違反する 労働契約法 20 条 長澤運輸事件最高裁 ( 平成 30 年 6 月 1 日判決 ) 速報 2346 号定年後再雇用の嘱託者につき精勤手当 超勤手当を除く賃金項目は労働契約法 20 条に違反しないとされた例 定年後 1 年契約の嘱託社員として再雇用されたトラック乗務員の一審原告らが 定年前

Similar documents
法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

I 事案の概要 本件は 東証一部上場企業の物流大手である株式会社ハマキョウレックス ( 以下 被告 被控訴人 又は 上告人 といいます ) との間で有期雇用契約 1 を締結している契約社員 ( 以下 原告 控訴人 又は 被上告人 といいます ) が 以下に掲げる正社員と契約社員との間の労働条件 (

長澤運輸事件(東京地判平成28年11月2日)について

第36号

た本件諸手当との差額の支払を求め ( 以下, この請求を 本件差額賃金請求 という ),2 予備的に, 不法行為に基づき, 上記差額に相当する額の損害賠償を求める ( 以下, この請求を 本件損害賠償請求 という ) などの請求をする事案である 2 原審の確定した事実関係等の概要は, 次のとおりであ

PPTVIEW

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

<4D F736F F F696E74202D20984A93AD8C5F96F CC837C A815B C F38DFC8BC68ED28D5A90B38CE3816A2E707074>

被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

<4D F736F F D20819C906C8E96984A96B1835A837E B C8E3693FA816A8E518D6C8E9197BF E646F63>

最近の主要労働判例・命令(2017年4月号)

除されたものを除く ) について 1 本件は, 被上告人を定年退職した後に, 期間の定めのある労働契約 ( 以下 有期労働契約 という ) を被上告人と締結して就労している上告人らが, 期間の定めのない労働契約 ( 以下 無期労働契約 という ) を被上告人と締結している従業員との間に, 労働契約法

1. 表紙

Microsoft PowerPoint - 2の(別紙2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保【佐賀局版】

3. 無期労働契約への転換後の労働条件無期労働契約に転換した後の職務 勤務地 賃金 労働時間等の労働条件は 労働協約 就業規則または個々の労働契約等に別段の定めがない限り 直前の有期労働契約と同一になるとされており 無期転換に当たって職務の内容などが変更されないにもかかわらず 無期転換後の労働条件を

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

弁護士 八代 徹也 先生

契約の終了 更新18 無期労働契約では 解雇は 客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当であると認められない場合 は 権利濫用として無効である と定められています ( 労働契約法 16 条 ) 解雇権濫用法理 と呼ばれるものです (2) 解雇手続解雇をする場合には 少なくとも30 日前に解雇の予告

長澤運輸事件(東京高裁 平 判決)

基発第       号

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え


9-1 退職のルール 職することは契約違反となります したがって 労働者は勝手に退職することはできません 就業規則に 契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には それに従って退職できることになりますが 特段の定めがない場合には なるべく合意解約ができるように 十分話し合うことが大切です ただ

短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

_第16回公益通報者保護専門調査会_資料2

1. 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴う留意点 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴い 厚生労働省より Q&A が公表されています 今回はこの Q&A に記載があるものについて 参考になると思われるものについてピックアップしてまとめています (1) 継続雇用制度の導入について i. 定年退職者を嘱託やパ

★HP版調整事件解説集h28[019]

平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

期間雇用社員の 未来を切りひらく訴訟 労働契約法 20 条 ( 雇用 ) 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止 第 20 条有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が 期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の内容である労

等により明示するように努めるものとする ( 就業規則の作成の手続 ) 第 7 条事業主は 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し 又は変更しようとするときは 当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする ( 短時間労働者の待遇の原

9( 以下, 併せて 上告人 X1ら という ) は, 平成 19 年 9 月 30 日まで, 旧公社の非常勤職員であったが, 同年 10 月 1 日, 被上告人との間で有期労働契約を締結して, これを7 回から9 回更新し, 上告人 X1, 同 X2, 同 X3, 同 X5, 同 X6 及び同 X

