はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

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はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

第14章 国民年金 

年金・社会保険セミナー

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平成 28 年 9 月度実施実技試験 損保顧客資産相談業務 139

( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 15,250 円 ( 平成 26 年度 ) 付加保険料月額 400

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(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 16,490 円 ( 平成 29 年度 ) 付加保険料月額 400

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

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強制加入被保険者(法7) ケース1

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高齢者福祉

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老齢基礎年金 老齢基礎年金を受けられる方 老齢基礎年金は 原則として受給資格期間が 25 年 (300 ヵ月 ) 以上ある方が 65 歳になったときから受けられます 受給資格を満たしているときは 本人の希望により 60 歳から 70 歳までの間で年金を受け始める年齢を変更することができます (17

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スライド 1

(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

国民年金

他の所得による制限と雇用保険受給による年金の停止 公務員として再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額停止となり 特別 ( 本来 ) 支給の老齢厚生年金の一部または全部に制限がかかることがあります なお 民間に再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額支給されますが

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強制加入被保険者(法7) ケース1

年金支給開始年齢図 特別支給の ( 給料比例部分 ) 昭和 29 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 特別支給の退職共済年金 昭和 25 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 退職共済年金 経過的職域加算額 ( 旧職域部分 ) 退職等年金給付 ( 年金払い退職給付 ) 平成 27 年 9 月までの組合

年金・社会保険セミナー

ただし 対象期間の翌年度から起算して3 年度目以降に追納する場合は 保険料に加算額が上乗せされます 保険料の免除や猶予を受けず保険料の未納の期間があると 1 年金額が減額される 2 年期を受給できない3 障害基礎年金や遺族基礎年金を請求できない 場合がありますのでご注意ください 全額または一部免除

再任用と年金加入の関係をまとめると次のようになる ( 都道府県によって勤務形態は異なる ) 再任用の勤務形態フルタイム勤務 3/4 1/2 週の勤務時間 38 時間 45 分 29 時間 19 時間 15 分 共済年金 厚生年金 (2016 年 9 月 30 日まで ) 加入する年金 (2015 年

現在公的年金を受けている方は その年金証書 ( 請求者及び配偶者 請求者名義の預金通帳 戸籍謄本 ( 受給権発生年月日以降のもの ) 請求者の住民票コードが記載されているもの ( お持ちの場合のみ ) 障害基礎年金 受給要件 障害基礎年金は 次の要件を満たしている方の障害 ( 初診日から1 年 6か

しくみ2 厚生年金は基礎年金に上乗せ 厚生年金保険が適用されている事業所に勤めるサラリーマン等は 国民年金と厚生年金保険の2つの年金制度に加入することになります 厚生年金保険から支給される年金は 加入期間とその間の平均収入に応じて計算される報酬比例の年金となっていて 次のように基礎年金に上乗せするか

52 (2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業 無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職再就職老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 3 年金決定請求 ( 一部又は全額支給停止 ) 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありま

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8-1 雇用保険 雇用保険の適用基準 1 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること 31 日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き この要件に該当することとなります このため 例えば 次の場合には 雇用契約期間が31 日未満であっても 原則として 31 日以上の雇用が見込まれるもの

年金額の改定について 公的年金制度は平成 16 年の法改正により永久に年金財政を均衡させる従来の仕組みから おおむね ( 100 ) 年間で年金財政を均衡させる仕組みへと変わった この年金財政を均衡させる期間を 財政均衡期間 という これにより 政府は少なくとも ( 5 ) 年ごとに財政の検証をおこ

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第 2 節強制被保険者 1 第 1 号被保険者頻出 択 ( 法 7 条 1 項 1 号 ) 資格要件 日本国内に住所を有する20 歳以上 60 歳未満の者 ( 第 2 号 第 3 号被保険者に該当する者を除く ) 例 ) 自営業者 農漁業従事者 無業者など 適用除外 被用者年金各法に基づく老齢又は退

平成25年4月から9月までの年金額は

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2. 事例 Q&A [1] 公的年金制度の仕組み Q. 私は昭和 37(1962) 生まれの男性で 現在 55 歳のサラリーマンです 何歳からどのような年 金が受け取れるのでしょうか A. 65 歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が それに加えて配偶者が 65 歳になるまで加給年金が 支給されます 確

