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( 第 1 章 はじめに ) などの総称 ) の信頼性自体は現在気候の再現性を評価することで確認できるが 将来気候における 数年から数十年周期の自然変動の影響に伴う不確実性は定量的に評価することができなかった こ の不確実性は 降水量の将来変化において特に顕著である ( 詳細は 1.4 節を参照 )

(1) 継続的な観測 監視 研究調査の推進及び情報や知見の集積〇気候変動の進行状況の継続的な監視体制 気象庁では WMO の枠組みの中で 気象要素と各種大気質の観測を行っている 1 現場で観測をしっかりと行っている 2 データの標準化をしっかりと行っている 3 データは公開 提供している 気象庁気象

(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

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布 ) の提供を開始するとともに 国民に対し分かりやすい説明を行い普及に努めること 図った 複数地震の同時発生時においても緊急地震速報の精度を維持するための手法を導入するとともに 緊急地震速報の迅速化を進める 特に 日本海溝沿いで発生する地震については 緊急地震速報 ( 予報 ) の第 1 報を発表

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Transcription:

224 21世紀気候変動予測革新プログラム における CMIP5実験仕様に基づいた温暖化予測実験 値を用いて数十年規模の気候変動を担当するチーム 以下近未来予測チーム 気象研究所が主導し 超高 デ ル の 開 発 も 要 素 と し て 入って い た が 本 稿 で は CM IP5にデータを提出した実験内容に焦点を るこ 解像度の領域および全球大気モデルを用いて台風や集 とにする 革新プロ全般の成果について関心のある読 中豪雨あるいは渇水といった極端な気象現象の変化を 者には 革新プロのホームページ http://www.jam 予測するチーム 以下極端現象チーム の計3チーム stec.go.jp/kakushin21/jp/ 2012.8.18閲覧 などが参 が実施した 本稿では この3チームによる成果を概 になろう なお 本稿では略語が多用されるため 観し 今後の予測シミュレーションモデル開発の課題 稿末に略語一覧を付してある 適宜ご参照いただきた を検討することを目的としている い 次節で革新プロにおいて得られた主な成果につい て それぞれのチームごとに紹介する 続く第3節で 2 革新プロの主な成果 は それぞれのチームが担当する 2.1 長期予測チームの成果 野におけるモデル 開発の現状を 国際的な動向も踏まえ概観する 第4 2.1.1 20世紀再現実験の結果 節では 革新プロで得られた 遺産 について 主に M IROC-ESM を用いた過去 1850 2005年 の長 研究コミュニティへの影響の観点から述べる 第5節 期気候変化再現実験の結果 全球年平 した地上気温 で今後の改善が期待される点について記述する 第6 は観測された経年変化を従来よりもよく再現すること 節では革新プロの後継としての新規プログラムの内容 が について触れる なお 革新プロでは温暖化予測実験そのもののみな らず 予測データを利用した影響評価研究や先端的モ 第1図 4 かった 野 沢 ほ か 2012 20世 紀 後 半 以 降 1951 2005年 における年平 の 地上気温の変化傾向 布を解析した結果 M IROC-ESM を用いた20世 紀再現実験では 特に北太平洋域における変化傾向の 20世紀後半以降 1951 2005年 の年平 地上気温の変化傾向の地理 布 単位は /10年 a 観 測 b 大気中微粒子を簡単に取り扱った実験結果 24実験例の平 c 大気中微粒子を詳細に取 り扱った実験結果 10実験例の平 M IROC-ESM を用いた20世紀再現実験はすべて c に含まれ る 天気" 60 4

230 第6図 21世紀気候変動予測革新プログラム における CMIP5実験仕様に基づいた温暖化予測実験 全球平 地表気温の時系列 を繋ぐ実線は観測 実線のみは a, c, e 初期値化あり b, d, f 無 しの3モデルアンサンブル平 予測を示す のシンボルは 個々のアンサンブルメンバーの 予測 上段から a, b 予測1年目 c, d 2-4年目 e, f 5-9年目 各パネル左上の R は観測 とアンサンブル予測の相関係数 RMSE は予測の根二乗平 誤差を示す できている 差で見たものである 統計的に有意な部 のみ色付け 第8図は 10年間の事後予測実験 初期値化あり している 右列のハッチは 初期値化しない従来手法 10例の全球地表気温の予測スキルを示している 左列 に比べてスキルが10 以上向上した領域を示してい は 地点毎のアノマリ相関係数 右列は根二乗平 る 10 誤 天気" 60 4

