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10_皆生養護学校


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2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明 計 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

難聴児童の伝える力を 高めるための指導の工夫 -iPadを活用した取り組みを通して-

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

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(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

(2) 記録用サポートブックの作り方 記録用サポートブックは 一般様式 を使って書きます 一般様式 は 項目 本人の状況 支援方法 の 3 つの枠からできています 様式一般様式支援者 : 場所 : 日付 : < 項目 > 例 ) 話を聞く( 授業中 ) 使い ポイント 方 気になるな 困ったな と思

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「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

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学校評価保護者アンケート集計結果 2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明

英語科学習指導案 京都教育大学附属桃山中学校 指導者 : 津田優子 1. 指導日時平成 30 年 2 月 2 日 ( 金 ) 公開授業 Ⅱ(10:45~11:35) 2. 指導学級 ( 場所 ) 第 2 学年 3 組 ( 男子 20 名女子 17 名計 37 名 ) 3. 場所京都教育大学附属桃山中

環境 体制整備 4 チェック項目意見 事業所評価 生活空間は 清潔で 心地よく過ごせる環境になっているか また 子ども達の活動に合わせた空間となっているか クーラーの設定温度がもう少し下がればなおよいと思いました 蒸し暑く感じました お迎え時に見学させて頂きますが とても清潔だと思

(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

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単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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回数 テーマ 内容 2 発達障害のある児童の心理 行動特性 1 学習障害のある人の心理 行動特性 3 発達障害のある児童の心理 行動特性 2 ADHD のある人の心理 行動特性 4 発達障害のある児童の心理 行動特性 3 自閉スペクトラム症のある人の心理 行動特性 5 発達障害に対する支援 1 学習

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2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

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解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

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第 4 学年算数科学習指導案 平成 23 年 10 月 17 日 ( 月 ) 授業者川口雄 1 単元名 面積 2 児童の実態中条小学校の4 年生 (36 名 ) では算数において習熟度別学習を行っている 今回授業を行うのは算数が得意な どんどんコース の26 名である 課題に対して意欲的に取り組むこ

国語 A では, 領域別, 観点別, 問題形式別に見て, どの区分においても全国平均を上回り, 高い正答率でした しかし, 設問別でみると全国および新潟県平均正答率を下回った設問が, 15 問中 1 問, 新潟県の平均正答率を下回った設問は,15 問中 1 問ありました 設問の概要関屋小新潟県全国

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

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5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

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教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

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目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

(4) ものごとを最後までやり遂げて, うれしかったことがありますか (5) 難しいことでも, 失敗を恐れないで挑戦していますか

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はじめに 我が国においては 障害者の権利に関する条約 を踏まえ 誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い 人々の多様な在り方を相互に認め合える 共生社会 を目指し 障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みである インクルーシブ教育システム の理念のもと 特別支援教育を推進していく必要があります

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平成 30 年 6 月 8 日 ( 金 ) 第 5 校時 尾道市立日比崎小学校第 4 学年 2 組外国語活動 指導者 HRT 東森 千晶 JTE 片山 奈弥津 単元名 好きな曜日は何かな? ~I like Mondays.~ 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力 主体性 本時のポイント

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子どもから大人まで県民だれもが生涯にわたって主体的にスポーツに親しめる環境 (= スポーツ振興基盤 ) を整えていくことが重要

< 算数科 > 金種の弁別をし, 硬貨や紙幣の名称を知る 単一硬貨を使っての合計金額を数える 硬貨が各種混じった中で, 合計金額を数える おつりを伴う正しいお金の出し方を知る 複数の品物の合計金額を概算で見積もることができる 定価, 売値, 割引の意味を知るとともに, 割引後の値段を求める 必要感目

2 単元の目標 廿日市市 についての魅力を目的意識や相手意識を明確にして地域内外に発信することができる 自分たちの住む 廿日市市 に愛着をもつことができる 3 単元の評価規準 学習方法 自分自身 他者や社会 課題発見力 思考力 判断力 表現力 主体性 自らへの自信 対象と積極的にかかわる中で, 課題

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平成18年度


Taro 情緒障害のある児童生徒の理解

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

群教セ I01-08 平 集 特 情緒障害 中学校自閉症 情緒障害特別支援学級における人と関わる意識を高める支援の工夫 自己肯定感を高めるための振り返りと ソーシャルスキルトレーニングを通して 特別研修員田子賢一 Ⅰ 研究テーマ設定の理由 自閉症 情緒障害特別支援学級の生徒は 社会生活

消費者教育のヒント集&事例集

研究紀要目次 研究紀要発行に寄せて 1 研究構想図 2 授業改善システム (PDCA) 3 研究授業実施一覧 4 小学部研究授業のまとめ 5 中学部研究授業のまとめ 6 高等部研究授業のまとめ 7 主体性を育む 振り返り とは 8 成果と課題 9 < 巻末資料 > 舞鶴支援学校 つけたい力 ( めざ