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

国際自動車事件 判例解説 1 事件の概要 [ 1 ] 事件の要旨本件は Y 社に雇用され タクシー乗務員として勤務していたXらが 歩合給の計算に当たり残業手当等に相当する金額を控除する旨を定めるY 社の賃金規則上の定めが無効であり Y 社は 控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払い義務を負う

Microsoft PowerPoint - 【資料No.5】雇止めの抑制策.pptx

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

Taro-「改正労働契約法」の活用と

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

均衡待遇・正社員化推進奨励金 支給申請の手引き

平成 31 年 4 月 1 日から平成 34 年 3 月 31 日まで 63 歳平成 34 年 4 月 1 日から平成 37 年 3 月 31 日まで 64 歳 4 定年について 労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません ( 均等法第 6 条 ) ( 退職 ) 第 48 条前条に定める

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

無機転換_0425_id8_入稿.indd

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

目次 Ⅰ. 労働契約法の改正 1. そもそも労働契約法とは? 2. 改正労働契約法の最大のポイント 無期転換申込権 とは? 3. 最新トピック~ 私立大学に有利な法改正が 4 月施行 ~ 大学教員任期法 と 研究開発力強化法 の改正とはただし 小 中 高には適用なし ( 要注意 ) 4. 改正の第二

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

平成  年(あ)第  号

無期契約職員就業規則

留意事項 ( 1) 賃金アップの方法 欄には 賃金の算定方法を下記から選択し記載してください 賃金アップが 毎月決まって支払われる賃金 の場合は 1 賃金アップが 毎月決まって支払われる賃金 + 臨時に支払われる賃金 の場合は 2 賃金アップの方法 欄において 1の 毎月決まって支払われる賃金 を選

1 なぜ 同一労働同一賃金 が導入されるのか? 総務省統計局労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 30 年 (2018 年 )7~9 月期平均 ( 速報 ) によると 非正規労働者数は 2,118 万人 ( 前年同期比 68 万人増加 ) 正規労働者数は 3,500 万人となっています 役員を除く雇用

<4D F736F F F696E74202D C668DDA A8DB293A190E690B62E B8CDD8AB B83685D>

弁護士 八代 徹也 先生

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

第 6 平等原則違反の場合の救済方法 第 6 平等原則違反の場合の救済方法裁判所による直接的救済 ( 部分違憲 )( 1) 判例 参考 問題の所在, 前提 国籍法事件当時の国籍法 3 条 1 項は, 外国人の母より出生したが, 1 母が日本人の父と婚姻をし, 2 父より認知された場合に, 日本国籍の

11総法不審第120号

Microsoft PowerPoint - è³⁄挎"3".pptx

(2) 労働者人口の減少 一方労働人口は減少しつつあり 推計値では 2025 年には 6300 万人まで減少見込みとなっております 問題点 以下のような状況の中で今後どのように労働者を確保して 企業を活性化させるか? 条件 1 労働者人口が減少する 2 フルタイム労働者が減る 3 未熟練従業員が増え

★HP版調整事件解説集h28[043]

市町村合併の推進状況について

3. 継続雇用制度の対象者基準の経過措置 Q3-1: Q3-2: Q3-3: Q3-4: Q3-5: Q3-6: Q3-7: すべての事業主が経過措置により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることができますか 改正高年齢者雇用安定法が施行された時点で労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

平成  年(オ)第  号

★HP版調整事件解説集h28[042]

<4D F736F F D208BCE96B18B4B91A CC92E882DF82C6918A939682CC91CE89BF2D A E968C8F322E646F63>

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

<4D F736F F D208FA495578CA0904E8A FD782C982A882AF82E991B98A F9E8A7A82CC8E5A92E82096F6E05694FC89C02E646F63>

本件合併時にA 信用組合に在職する職員に係る労働契約上の地位は, 被上告人が承継すること,3 上記の職員に係る退職金は, 本件合併の際には支給せず, 合併後に退職する際に, 合併の前後の勤続年数を通算して被上告人の退職給与規程により支給することなどが合意された また, 本件合併の準備を進めるため,