そのときになって困らないために リタイア前後の手続き編 厚生年金や国民年金の受給手続きは 年金事務所や市区町村役場の年金窓口で行います 共済年金加入期間のある人の手続きは 加入した共済組合です 加入していた年金制度 第 1 号被保険者期間だけの人国民年金だけ第 1 号被保険者期間だけの人 第 3 号

一元化後における退職共済年金および老齢厚生年金の在職支給停止 65 歳未満の場合の年金の支給停止計算方法 ( 低在老 ) 試算表 1 年金と賃金の合算額が 28 万を超えた場合に 年金額の支給停止 ( これを 低在老 といいます ) が行われます 年金と賃金の合算額 (c) が 28 万以下の場合は

第9章 国民年金制度について

老齢基礎年金 老齢基礎年金は 国民年金の加入者であった方の老後の保障として給付され 65 歳になったときに支給されます 老齢基礎年金は 保険料納付済期間 ( 厚生年金保険や共済組合の加入期間を含む ) と保険料免除期間などを合算した資格期間が 10 年以上ある場合に 終身にわたって受け取ることができ

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2 障害厚生年金障害厚生年金は次の1~3の条件すべてに該当する方が受給できます 1 障害の原因となった病気やケガの初診日 ( 1) が 厚生年金保険の被保険者である期間にあること 2 障害の原因となった病気やケガによる障害の程度が 障害認定日 ( 2) に法令により定められている障害等級表 ( 3)

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問 28 高年齢雇用継続給付との調整難度 A 70 問 29 特例老齢年金難度 B 72 問 30 経過的加算難度 B 74 問 31 老齢厚生年金の支給の繰下げ難度 B 76 問 32 老齢厚生年金の支給の繰上げ難度 B 80 問 歳以後の在職老齢年金難度 A 84 問 34 障害厚生

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図 1 60 歳 61 歳 62 歳 63 歳 64 歳 65 歳 生年月日 60 歳到達年度 特別支給の 男性 S24.4.2~S 平成 21~24 年度 女性 S29.4.2~S 平成 26~29 年度 男性 S28.4.2~S 女性 S33.4.2~S35.

2 厚年と国年の加入期間がある人 昭和 36 年 3 月以前 20 歳未満および 60 歳以後の厚年の被保険者期間 昭和 36 年 3 月以前の厚年期間のみの人 坑内員 船員 ( 第 3 種被保険者 ) の場合 昭和 61 年 3 月までの旧船員保険の

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1 勤めを続けるなら雇用保険の手続きをしましょう 定年手続き編 定年退職のあとで 定年で退職したあと 再雇用で働くか あるいは新しい勤め先に転職する場合は 雇用保険の手続きが必要になりま す 就職をしない場合は 手続きは必要ありません 再雇用で働くとき 再雇用で働く場合に 給与が 60 歳到達時と比

第 7 章 年金 福祉 1 年金 日本の公的年金制度は, 予測できない将来へ備えるため, 社会全体で支える仕組みを基本としたものです 世代を超えて社会全体で支え合うことで給付を実現し, 生涯を通じた保障を実現するために必要です 働いている世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てるという方式で

年金は 万が一のとき もしっかりサポートします! 一般的に 年金 と言いますと 老後の生活を支える 老齢年金 をイメージしますが それだけではありません! 年金には万が一のときに 障害厚生年金 や 遺族厚生年金 が支給される場合があります 障害厚生年金 病気やけがで障害の状態になったときは 厚生年金

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1. はじめに 自ら変わります 社会保険庁を変えます 社会保険庁ホームページ : 社会保険庁改革リスタートプラン より やるき化 プロジェクト あたりまえ化プロジェクト 見える化 プロジェクト きれい化 プロジェクト 2007/4/14 Copyright

12 ページ, 図表 ,930 円 保険料納付済月数 + 全額免除月数 1/2+4 分の 3 免除月数 5/8+ 半額免除月数 3/4+4 分の 1 免除月数 7/8 ( 出所 ) 厚生労働省 老齢年金ガイド平成 2730 年度版 より筆者作成 40 年 ( 加入可能年数