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

1 対象児童 省略 2 児童の実態 省略 発達障害 情緒障害通級指導教室自立活動学習指導案 コミュニケーションに課題のある児童の指導 平成 30 年 11 月 6 日 ( 火 ) 第 5 校時 3 指導観これまでに通級指導教室では 落ち着いた環境の中で 精神的安定を図り 本来持っている能力を発揮し

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

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3 昨年度の校内研究の成果を基に本校では 平成 24 年度の校内研究で 授業における 手立て と 評価 のつながりを意識した授業づくりについて 指導評価シート を基に検討した 平成 24 年度北海道鷹栖養護学校研究紀要 また 平成 25 年度から 2 カ年計画で 般化 を目的とした指導方法について研

24 京都教育大学教育実践研究紀要 第17号 内容 発達段階に応じてどのように充実を図るかが重要であるとされ CAN-DOの形で指標形式が示されてい る そこでは ヨーロッパ言語共通参照枠 CEFR の日本版であるCEFR-Jを参考に 系統だった指導と学習 評価 筆記テストのみならず スピーチ イン

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

山口大学教育学部附属特別支援学校通級指導教室におけるICT 活用研修プログラム開発プロジェクト 通級指導教室における ICT 活用に関するアンケート タブレット端末の活用事例 本校では 地域の特別支援教育の充実に貢献することを目的に 山口県教育委員会 山口大学と連携を図りながら

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

指導内容科目国語総合の具体的な指導目標評価の観点 方法 読むこと 書くこと 対象を的確に説明したり描写したりするなど 適切な表現の下かを考えて読む 常用漢字の大体を読み 書くことができ 文や文章の中で使うことができる 与えられた題材に即して 自分が体験したことや考えたこと 身の回りのことなどから 相

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小学校における県平均正答率との比較 市と県の平均正答率の差を比べると 国語 A B 算数 A B 理科のすべての教科 領域 区分で 5ポイント以上の差のものはなくなった 国語 A 市 :68.2% 県 :70.1% 差 :-1.9ポイント 国語 B 市 :49.6% 県 :53.6% 算数 A 市

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奈良自立活動研究会主催 特別支援教育研修会 自閉症の理解と具体的指導について 平成 27 年 7 月 19 日 筑波大学附属久里浜特別支援学校 下山直人 1 自閉症の理解 筑波大学附属久里浜特別支援学校 Special Needs Education school for children with

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平成19年度 研究主題 指導者養成研修講座 研修報告 概要 石川県教育センター 石川県立明和養護学校 松任分校 多保田 春美 自閉症のある子の特性理解と効果的な支援のあり方 将来を見つめ その子らしさと主体性を大切にしたかかわりを通して 要約 知的障害と自閉症のある子どもたちにとって効果的な支援のあり方を探るため 将来を見通して その 子らしさ と 主体性 を大切にしながら実践を行った その中で 自閉症の特性を十分理解した上で アセスメントにより子どもの姿を捉えることが 支援の出発点になることがわかった また子どもの好き なことや得意なことを生かし 苦手な部分については支援をし 本人にわかりやすい環境を整えていくこ とは有効で 子どもは安心し 主体的に取り組み自分の力を発揮できることがわかった さらに 指導 支援の際に 将来を見通す視点を加えたことによって それが子どもの生活の広がりにつながった キーワード 知的障害 自閉症 将来を見通す その子らしさ 好きなことや得意なこと 主体性 Ⅰ 主題設定の理由 私の所属する知的障害養護学校では 障害の多様化 が進んでいる その中で 自閉症のある子は約半数を 占めている 全国調査においても知的障害養護学校の 小学部で 47.5% 中学部で 40.8%の子どもたちが自閉 症 もしくは自閉症の疑いがあると報告されている H16.国立特殊教育研究所による 子どもとのかかわ りにおいて 自閉症の理解は必要不可欠である 子どもたちは それぞれに個性的で魅力的な存在で ある 一方で 自閉症のある子には 見え方や聞こえ 方 感じ方 周りの状況のとらえ方等に特性があり 思いをどう理解したらよいのか悩むことも多かった 自分なりに文献や研修で学んできたが 一人一人の子 どもたちの姿は様々である 特性の理解をさらに深め 効果的な支援のあり方について 子どもの将来の生活 をも含めた大きな視点で学びたいと考える Ⅱ 研究の目的 自閉症の特性を理解し 将来を見据えた上で 知的障 害と自閉症のある子が その子らしさを生かし 主体的に 活動に取り組みながら より力を発揮できるような支援の あり方を探る Ⅳ 研究の内容 1.自閉症の特性の理解について (1)自閉症とは 自閉症とは ①対人関係の質的障害 ②コミュニ ケーションの障害 ③活動と興味の著しい限局性 の3つの領域に発達の偏りがあり 図1 医学的診 断基準に基づき これらの行動の特徴が乳幼児期 通 常 3 歳以前 から見られ生涯にわたって続くと判断 された場合に診断される この3つの特徴以外にも 感覚の過敏性 鈍麻性 シングルフォーカス 一度に1つのことにしか注意 が向かない 選択的注意の困難 多くの情報から必 要なものを選択して注意を向けることが難しい タ イムスリップ現象 過去の経験が鮮明に蘇る など が見られることがある また様々な要因により 不 適切な行動が生じる場合もある 自閉症の特性 Ⅲ 方法 1.自閉症の特性について理解する 2.効果的なアセスメントについて知る 3 特性にあった指導法 支援の方法 について学ぶ 4.将来を見通した支援について 関係機関へ聴き取 り調査をする 5.より力を発揮しやすい学校生活のあり方について 各校の取り組みから学ぶ 6.授業実践を行い 効果的な支援のあり方について 考察する 図1 自閉症の3つの特性 (2)特性に合わせた支援 ① 対人関係の質的障害 に対する支援 好きな 楽しい活動を人と一緒にする 一人でできる活動や仕事を増やして それを人 に認められるようにする 約束事を教えていく ② コミュニケーションの障害 への支援 視覚的な情報で ことばの理解の苦手さを補う

