整形外科手外科疾患診療の紹介 整形外科は胸腹部 頭部以外の全身の骨軟部組織を診療の対象としています 当センターの整形外科には脊椎 手 股関節 膝関節疾患の専門家が勤務し それぞれ専門的治療を行っています 今回はその中で 手外科診療に関する紹介をします 過去 3 年間の手外科手術の件数は 61 件 72 件 67 件となっています 手根管症候群の手術が最も多く その他の絞扼性神経障害 骨折 関節疾患などの手術を行っています 代表的な疾患 症例を紹介します 手根管症候群圧倒的に女性に多い疾患です 症状 : 主な症状は手指のしびれです 母指 ( 親指 ) 示指 ( 人差し指 ) 中指と環指 ( 薬指 ) の親指側がしびれます 進行例では母指球筋の委縮が見られ つまみ動作が不自由になります 診断 : 診察 X 線検査と神経伝導速度検査を行います 頸椎症などの他の疾患の除外が必要であり 詳細な病歴聴取と丁寧な診察が重要です 神経伝導速度検査は必須の検査で 神経内科の東原先生にお願いしています 東原先生は電気生理学的検査のスペシャリストです 1
整形外科手外科疾患診療の紹介 治療は軽症では手根管ブロック 装具治療 重症では手術を行います 手術には手根管開放術と母指対立再建術があります ほとんどの場合 神経の圧迫を取り除く 手根管開放術を行います 母指球筋の委縮があり つまみ動作が不自由な場合は母指対立再建術を同時に行います 手根管開放術 : 日帰りではなく 原則として 1 泊 2 日の入院で行っています 麻酔は上肢のみの伝達麻酔または局所麻酔で 手術時間は正味 20 分程度です 退院後週一回受診していただき 2 週で抜糸します 手術後は手指を動かすことは構いませんし 濡れない様にすれば シャワーや入浴も可能です 年間 20 ~ 30 件の手術を行っています 症状は直後から改善する場合と回復に時間がかかる場合があります 母指対立再建術 : 母指の対立障害が重度の場合は手首を屈曲する 3 本の腱の内 1 本 ( 長掌筋 ) を母指へ移行する母指対立再建術を行います 麻酔は上肢の伝達麻酔 + 全身麻酔で行います 手術は約 1 時間で 入院は 1 週間程度です 術後 3 週間程度外固定を行います 母指対立再建術の術前 55 歳男性 母指対立再建術後 1 年 腫瘍による神経麻痺 70 歳女性手指の伸展が徐々に不能となり 受診された患者さんです 肘部分に腫瘤があり 神経の圧迫を生じていました 神経を損傷しないように 丁寧に剥離し 腫瘤を摘出します 手術後は徐々に麻痺が回復しました 術前 : 手指の伸展障害 術中所見 : 肘部分で神経を剥離し 腫瘤を露出したところ 術後 1 年 手指の伸展回復 デュプイトレン硬縮男性に多い疾患です 手掌に原因不明の固い索状物が出現します 手指の伸展制限が進行し 洗顔の際に 指が目や鼻に当たって困ったという経験をされている患者さんが多くいます 当科では異常な索状物を切除し 皮弁形成を追加するという手術を行っています 上肢の伝達麻酔 + 全身麻酔で行います 1 時間程度で終了します 術後のリハビリテーションが重要です 2
整形外科手外科疾患診療の紹介 右環指 小指のデュプイトレン硬縮により伸展が制限 80 歳男性 術後手指の伸展改善 手の腫瘍 手に発生した腫瘍を切除する際は 末梢神経や血管の走行に注意しながら 手術を行います 正常な神経を損傷しないように 神経を刺激しつつ 拡大鏡を使用して丁寧に腫瘍を剥離 摘出します 右手脂肪腫 77 歳女性 脂肪腫を剥離 腫瘤を摘出した所 テープかかかっているのが指神経 腱断裂と手根管症候群の合併例 90 歳女性橈骨遠位端骨折後の変形治癒があり 10 年以上経過して屈筋腱断裂と手根管症候群を生じた例 術前 右小指屈曲不能 手根管を開放 断裂した屈筋腱に対して 腱移植を行ったところ 術後 1 年 ( しびれ消失 小指の屈曲回復 ) 最後に患者さんが高齢者であっても 丁寧な診察 正確な診断 適切な治療を行うことによって 良い結果が得られるように心がけています 手外科疾患の診療は 手外科専門医である時村が中心となって行っています 毎週 火曜午後に時村の初診予約枠がありますので 紹介状持参でご利用ください 3
