米国における石油企業の開発動向

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( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

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本文

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2007年12月10日 初稿

週刊原油171207米国石油週報・米国中西部の原油輸入増加

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目次 平成 25 年 3 月期決算概要 1 業績概要 4 2 平成 25 年 3 月期の課題と取組み 5 3 経営成績 6 4 業績推移 7 5 売上高四半期推移 8 6 事業別業績推移 ( ソフトウェア開発事業 ) 9 7 事業別業績推移 ( 入力データ作成事業 ) 10 8 業種別売上比率 (

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受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

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第 部 B/S とキャッシュフロー 表 B 金満家この 1 年間の投資と調達の内容 ( 昨年末 ~ 本年末 )( 単位 : 百万円 ) 車 15 家 5 銀行借入 5 内部留保 ( 注 ) 昨年末と本年初は同じ B/S この結果 本年末の B/S は表 C のようになります 表 C

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第101期(平成15年度)中間決算の概要

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

2017年度 決算概要


Transcription:

米国における石油企業の開発動向 2018 年 6 月 21 日 調査部 古藤太平 1

免責事項 本資料は石油天然ガス 金属鉱物資源機構 ( 以下 機構 ) が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが 機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません また 本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり 何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません したがって 機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません なお 本資料の図表類等を引用等する場合には 機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます 2

本日の報告内容 1. はじめに 2. メジャー企業の動向 3. 独立系企業上位の動向 4. 独立系企業中位の動向 5. 独立系企業下位の動向 6. 関連業界動向 7. まとめ 3

1. はじめに 1 米国の原油生産は 1970 年のピーク ( 日量 964 万バレル ) から減少傾向が継続 2008 年に 500 万バレルを下回った シェールオイルの生産は 2000~ 2010 年の間は 100 万バレル未満で推移していたが 2011 年以降増加している (2011 年 124 万バレルから 2017 年 470 万バレルへ ) 2011 年以降 在来型の原油生産の減少傾向には歯止めがかかっており 2011 年の 440 万バレルを底として 2017 年には 465 万バレルまで増加している 出典 :EIA 統計 (STEO 他 ) より JOGMEC 作成 4

1. はじめに 2 2008 年以降テキサス ノースダコタ メキシコ湾の増産に牽引された米国の原油生産は 2015 年には 941 万バレルまで回復 2016 年には 886 万バレルまで減少したが 2018 年には過去最高を記録した 1970 年を上回る (1,000 万バレルを超える ) 見通し 2017 年の生産量に基準に米国における原油生産を石油企業の規模別にメジャーズ 上位 ( 日量 15 万バレル超 :4 社 ) 中位 (12-15 万バレル :4 社 ) 下位 (9-12 万バレル :4 社 ) その他に分けてみると過去 10 年間のシェールオイルによる米国の原油生産量の増加が中位以下の多数の企業に牽引されてきた メジャーズ :Exxon Mobil, Chevron, Shell, BP, Total 上位 : EOG, Anadarko, Occidental, Pioneer 中位 : Continental, Marathon, Concho, Devon 下位 : Hess, Noble, Apache, Chesapeake 出典 :EIA(DPR 他 ) 各社決算資料より JOGMEC 作成 5

2. メジャー企業の動向 1 過去 10 年間 メジャー企業の米国における原油生産は (BP の事故による影響を除けば ) 安定的に推移してきた シェール開発に積極的なエクソン シェブロンと メキシコ湾の海底油田開発を中心とするシェル BP に分かれる 1) Exxon Mobil 2017 年の米国における原油生産は日量 51.4 万バレル シェールオイルは約 40%(20.3 万バレル ) 2017 年 パーミアンのシェールオイル資産を購入 パーミアンとバッケンへの投資拡大により 2025 年の米国における生産は 80 万バレルの見通し メキシコ湾の大水深開発では Julia Phase 1 2 3 以外はノンオペレーター案件 生産量の減少傾向は継続している 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 6