源泉徴収税額について 年金課年金給付担当 平成 28 年分公的年金等の源泉徴収票 をお送りしました 平成 28 年中に年金を受給された方に 平成 28 年分公的年金等の源泉徴収票 を 平成 29 年 1 月 12 日 ( 木 ) にお送りしました 今回下記のように様式が改正されております 裏面に記載

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新規裁定当該期間 ( 月又は年度 ) 中に新たに裁定され 年金受給権を得た者が対象であり 年金額については裁定された時点で決定された年金額 ( 年額 ) となっている なお 特別支給の老齢厚生年金の受給権者が65 歳に到達した以降 老齢基礎年金及び老齢厚生年金 ( 本来支給もしくは繰下げ支給 ) を

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例 言 厚生年金保険被保険者厚生年金保険被保険者については 平成 27 年 10 月 1 日から被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律が施行されたことに伴い 厚生年金保険法第 2 条の5の規定に基づき 以下のように分類している 1 第 1 号厚生年金被保険者第 2

平成 30 年 1 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 6 千億円 (1.3%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

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平成 30 年 2 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 7 千億円 (1.4%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

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[ 組合員期間等の特例 ] 組合員期間等については 年齢 職種などにより 過去の制度からの経過措置が設けられており 被用者年金制度の加入期間 ( 各共済組合の組合員期間など ) については 生年月日に応じて次表の年数以上であれば 組合員期間等が 25 年以上とみなされます 生 年 月 日 組合員期間

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達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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Web 版 Vol.59( 通巻 704 号 ) 中高齢寡婦加算 ( 遺族基礎年金の4 分の3) 779,300 円 3/4=584,475 円 584,500 円 (100 円単位 ) (2) 老齢厚生年金の年金額の算定式 平成 30 年度の本来水準と従前額保障 図表

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2/5 ヘ ーシ Q1. 年金通算とは何ですか? A. これまで各企業や基金では 加入者の老後の安定の一助となるよう さまざまな年金制度をつくり運営してきました しかし 従来の終身雇用を前提とした制度では 現代のライフスタイルに対応することが難しくなってきています 転職など雇用の流動化に対応し これ

Transcription:

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大きなテーマとされています 定年により会社を退職し セカンドライフを迎えられる方 会社の継続雇用制度によっては定年後も仕事を続けられる方なども多くいらっしゃるかと思います いずれの場合であっても 定年前後に発生する手続きは多岐にわたり 特に定年後の生活に直接影響してくるであろう 年金 健康保険 雇用保険 税金 に関しては 制度自体が非常に複雑となってい ます これらの手続きは 定年退職前であれば 会社が代わりに行ってくれていたことですが 今後は ご自身 で確認し 手続きを進めていかなくてはならないことも多くあります 本冊子では 定年前後においてこれだけは知っておきたい 年金 健康保険 雇用保険 税金 の制度や手続きについて わかりやすく解説しています 今後定年を迎える またはすでに定年を迎えられた方々のご参考となれば幸甚です 著者

定年退職時の年金 保険 税金の主な手続きスケジュール 第 1 章 年金 ❶ 年金制度 6 ❷ 60 歳代前半の老齢厚生年金 8 ❸ 60 歳代後半の老齢厚生年金 10 ❹ 加給年金額 12 ❺ 年金裁定請求のポイント 14 ❻ 繰上げ 繰下げ請求 18 ❼ 年金額の確認方法 20 ❽ ねんきん定期便 ねんきんネットの活用 21 ❾ 在職老齢年金 (60 歳代前半 ) 22 ❿ 在職老齢年金 (60 歳代後半 ) 24 ⓫ 遺族年金 26 ⓬ 離婚後の年金の分割 27 ⓭ 企業年金の裁定請求 28 第 2 章 雇用保険 ⓮ 雇用保険制度 30 ⓯ 定年後退職した場合の失業給付 32 ⓰ 高年齢雇用継続給付 34 ⓱ 年金との支給調整のしくみ 36