- 2 - り 又は知り得る状態であったと認められる場合には この限りでない 2~7 略 (保険料を控除した事実に係る判断)第一条の二前条第一項に規定する機関は 厚生年金保険制度及び国民年金制度により生活の安定が図られる国民の立場に立って同項に規定する事実がある者が不利益を被ることがないようにする観

という労使の交渉の経過や それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が取られたこと ( 説明努力 ) 前記認定に係る諸事情を総合考慮するならば 高度な必要性に基づいた合理的な内容のものであるといわざるを得ない としている 3. キョーイクソフト事件 ( 東京高判 平成 ) 年功的賃

◆◆10-1特定有期雇用教職員就業規程30.4.1(修正)

調査等 何らかの形でその者が雇用期間の更新を希望する旨を確認することに代えることができる ( 雇用期間の末日 ) 第 6 条第 4 条及び第 5 条の雇用期間の末日は 再雇用された者が満 65 歳に達する日以後における最初の3 月 31 日以前でなければならない 2 削除 3 削除 ( 人事異動通知

<4D F736F F D2095BD90AC E D738CC2816A939A905C91E D862E646F63>

として採用するものとする 第 2 条の3 前条に定めるほか 職員就業規則第 11 条第 1 項により退職 ( 以下 定年退職という ) した者であって 退職後引き続き研究所以外の機関 ( 以下 再就職先 という ) において勤務する者 ( 定年退職後 任期付職員就業規則または契約職員就業規則の適用を

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

96 城西現代政策研究第 11 巻第 1 号 されることに伴い 平成 25 年 3 月 31 日付の労使協定 ( 以下 本件労使協定 ) が締結された 本件労使協定において 1 本件労使協定 3 条各号に定める判断基準の全てを満たすものに対しては 定年後再雇用就業規則に定めるスキルドパートナーとして

<4D F736F F D20819A DB90C5916B8B7997A796408BD68E7E82C982C282A282C482CC88D38CA98F912E646F63>

PowerPoint プレゼンテーション

調査結果のポイント 従業員採用状況について 平成 28 年度 (H28.4 ~ H29.3) は 計画どおり もしくは計画より多く採用した と回答した企業が69% 採用計画について 29 年度 (H29.4 ~ H30.3) は 28 年度実績と比較し 増やす と回答した企業と 減らす と回答した企

桐蔭法学 24 巻 1 号 (2017 年 ) 要がある そこで本稿では 同判決の判旨の射程を検討したうえで その課題を検討したい 2. 事案の概要 控訴人 原告 X1 ~ X9 は もっとも早い者は平成 16 年から 民営化前の旧日本郵政公社 ( 平成 15 年設立 ) の非常勤職員として任用 (

Ⅰ 第 2 章無期転換申込権の行使の効果 75 働協約や就業規則に違反しない限り 当該合意によって従前の労働条件と異なる労働条件を定めることができます ( 労契 12 労組 16) なお 個別合意によって 無期労働契約の労働条件を定める場合の留意点に関しては Q19 を参照してください 3 別段の定

日税研メールマガジン vol.111 ( 平成 28 年 6 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以

2019-touren1-1

untitled

債務のうち所定の範囲内のものを当該事業主に代わって政府が弁済する旨規定する (2) 賃確法 7 条における上記 政令で定める事由 ( 立替払の事由 ) として 賃金の支払の確保等に関する法律施行令 ( 昭和 51 年政令第 169 号 以下 賃確令 という )2 条 1 項 4 号及び賃金の支払の確

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

(1) 第 1 無期転換ルールとは? 無期転換ルールの目的 Q 1 平成 25 年 4 月 1 日に施行された 無期転換ルール とは どういうもの ですか? A 1 無期転換ルール とは 有期労働契約が反復更新されて5 年を超える場合には 当該契約の初日から末日までの間に労働者が使用者に期間の定めの

