サッシの役割と機能 北方建築総合研究所 環境科学部 環境グループ 高倉政寛

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( 平成 25 年 2 月 8 日, 旭川市大雪クリスタルホール ) サッシの役割と機能 北方建築総合研究所環境科学部環境グループ高倉政寛 はじめに今日は, 高断熱化が当たり前になっている北海道の住宅の断熱水準やサッシがどのように施工されているのか, どのような性能が望まれているのかについての現状と課題をお話ししたいと思います 住宅の断熱水準の現状よく最近 200mm 住宅ですとか,Q1 住宅 1 とか言われております いつ頃から出てきたのかというと, 2006 年の資料 ( 写真 1) がありました たぶんこれは 200mm 断熱の新築のかなり最初の頃のものだと思います 窓は木製サッシが使われています 写真 2は, 通常のモルタルの外装の外側に100mmの断熱材を直接張ったリフォームの企画です いわゆる次世代省エネルギー基準 2 と呼ばれる省エネルギー住宅の性能を上回るような高い省エネルギー性能を発揮する住宅が, 旭川や札幌の近郊で2005 年の後半ぐらいから建設されるようになったということです 最近では300mm 断熱とか,500mm 断熱といった話も聞きますが, 実際, こういった住宅がどれくらい普及しているのか少し話しておきたいと思います 写真 1 200mm 断熱新築 (2006 年鷹栖町 ) 1 NPO 法人新木造住宅技術研究協議会が普及を進めている次世代省エネルギー基準住宅の暖房費の半減をねらった超高断熱住宅 2 平成 25 年 6 月現在, 最新の省エネルギー基準 ( 平成 11 年改正 ) 1 写真 2 200mm 断熱リフォーム (2006 年旭川 ) 表 1は,2010 年に北総研で道内ビルダー 2,000 社に対して, 御社の住宅でどんな構法を採用していますか? 断熱水準はどれくらいですか? というようなアンケート調査の抜粋です これを見ると, 充填断熱が意外と多く, それも繊維系のものが多いということが分かります 充填断熱に外張を付加したものもかなり増えています 一方でいわゆる外断熱, 外張り断熱は減っている印象を受けます 実は充填断熱の構法には2 6 工法がかなり含まれます 北方型住宅 ECO 3 が出てから, 地域の有力ビルダーで2 4 住宅を手掛けている方の中には,89mmの断熱から120mmの断熱にシフトされた方がいます それに伴って, 周りの工務店さんたちもかなり意識し始めているということです あと充填断熱だけをやっている方もいらっしゃいますが, その方たちはグラスウールだけでは省エネルギー基準をクリアーできませんので, パネル化も進んでいくものと思います 3 北海道が推進する, 北方型住宅 (= 次世代省エネルギー基準 ) の断熱性能を上回る超高断熱住宅

表 1 住宅部位別の断熱状況 ( 道総研戦略研究 2010 年調査データより ) 部位 断熱方法 吹込み断熱材 繊維系断熱材 発泡プラスチック保温板 現場発泡ウレタン その他 外張り断熱 外断熱 0.0% 4.8% 93.7% 1.2% 0.3% 1034 戸数 * 外壁 充填断熱 9.0% 54.0% 5.7% 26.3% 4.9% 1827 4217 外張 + 充填断熱 20.8% 67.3% 6.3% 5.5% 0.1% 1356 天井 94.3% 3.9% 0.2% 0.3% 1.3% 3627 天井 屋根 桁上 47.0% 0.0% 53.0% 0.0% 0.0% 154 4151 屋根断熱 13.0% 31.1% 51.4% 4.6% 0.0% 370 床断熱 7.2% 45.5% 41.8% 0.1% 5.4% 1980 基礎断熱 ( 外断熱 ) 0.2% 0.0% 99.1% 0.0% 0.7% 1416 床 基礎 4282 基礎断熱 ( 両側断熱 ) 0.4% 1.2% 97.1% 0.0% 1.3% 836 基礎断熱 ( 内断熱 ) 0.0% 0.0% 54.0% 44.0% 2.0% 50 * 戸数は 集計に有効であった住宅戸数で示した 外張り断熱についても, 外張り断熱だけでは300mm 断熱といった性能とまともに張り合うことはできなくなってきますから, 結果的には柱の間にも充填断熱を施すようになってきています ですから15 年くらい前には, 外壁断熱と充填断熱とのバトルというのが住宅産業にはあったんですが, 今はそういう状況ではなくなってきています トータルで見ると, この統計資料からは道内の新築住宅の87% が1999 年の次世代省エネルギー基準住宅に相当するという結論になっています さて, 振り返って2000 年頃はどうだったのかというと, 実は100mm 断熱ぐらいのものが標準で, 次世代省エネルギー基準に該当する住宅はオプション的な取扱いでした ただ, 今は次世代省エネルギー基準住宅が当たり前, 逆に言えば100mm 断熱の住宅は, 商品的に, 建物としては建てられますが, 商品として これはいい住宅ですよ とは言いにくい状況になっています では今, オプション的な扱いになっている工法にどんなものがあるかを見ていきたいと思います これは昨今話題となっている省エネルギー基準の改訂に絡む話で, 本州と北海道でかなり温度差があるということです 札幌の戸建て住宅と東京の戸建て住宅で見てみますと ( 図 1), 全体的なエネルギーの消費量は, 当たり前ですが東京の大体 1.5 倍というのが札幌の戸建て住宅です そのうちの53% くらいが暖房のエネルギーです ですから先ほどの200mm 断熱,300mm 断熱の省エネルギー化というものが, まだまだやる 2 余力が残っているというのが今の状況です 一方, 東京を見てみますと, 暖房とか冷房とかのエネルギーの消費量は20% 以下です 主にエネルギーを食っているのは給湯と照明です そのため, 太陽光発電とか, エコキュートとか, そういうところに力が入っているということです 北海道の場合も同じようにエネルギー量を食っている訳ですが, まず先に節約しなければならないところが, 暖房のところに残っているというのが現状です 暖房エネルギー量を道内の平均的なものと見た時に年間で1,651Lくらいの灯油を消費していることになります 断熱住宅におけるサッシの施工 性能の現状と課題高断熱化というと, 当然ですけど200mm 断熱, 300mm 断熱になると壁が厚くなります 多くの窓は樹脂サッシが取り付けられていますが,JISでは通常はサッシというものは柱に固定するということが基本になっています そうすると図 2に示したように, 外装のシーリングが入っているところとうまく取り図 2 高断熱化による厚壁化と窓の取付け