第 3 章 健康保険 ⓲ 退職後の医療保険制度 38 ⓳ 健康保険の任意継続被保険者 40 ⓴ 国民健康保険の被保険者 42 家族の扶養に入るには 43 退職後の介護保険制度 44 75 歳以降の後期高齢者医療制度 45 第 4 章 税金 退職金にかかる税金 46 年金にかかる税金 48 退職後の確定申告 50 退職後の住民税 52 問い合わせ窓口 サイト一覧 54 定年前後の手続きチェックリスト 55 * この冊子は 平成 29 年 3 月 1 日現在の法令等によっています

定年退職時の年金 保険 税金の 定年退職時の 年金 雇用保険 健康保険 税金 の主な手続きに関する一般的なスケジュールは次のとおりです 定年により会社を退職する場合 ( 図表 1 ) と 定年後再雇用となる場合 ( 図表 2 ) では 手続きが異なってきます 図表 1 定年により会社を退職する場合 年金雇用保険健康保険税金 定年前 ❶60 歳以降の年金額の確認 ( 試算 ) ❶ 雇用保険の喪失手続 ( 離職票 ) の社内申請 ❶ 定年後の健康保険制度の検討 ❶ 退職所得の受給に関する申告書 の提出 退職金の支払いがある場合 ❷ 健康保険証の返却 ❷ 給与所得の源泉徴収票 の受領 定年時 ❸ 退職所得の源泉徴収票 の受領 ❹ 住民税未納分の納付 定年退職後 ❷ 年金の裁定請求 ❷ 離職票の受領 ❸ 健康保険への加入手続き ❸ 年金の受給 (2 か月に 1 回 ) ❸ ハローワークにて求職の申込み 失業の認定 ❹ 基本手当の受給 65 歳以上の場合は高年齢求職者給付金の受給 ❺ 所得税の確定申告 ( 毎年 2/16~3/15) 4

主な手続きスケジュール 図表 2 定年後再雇用となる場合 年金雇用保険健康保険税金 定年前 ❶60 歳以降の年金額の確認 ( 試算 ) ❶ 高年齢雇用継続基本給付金の社内申請 60 歳以上 65 歳未満の間 ❶ 再雇用後も会社の健康保険に継続加入 健康保険加入基準を下回る場合を除く ❶ 退職所得の受給に関する申告書 の提出 定年時に退職金の支払いがある場合 ❷ 退職所得の源泉徴収票 の受領 定年時 再雇用後 ❷ 年金の裁定請求 ❸ 年金の受給 (2 か月に 1 回 ) ❷ 高年齢雇用継続基本給付金の受給 60 歳以上 65 歳未満の間 再雇用以降の退職については 定年により退職する場合と同様の手続き 定年前後の手続きに関する主なスケジュール ( 流れ ) を事前に把握する 定年退職と定年後再雇用の場合では手続きが異なるため注意が必要 5

第 1 章 年金 1 年金制度 1 年金制度の仕組み 我が国の年金制度は大きく分けて 3 階建ての制度となっており 1 階部分が 国民年金 2 階部分が 厚生年金 3 階部分が会社の任意で加入する 厚生年金基金 等となっています ( 図表 3 ) 年金の支給要件としては 老齢 障害 遺族 の 3 つがあります 2 老齢年金 定年前後に関わる年金として代表的なものが 老齢年金 となり 通常 65 歳から 国民年金より支給される 老齢基礎年金 厚生年金より支給される 老齢厚生年金 があります ( 厚生年金基金に加入している場合に支給される老齢給付もあり ) なお 老齢厚生年金については 生年月日に応じて一定の要件を満たせば 65 歳未満からも支給される 特別支給の老齢厚生年金 があります 3 受給資格期間 老齢年金 を受給するには 原則として 25 年以上の受給資格期間が必要 となります ( 平成 29 年 8 月以降は 受給資格期間が10 年に短縮されます ) 受給資格期間は 国民年金保険料の納付済期間や厚生年金保険への加入期間 第 3 号被保険者であった期間等があたります なお 特例により受給資格期間が短縮されるケースもあります ( 図表 4 ) 6