審議するものとする 2 前項の審議は 当該任期付職員の在任中の勤務態度 業績等の評価及び無期労働契約に転換した場合に当該任期付職員に係る退職日までの人件費の当該部局における措置方法について行うものとする 3 教授会等は 第 1 項の審議に当たり 必要に応じて 確認書類の要求 対象者への面接等の措置を

 

< B83678E DD96E28D8096DA2E786C7378>

Transcription:

最近の主要労働判例 命令 (2018 年 8 月号 ) 2018 年 8 月 3 日 経団連労働法制本部 労働契約法 20 条 1. 労働判例から ハマキョウレックス事件最高裁 ( 平成 30 年 6 月 1 日判決 ) 速報 2346 号無事故手当 作業手当 給食手当 通勤手当 皆勤手当の支給の相違が労働契約法 20 条違反とされた例 有期の契約社員である一審原告が 正社員との賃金等に相違があり 労働契約法 20 条に違反する等と主張して 主位的に 無期契約労働者 ( 正社員 ) と同一の権利を有する地位にあることの確認 一審被告との労働契約に基づき 無期契約労働者が通常受給すべき賃金との差額の支払い 予備的に 一審被告の上記違反行為は 一審原告に対して不法行為を構成するとして 上記差額分と同様の損害賠償を求めた事案 労働条件の相違が労働契約法 20 条に違反する場合であっても 同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない また 本件正社員就業規則または本件正社員給与規定の定めが契約社員である一審原告に適用されることとなると解することは就業規則の合理的な解釈としても困難である 以上によれば 賃金等に係る相違が労働契約法 20 条に違反するとしても 本件賃金等に係る労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるものではない 労働基準法 20 条にいう 期間の定めがあることにより とは 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいう また 同条にいう 不合理と認められるもの とは 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいう そして 不合理であることの評価根拠事実については当該相違が同条に違反すると主張する者が 評価障害事実について当該相違が同条に違反することを争う者が それぞれ主張立証責任を負う 本件における有期契約労働者と無期契約労働者との住宅手当の支給の相違は不合理であると評価することはできず 労働契約法 20 条に違反しない 他方 有期契約労働者と無期契約労働者との皆勤手当の支給の相違は不合理であると評価することができ 労働契約法 20 条に違反する また 有期契約労働者と無期契約労働者との無事故手当 作業手当 給食手当 通勤手当の支給の相違は不合理であると評価することができ 労働契約法 20 条に 1

違反する 労働契約法 20 条 長澤運輸事件最高裁 ( 平成 30 年 6 月 1 日判決 ) 速報 2346 号定年後再雇用の嘱託者につき精勤手当 超勤手当を除く賃金項目は労働契約法 20 条に違反しないとされた例 定年後 1 年契約の嘱託社員として再雇用されたトラック乗務員の一審原告らが 定年前と同一業務であり 正社員との賃金格差は労働契約法 20 条に違反すると主張して 一審被告に対し 主位的に 正社員の就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに 正社員の就業規則等の規定に基づき支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額等の支払いを求め 予備的に 一審被告の上記違反行為について 不法行為に基づき 差額相当額の損害賠償等の支払いを求めた事案 労働者の賃金に関する労働条件は 使用者は 雇用及び人事に関する経営判断の観点から 労働者の職務内容及び変更範囲にとどまらない様々な事情を考慮して 労働者の賃金に関する労働条件を検討するものということができる 労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断する際に考慮されることとなる事情は 労働者の職務内容及び変更範囲並びにこれらに関連する事情に限定されるものではない この点 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは 労働契約法 20 条にいう その他の事情 として考慮されると解するのが相当である そして 労働契約法 20 条の不合理性の判断するに当たっては 賃金の総額を比較することのみによるのではなく 当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である 正社員との精勤手当及び超勤手当 ( 時間外手当 ) を除く 本件賃金各項目に係る労働条件の相違については 労働契約法 20 条にいう不合理と認められるものに当たるということはできない これに対し 正社員との精勤手当及び超勤手当 ( 時間外手当 ) に係る労働条件の相違は 労働契約法 20 条にいう不合理と認められるものに当たる 労働条件の相違が同条に違反する場合であっても 同条の効力により 当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない もっとも 一審被告が 本件組合との団体交渉において 嘱託乗務員の労働条件の改善を求められていたという経緯に鑑みても 一審被告が 嘱託乗務員に精勤手当を支給しない 及び精勤手当を計算の基礎に含めて計算した時間外手当を支給しないという違法な取扱いをしたことについては 過失があったというべきである したがって 上記取扱いにより一審原告が被った損害について 不法行為に基づく損害賠償責任を負う 2