合いが納まらなくなってくるという現象が生じます と思います 北方型住宅 ECOの規格では, 熱損失係数それを避けようとすると, その個所に垂木状の5cmく Qは1.3W/ m2kと定義しています 実は次世代省エネルらいの木材を入れて外側に窓を取り付けなくてはなギー基準が1.6 W/ m2kですから, わずか0.3 W/ m2kしりません これは断熱材メーカーさんの標準方法とか違いはないのですが, この0.3というのはかなり大して推奨されているものです きな数字になります この北方型住宅を作るためのいずれにしても, 既存のこういう半外付けサッシ教科書になっているBIS 4 というテキストがあるんでのようなものを高断熱住宅に取り付けようとすると, すが, ここに載っている住宅で試算してみます ( 図ディテールが非常に複雑化せざるを得ないというの 3) 壁が100mmのもので25mmのスタイロフォームをが現状です 外から張り, 窓がLOW-Eのペアガラスで樹脂サッシが写真 3は旭川の300mm 断熱住宅の現場を拝見させてついているというのが, いわゆる教科書に載ってい頂いた時の写真です この写真には, ポジティブなるものです Q 値が1.49 W/ m2kで, 当然ですが北方型情報とネガティブな情報があるんですが, 最初ポジ ECO 住宅には到達しない 灯油消費量が1,353Lというティブな情報からお話しさせて頂きますと, 柱に形になります サッシが取りついていないのが分かります いわゆ旭川でQ=1.3 W/ m2kの住宅が何を意味しているのかる本棚のような木枠を作って, その中に木製サッシと申しますと, 実は暖房灯油消費量が概ね1,000Lとを納めています いうレベルの住宅に相当します 今, 灯油が1L 当たり100 円とすれば,10 万円の暖房代の住宅, 札幌だと 800Lくらいになりますから, 暖房代 8 万円住宅と理解していただければ間違いないと思います とりあえず窓を取り換えずに, この規格を通そうと工務店さんが考えた時に, 外側に張っているスタイロフォームの厚さを25mmから何 mmに替えないとならないかというと, 実は120mmです トータルでは 220mm 壁になってしまいます これはとんでもないことでして, けっこう大きな設計変更を余儀なくされ写真 3 300mm 断熱住宅の木製サッシ ( 旭川 ) ます なかなか断熱だけではうまくいかないということです そこで大きな変更なくして, このQ=1.3を壁厚が300mmありますから, 実はいろいろなことが到達できる仕様というものを考えてみます ( 図 4) できて, 本棚にしてしまったり, もしかしたらTV その場合やはりサッシはLOW-Eペア アルゴン入り樹まで置けたりするかもしれませんが, 通常の窓の概脂サッシでというのが標準ですからそれを付けます 念とはかけ離れたものの考え方を工務店さんの一部さすがに付加断熱 120mmは現実的ではないないというではされてきているのかなあ, と思います ことで50mmくらいにします そうするとQ 値は1.33 実際に工務店の設計の方とお話をすると, こうい W/ m2kになり,q=1.3の基準にはわずかに届かないんう厚い壁に木製サッシを入れる場合, サッシを外側です 非常に悩ましいんですけど, また設計変更をの方に取り付けていろいろなものを置こうとすると, 余儀なくされます どうしたらいいのかというと, 窓の懐の部分に室内の熱が流れ込みにくくなり, 実は外側のスタイロフォーム75mmかつLOW-Eペア ア どうも朝方結露する かなり高断熱のサッシを付ルゴン入り樹脂サッシを入れてようやく北方型住宅けているのに一部結露してしまう というような ECOになるということです ただし, スタイロフォーケースをお聞きします それは暖房が悪かったり断ム75mmは, 付加断熱の一層張りとしては工法の変更熱が悪かったりする訳ではなく, 実は出窓で似たよを必要としない限界点と言えます これ以上の性能うなトラブルが昔あって, 既に20 年くらい前に解決を求める場合,LOW-Eペア アルゴン入り樹脂サッシした課題が再び出てきているということです サッの熱貫流率 (U 値 )1.9 W/ m2k 未満のサッシが必要にシはできるだけ内側に付けたいとおっしゃっていまなります した 4 北海道建築技術協会が実施する断熱施工技術者認定次に高断熱化の一般的な概念について説明したい制度 (Building Insulation Specialist の略語 ) 3

