一例として 樹脂材料についてEN71-3に規定されている溶出試験手順を示す 1 測定試料を 100 mg 以上採取する 2 測定試料をその 50 倍の質量で 温度が (37±2) の 0.07mol/L 塩酸水溶液と混合する 3 混合物には光が当たらないように留意し (37 ±2) で 1 時間 連

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4. 再生資源の利用の促進について 建近技第 385 号 平成 3 年 10 月 25 日 4-1

Transcription:

自転車部品のEN71-3に基づく溶出試験 ( 平成 24 年度環境 安全のための評価分析調査事業 ) ( 財 ) 自転車産業振興協会技術研究所 1. はじめに技術研究所では標記事業の一環として 平成 23 年度に環境負荷物質 有害物質の定性 定量に対応した分析装置を導入し 主にRoHS 指令により規制されている6 物質 (5 元素 ) を対象に 最近の自転車部品への含有状況を把握するための追加分析調査 ( 平成 19 年度実施したモデル分析調査に追加 ) を行うとともに 分析 サンプリング手法等を検討した 1 平成 24 年度は 23 年度に予備的に行ったEN71-3の規定に基づく溶出試験を 3 種類の自転車部品を対象に実施しデータを蓄積したので報告する 2.EN71-3について EN71-3は 11 部構成となっている玩具の安全性に関する欧州規格 (EN71 2 ) の第 3 部で 特定元素の移行というタイトルがつけられている EN71-3では主に6 才以下の幼児が使用することを意図して作られた玩具を対象に なめたり 飲み込んだりする可能性のある材料について規定されている 対象材料は塗料 紙 繊維 ガラス セラミック 金属等多岐にわたっており EN71-3では9 分類に分けられている また 対象の元素はカドミウム<Cd> 鉛 <Pb> 水銀 <Hg> クロム<Cr > アンチモン<Sb> ヒ素 <As> バリウム<Ba> 及びセレン<Se>の重金属 8 元素であり 幼児が飲み込んだ後 材料が一定時間胃酸と接触した条件を模擬し 酸に溶け出した元素濃度を定量する 各元素について 表 1に示したように溶出量 ( 移行 ) の限度値が定められている (9 分類で示されたうち 成形用粘土とフィンガーペイントは別基準 ) 表 1 玩具材料からの元素移行の限度値 ( 単位 :mg/kg) 元素 Cd Pb Hg Cr Sb As Ba Se 限度値 75 (50) 90 (90) 60 (25) 60 (25) 60 (60) 25 (25) 1,000 (250) 500 (500) ( ) 内の数字は成形用粘土とフィンガーペイントの限度値 溶出量 ( 移行 ) は一定の質量以上 ( 対象材料によって異なるが ほとんどが 100mg 以上 ) の材料を塩酸水溶液に浸漬し 一定時間経過後の溶液中に溶け出した元素の定量値を材料の質量で除したものとしている 1