2004

本児の好きな形や色の弁別がより細かくできた 数の理解は ティータイムでの選択場面や学校から 好きな本を借りる時のやりとりに役立った スケジュール 写真1 が理解できるように なり 一日の予 定へと広がった 今すぐしたいと 思ったことも ス ケジュール上で やりとりすること で納得して待て るようになった ボカや絵カード 写真1 スケジュールの広がり で自分からやりとりできることが増えた ②ティータイムの指導 自分で絵カードを4 5 枚構成して 教師に手 渡して思いを伝えられ た 写真2 伝わることが うれしい様子で 自分から できた 指導前に比べ やりとりに使うカードが広がり お菓子や絵本などのカードも 含めると 40 枚程度に増えた 自分から伝える回数や場面 写真2 も増えた コミュニケーションボードで 拒否 許可についても できるようになっていった ③生活単元学習 それぞれの活動において 自分から行動できること が日ごとに増えていった 自分からスケジュールを出して確認するようになり 援助がなくても自分でできる部分が増えていった 友達の活動の様子を見て 新しいことにも関心を示 す姿があった 活動が楽しみになり 教室で自分からパネルに活動 の写真を 2 枚貼って担任に伝えて うれしそうに待つ 様子が見られた ④心理検査やビデオ分析より 指導を終えて NC-プログラムと PEP-R を行った 読 字に大きな伸びが見られ 書字においては新たな芽生 え項目が多く見られた また知覚や言語理解の領域が 伸びている 得意な部分や芽生えの見られる部分を中 心に指導を進めてきたが 結果 全体に伸びが見られ た また 人とのかかわりと感情の領域においての行動 問題が減少した これは本児の姿に合わせた支援や 自分の思いを表現して受け止められる経験の中で 人と 過ごすことに安心感を覚えてきているためと考える ま た 毎日続けて取り組めたことと 学校生活全体の学習 や活動が関連し合って このような結果を導いたと考え る 国語 算数 自立活動において 見通しを持って自分で 取り組めていたかどうかをビデオで分析した 教師のプロ ンプト (援助) が減っていれば 自分から取り組んでい たと考える 結果は図5のようになった 本児の好きなこと や得意なことを取り入れて 安心して取り組めるように環 境に配慮してきたことで このような結果になったと捉える 見通しを持って自分から学習できていたと考える 図5 国語 算数の時間の教師の援助の回数 また生活単元学習におけるビデオ分析で 自分から 活動できた場面や 活動の広がりなどを捉えた 回を重 ねるごとに変容が見られた 図6 本校では 領域 教科を合わせた指導を学校生活の 中心に据えている 子どもに合わせて柔軟に活動内容 が工夫でき 好きなことや得意なことを生かしやすい 主体性が発揮されやすく 活動を広げやすいと考える 本児の様子からも そのことが伺える 図6 生活単元学習における 活動の広がりと自分から行動できた場面の数 Ⅴ 結論 子どもに合った指導や支援を考える際に 自閉症の 特性を理解した上で子どもの姿をアセスメントする ことは有効である 子どもの好きなことや得意なことを生かし 本人に とってわかりやすい環境を整えることは有効で 子 どもは安心し 主体的に取り組み 自分の力を発揮 する 自閉症のある子にとって大事な指導内容に 将来を 見通した視点を加えて指導 支援を行うことは 子 どもの生活を広げることにつながる Ⅵ 今後の課題 子どもたちの生活を地域へと広げていくことを意識し 楽しい活動内容や具体的な支援を計画する 支援が継続されるように 誰にでもできそうな支援の方 法を提案し 保護者等と共有していく また 支援のた めのツールを共有できるように学校環境を整えていく