退院 在宅医療支援室主催小児医療ケア実技研修会 小児の呼吸理学療法 神奈川県立こども医療センター 発達支援部理学療法室 脇口恭生 2017/1/13 1
目標 呼吸理学療法の概略を知る 小児の呼吸障害の特徴について知り 具体的な援助について考える 呼吸理学療法の手技を知り リスクについても理解する 2017/1/13 2
本日のながれ 18:00~18:30 講義 1. 小児の呼吸障害の特徴 2. 用手的呼吸理学療法の手技について 3. 呼吸障害に応じた手技について 4. 呼吸理学療法のリスクについて 18:30~19:50 実技練習 19:50~20:00 質疑応答 2017/1/13 3
1. 小児の呼吸障害の特徴 呼吸障害をきたす疾患 1. 呼吸器疾患 : 気道疾患 肺実質疾患 発育障害 2. 神経 筋疾患 : 脳性麻痺 筋ジストロフィー 脊髄性筋委縮症など 3. 先天奇形 : 顔面 咽頭 鼻腔周辺の奇形 Treacher Collins 症候群 CHARGE 連合 Pierre Robin 症候群など 4. その他 : てんかん 溺水 窒息などによる低酸素性虚血性脳症 SIDSなど 2017/1/13 4
小児呼吸の解剖学的 生理学的特徴 気道 肺容量 呼吸筋力 咽頭 喉頭が柔らかく狭い気管 気管支が細い末梢平滑筋組織の発達不十分粘膜分泌腺の過形成 相対的に肝臓が大きい腹部が膨張しやすい 胸郭が柔らかい鼻呼吸で横隔膜依存 < 呼吸不全に陥りやすい > 気道抵抗が高い感染などが原因の浮腫や分泌物により 容易に気道が閉塞有効一回換気量が少ない 呼吸効率が悪く 呼吸疲労を容易に起こす 上田泰久 : 急性期気管支炎の呼吸管理 日本小児呼吸器疾患学会誌 19,2008 2017/1/13 5
小児のバイタルサイン 年齢区分呼吸数 ( 回 / 分 ) 心拍数 ( 回 / 分 ) 血圧 (mmhg) 新生児生後 28 日以内 40~50 150 75/50 乳児生後 1 年未満 35 140 90/60 小学 ( 就学前 ) 生後 1 歳以上 12 歳未満 25 100~120 100/65 小学 ( 就学後 ) 20 90~100 110/70 青年 生後 12 歳以上 18 歳未満 18 80 115/75 志馬伸朗 橋本悟 : 小児 ICU マニュアル 永井書店 2010 2017/1/13 6
発達過程における障害があると? 口腔運動障害 嚥下障害 頭頚部の保持困難 体幹の保持困難 運動の経験不足 障害 寝返りや腹臥位 座位保持など背骨を伸ばしたり広げたりねじったりした胸郭の拡張や分節的運動の育ちの不足に加えて 筋緊張や姿勢による偏り + 構造問題 2017/1/13 7
小児の呼吸障害の特徴 呼吸障害を引き起こす原因および呼吸器を含めた成長 発達段階により病態が多岐にわたる 個々で異なる 視診や聴診 触診などのフィジカルアセスメントが重要 こどもの状態が快適な状態を保持するためのポジショニングの工夫 年齢成長 発達段階により 解剖学的 生理学的特徴をふまえた対応が必要 神経筋疾患 重症心身障害のあるこどもの場合 胸郭を拡げる 育てる視点と予防的視点が必要 日常生活での姿勢ケア ストレッチなど日々の積み重ね 2017/1/13 8
呼吸理学療法の目的 空気や分泌物の通り道の空間の確保 ( 気道の確保 ) 肺の隅々まで空気を入れる ( 吸気の促進 ) 肺胞 気道の分泌物の移動 排出 ( 排痰の促進 ) 肺の二酸化炭素を排出する ( 呼気の促進 ) 呼吸仕事量の軽減 酸素化の改善により呼吸が楽になる ( 呼吸の効率化 ) 2017/1/13 9
気道クリアランス法に重要な因子 1. 換気の改善 吸気圧 吸気流速 吸気量の増大が気管支を拡張し Critical opening pressure を超える圧で痰を破り 肺胞に空気が入る 肺胞が膨らみ 次の呼気流量で痰を押し出す 2. 痰粘弾性の調節 薬物 吸入療法 胸壁振動を併用 2017/1/13 10
Critical opening pressure ( 気管支が開通する閾値圧 ) 理学療法学第 39 巻第 4 号排痰手技の再考より引用 ( 文献 1) 2017/1/13 11
squeezing 重力を利用した排痰体位に 局所的な肺葉や肺区域の改善を組み合わせて排痰する方法 理学療法学第 39 巻第 4 号排痰手技の再考より引用 ( 文献 1) 2017/1/13 12
