要因参加者間計画であった 結 果 2 つの文章の文字数に差があったため 測定時間を標準化したものを読み時間とし 以降の分析に使用した また テスト段階において実験参加者が解答したテストの正答数は 単純加算により集計され内容理解度とされた 満点は10 点である 表示媒体の印象評価に関する17 項目について 因子分析 ( 主因子法 プロマックス回転 ) を行った結果 解釈可能性から 2 因子を抽出した 回転前の固有値は 第 1 因子が3.829 第 2 因子が1.483であった 第 1 因子は 表示媒体に対して悪印象を抱いたことを表す因子であると解釈され 媒体低評価 因子と名付けられた 第 2 因子は 表示媒体に対して面白みがなく薄っぺらな印象を抱いたことを表す因子であると解釈され 媒体味気なさ 因子と名付けられた フォントの印象評価に関する17 項目について 因子分析 ( 主因子法 プロマックス回転 ) を行った結果 解釈可能性から 3 因子を抽出した 回転前の固有値は 第 1 因子が3.695 第 2 因子が1.134 第 3 因子が1.093であった 第 1 因子は フォントに対して悪印象を抱いたことを表す因子であると解釈され フォント低評価 因子と名付けられた 第 2 因子は フォントに対して暗く陰気な印象を抱いたことを表す因子であると解釈され フォント重苦しさ 因子と名付けられた 第 3 因子は フォントに対して不透明でじめじめしている印象を抱いたことを表す因子であると解釈され フォントどんより 因子と名付けられた 表 2 と表 3 に 表示媒体に対する印象評価の 2 因子と フォントに対する印象評価の 3 因子の回転後の因子負荷量を示す 表 2 表示媒体に対する印象の因子分析 表 3 フォントに対する印象の因子分析 項目内容 因子 1 因子 2 好きな- 嫌いな.44.34 暖かい- 冷たい.91 -.26 楽しい- 苦しい.91 -.18 親しみやすい- 親しみにくい.76.23 読みやすい- 読みにくい.80.02 湿った- 乾いた.18 -.56 おもしろい-つまらない.33.49 深い- 浅い -.08.61 因子間相関.43 項目内容 因子 1 因子 2 因子 3 好きな- 嫌いな.92 -.25 -.07 美しい- 醜い.49.25.17 安定した- 不安定な.42.39.18 楽しい- 苦しい.89 -.04 -.23 読みやすい- 読みにくい.79 -.04.14 陽気な- 陰気な.25.61 -.24 重い- 軽い.35 -.97.04 澄んだ- 濁った.32.14.57 湿った- 乾いた.19.19-1.01 因子間相関 因子 1.47.44 因子 2.36 73

立正大学心理学研究年報第 9 号 各作業成績 ( 読み時間 内容理解度 ) について 表示媒体とフォントを要因とする分散分析をしたところ 表示媒体およびフォントにおける主効果 表示媒体とフォントの間における交互作用はいずれも認められなかった 媒体評価得点について 表示媒体とフォントを要因とする分散分析をしたところ 媒体低評価 (F(1, 52)= 4.22, p <.05) および媒体味気なさ (F(1, 52)= 5.58, p <.05) において表示媒体の有意な主効果が認められた よって 電子書籍より紙媒体のほうが好まれることがわかった 次に フォント評価得点について 表示媒体とフォントを要因とする分散分析をした結果 フォント低評価 (F(1, 52) = 8.33, p <.01) フォント重苦しさ(F(1, 52)= 22.00, p <.01) フォントどんより(F(1, 52)= 4.17, p <.05) について フォントの有意な主効果が認められた (F(1, 52)= 8.33, p <.01) よって 特殊フォントより通常フォントのほうが好まれることがわかった 各指標の単純集計と分散分析の結果を表 4 に示す 表 4 表示媒体とフォントを要因とする分散分析の平均 (SD) 表示媒体紙媒体電子書籍 F 値フォント通常フォント特殊フォント通常フォント特殊フォント表示フォント文章説明文小説文説明文小説文説明文小説文説明文小説文媒体 読み時間 243.41 209.40 208.27 213.69 241.98 188.12 238.84 218.40 0.06 0.01 1.37 (49.23)(31.56) (45.75)(47.75) (35.43)(46.78) (47.31)(35.92) n.s. n.s. n.s. 内容理解 8.14 8.14 8.86 8.71 8.14 8.43 8.86 7.86 0.29 1.12 0.72 (1.55) (1.55) (0.83) (0.88) (1.12) (1.05) (1.12) (0.99) n.s. n.s. n.s. 媒体低評価 2.83 3.31 2.40 2.43 3.14 3.97 3.49 2.74 4.22 3.63 0.14 (1.25) (1.02) (0.55) (1.31) (0.95) (0.84) (0.83) (1.01) * n.s. n.s. 媒体味気なさ 2.24 3.05 2.24 2.71 3.10 3.48 2.76 2.71 5.58 3.48 0.99 (0.92) (0.60) (0.49) (0.55) (0.71) (0.59) (0.58) (0.60) * n.s. n.s. フォント低評価 2.34 2.69 3.29 3.20 2.43 3.14 3.77 3.20 1.08 8.33 0.00 (1.10) (0.37) (0.49) (0.94) (0.82) (0.95) (0.58) (1.22) n.s. ** n.s. フォント重苦しさ 4.07 4.00 2.71 2.93 4.29 4.43 3.00 2.64 0.30 22.00 0.30 (1.08) (0.80) (1.25) (1.18) (0.52) (1.02) (1.07) (1.27) n.s. ** n.s. フォントどんより 1.93 3.21 3.00 3.43 3.14 3.36 3.64 3.50 4.81 4.17 0.46 (0.82) (0.75) (0.71) (0.32) (0.35) (1.43) (0.58) (0.71) * * n.s. *p<.05 **p<.01 交互作用 また 各媒体および各フォントに対する印象評価得点と個人特性との相関係数の算出結果を表 5 に示す 紙媒体の低評価得点は 特殊フォントの低評価得点と有意な相関を示した (r =.463, p <.05) よって 紙媒体を好ましいと感じるほど特殊フォントも好ましく感じることが明らかとなった 次に 電子書籍の低評価得点は 通常フォントの低評価得点と有意な相関を示した (r =.469, p <.05) よって 電子書籍を好ましいと感じるほど通常フォントも好ましく感じることが明らかとなった 74