定年後再雇用 九州惣菜事件福岡高裁 ( 平成 29 年 9 月 7 日判決 ) 速報 2347 号大幅な賃金引下げを伴う定年後再雇用の提案が不法行為を構成するとされた例 被控訴人に雇用され定年に達した控訴人が 被控訴人に対し 主位的に 定年前の8 割の賃金を支払う労働条件で黙示の労働契約が成立したとして 当該契約に係る地位確認及び賃金の支払いを求め 予備的に 定年後再雇用の提案 ( 以下 本件提案 ) において賃金が著しく低廉で不合理な条件提示を行わなかったことが不法行為を構成するとして 逸失利益 1663 万円余及び慰謝料 500 万円を求めた事案 定年後の労働契約については 合意が成立しているとは評価できず 控訴人の主位的請求は認められない 予備的請求について 高年齢者雇用安定法の趣旨に反する行為 ( 再雇用について 労働者である高年齢者の希望 期待に著しく反し 到底受け入れ難いような労働条件を提示する行為 ) は 継続雇用制度の導入の趣旨に違反した違法性を有するものであり 当該高年齢者が有する 65 歳までの安定的雇用を享受できるという法的利益を侵害する不法行為を構成する そして 例外的に 定年退職前のものとの継続性 連続性に欠ける ( あるいはそれが乏しい ) 労働条件の提示が継続雇用制度の下で許容されるためには 同提示を正当化する合理的な理由が存することが必要である 本件提案による賃金は 月給ベースで定年前の賃金の約 25% にとどまり 定年退職前の労働条件との継続性 連続性を一定程度確保するものとは到底認め難い上 賃金の大幅減を正当化する合理的理由も見出せない よって 本件提案は継続雇用制度の趣旨に反する違法性があるといわざるを得ず 不法行為を構成する そして 本件の事情からすれば 慰謝料額 100 万円と評価するのが相当である ( 本判決は最高裁で上告棄却 申立不受理により確定 ) 雇止め 高知県公立大学法人事件高知地裁 ( 平成 30 年 3 月 6 日判決 ) 速報 2348 号 3 年の更新上限の規定に基づく雇止めが有効とされた例 公立大学法人である被告との間で平成 25 年 4 月に 1 年間の雇用契約 (3 年の更新上限付 ) を締結し経理事務に従事していた原告が 平成 28 年 4 月以降は契約が更新されなかったこと ( 以下 本件雇止め ) について 公募による再雇用の選考手続を実施しなかったことは労働契約法 18 条 ( 無期転換 ) を潜脱する目的を有するものである等として 本件雇止めの無効を主張し 雇用契約上の地位の確認等を求めた事案 3