一例として 樹脂材料についてEN71-3に規定されている溶出試験手順を示す 1 測定試料を 100 mg 以上採取する 2 測定試料をその 50 倍の質量で 温度が (37±2) の 0.07mol/L 塩酸水溶液と混合する 3 混合物には光が当たらないように留意し (37 ±2) で 1 時間 連続して振り混ぜた後 (37±2) で 1 時間放置する 4 放置後 遅滞なく 混合物を薄膜フィルタでろ過する ( 必要であれば遠心分離して 溶液から固形物を分離する ) 5 得られた溶液を分析する ( 溶液を分析まで作業日を超えて保存しなければならない場合 その濃度が約 1mol/L になるように 塩酸を加えて安定させる ) なお EN71-3やRoHS 指令をはじめとする各国の有害物質関連規制については前報 1 を参照されたい 1 平成 23 年度環境 安全のための評価分析調査事業報告書 自転車部品に対する追加分析調査 ( 財団法人自転車産業振興協会 ) 2 EN71: 玩具の安全性に関する欧州規格 この規格の大きな目的としてその中に2つ挙げられている その1つが使用する者が明白に認知できないリスクをできるだけ低減すること 2つ目として 大人たちが使用するときは注意を払うことができても 子どもでは気づかない危険の発生を減らすこと この大きな目的を達成するために 様々な角度から玩具の安全性について具体的な検査 試験を規定している 3. 実施内容分析対象とした自転車部品は前年度行った追加分析調査結果を踏まえ サドル ( 分析対象はサドルトップ 樹脂 ) にぎり 樹脂 及びフレーム( 分析対象は塗膜 塗装 ) の3 部品とした まず 溶出試験に供する部品を選定するため 自転車専門店や量販店等で購入したものや 研究所に保管されていた3 種類の部品を あらかじめEN71-3 規制物質について スクリーニング分析 3 を行った ( 分析数はおよそ サドルとにぎりは60 部品 フレームは40 部品 ) なお 溶出試験を行う目安として EN71-3に規定されている元素の溶出限度値を超えて含有しているものとした スクリーニング分析は平成 23 年度に導入したエネルギー分散型蛍光 X 線分析装置 ( 株式会社島津製作所製 <EDX-GP> 以下 EDXと表す- 写真 ) を使用し 前述したように Cd Pb Hg Cr Sb As Ba Se の8 元素を対象に行った なお サドルはトップを分離 にぎりはそのまま フレーム塗膜はカッターナイフにより塗膜を削り取り粉末状にしたものをそれぞれ試料とした 3 スクリーニング分析 : 分析結果にある程度の誤差を認めた上で 合否を大まかに判別する分析法 2

写真エネルギー分散型蛍光 X 線分析装置 ( 左 : 本体右 : システム全体 ) EN71-3で規制されている有害元素の部品への含有状況を調べたスクリーニング分析の結果から 溶出試験対象の部品数はサドル34 にぎり12 フレーム7の合計 53となり これら部品についてEN71-3に規定されている方法に従って溶出試験を行った 4. 分析結果サドルトップ にぎり及びフレーム塗膜について EN71-3で規制されている8 元素を対象に 溶出試験を行う部品を選定するために まず EDXによりスクリーニング分析を行った スクリーニング分析において EN71-3に規定されている限度値を超えた元素はカドミウム 鉛 クロム アンチモン バリウムの5 元素であった 個々の部品で見てみると サドルとにぎりはカドミウム 鉛及びアンチモンが限度値を超えて検出され 一部のサドルについてはクロムとバリウムが検出された また フレームの塗膜はバリウムが限度値を超えて検出されたのみで 他の元素についてはすべて限度値以下であった 以上の部品について溶出試験を行った結果を表 2 表 3に示す ( 表 2 表 3において 試料 がSで始まるのはサドル Nはにぎり Fはフレーム ) 表 2 表 3からわかるように EN71-3に規定されている溶出量の限度値を超えたのは サドル (S-3 3) から検出されたクロム ( 限度値 60mg/kg に対して330mg/kg- 表 2においてセルに網掛け ) のみであり 他の部品についてカドミウム 鉛 アンチモン バリウムは溶出試験の結果 その限度値を超えることはなかった 元素別に見てみると カドミウムとアンチモンの溶出量はスクリーニング値にかかわらず 5mg/kg 未満 4 を示していた 鉛は スクリーニング結果が1,000mg/kg 以下の値であれば 溶出試験はすべて 5mg/kg 未満 4 であったが 1,000mg/kg を超えると溶出量が検出下限以上となり 3