表示媒体とフォントが作業成績と印象評価に与える影響 紙媒体低評価 紙媒体電子書籍電子書籍味気なさ低評価味気なさ 表 5 媒体 フォントに対する印象と個人特性の相関 通常フォント低評価 通常フォント重苦しさ 通常フォントどんより 特殊フォント低評価 特殊フォント重苦しさ 特殊フォント読書頻度どんより 紙媒体電子書籍使用頻度使用頻度 新奇性追求 こだわり意識 紙媒体低評価.38*.45*.18.33.05 -.07.46*.28 -.14 -.15.15 -.08 -.32 -.23 紙媒体味気なさ -.03.16 -.13 -.27.08.48* -.01.31 -.23 -.17.10 -.25 -.01 電子書籍低評価.47*.47*.15.36.37.30 -.37*.23.26 -.29 -.09 -.37 電子書籍味気なさ.11.11.25.27 -.13 -.38*.10.03 -.19.06 -.37 通常フォント低評価.31.46* -.18.50** -.32 -.01.17.03.20 -.23 通常フォント重苦しさ.21.04.05 -.18 -.16.11 -.22.00 -.21 通常フォントどんより -.06.17 -.29.04.10 -.16.25 -.10 特殊フォント低評価 -.21.25.04.16 -.12 -.27 -.25 特殊フォント重苦しさ -.22 -.34 -.28 -.05.01.09 特殊フォントどんより -.31 -.35.04.24.12 読書頻度.70**.05 -.07 -.01 紙媒体使用頻度 -.12 -.17 -.10 電子書籍使用頻度 -.09 -.05 新奇性追求 -.09 *p<.05 **p<.01 考 察 本研究の結果は 以下の 3 点にまとめられる 第 1 に 異なる表示媒体とフォントにおける作業成績を比較したところ いずれの表示媒体とフォントにおいても有意な差は認められなかった 第 2 に 異なる表示媒体とフォントにおける印象評価得点を比較した結果 電子書籍よりも紙媒体が好ましく評定され 特殊フォントよりも通常フォントが好ましく評定されることがわかった 第 3 に 表示媒体の印象評価得点とフォントの印象評価得点の関連を検討した結果 紙媒体を好むほど特殊フォントを好み 電子書籍を好むほど通常フォントを好むことが明らかとなった 本研究の第 1 の結論は 読書における表示媒体とフォントの違いは 作業成績のような客観的指標よりも個人の主観的印象に影響し得るということである 第 2 の結論は 読書において不慣れな表示媒体やフォントは悪印象につながるが 慣れたフォントや表示媒体と組み合わせることで好ましく感じられる可能性 すなわち脱馴化の可能性が示唆されたことである 今後は 効果的な広報戦略として脱馴化を活用できるかどうかを検討することが期待される 引用文献筑瀬重喜 (2008). 読書端末はなぜ普及しないのか情報化社会 メディア研究, 5,33-40. 花井友美 八城薫 田中淳 (2006). こだわりの意識とその構造日本心理学会第 70 回大会発表論文集,100. 堀場洋輔 上條正義 (2011). 作業成績と印象評価による電子表示媒体の読みやすさに関する比較研究日本感性工学会論文誌,10(4),445-456. 75

立正大学心理学研究年報第 9 号 清原一暁 中山実 木村博茂 清水英夫 清水康敬 (2003). 文章の表示メディアと表示形式が文章理解に与える影響日本教育工学会論文誌,27(2),117-126. 小林亮太 池内淳 (2012). 表示媒体が文章理解と記憶に及ぼす影響 - 電子書籍端末と紙媒体の比較 - 情報処理学会研究報告,29, 1-7. 本橋朋子 (2002). 読みやすさに影響を与えるフォントとレイアウトの機能日本実用英語学会第 156 回研究会発表論文集,79-89. 大山正 瀧本誓 岩澤秀紀 (1993). セマンティック ディファレンシャル法を用いた共感覚性の研究 - 因子構造と因子得点の比較 - 行動計量学,20,55-64. 小塩真司 中谷素之 金子一史 長峰伸治 (2002). ネガティブな出来事からの立ち直りを導く心理的特性 - 精神的回復尺度の作成 - カウンセリング研究,35,57-65. 植村八潮 (2013). 電子書籍と出版文化の未来 - 流通基盤構築と出版デジタル機構の役割 http://lib.kobe-u.ac.jp/aulh/ katsudo/ (2016 年 7 月 23 日閲覧 ) 八木善彦 菊地正 (2010). スクロール提示された文章の読み特性心理学研究,81(4),388-396. 76