乗せ年金第 1 章年金 図表 3 年金制度の体系上礎年金付国確3 階定厚生年金基金加( 代行部分 ) 1 階 民年金基拠出年金(個人型)2 階 年金金企業年金等 厚生年金 ( 自営業者等 ) ( サラリーマン ) 第 1 号被保険者 確定拠出年金 ( 個人型 ) 国民年金 ( 基礎年金 ) 第 2 号被保険者 ここに該当します 基第 2 号被保険者の ( 公務員等 )( 被扶養配偶者 ) 第 3 号被保険者 図表 4 受給資格期間の短縮特例 ⑴ 厚生年金と共済組合等を合算した加入期間が下表の年数以上の場合 生年月日昭和 27 年 4 月 1 日以前昭和 27 年 4 月 2 日 ~ 昭和 28 年 4 月 1 日昭和 28 年 4 月 2 日 ~ 昭和 29 年 4 月 1 日昭和 29 年 4 月 2 日 ~ 昭和 30 年 4 月 1 日昭和 30 年 4 月 2 日 ~ 昭和 31 年 4 月 1 日 ⑵ 加入期間 20 年 21 年 22 年 23 年 24 年 中高齢者 ( 男性 40 歳 女性 35 歳 ) 以後の厚生年金保険の加入期間が下表の年数以上の場合 ( 中高齢者の特例 という ) 生年月日昭和 22 年 4 月 1 日以前昭和 22 年 4 月 2 日 ~ 昭和 23 年 4 月 1 日昭和 23 年 4 月 2 日 ~ 昭和 24 年 4 月 1 日昭和 24 年 4 月 2 日 ~ 昭和 25 年 4 月 1 日昭和 25 年 4 月 2 日 ~ 昭和 26 年 4 月 1 日 加入期間 15 年 16 年 17 年 18 年 19 年 定年前後に受給できる代表的な年金には 老齢基礎年金 老齢厚生年金がある 老齢年金の受給には 原則として 25 年以上の受給資格期間が必要 ( 平成 29 年 8 月以降は 10 年以上に変更 ) 7

2 60 歳代前半の老齢厚生年金 1 特別支給の老齢厚生年金とは 昭和 60 年の法改正により 老齢厚生年金の支給開始年齢は60 歳から65 歳に引き上がりました 一方で 急激な変更緩和やスムーズな引上げを目的に 生年月日に応じた段階的な支給開始年齢の引上げが経過措置として設けられました この経過措置により 65 歳未満の受給権者に対して支給される老齢厚生年金を 特別支給の老齢厚生年金 といいます 2 受給要件と年金の構成 特別支給の老齢厚生年金を受給するためには 次の要件をすべて満たす必要があります 1 60 歳以上である 2 1 年以上の厚生年金の加入期間がある 3 老齢基礎年金の受給資格期間 ( 原則 25 年以上 短縮特例あり ) を満たしている 4 男性は昭和 36 年 4 月 1 日以前 女性は昭和 41 年 4 月 1 日以前生まれ 特別支給の老齢厚生年金は 定額部分 と 報酬比例部分 によって構成されており ( 図表 5 ) 男女ごとに 生年月日に応じた支給開始年齢が定められています ( 図表 6 ) ちなみに 平成 29 年 4 月 1 日以降に60 歳に達する場合 男性は 60 歳からの年金支給はなく また男女ともに報酬比例部分が年齢に応じて段階的に支給され 定額部分の支給はありません 3 年金の支給期間 支給日 支給期間は 年金の受給権が生じた月の翌月から 受給権が消滅した月までとなります また 年金の支給日は 毎年 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月 12 月 ( 偶数月 ) の計 6 回に分けて 各月の前 2 か月分が支給されることになります 8