本件の有期雇用契約は 外形上明確な更新手続が都度取られていたこと等から 労働契約法 19 条 1 号 ( 実質無期 ) に該当しない また 同法 19 条 2 号 ( 雇用継続の合理的期待 ) の該当性についても 更新上限の明確な規定の存在することに加えて 一部の例外を除き上限を超える更新事例はないこと 公募を経ての再雇用は更新とは明らかに性質が異なる手続であること 原告の契約の更新回数が 2 回 通算雇用期間が 3 年にとどまること 原告の業務は定型的なものであり代替性が高いこと 原告に準職員への登用機会が確保されていたことからすれば 更新の合理的期待があったと認めるのは困難であり 同号にも該当しない また 被告においては設立後早い段階から非正規雇用から正規雇用を中心とした職員構成へ転換を行っており その施策は契約職員にとっても準職員として採用される途を開いていると評価し得る面もあるから その結果として契約職員数の減少に至ることもやむを得ない 平成 28 年度に公募をしなかった被告の判断が直ちに労働契約法 18 条に反し あるいは潜脱するものであったとはいい難く かかる原告の主張は採用できない 2. 労働委員会命令から 都労委 国際自動車事件 ( 平成 28 年不第 17 号事件 ) 平成 30 年 7 月 23 日 1 組合員らについて 本件訴訟の提起を理由に本件再雇用拒否をしたこと 2 旧賃金規則の改定に関して 多数組合と比して取扱いが異なること 3 旧賃金規則改定を議題とする団体交渉において 不利益の程度等を把握するための賃金計算用のシートを 27 年 7 月 7 日まで交付せず 本件多数組合との合意内容を押し付ける対応に終始したこと 4 未払賃金を議題とする団体交渉において 具体的な回答や紛争解決手段を提示しなかったことの各事実が認められるか 認められるとして不当労働行為に該当するか否かが争われた事案 ( 判断の要旨 ) 1 会社の社長が本件訴訟を提起したことにより本件再雇用拒否をした旨の発言をする等していること等から 他にこれを覆す特段の事情がない限り 会社は 本件訴訟を提起したことを理由に本件再雇用拒否をしたと認めるのが相当であり 組合員ら9 名について本件再雇用拒否をしたことは 組合活動を理由とした不利益取扱い及び支配介入に当たる 2 会社は 多数組合に本件賃金規則を提案しつつ 組合に対しては 何ら提案をせず本件賃金規則に改定し 同規則の内容及び施行日のみを通知している このような会社の対応は 労働組合間の取扱いの中立性を欠き 支配介入に当たる 3 会社が比較的短時間で賃金計算用のシートを交付していること 組合は 団体交渉で賃金計算用のシートを基にした要求を行っていないことなどを踏まえると この点に関する会社の対応は 不誠実であったとまでいうことはできない また 会社が提案している労働協約の締結には応じられないという組合の 4

立場を踏まえると まずは 組合側から具体的な問題点の指摘等を行うべきであり 会社から協定書の締結に向けて積極的に説明や説得を行わなかったからといって 会社の対応が不誠実であるということはできない 会社は 組合に対して賃金計算用のシートを交付しているので 組合の提案に対し 減額箇所を明示するよう求めたことも不誠実ということはできない 4 別件訴訟が確定していない段階で 訴訟の結論が出てから協議したいという会社の回答には合理性があり 会社の対応が不誠実であるということはできない 3. 実務に役立つ労働法の知識 ハマキョウレックス事件 長澤運輸事件最高裁判決について ( 労働経済判例速報 2346 号平越格弁護士論説から抜粋 下線等は事務局による ) 特定の賃金項目の相違の不合理性を否定できない場合 是正方法としては 労使協議を経て 当該賃金項目を無くす ( 相当額を基本給など他の賃金項目に組み入れる ) ことも一つの方法であろう 賃金項目を個別に設けるからこそ不合理性が顕在化するのであり 基本給に組入れてしまえば 賃金総額の不合理性審査に集約されるはずである 最後に 働き方改革関連法案では パートタイム労働法 9 条の改正として 通常の労働者と職務内容及び変更範囲が同一の有期雇用労働者について 差別的取り扱いを禁ずる規定が設けられている これが 長澤運輸事件判決を受けて 定年後再雇用者についてどうなるかは留意が必要である 以上 5