またスクリーニング値が大きくなれば 溶出量も増える傾向を示した しかし 今回の部品はすべて鉛の限度値の90mg/kg を超えることはなかった バリウムについてはスクリーニング結果が10,000mg/kg 以下では50mg/kg 未満 4 であるが 10,000mg/kg 以上となると溶出量が検出下限以上となり F-0 7 以外の部品はすべて400mg/kg 前後の値を示した しかし バリウムの溶出量はすべて1,000mg/kg 以下を示しており鉛同様 限度値以下であった クロムは前述したとおりスクリーニング分析で15,000mg/kg の含有が認められた部品 (S-33) で限度値を超えた330mg/kg の溶出量が確認された この部品はスポーツ車で使用されているもので トップが皮革と思われ 皮を加工する際のなめし工程でクロム酸が使われることが多いことから クロムが多量に検出されたものと考えられる 4 mg/kg 未満 : 検出下限以下 もしくは検出されなかったことを示す 5. まとめ自転車部品 ( サドル34 部品 にぎり12 部品 フレーム7 部品の計 53 部品 ) についてEN71-3の規定に基づいて溶出試験を行った結果 以下のことが分かった あらかじめ溶出試験する部品を選定するためスクリーニング分析した結果 EN71-3に規定されている限度値を超えて含有されていたのはカドミウム 鉛 アンチモン クロム バリウムの5 元素であった 上記 5 元素を含む自転車部品について溶出試験を行ったが サドルトップから検出されたクロムを除く4 元素はEN71-3に規定されている限度値を超えることはなかった サドルトップはその材質として皮革のものがあり 皮をなめす時に使用するクロム酸が高濃度に残留したと思われるが クロムの溶出限度値を超えたものがあった ただし この試料を参考のためにRoHS 指令で規制されている六価クロムについて 溶出試験 ( 沸騰水浸漬 -RoHS 指令に対応する分析法 ) を行ったが 六価クロムは検出されなかった 今回の結果を見る限り 自転車部品について玩具の安全性を規定しているEN71-3の規制物質限度値を超えての溶出は懸念することはないと考えられる しかし 今回の溶出試験する部品を選定するため あらかじめEDXによるスクリーニング分析を行ったが RoHS 指令に規制されている5 元素について その限度値を超えて含有している部品が3 割程度認められた そのため ( 一社 ) 自転車協会安全基準 (BAA) で求められているRoHS 指令規制物質の削減を第一に進めることが必要と思われる 4

表 2 溶出試験結果 Ⅰ ( 単位 :mg/kg) 元素試料 S-01 Cd Pb 20 (3,200) Sb Ba Cr S-02 5 未満 (410) 10 (2,000) S-03 5 未満 (490) 7 (1,300) S-04 5 未満 (590) S-05 5 未満 (530) 5 未満 (290) S-06 5 未満 (380) 5 未満 (130) S-07 73 (6,200) 5 未満 (720) S-08 5 未満 (550) 7 (2,200) S-09 53 (5,600) 5 未満 (940) S-10 5 未満 (360) 8 (1,300) S-11 5 未満 (410) 9 (1,400) S-12 5 未満 (490) 8 (1,400) S-13 5 未満 (140) 8 (2,900) S-14 13 (1,700) S-15 5 未満 (570) S-16 5 未満 (530) S-17 5 未満 (470) S-18 5 未満 (510) 8 (2,600) S-19 5 未満 (510) 5 未満 (2,500) S-20 5 未満 (510) S-21 5 未満 (560) S-22 22 (5,200) 5 未満 (770) S-23 5 未満 (480) 5 未満 (130) S-24 5 未満 (110) 61 (7,700) S-25 5 未満 (260) 5 未満 (360) S-26 22 (7,400) S-27 5 未満 (460) S-28 5 未満 (800) 5 未満 (270) S-29 7 (4,200) 5 未満 (1,100) S-30 50 未満 (6,400) S-31 50 未満 (6,700) S-32 50 未満 (6,400) S-33 330 (15,000) S-34 5 未満 (3,100) ( ) 内の数値はスクリーニング分析値 5

表 3 溶出試験結果 Ⅱ ( 単位 :mg/kg) 元素試料 Cd Pb Sb Ba N-01 39 (8,300) N-02 22 (5,300) 5 未満 (850) N-03 19 (7,800) 5 未満 (1,200) N-04 38 (12,000) 5 未満 (640) N-05 5 未満 (420) N-06 5 未満 (370) N-07 9 (3,700) 5 未満 (550) N-08 5 未満 (220) 5 (2,200) N-09 17 (1,900) 5 未満 (610) N-10 5 未満 (470) N-11 8 (3,100) N-12 46 (11,000) F-01 410 (21,000) F-02 420 (30,000) F-03 440 (25,000) F-04 400 (13,000) F-05 390 (22,000) F-06 450 (26,000) F-07 50 未満 (22,000) ( ) 内の数値はスクリーニング分析値 6