堆肥づくりマニュアル ( 落葉と脱水汚泥を混合した ) 公園の維持管理事業から生じる落ち葉と 衛生センターから生じる脱水汚泥を混合した堆肥化の調査研究は 平成 18 年度から行ってまいりました これまでは 主に 堆肥を使用した土壌と 何もしなかった土壌での野菜や植物の成長比較や 花の色の変化などの調査研究です 結果は 成長過程に大きな変化があり 堆肥の果たす効果が大きいことが分かります 今後は 公益財団法人への移行に併せ これまでの調査研究から一歩足を進め 樹木等の植栽や ボランティア団体が行う緑化活動等に活用するため 堆肥づくりの事業化を図ってまいります このことから 平成 23 年度は 集めた落葉が堆肥になるまでの過程を記録し 堆肥づくりマニュアルとしてまとめました 23 年度落葉と脱水汚泥の混合堆肥化工程 平成 23 年 11 月 28 日落ち葉回収堆肥作りに適した落葉を 八千代市内の公園から集めます また 公園によっては アダプト制度に基づくボランティアの方によるボランティア袋に詰められた落ち葉を回収して廻ります 堆肥に向く落葉 ( ブナ コナラ クヌギ等 ) 粉砕処理こうして集めた落葉を 一度 堆肥化に向けて発酵分解しやすい様に 粉砕機にかけて加工します
脱水汚泥 ( 脱水ケーキ ) 脱水汚泥は 八千代市内から回収された糞尿を 八千代市衛生センターで焼却処分される前の 科学的中間処理された固形物を脱水処理加工したものを言います 脱水率は 80% で 生物処理と薬剤処理の為に黒く臭いも余りしません また 左のホッパーから取り出します 脱水汚泥と粉砕落葉の混合堆肥作り手順 混合堆肥作りを行う作業場の木枠木枠の大きさ縦横 1.8m 1.8m 高さ 0.6m の木枠を 2 基準備します 23 年度は 粉砕落葉の方が脱水汚泥より密度が低い為 粉砕落葉の量を変えて比較してみました 青い木枠は 脱水汚泥と粉砕落葉を 1 対 1 赤い木枠は 脱水汚泥と粉砕落葉を 1 対 2 この割合で 発酵分解の進み具合を比較しす この木枠に 粉砕落ち葉と脱水汚泥を積み重ねて堆肥を作ります 発酵促進剤堆肥の発酵を促進させる為に 発酵促進剤を投入します 発酵促進剤は 米糠とコーランを水で練り合わせ ゆるい粘土状のものとしてつくります なお コーランは市販されており 発酵分解作用を促進し 作成効果を高める作用があります
落葉と汚泥の混合手順 発酵促進剤 粉砕落葉脱水汚泥 落ち葉と汚泥の混合手順堆肥づくりにあっては 粉砕落葉と脱水汚泥を交互に積み重ね 加えて 踏み込んで圧縮をかけるようにします そこに発酵促進剤を混ぜ込んでいきます 尚 脱水汚泥は圧縮され 密度の濃いスポンジケーキのようになっているので ほぐしながら混ぜ合わせるようにします
混合の実施青い木枠と赤い木枠に 左の写真の様に粉砕落葉と脱水汚泥を混合していきます 粉砕落葉を敷き詰め その上に脱水汚泥を敷き詰めているところですが 脱水汚泥の密度が濃く確実に粉砕落葉と混ぜ合わせるようにします 脱水汚泥は 水の浸透が余り良くないので水を散布しながら混合すると良いでしょう 散水の実施粉砕落葉と脱水汚泥を何層かに敷き詰め 混合した後は ある程度水分を補給します 混合堆肥を発酵させるには ある程度の水が必要で酸素の調節をする役目も有ります
混合堆肥の発酵脱水汚泥と粉砕落葉の混合に発酵促進剤を投入した後 3 日ほどたったあたりから 温度が上がり始めます 温度は 2 週間程度 40 度以上を保ち続けます 左上の写真は 脱水汚泥:1 粉砕落葉 :2 の混合 左下の写真は 脱水汚泥:1 粉砕落葉 :1 の場合脱水汚泥自身はほとんど発酵しませんが 水と粉砕落葉と混ぜ合わされたことで 粉砕落葉の発酵の一助となっています 上の写真は 40 度 下の写真は 30 度というように 脱水汚泥より落ち葉が多い方がより発酵温度が高く発酵も進みます 放射菌発酵分解が進み 堆肥としての腐葉化になるためには 温度が下がった後の微生物の力が必要となります そこで 放射菌と言いう菌は 落葉などの有機物を分解する役割を果たす菌で 大量に発生させる為には 放射菌が好む酸素が必要です 左上の写真脱水汚泥 :1 粉砕落葉 2 左下の写真脱水汚泥 :1 粉砕落葉 1 上の写真の方が放射菌が多く分解が進み 堆肥化が進んでいるようですが 下の写真は放射菌も少なく堆肥化が遅れているのが分かります この結果から汚泥より落葉の方が多く混合すると良いことが分かります