21世紀気候変動予測革新プログラム における CMIP5実験仕様に基づいた温暖化予測実験 231 第7図 2006年1月を初期値とする予測の a 2-4年目の平 と b 対応する観測 それぞれ 2001-2005 年平 からの偏差として表示 濃いおよび薄い陰影はそれぞれ 0.3 以下 0.3 以上の領域を表 す 等値線間隔は0.2 で零線は表示していない 観測は JRA-25を 用した 第8図 全球地表気温の予測スキル a, c アノマリ相関係数 b, d RM SE 単位 統計的に有意な領域 のみ示す 右列のハッチは 初期値化無しの予測と比べて RM SE スキルが10 以上向上した領域を示 す 上から a, b 2-4年目 c, d 5-9年目 気候メモリの存する海洋域 ことに 北半球高緯 表層の熱容量でみるとより高いスキルが得られる 度 熱帯西太平洋 インド洋 大西洋等でスキルがよ 十年規模の自然気候変動として 大西洋数十年規模 い また 予測5-9年目でも広い範囲で初期値化の 振動 AM O と太平洋十年規模振動 PDO が代表 インパクトが確認できる ここには示さないが 海洋 的なモードとしてよく知られ 研究されている われ 2013年4月 11

234 21世紀気候変動予測革新プログラム における CMIP5実験仕様に基づいた温暖化予測実験 第10図 熱帯低気圧経路 布 色がカテゴリー強度を意味する a 観測 b M RI-AGCM 3.1S による現在 気候実験 c MRI-AGCM 3.2S による現在気候実験を示す M urakami et al. 2012 第11図 カテゴリー5熱帯低気圧の存在頻度 a 観測 1979-2003 b MRI-AGCM 3.2S による現在気候 実験 1979-2003 c M RI-AGCM 3.2S による将来温暖化予測実験 2075-2099 d 将来変化を それぞれ示す 単位は25年間の個数 M urakami et al. 2012 このことは将来 非常に強い強度の熱帯低気圧の c 日本に接近する頻度が増加する可能性を示唆するが モデルの北西太平洋域における熱帯低気圧存在頻度 バイアス解消が課題である 2.3.2 熱帯低気圧活動の将来変化予測における不 確実性の評価 布の北偏バイアスのため 将来の日本付近の非常に強 気候モデルを用いた将来予測結果には不確実性が大 い台風の頻度が過剰になっている可能性があり この きい それは 気候モデルを構成している物理過程中 14 天気" 60 4

21世紀気候変動予測革新プログラム における CMIP5実験仕様に基づいた温暖化予測実験 第12図 235 熱帯低気圧存在頻度将来変化のアンサンブル平 単位は25年間の個数 印は12実験中10個以上の実 験でアンサンブル平 と同じ符号であることを意味する M urakami et al. 2011b のパラメータの値や予測された将来の海面水温パター 化のコントラストが明瞭となった ただし 熱帯低気 ンが異なれば予測結果が大きく変わってしまうことが 圧発生頻度の将来変化は符号こそは実験間で概ね一致 あるからである 重要なのは実験設定が異なっても変 しているが 将来変化の程度は実験間で異なってい わることのない一貫した将来変化を抽出することであ る り また 将来予測の不確実性が実験設定のどの要因 2.3.3 雲システム解像領域気候モデルを用いた梅 に起因するかを理解することも重要である 熱帯低気 雨の将来変化 圧は個々の積雲対流が集合した対流システムであるこ 積乱雲群の対流現象を陽に表現しうる水平解像度5 とから 物理過程の中でも深い対流を取り扱う積雲対 km の雲システム解像領域気候モデルは 20km 格子 流スキームに不確実性の要因がある また 熱帯低気 全球大気モデルと比較して 降水の極端指標の再現性 圧は高い海面水温の海上で発生するため 海面水温の 能が高く より現実的な降水極値の議論が可能とな 将来変化の違いは熱帯低気圧活動の将来変化に影響を る 20km 格子全球大気モデルの温暖化予測実験の結 及ぼす そこで 本研究では熱帯低気圧将来予測の不 果に 雲システム解像領域気候モデルをネストして 確 実 性 を 評 価 す る た め 全 球60km 大 気 モ デ ル 日本付近における降水現象の変質を 特に大雨 強雨 M RI-AGCM 3.2H を用いて3つの異なる積雲対流 に着目して調査した スキームと4つの異なる海面水温将来変化パターンを モデルで得られた7月上旬の現在気候実験および将 用いた計12種類のマルチ物理 マルチ海面水温アンサ 来気候実験それぞれの日雨量を第13図 a に示す 九 ンブル実験を行った 州を中心とした梅雨域での降水量増加が顕著である 第12図に熱帯低気圧存在頻度の将来変化の12種類の アンサンブル平 を示す 図の 印は10種類以上の実 験がアンサンブル平 127 E-137 E 30 N-35 N の領域 第13図 a の四角枠 内 で平 した日雨量の季節変化を第13図 b に示す の変化符号と同じで一貫した将 現在気候 破線 を解析雨量 灰実線 と比較する 来変化を意味している 熱帯低気圧の存在頻度は実験 と 6月中旬から7月中旬までの梅雨期のピーク 8 設定に関係なく西太平洋 南太平洋 南インド洋で減 月の少雨 および9月から10月にかけての秋雨と台風 少し ハワイ周辺の中部太平洋で増加することが によるピーク等 領域における降水の季節変化をよく かった 同様な将来変化が熱帯低気圧の発生頻度につ とらえていることが いてもあてはまり 熱帯低気圧活動の地域的な将来変 線 においては 7月上旬と8月上旬に現在気候と比 2013年4月 かる 一方 将来気候 黒実 15