小児の呼吸の特徴をふまえた配慮点 咽頭 喉頭の脆弱性 気道径が狭い 吸気時喘鳴 吸気時頸切痕の陥没などの上気道狭窄の徴候を見極め 上気道の状態を常に確保 肺コンプライアンスは低く 胸郭コンプライアンスは高い ( 肺は膨らみにくいが胸郭は柔らかい ) 呼気介助した場合加圧しないと十分吸気が得られない可能性あり 呼気で強く押しすぎない リバウンドとしての吸気が得られずらい 吸気が得られやすい条件 : 脊柱の伸展 肩の外転など胸郭が拡がる準備が大切 2017/1/13 13
2. 用手的呼吸理学療法の手技について 胸郭に用手接触し 吸気 呼気相に合わせて胸郭運動を介助し 運動を増大させることで 換気改善と分泌物の排出を促す手技 胸郭の動きを触知 無理な負荷を加えない 介助の方向 強さ タイミングが重要 2017/1/13 14
用手的呼吸理学療法の手技について 呼気相での介助の例 上部胸郭への介助 : 鎖骨下の前胸部に手を密着させ 呼気に合わせて胸郭の上部より呼気を介助する 下部胸郭への介助 : 胸郭の側方に手を密着させ 呼気に合わせて骨盤方向かつ背中の下方向へ押し下げることで呼気を介助する 片側からの介助 : 両手を胸郭の片側に密着させ 呼気に合わせて斜め下方向に押し下げる 側臥位での介助 : 胸郭に手を密着させて前後を挟む 呼気に合わせて骨盤方向に向かって骨盤を引き下げる 2017/1/13 15
用手的呼吸理学療法の手技について 吸気相での介助の例 吸気介助法 : 吸気のタイミングに合わせて 胸郭の動く方向に沿って 一定の力で胸郭を持ち上げることで吸気を促す 胸郭ゆすり法 : 胸郭を両手で支え 吸気で上下にゆすりながら 吸気を促す 片側での胸郭ゆすり法 : 両手を背中側にいれて 指を棘突起の横にかけて持ち上げ ゆるやかに小刻みにゆする 胸郭拡張法 : 吸気時に上肢 肩甲帯 胸郭を把持して 胸郭を拡張する方向へ運動を介助する さらに 拡張位を保持して呼気介助を行うで呼気介助後の再拡張を促す 2017/1/13 16
呼吸を規定する 3 要素 気道の確保 ( 空気や痰の通り道を空ける ) 肺胞や胸郭の拡張性 / 肺容量 ( 肺の中に充分空気を入れる : 吸気量獲得 ) ポンプ機能 ( 十分な呼気量と排痰能力 : 呼気量増大 流速 ) 2017/1/13 17
3. 呼吸障害に応じた手技について 知っておきたい 3 要素ごとの病態 気道の閉塞 病態 : 上気道狭窄 ( 舌根沈下 喉頭軟化症 ) 下気道狭窄 ( 気管支喘息 気管軟化症 ) 分泌物貯留など 肺胞や胸郭の拡張性 / 肺容量の低下 病態 : 肺炎 無気肺 分泌物貯留 胸水 気胸 肺水腫 慢性肺疾患 胸郭変形など ポンプ機能不全 病態 : 未熟な呼吸中枢 肺気腫 呼吸筋力低下 横隔膜神経麻痺 神経筋疾患 筋緊張アンバランスなど 2017/1/13 18
呼吸障害に応じた手技について 呼吸障害の原因は何かを見極め手技を選択する 3 要素原因目的手技 上気道 上気道狭窄舌根沈下下顎後退 上気道の確保 前推位下顎介助側臥位 前傾位など 下気道 喘息 気管支炎 呼気の補助 攣縮部位を拡げる 愛護的呼気介助吸気手技または胸郭拡張法との併用 2017/1/13 19
呼吸障害に応じた手技について 3 要素原因目的手技 胸郭コンプライアンス低下 筋緊張亢進胸郭変形呼吸筋短縮関節拘縮 筋緊張の緩和関節可動運動 肋間 肺コンプライアンス低下 無気肺 肺炎 肺容量の増加 無気肺の 改善 リラクゼーションストレッチ可動域運動 体位排痰法呼吸介助バギング体位変換 2017/1/13 20
呼吸障害に応じた手技について 3 要素原因目的手技 ポンプ機能 呼吸筋力の低下 ポンプ機能の補助 咳介助 呼気介助 吸気介助 2017/1/13 21
実際の流れ 上気道の確保全身のリラクゼーションポジショニング用手的呼吸理学療法手技排痰 2017/1/13 22
運動を通した胸郭拡張 呼吸運動支援 胸郭を広げて吸気が得られる条件を整えよう 深呼吸 背骨を伸ばす 肩を下げる 胸を広げる 腕 肩甲骨を広げる 体幹の横を伸ばす 体幹の回旋など 2017/1/13 23