切り返し作業より良い堆肥を作るには 粉砕落葉の全部に発酵が進み 腐葉化が進まなければなりません それには 切り返し作業をする必要があります また 切り返しを行うにはタイミングが重要です 1) 発酵温度が下がり これ以上温度が上がらない様な時に初めて切り返しを行います 2) 放射菌が余り発生しないのは 混合堆肥内の酸素不足が原因で 放射菌が繁殖出来ない状態だからです そのため 酸素を補う必要から切り返しを行います 3) 1 度目の切り返しの後は 月に 2 回程度に切り返しを行い 適度の水で湿らせるとよいです 切り返し時の発酵促進剤の投入切り返しにおける発効促進剤は 初めての切り返しの時に行います 尚 2 回目以降の切り返し時の投入は その必要性はあまりありません これは さらに発酵を促す為に投入するものだからです 以上の作業等を繰り返すことにより 堆肥として使用できるまでには 概ね 6 ヶ月程度の期間が必要となってまいります
60 50 40 30 20 10 0 混合堆肥の温度監査記録 12 月 5 日 6 日 7 日 8 日 9 日 12 日 14 日 15 日 16 日 19 日 21 日 26 日 27 日 1 月 4 日 5 日 6 日 10 日 11 日 12 日 13 日 19 日 25 日 26 日 27 日 31 日 青い木枠 赤い木枠 青の木枠赤の木枠 備 考 12 月 5 日 34 度 30 度 堆肥作り開始から 3 日目位で温度上昇 6 日 40 36 7 日 46 44 8 日 45 49 9 日 42 47 12 日 36 35 赤の木枠に放射菌確認 14 日 35 40 15 日 32 40 16 日 30 37 発酵温度のピークが過ぎ温度低下が始まる 19 日 22 28 21 日 32 22 26 日 18 28 27 日 20 30 1 月 4 日 13 17 温度低下の為切り返しの時期が近づく 5 日 20 23 6 日 17 20 10 日 18 18 青の木枠に放射菌確認 11 日 15 18 12 日 16 18 13 日 14 12 17 日 切り返しと 2 回目の発酵促進剤投入 19 日 12 12 25 日 12 20 青 赤の木枠に放射菌一面に確認
26 日 11 21 発酵促進剤投入後温度上昇せず 27 日 12 15 31 日 11 14 放射菌が増え始める 平成 21 年度 ~23 年度植栽試験結果 平成 21 年度混合堆肥植栽試験 材料原型落ち葉 脱水汚泥 発酵促進剤 使用植物虞美人草 堆肥無と堆肥有では 左上写真のように 成長の差が認められる 平成 22 年度混合堆肥植栽試験 材料粉砕落葉 粉砕桜チップ 脱水汚泥使用植物リーフレタス 春菊堆肥無と他の堆肥に比べ汚泥堆肥の方の成長が良かった 平成 23 年度混合堆肥植栽試験 材料 22 年度混合堆肥使用使用植物琉球アサガオ茎と葉は よく育ちましたが花付きが良くありませんでした ( 短日性植物でも ) 混合堆肥の植物試験において 葉もの植物については育ちが良く 花を付ける植物には茎葉は育つが花が咲きづらいと言う結果が出ました これは 窒素 カリウムが多くリン酸については乏しい ということが考えられます
