整膚により複視が改善された症例 2009 年 12 月 7 日 池之谷裕治
はじめに整膚を施術した中で大変興味深い症例があったので その症例を示すと共に 整膚の施術あり方 自分自身で行う整膚の効果 を考えてみたいと思います 症例についてこれは整膚によって複視が改善され安心して運転できるようになり 再びすばらしい景色を遠近感と立体感で味わうことに感激と感動を覚えた 整膚の理想とする自己整膚 癒しの症例です 施術記録第一回 09.7.16 施術時間 45 分 O 氏は左足を捻挫し正座ができないため来院された 第一回の施術は気相整膚で左足首周りを重点的に行い その後全身整膚を行った 整膚後捻挫によるはれは尐し良くなった 捻挫による腫れの部位 足を見せてもらったところ 左足の甲の部分から足の陽明胃經に沿って豊隆まで無数の灸の痕があり 一部に水ぶくれがあった 灸をした範囲 1
理由を伺ったところ 鍼灸の先生に捻挫の部分に灸をすえると痛みが和らぐ効果がある旨の話があり自分で灸をした 灸をすえるとその時は痛みが消え 大変気持ちが良くなるので続けて灸をした そのため 熱がある所に灸をすえたので熱が取れず症状が改善されないので すぐに灸をやめるようにお願いした 施術後 壁に掛けてある横長の額を片目ずつ塞いで不思議そうに見ていた 尋ねると 医者から複視と云われた との事であった 1, ベッドへ自然に上向きに寝た時の姿について 1 顔の左右の形が尐し違う 2 右肩が尐し高い 2, 今後の施術の方針 1 足首の捻挫について気相整膚で左足首周りを重点的に行い 腫れを早く直し正座ができるようにする 2 複視について複視とはどのようなものか詳細に調べること斜視についても同様に調べる 顔全体 首 肩 頭を気相整膚に重点を置き施術する 3 複視を改善するため自分で整膚をする様に勧める O 氏の話によると 十余年前に顔面神経麻痺に突然かかった 顔の右半分の動きが全く停止した 右側の顔のシワがなくなりベロッとのびてしまった感じ ( 筋無力症 ) で 目蓋が開かないので手でひろげ 閉じるときも手で閉じる状態であった 2
治療 回復に意外に時間がかかった 一ヶ月後位に右目の下がビクッと動き始めたのをきっかけに徐々に回復し やがて完治した この病気は通常何らかの後遺症が残るものと聞き及んでいたが それがなかったことを大いに喜んだ ところが3 年ほど前から視覚に異常を感じるようになり 眼科に通ったが複視と診断され 治療法は無いとのことであった 原因に思い当たるものはないが加齢に伴う筋肉疲労から以前の顔面神経麻痺の後遺症が 今になって顕在化してきたのではと思っている O 氏の話を図および写真で示す 浴室の壁の模様 複視の角度は約 20 度 左目の映像 右目の映像 施術室の壁の額 3
ここで複視と斜視について説明します 複視( ものが二つに見える ) とは? 両眼で物体を見たとき二重に見えること 左右の眼の網膜に映る像の位置が網膜の対応点にできないために起き 一つしかないものが二つに見える症状を複視といいます 網膜の各部位はそれぞれ位置が決まっており 網膜上に映った像は大脳で融像され 一致すれば一つに見え 一致しない場合は二つに見えます 複視には両眼複視と片眼複視の二通りがあり 片目で見ると一つに見えるのに両目で見ると二つに見えるのが両眼複視で 片目で見ても二つに見えるのが片眼複視です ( 両眼複視 ) 目を動かす筋肉が麻痺する眼筋麻痺が主な起因 眼筋麻痺を起こすと 眼球の動きが悪くなり 斜視の状態になります 生まれつき あるいは幼児期に斜視になっている場合はその状態に慣れているので複視は起こりませんが それまで正常だった人が急に斜視になると 複視が起こり視機能に混乱が生じます 眼筋麻痺は外傷 腫瘍 炎症などの目の病気のほかに脳や神経 全身の病気でも起こります ( 片眼複視 ) 水晶体が正常の位置からずれている水晶体脱臼や虹彩が切れている虹彩離断があると片目で複視が起こります どちらも外傷が原因であることがほとんどです それ以外に 乱視 白内障でも複視を起こすことがあります ( 斜視 ) 両眼の視線が正しく目標に向かわないことをいいます 外見上は片方の目が正しい方向を向いているのに 他の目が内側や外側 あるいは上下を向いていることを云います 普通物を視るとき 両眼の筋肉を微妙に調節して視たいところに焦点を合わせるように眼球を動かしますが眼筋の神経支配の異常 眼筋そのものの異常などにより斜視が起きます 先天性斜視など網膜像の対応点からのずれが持続的な状態では対応点のずれを補償するように 網膜と大脳との対応関係が変化し複視は起こりません 両眼視差( 物体の遠近感の認識 ) 物体を見るとき 右目と左目で物体への視線の方向が異なります この視線の方向の角度差が視差となり遠近感の指標になります 近い物体の視差は大であるので視差の大きいものを近いと判断します 単眼でも視差はあるが両眼で見る場合はこの要素がさらに複雑となるので遠近感は完全になります 4