図 3 高断熱化と暖房エネルギー消費量の関係 - 躯体の変更 - では,U 値によってどれくらいまで性能が上がるか というと,U 値 1.0 の窓に交換すると灯油消費量は約 200L 減る計算になります 実際に普及している窓について見てみます ( 表 2, 3) 大体約 90% が樹脂サッシの枠, ガラスは層厚 12mm アルゴン入り LOW-E というのが一般的です 樹脂サッシの枠というのは, ここ 10 年大きな変化は ありませんが, 最近ではトリプルガラスの樹脂サッ シというのも出てきています ガラス間が乾燥空気 入りのものから, アルゴンガスを充填したものがも う当たり前になっています 一方, かなり性能の高いトリプルガラスのものも ありますが, あまり普及はしていません 価格差が 当然あるわけですが, その間をつなぐものがなく, それが大きな課題となっています それでは視点を変えて木製サッシを見てみたいと 思います 木製サッシの道内シェアを今回調べてみ ました 年間住宅棟数の 5.9%,670 棟前後, そのうち 国内産サッシは半数の 300 棟くらいです この結果を見ると, 木製サッシは嫌われている のか? と思われますが, 私はそうは思ってなくて, 何かミスマッチが起こっているのだと思っています 図 4 高断熱化と暖房エネルギー消費量の関係 - 窓の変更 - そこであらためて窓の持つ役割を考えてみますと, 実は窓は断熱するためにだけに付けている訳ではな くて, 採光だとか, 眺望だとか, 景観とかも重要で すし, もちろん夏場には通風したいとか, ある状況 によっては遮音したいなんてこともあります ( 表 4) サッシは, 実は建築のパーツの中では, 最も多様な 機能とか性能を期待される建材と言えます 例として夏の通風についてお話ししたいと思いま す 写真 4 は実は私の自宅ですが, 樹脂製のドレー キップ窓が付いています 夏の通風に適した内倒し 窓ですが, 柱の外側に 60mm ほどの垂木を付加して窓 を外側に付けています その理由の一つは, 付加断 熱の断熱材の厚さを厚くするためです それから, 柱の内側よりもドレーキップが倒れてき た時に, 障子が出っ張ってしまいます そうなると 実はブラインドとか, カーテンとかと接触してし まってうまく機能しないという問題があります そ のため, あまり恰好の良いものではありませんが, ブラインドだまり を無理やり付けているという 状況です 窓の機能としては家族も喜んでいますが, 家の図面を作っている段階から, どこの位置にブラ インドやカーテンを付けるか決めておく必要があり 表 2 使用されている枠の種類 表 3 ガラスの種別 4

表 4 窓の役割 写真 4 ドレーキップ窓 ( 内倒し 内開き窓 ) とブラインド 左 :105mm 軸組柱に付加した60mm 垂木に窓を固定 ( 図 2 参照 ) 右 : 内倒し時の通風や付属物との干渉を避ける工夫 ます こういった窓を採用する際の大きな課題でもあります 最後に樹脂サッシが選ばれる理由としては, 工務店やビルダーの方のお話では, 品質の安定性, 断熱性能, メンテナンス性などがキーワードになっているようです 木製サッシのいま売り文句になっているデザイン性とか機能性は, 意外に支持が得られず, その辺に先ほど述べたミスマッチがあるのかもしれません 木製サッシが普及するためには, 先ずメンテナンス性, 断熱性, 品質の安定性が大きい課題だ ろうと思います 私自身木製サッシに感じているこ とは, やはり現在の主要な販売ニーズというのは, 木製サッシが本当に好きな人のために一生懸命考え ているでしょうけれども, 樹脂サッシしか考えてい ない人に, じゃあどういった提案をして行ったら良 いのか, どういったところに課題があるのか, いろ いろな人たちと話し合いをもう少し重ねていく必要 があるのではないかと思っています ご清聴ありが とうございました ( 文責窪田純一 ) 5