第 1 章年金 図表 5 特別支給の老齢厚生年金の構成 60 歳 特別支給の老齢厚生年金 ( 報酬比例部分 2) 特別支給の老齢厚生年金 ( 定額部分 1) 65 歳 老齢厚生年金 経過的加算 老齢基礎年金 生年月日に応じて段階的に引上げ [ 年金の計算式 ] 1 1,625 円 ( 平成 29 年度 ) 生年月日に応じた率 被保険者期間の月数 2 ( 平均標準生年月日に平成 15 年 3 月までの平均標準生年月日に平成 15 年 4 月以降の 報酬月額応じた率被保険者期間の月数 )( + 報酬額応じた率被保険者期間の月数 ) 物価スライドによる特例あり 図表 6 特別支給の老齢厚生年金における段階的支給 生年月日 支給開始年齢 男性女性定額部分報酬比例部分 昭和 16 年 4 月 2 日 ~ 昭和 18 年 4 月 1 日昭和 21 年 4 月 2 日 ~ 昭和 23 年 4 月 1 日 61 歳 昭和 18 年 4 月 2 日 ~ 昭和 20 年 4 月 1 日昭和 23 年 4 月 2 日 ~ 昭和 25 年 4 月 1 日 62 歳 昭和 20 年 4 月 2 日 ~ 昭和 22 年 4 月 1 日昭和 25 年 4 月 2 日 ~ 昭和 27 年 4 月 1 日 63 歳 昭和 22 年 4 月 2 日 ~ 昭和 24 年 4 月 1 日昭和 27 年 4 月 2 日 ~ 昭和 29 年 4 月 1 日 64 歳 昭和 24 年 4 月 2 日 ~ 昭和 28 年 4 月 1 日 昭和 29 年 4 月 2 日 ~ 昭和 33 年 4 月 1 日 昭和 28 年 4 月 2 日 ~ 昭和 30 年 4 月 1 日昭和 33 年 4 月 2 日 ~ 昭和 35 年 4 月 1 日 61 歳 昭和 30 年 4 月 2 日 ~ 昭和 32 年 4 月 1 日昭和 35 年 4 月 2 日 ~ 昭和 37 年 4 月 1 日 62 歳支給なし昭和 32 年 4 月 2 日 ~ 昭和 34 年 4 月 1 日昭和 37 年 4 月 2 日 ~ 昭和 39 年 4 月 1 日 63 歳 昭和 34 年 4 月 2 日 ~ 昭和 36 年 4 月 1 日昭和 39 年 4 月 2 日 ~ 昭和 41 年 4 月 1 日 64 歳 昭和 36 年 4 月 2 日以降 ~ 昭和 41 年 4 月 2 日以降 ~ 支給なし * 出典 : 日本年金機構 HP 60 歳 特別支給の老齢厚生年金( 定額部分 報酬比例部分 ) の支給開始年齢は 生年月日に応じて段階的に引き上がる 特別支給の老齢厚生年金を受給するためには 厚生年金の被保険者期間が 1 年以上必要となる 9

3 60 歳代後半の老齢厚生年金 1 65 歳以降の老齢年金 65 歳以降の老齢年金には 老齢基礎年金 とその上乗せ部分の 老齢厚生年金 が 2 階建てで支給されます 65 歳前に 特別支給の老齢厚生年金 を受給していた場合 報酬比例部分 が老齢厚生年金に 定額部分 が老齢基礎年金に切り替わるイメージです ( 図表 7 ) 2 受給要件と経過的加算 65 歳以降の老齢厚生年金を受給するためには 次の要件をすべて満たす必要があります 1 2 3 65 歳以上である 厚生年金の加入期間が 1 か月以上ある 国民年金の受給資格期間 ( 原則 25 年以上 短縮特例あり ) を満たしていること 老齢基礎年金を受給するためには 上記 3の要件を満たす必要があります なお 65 歳前に 特別支給の老齢厚生年金 の定額部分を受給していた場合 厚生年金の被保険者期間のうち20 歳未満と60 歳以降の期間については 老齢基礎年金の年金額に反映されない等の理由から 当分の間 定額部分の額は老齢基礎年金の額よりも高くなるため その差額が 経過的加算 として老齢厚生年金に加算されます 3 年金の支給期間 支給日 65 歳以降の老齢厚生年金の支給期間についても 60 歳代前半の特別支給の老齢厚生年金と同様となり 支給日も毎年偶数月に 各月の前 2 か月分が支給されます 10