参考 堆肥づくりの必要性長期間 化学肥料のみに頼っていると微生物が減り 病害虫に対する抵抗力が落ちてしまう と言われている また 堆肥を使用すると 元々土の中にいる微生物の数を増やし 病害虫に対する抵抗力をつけるといわれている 堆肥の材料に適した落葉広葉樹の葉 ( ブナ コナラ クヌギ等 ) は 殆どが堆肥の原料として適しており そのままでも腐葉土として活用できる材料であるといわれている 一方 針葉樹の葉 ( マツ スギ等 ) は 余分な水分や樹脂分が多く含まれ 堆肥や腐葉土づくりには不向きであるといわれている 腐葉土と堆肥のちがい腐葉土は 窒素分を多く含むが その他の成分 ( リン酸 カリ ) を含まない 堆肥は 有機物 ( 落葉 米糠 ) を微生物の働きで発酵 分解させたもの 尚 肥料とするには腐葉土よりも堆肥のほうが適するといわれている 資料 汚泥等の堆肥化調査研究事業八千代市が進める行財政改革の一環として 平成 18 年 4 月に 緑と環境に着目して ( 財 ) 八千代花と緑の基金と ( 財 ) 八千代市衛生公社の統合が図られ ( 財 ) 八千代市環境緑化公社となりました この 2 つの財団の統合の中で 汚泥等の肥料化の調査研究事業が新たな事業として位置づけられました これが 緑の保全と地球環境の保護 保全の観点からおこなわれる市の衛生センターから発生する脱水汚泥と 公園等の維持管理事業で発生する落ち葉等を混合した有機肥料の調査研究です 環境に優しい循環型社会の実現といったことからも 肥料化に向けた調査研究の必要性とともに 実用化が求められてくることは必然のことと思います なお これまでの経過については 次の通りです
< 平成 18 年 > 事業実施の前提となる脱水汚泥の植害試験 ( 植物に対する害に関する植害試験 ) を行いました 24 項目の分析結果は いずれも 検出せず ( 定量下限値未満 ) でした また 肥料取締法に定められた 肥料分析法に基づく ヒ素 カドミウム 水銀 ニッケル クロム 鉛の6 物質の分析結果も定められた基準値以下で 肥料としての利用が可能となりました 肥料 3 要素は 窒素 1.05% リン酸 1.10% カリ 0.07% でした 乾燥菌体肥料と比較して 10 分の 7 程度と肥料成分が少ないため 施肥量を増量 ( 窒素ベースで乾燥菌体肥料と同量 ) にした培養土でコマツナを試験栽培した結果 乾燥菌体肥料よりも生育が良好 ( 葉長で 2.4 倍 生体重で 4.2 倍 ) で施肥量が多いほど値が大きくなりました < 平成 19 年度 > 平成 18 年度の試験結果をふまえて 約 1 年間をかけて赤土と脱水汚泥の混合割合を変えたものを堆肥として完熟させました また 完熟堆肥の植害試験を実施したところ 供試植物 4 種類 ( コマツナ ミニトマト アサガオ ヒマワリ ) とも脱水汚泥を 50% 含むものについては生育が良好という結果がでました 尚 50% 以下では変化はみられませんでした 以上の試験結果では 脱水汚泥に有害物質がなく また 施肥量を 50% 以上に増量することで 良質の肥料として利用できることが実証されました < 平成 20 年度 ~21 年度 > 平成 20 年度からは 以下のとおり 19 年度より継続して実施している1の試験に加え2の試験を実施しました ( 但し 発酵を早める為 20 年度より促進剤としてコーランを加えることとしました ) 1 脱水汚泥に落葉を混合した堆肥化の試験 ( 概ね 1 年で完熟する ) 2 脱水汚泥に植物材 ( 説明 1) を混合して堆肥化 ( 説明 2) の試験に着手する ( 完熟には概ね 3 年を要する )
説明 1: 公園環境整備事業等で伐採 剪定した枝葉 刈草等を破砕し細かくチップ化した植物材料をいう 説明 2: 堆積することで微生物の働きにより有機物が発酵分解し 温度上昇により 細菌 病虫卵 有害昆虫卵 ウイルス 雑草種子などの大部分の死滅化は不活化され 植物や人畜に無害なものとする < 平成 22 年度 > 22 年度は 脱水汚泥と落ち葉と新川千本桜の管理業務で発生した桜枝の粉砕チップを加えた 3 種混合したものを基に 米糠とコーランを加え堆肥化試験を実施しました 概ね 4 カ月寝かせた 3 種混合堆肥と市販の牛糞肥料の植栽比較試験をするため 比較対象植物の春菊 リーフレタスをそれぞれの肥料を入れた土で育てたところ 3 種混合肥料の方が 良好な結果が得られました < 平成 23 年度 > 23 年度は 1 脱水汚泥 1: 落葉 1 2 脱水汚泥 1: 落葉 2 の 2 通りの混合材に米糠とコーランを同量加えて試験を実施しました