アセスメント 視診 : 左右差 パターン 数 深さ リズム 鼻呼吸 口呼吸 胸式 腹式呼吸 喘鳴の有無 咳嗽反射 多呼吸 陥没呼吸 鼻翼呼吸 呼気延長 触診 :air 入り 分泌物の有無 打診 : 含気 横隔膜位置 聴診 : 普段の音と比べる 身体所見 : チアノーゼ 喘鳴 バイタルサイン :SpO₂ は簡易に呼吸不全の評価が可能 普段よく取っている姿勢は? 2017/1/13 24
上気道の確保 < 姿勢での対応 > 各姿勢の特徴を把握する 背臥位 後傾座位は舌根沈下をきたしやすい 側臥位 腹臥位 前傾座位での変化をみる どの姿勢でも筋緊張のリラックスが得られ 上気道スペースの確保が重要 < 嚥下 唾液処理の考慮 > 唾液 分泌物の貯留による呼吸苦 誤嚥側臥位 ( 前傾 ) 腹臥位 前傾姿勢で上気道スペースの確保と唾液 排痰を促す < 介助による頭頚部の位置の調整 > 下顎の可動性 運動性の改善と発達 下顎を前に引き出し 舌根沈下を防ぐ 頚部 後頚部が過伸展 縮みこまないように頚部の後ろをしっかり支える 頚部から下顎を引き離すこと 回旋運動 保持能力を援助 特に頸部の後屈 捻じれは可動性のある段階から変形を強めない視点をもって援助を行う 2017/1/13 25
リラクゼーション 呼吸を楽にするためには 全身のリラクゼーションが重要 呼吸パターンの悪化は呼吸運動に余分なエネルギー消費と換気効率の低下をもたらす 姿勢の安定 : 姿勢が不安定だとリラックスできない より対称的な安定した支持基底面の確保 マッサージ : 頚部 肩甲帯 胸郭 腰背部など上気道 胸郭の運動に関係する筋緊張の緩和頸部胸鎖乳突筋 斜角筋肩甲骨大胸筋 僧帽筋 棘下筋 菱形筋 広背筋腰方形筋 脊柱起立筋群 腹筋群 2017/1/13 26
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ポジショニング 姿勢保持 : 体幹に対する頭 頚部の位置 体幹 に対する上肢 下肢の位置まで配慮する 体位変換 : 褥創予防 下側肺障害の予防と改善 胸郭の圧迫を除去し 胸郭の運動制限を改善 分泌物の移動促進 肺内血流分布の改善 体位排痰法 : 痰の存在する部位を上側とする 先に良い方の肺の十分な換気を促しておくこと 2017/1/13 28
下側肺障害 線毛運動が低下している患者が安静を続け 下側肺に粘液が貯留し 気道閉塞 換気不全が起こる 2017/1/13 29
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4. 呼吸理学療法のリスクについて 低酸素血症 呼吸困難 肋骨骨折 脳圧の亢進 2017/1/13 33
1. 今ある呼吸障害 2. 成長 発達の視点をとらえた今の支援 ( 予防 予測的観点 ) 3. 情報共有 連携 2017/1/13 34
実技 1. 過緊張を想定 2. 胸郭を拡張する条件肩甲帯 ( 肩の外転方向 ) 脊柱の伸展 回旋 肋間腹部 腰周囲 3. 呼気介助圧迫と介助の違いゆすり手技の併用 4. 吸気介助 5. 胸郭拡張手技 2017/1/13 35
参考 引用文献 1) 横山美佐子 : 小児呼吸器疾患患者の呼吸理学療法とモニタリングの要点 理学療法 Vol.29.No.8,2012 2) 上田泰久 : 急性期気管支炎の呼吸管理 日本小児呼吸器疾患学会誌 19,2008 3) 志馬伸朗 橋本悟 : 小児 ICU マニュアル 永井書店 2010 4) 上田康之 : 慢性肺障害合併児の呼吸管理 救急集中治療.2010 5) 染谷淳司 : 重度 重症脳性麻痺児の呼吸機能を考えた姿勢保持 リハビリテーション工学カンファレンス資料 1993.8. 6) 江草安彦監修 : 重症心身障害療育マニュアル 医歯薬出版株式会社 7) 金子芳洋監修 : 障害児の摂食 嚥下 呼吸リハビリテーション その基礎と実践. 医歯薬出版株式会社 8) 木原秀樹 : 小児の排痰法 日本呼吸ケア リハビリテーション学会誌 p287 ~291.Vol.24 No.3,2014 9) 三浦利彦 石川悠加 : 咳機能評価と徒手や機械による咳介助 日本呼吸ケア リハビリテーション学会誌 p292~297.vol.24 No.3,2014 10) 宮川哲夫 : 気道クリアランス法の選択基準 日本呼吸ケア リハビリテーション学会誌 p298~305.vol.24 No.3,2014 2017/1/13 36