第 1 章年金 図表 7 65 歳以降の老齢厚生年金の構成 60 歳 特別支給の老齢厚生年金 ( 報酬比例部分 ) 特別支給の老齢厚生年金 ( 定額部分 ) 65 歳 老齢厚生年金 経過的加算 老齢基礎年金 [ 老齢基礎年金の額 ] 年金額は満額で 779,300 円 ( 平成 29 年度 ~) となる 満額が支給されるには 原則として 20 歳から60 歳まで全期間 (40 年 ) について保険料を納める もしくは厚生年金等の被保険者または第 3 号被保険者である必要があり 仮に免除月数や未納付月数等がある場合には その期間に応じて老齢基礎年金は減額される [ 老齢厚生年金の額 ] 特別支給の老齢厚生年金 の報酬比例部分に相当する額となる 参考老齢基礎年金の計算式 779,300 円 保険料納付済月数 + 全額免除月数 4/8 + 4 分の 1 納付月数 5/8 + (40 年 ) 加入可能年数 12 半額納付月数 6/8 + 4 分の 3 納付月数 7/8 平成 21 年 3 月分までの加入期間は 下記 のように読み替える 全額免除 : 4/8 2/6 4 分 1 納付 : 5/8 3/6 半額納付 : 6/8 4/6 4 分 3 納付 : 7/8 5/6 * 出典 : 日本年金機構 HP 65 歳以降の老齢厚生年金と老齢基礎年金は 2 階建てで支給される 65 歳以降の老齢厚生年金を受給するためには 厚生年金の被保険者期間 が 1 か月以上必要となる 11

4 加給年金額 1 加給年金額とは 一定の支給要件を満たす 配偶者または子 を生計維持している場合には 老齢厚生年金に 加給年金額 が加算されます 2 加給年金額の支給要件 加給年金額については 厚生年金の加入期間が20 年 ( 中高齢者の特例に該当する場合は短縮された期間 ) 以上であり 老齢厚生年金 ( 特別支給の老齢厚生年金においては定額部分 ) の受給権を取得した時点で 支給の対象となる配偶者または子 ( 図表 8 ) を生計維持していることが要件となります 3 振替加算 配偶者または子が 加給年金額の支給対象となる年齢要件から外れた場合は 加給年金額の加算は終了します ただし 配偶者については 配偶者本人が65 歳から受給する老齢基礎年金に 加給年金額の代わりとして 振替加算 が加算されます( 図表 9 ) 振替加算の対象は 大正 15 年 4 月 2 日 ~ 昭和 41 年 4 月 1 日生まれの配偶者で 生年月日に応じて 年額上限 224,300 円が支給されます なお 配偶者が加給年金額の対象者でなくとも 65 歳より後に老齢基礎年金の受給権が発生した場合には 振替加算の対象となる場合があります 12

第 1 章年金 図表 8 加給年金額の対象者 対象者 1 加給年金額支給要件 配偶者 2 224,300 円 65 歳未満 ( 大正 15 年 4 月 1 日以前生 ( 平成 29 年度 ~) 3 まれは年齢制限なし ) 子 (2 人目まで ) 子 (3 人目以降 ) 各 224,300 円 ( 平成 29 年度 ~) 各 74,800 円 18 歳到達日以後最初の 3 月 31 日までの子または 障害等級 1 級 2 級の状態にある 20 歳未満の子 1 対象者については 年収 850 万円未満が要件となります 2 加入期間が20 年以上の老齢厚生年金 ( 退職共済年金 )(40 歳 ( 女性 35 歳 ) 以降は15 年以 上の場合に限る ) 障害年金を受給する場合は 加給年金額が支給停止されます 3 生年月日に応じて配偶者の加給年金額に特別加算されます 図表 9 振替加算のイメージ 加給年金額 夫 老齢厚生年金 老齢基礎年金 妻 65 歳 振替加算 老齢基礎年金 一定の支給要件を満たす配偶者または子を生計維持する場合 老齢厚生年金に加給年金額が加算される 加給年金額の終了後においては 一定の基準により配偶者の老齢基礎年金に振替加算される 13