感染症と感染予防の話 感染管理認定看護師 出崎 奈美 私たちの周りには 感染症を起こす様々な菌やウイルスが存在しています 誰でも感染症 にはかかりたくないもので 感染症の知識と 自分を守る正しい方法を知っておくことは重 要です しかし それだけでは感染症の予防が十分とは言えません 相手を守る方法も知っ ておいていただきたいのです 感染症に 感染しない 感染させない ために 日常的に必要な予防対策をお話しします 冬になるとよく聞くノロウイルス感染 ノロウイルスは 下痢やおう吐症状を引き起こす 非常に感染力の強いウイルスです 感染している糞便 1g に 100 万個から 10 億個のウイ ルスがいるとも言われます 問題 1 答え 1 体に どのくらいの量のウイルスが入ると ノロウイルス感染するでしょう 1 円玉は約 1g この大きさの便やおう吐物の中に 100 万個のウイルスがいます なんと たったの 10 個です ノロウイルスの特徴 ノロウイルスはアルコールが効きにくい ふ け ん せ い ノロウイルスは 感染しても症状が出ない不顕性感染が全体の約 30 いる ( 下痢もおう吐もしていないのに 便からはノロウイルスを排出する ) 問題 インフルエンザに感染したヒトは 水でサッと手を濡らしただけの手洗いでは ノロウイルスを落とせない 2 どの時期からウイルスを排出するでしょう ノロウイルスは人の体を離れても環境中でしばらく生きていられる 答え インフルエンザ症状が出る約 1 日前です 1 2m こうなると どこにノロウイルスがついているかわかりませんね また ノロウイルスは 2 1 年を通して感染を起こしています 知らないうちに 自分が感染している可能性もある 飛沫の飛び散る距離 わけです 石鹸と流水でしっかり手洗い ノロウイルスは ウイルスを含んだ便やおう吐物中だけでなく それらを触った環境から 人の手を介してうつ り ま す 約 3 割 の 人 が不顕性感染を起こ す の で あ れ ば 知 ら な い う ち に 目 に 見 えないウイルスをも ら っ て し ま う 又 は 自分から人にうつし てしまうことがある の で す 洗 い 残 し の 無 い よ う に 隅 々 ま で石鹸と流水でしっ かり手洗いをしま しょう 4
では インフルエンザはどうでしょうか インフルエンザウイルスは インフルエンザに感染している人のくしゃみや咳などの飛沫を浴びて感染します また インフルエンザウイルスは その飛沫が付 いた環境や 飛沫を押さえた手で触った環境中でしばらく生きています 38 度を超える急な発熱で発症し 頭痛 腰痛 筋肉痛などの全身症状が出る 高齢者は 特有の症状が出ず 微熱程度の軽い症状の場合もあるが重症化しやすい インフルエンザウイルスも 人の体を離れても環境中で 1 ~ 2 日生きていられる くしゃみなどの飛沫は 2m 前後飛び散る インフルエンザも 1 年を通して発症しています 症状の出る 1 日前からウイルスを排出するため 流行する冬場は 人のたくさんいる所では いつ誰から感染するかわかりません インフルエンザは 咳やくしゃみなどの呼吸器症状があります 止めたくても出てしまう咳やくしゃみ 1 日前からインフルエンザウイルスを排出するということであれば なおさら 飛沫を飛ばしたくないですし ヒトの飛沫も浴びたくないですね このほかにはどのような感染予防対策があるでしょうか インフルエンザだけでなく 肺炎球菌など 予防できるものはしっかり予防しましょう ワクチンは完全に予防できなくても 感染した時の症状を軽くしてくれます デング熱やエボラウイルス感染など これまで国内であまり知られていない感染症もあります ご自身の持つ情報 ( たとえば渡航歴など ) をしっかり伝えましょう どのような感染症の疑いがあるのかを考えるのに 情報は多いほうが良いのです 自分を守り 周りの人も守りましょう 皆様の健康をお祈りしています 5