2. メジャー企業の動向 2 2) Chevron 2017 年の原油生産は日量 51.9 万バレル シェールオイルは35%(18.1 万バレル ) パーミアンのシェールオイルとメキシコ湾の大水深開発により2022 年 65 万バレル 3) Royal Dutch Shell 2017 年の原油生産は日量 30 万バレル シェールオイルは21%(6.3 万バレル ) メキシコ湾の大水深開発が中心だが大型プロジェクト本格稼動は2020 年以降の見通し (Chevron BPと共に )BHP Billitonのシェール資産 ( 日量 20 万バレル前後 ) を取得する動きに注目 4) BP 2017 年の原油生産は日量 42.6 万バレル シェールオイル ( イーグルフォード アナダルコ等 ) は10%(4.2 万バレル ) 今後ともメキシコ湾の大水深開発が中心となるが大型プロジェクトの本格稼動は2020 年以降の見通し 5) TOTAL 2017 年原油生産 3.1 万バレル 2016 年に取得したシェール資産やメキシコ湾大水深開発は2020 年以降となる見通し 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 7

3. 独立系上位企業の動向 1 2011-15 年は借入増によりシェールオイル増産 2015-17 年の低油価の間 資本的支出は減らしたが効率性向上等により生産増加 当面は借入圧縮 配当増加への対応も必要 油価の上昇が増産に結びつくのにはラグが生じる可能性 デジタル革命がどの程度シェールオイル生産の効率性を高めることができるかに注目 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 8

3. 独立系上位企業の動向 2 パーミアンを中心とする Pioneer は生産拡大に応じてヘッジ取引も増やしている EOG のヘッジ取引が増減するのはバッケンの生産見通しの変動が影響しているものと見られる 2018 年分のヘッジ取引では 50 ドル台前半から 55 ドルくらいで価格を固定化しており 足許では市場価格よりも低くなっている 千 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 9

3. 独立系中位企業の動向 1 2011-15 年は借入増によりシェールオイル増産 2015-17 年の低油価の間 資本的支出を減らし 有利子負債も減らしてきた 油価の上昇に応じて営業キャッシュフローが増加 資本的支出も再び増加している レスポンス良く増産に結びつく可能性 インフラのボトルネックを克服しシェールオイルの増産を進めることができるかも注目 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 10

3. 独立系中位企業の動向 2 バッケンを中心に生産する Continental はヘッジ取引に慎重な動き 2017 年末時点でカバー取引を行っておらず 結果として足許の油価上昇の恩恵をフルに享受 パーミアンを中心とする Concho Resources は一貫して生産を拡大しており ヘッジ取引も増やしている 2018 年は 50 ドル台前半で固定化してしまっているが 来年後半には価格上昇の恩恵をフルに享受することができる 千 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 11

3. 独立系下位企業の動向 1 2008-15 年にかけて借入を増やしシェールオイル増産 2015-17 年の低油価の間 資本的支出を減らしたが 有利子負債の削減は進まず 油価の上昇に応じて営業キャッシュフローが増加 資本的支出はやや増加しているが 借入等による資金調達の余力は限定的 新技術の導入によりコスト削減を進めることができるかにも注目 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 12

3. 独立系下位企業の動向 2 バッケンを中心に生産する Hess は 2017 年末にヘッジ取引を再開 約 115 千バレルを 50 ドル前後で固定化 Noble Chesapeake も 50 ドル前後でヘッジ取引を行っている Apache はパーミアンからの増産が期待されるが インフラや労働力不足等のボトルネックへの対応が必要 出典 : 各社決算資料より JOGMEC 作成 13

産増加要因増産抑制要因5. まとめ 1 生シェールオイル増産に関する 2 通りの見方 油価上昇 ( 足許 WTI 65-70 ドル前後 ) 営業キャッシュフロー増加 トランプ政権のエネルギードミナンス戦略 ( 石油 天然ガス輸出促進策 ) メジャー 2 社及び独立系大手企業によるショートサイクル資産としてのシェールオイル開発へのシフト ( 水平掘削 水圧破砕に加え ) デジタル技術等の導入による生産性の向上 油価の先行き不透明感 パイプライン等のインフラ 水圧破砕用の砂 ケミカル不足 技術者不足による人件費上昇等のボトルネック 資本効率向上への要求 ( 利回り重視 回収期間の短縮化 ) 気候変動問題 脱炭素化 再生可能エネルギーシフト 燃費基準改善要求の高まり 低油価期に行われた独立系企業のヘッジ取引 14