施術記録第二回 09.7.23 施術時間 35 分 1 顔全体 首 肩 頭を気相整膚に重点を置き施術 首の後ろが硬く 痛い部分もあるので肩胛骨の周り 胸を整膚 腹も全体が硬いので 臍の周りを中心に腹全体を整膚 この部分が硬い 右肩が上がっている この部分が痛い 2 左足の捻挫は気相整膚で左足首周りを重点的に行った結果 腫れはだいぶ引いてきた 腫れの部分が小さくなってきた 5
施術記録第三回 09.7.30 施術時間 40 分 1 前回と同様に首筋にまだしこりがあるので首 肩 頭を気相整膚に重点を置き施術 首の後ろが硬く 痛い部分もあるので肩胛骨の周り 胸を整膚 腹も全体が硬いので 臍の周りを中心に腹全体を整膚 この部分に腫れがある 捻挫の腫れはだいぶ引いてきたが左足の両側に腫れが出てきた これについては腫れの周囲から気相整膚で施術を行った 腫れはだいぶ引いたが尐し残っている O 氏談複視はだいぶ良くなり楽になった 毎日自分で顔全体 と手の届くところに整膚をしている 特に右目の廻りの整膚は複視の回復に有効であることを実感している ( マッサージの人に左足の捻挫を早く治さないと背骨が曲がり 腰が痛くなると云われた ) ( このマッサージの方の意見は左足の捻挫をかばうため 右足に負担がかかりそのため身体の筋肉のバランスが崩れて起こると考えられます 著者見解 ) 6
施術記録第四回 09.8.03 施術時間 35 分足の腫れはだいぶ引いた ほとんどわからない O 氏談複視も尐しずつ良くなっている 全身整膚をしてもらうと大変気持ちが良い こんなに気持ちの良い施術をしてもらって良いものかと考える 施術記録第五回 09.8.20 施術時間 35 分足の腫れは一部 ( 小さな部分 ) を残して引いた 全身整膚 施術記録第六回 09.9.10 施術時間 35 分足の腫れは無くなった 全身整膚 ベッドで気持ち良さそうに居眠りをされた 施術記録第七回 09.9.17 施術時間 35 分左足の甲の部位に二カ所凸部があるが痛みは無いこれは捻挫の腫れではなく別の物である 気相整膚でほとんど無くなった 首にこりがあると愁訴され 肩胛骨から肩部 胸部を整膚してほとんど解消した 複視は気にならないほどに解消し 車の運転ができるようになった 施術記録第八回 09.10.29 施術時間 45 分第七回と第八回は約一ヶ月の間隔があるが この間 O 氏は自分で顔 胸の整膚を行い複視はほとんど無くなり車を運転しても支障が無く 秋の景色が大変美しいと話していた 今回で一応終了になった 7
終わりにこの症例は全 7 回で終了し八回目は確認のために来院された 期間は7 月 16 日から9 月 17 日までの二ヶ月間で7 回整膚を施術した 間隔は8.5 日である 特に複視の回復に自己整膚が驚くほど良い結果をもたらした 徐堅先生が言われる様に自己整膚を実践した結果 医者から治らないと宣言された複視が回復し O 氏は車を運転して 忙しく自分の人生を楽しんでおられます 複視がなぜ回復したかはわかりません! 回復では無く元に戻ったのではないか? 生物の持っている自己再生の手助けを整膚が行っただけなのかもしれない 治るべきものが治っただけのものと思います 東洋医学に 未病を治す という言葉がありますが これが本当の 未病を治す であると思います 私は光学技術を専門とする技術者でしたので 人の肌に直接触れることはありませんでした 整膚を勉強してから人の肌に直接触れ 肌の暖かさ 冷たさ 湿度 臭い 光沢によってその人の症状又 人生をその肌で感じ取れる事がわかってきました 整膚を施術していると いろいろな職業の方が来られその職業によって身体のつくりも変わってしまう事もわかりました その人その人の整膚があり 施術方法も有り 整膚の奥深さを尐しかいま見ることができました 謝辞この文を書くにあたり 協力と承諾をしていただいた0 氏に感謝申し上げます 整膚学園総裁徐堅先生の博士コース講義の的確な指導に感謝申し上げます 適宜なアドバイスいただいた池之谷敏江氏に感謝いたします 参考文献徐堅著 整膚学 丸善株式会社 蔡晶著 整膚美容法 整膚学園 粟島行春著 未病 角田睦子譯注 薬徴 吉益東洞原書 三煌社 医科学大事典 41 巻 49 巻 最新医学大事典 南山堂 光学技術ハンドブック 朝倉書店 理科年表 丸善株式会社 8