5. まとめ 2 メジャー企業の米国における原油生産は Exxon Mobil と Chevron のシェールオイル増産等により日量 100 万バレル程度増加する見込み 独立系企業の生産見通しは油価動向次第ではあるが 相対的に大手の企業の増産傾向は継続 ( 或いは加速 ) する可能性が大きい メジャー企業や大手独立系企業が中堅中小企業の買収により増産する部分は純増にはならない しかしながら デジタル化等の技術革新やパイプライン整備によるインフラ ボトルネック解消が進んでくることから 2019 年後半以降 増産ペースが加速する可能性は否定できない 15

ご参考 1: 企業規模別米国における生産量推移 ( 千 ) 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ExxonMobil 367 384 408 423 418 431 454 476 494 514 Chevron 421 484 489 465 455 449 456 501 504 519 RD Shell 272 273 237 211 222 237 271 286 281 300 BP 538 65 594 453 390 363 410 379 391 426 TOTAL 3 12 20 16 13 15 27 34 31 31 メジャーズ計 1,601 1,218 1,748 1,568 1,498 1,495 1,618 1,676 1,701 1,790 ( 割合 ) 32.0% 22.8% 31.9% 27.8% 23.1% 20.0% 18.5% 17.8% 19.2% 19.1% ConocoPhillips 426 418 390 383 311 330 350 364 358 347 EOG 40 48 63 102 149 212 282 283 278 335 Anadarko 108 120 130 132 150 159 203 232 233 266 Occidental 263 271 271 230 255 266 183 187 189 200 Pioneer 22 25 28 41 63 70 87 105 134 159 上位 4 社計 433 464 492 504 617 707 755 808 834 959 ( 割合 ) 8.7% 8.7% 9.0% 8.9% 9.5% 9.5% 8.6% 8.6% 9.4% 10.3% Continental 25 28 32 45 69 96 122 147 128 138 Marathon 63 64 70 75 107 126 157 171 131 133 Concho 13 20 28 40 46 58 72 94 93 119 Devon 46 47 44 47 57 78 130 164 128 115 中位 4 社計 147 159 174 207 279 358 481 576 480 506 ( 割合 ) 2.9% 3.0% 3.2% 3.7% 4.3% 4.8% 5.5% 6.1% 5.4% 5.4% Hess 32 60 75 81 108 108 127 147 122 112 Noble 40 37 39 38 49 63 67 81 99 111 Apache 90 89 97 119 134 147 134 124 104 91 Chesapeake 31 32 50 87 85 112 115 115 90 90 下位 4 社計 192 218 261 325 376 430 443 467 415 405 ( 割合 ) 3.9% 4.1% 4.8% 5.8% 5.8% 5.8% 5.1% 5.0% 4.7% 4.3% その他計 2,626 3,290 2,800 3,039 3,727 4,477 5,456 5,881 5,427 5,695 ( 割合 ) 52.5% 61.5% 51.1% 53.8% 57.4% 60.0% 62.3% 62.5% 61.3% 60.9% 独立系計 3,397 4,131 3,727 4,075 4,999 5,971 7,135 7,732 7,156 7,565 ( 割合 ) 68.0% 77.2% 68.1% 72.2% 76.9% 80.0% 81.5% 82.2% 80.8% 80.9% 計 4,998 5,349 5,475 5,643 6,497 7,466 8,753 9,408 8,857 9,355 出典 :EIA 統計 各社決算資料よりJOGMEC 作成 16

ご参考 2 : ヘッジ取引に着目する理由 売上高 当期利益 総借入 純資産 設備投資といった財務上の計数が過去の一定の期間や時点の企業の状態を示すのに対し ヘッジ取引の量や約定した価格には各企業の将来の価格に対する見方や生産計画が反映されたものと考えられる ヘッジ取引を増やしている企業には 今後設備投資を増やして増産する準備をしているか油価が下落すると予想している等々の事情があると考えられる 決算書のヘッジ取引の記載例とこの調査における集計方法 ( 出典 : SM Energy 決算資料より JOGMEC 作成 ) 17