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( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

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スライド 1

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く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

平成14年度研究報告

本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

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周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

精子・卵子・胚研究の現状(久慈 直昭 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 講師提出資料)

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STAP現象の検証結果

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

1. 背景生殖細胞は 哺乳類の体を構成する細胞の中で 次世代へと受け継がれ 新たな個体をつくり出すことが可能な唯一の細胞です 生殖細胞系列の分化過程や 生殖細胞に特徴的なDNAのメチル化を含むエピゲノム情報 8 の再構成注メカニズムを解明することは 不妊の原因究明や世代を経たエピゲノム情報の伝達メカ

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公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

た遺伝子を切断し修復時に微小なエラーを生じさせて機能を破壊するノックアウトと 外部か ら任意の配列を挿入して事前設計した通りの機能を与えるノックインに大別される 外来遺伝 子をもった動物の作成や遺伝子治療には後者の技術が必要である しかし 動物胚への遺伝子ノックインには マイクロインジェクション法

記載例 : ウイルス マウス ( 感染実験 ) ( 注 )Web システム上で承認された実験計画の変更申請については 様式 A 中央の これまでの変更 申請を選択し 承認番号を入力すると過去の申請内容が反映されます さきに内容を呼び出してから入力を始めてください 加齢医学研究所 分野東北太郎教授 組

この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

資料 4 生命倫理専門調査会における主な議論 平成 25 年 12 月 20 日 1 海外における規制の状況 内閣府は平成 24 年度 ES 細胞 ips 細胞から作成した生殖細胞によるヒト胚作成に関する法規制の状況を確認するため 米国 英国 ドイツ フランス スペイン オーストラリア及び韓国を対象

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

資料3-1_本多准教授提出資料

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

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別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

平成18年3月17日

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

研究成果の概要 ( 背景 ) 従来の遺伝子工学は, 実質的に外来遺伝子の導入に限られ, 標的部位への導入は極めて困難でした ZFN, TALEN, CRISPR/Cas 1) 等のゲノム編集は, 微生物起源の人工酵素による遺伝子改変技術の総称で, 外来遺伝子の標的部位への導入のほか, 内在遺伝子の破

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

生物時計の安定性の秘密を解明

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

2 反復着床不全への新検査法 : 検査について子宮内膜の変化と着床の準備子宮内膜は 卵巣から分泌されるステロイドホルモンの作用によって 増殖期 分泌期 月経のサイクル ( 月経周期 ) を繰り返しています 増殖期には 卵胞から分泌されるエストロゲンの作用により内膜は次第に厚くなり 分泌期には排卵後の

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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論文の内容の要旨

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STAP現象の検証の実施について

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

体外受精についての同意書 ( 保管用 ) 卵管性 男性 免疫性 原因不明不妊のため 体外受精を施行します 体外受精の具体的な治療法については マニュアルをご参照ください 当施設での体外受精の妊娠率については別刷りの表をご参照ください 1) 現時点では体外受精により出生した児とそれ以外の児との先天異常

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

AID 4 6 AID ; 4 : ; 4 : ; 44 : ; 45 : ; 46 :

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

記載例 : 大腸菌 ウイルス ( 培養細胞 ) ( 注 )Web システム上で承認された実験計画の変更申請については 様式 A 中央の これまでの変更 申請を選択し 承認番号を入力すると過去の申請内容が反映されます さきに内容を呼び出してから入力を始めてください 加齢医学研究所 分野東北太郎教授 ヒ

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生物の発生 分化 再生 平成 12 年度採択研究代表者 小林悟 ( 岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター教授 ) 生殖細胞の形成機構の解明とその哺乳動物への応用 1. 研究実施の概要本研究は ショウジョウバエおよびマウスの生殖細胞に関わる分子の同定および機能解析を行い 無脊椎 脊椎動物に

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商用周波磁界ばく露と小児白血病発症の可能性に関する研究提言 2007 年 WHO( 世界保健機関 ) は 環境保健クライテリアモノグラフ 238 およびファクトシート 322 で 商用周波磁界ばく露の長期的健康影響に関し 小児白血病との間に弱い関連性はあるものの 因果関係があると見る程証拠は揃ってい

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. ポイント : 明細胞肉腫 (Clear Cell Sarcoma : CCS 注 1) の細胞株から ips 細胞 (CCS-iPSCs) を作製し がん細胞である CCS と同じ遺

ん細胞の標的分子の遺伝子に高い頻度で変異が起きています その結果 標的分子の特定のアミノ酸が別のアミノ酸へと置き換わることで分子標的療法剤の標的分子への結合が阻害されて がん細胞が薬剤耐性を獲得します この病態を克服するためには 標的分子に遺伝子変異を持つモデル細胞を樹立して そのモデル細胞系を用い

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

れていない 遺伝子改変動物の作製が容易になるなどの面からキメラ形成できる多能性幹細胞 へのニーズは高く ヒトを含むげっ歯類以外の動物におけるナイーブ型多能性幹細胞の開発に 関して世界的に激しい競争が行われている 本共同研究チームは 着床後の多能性状態にある EpiSC を着床前胚に移植し 移植細胞が

多様なモノクロナル抗体分子を 迅速に作製するペプチドバーコード手法を確立 動物を使わずに試験管内で多様な抗体を調製することが可能に 概要 京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻 植田充美 教授 青木航 同助教 宮本佳奈 同修士課程学生 現 小野薬品工業株式会社 らの研究グループは ペプチドバーコー

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資料110-4-1 核置換(ヒト胚核移植胚)に関する規制の状況について

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NEWS RELEASE 東京都港区芝 年 3 月 24 日 ハイカカオチョコレート共存下におけるビフィズス菌 BB536 の増殖促進作用が示されました ~ 日本農芸化学会 2017 年度大会 (3/17~

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背景 歯はエナメル質 象牙質 セメント質の3つの硬い組織から構成されます この中でエナメル質は 生体内で最も硬い組織であり 人が食生活を営む上できわめて重要な役割を持ちます これまでエナメル質は 一旦齲蝕 ( むし歯 ) などで破壊されると 再生させることは不可能であり 人工物による修復しかできませ

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Transcription:

多能性幹細胞を利用した毒性の判定方法 教授 森田隆 准教授 吉田佳世 ( 大阪市立大学大学院医学研究科遺伝子制御学 )

これまでの問題点 化学物質の人体および環境に及ぼす影響については 迅速にその評価を行うことが社会的に要請されている 一方 マウスやラットなど動物を用いた実験は必要ではあるが 動物愛護や費用 時間的な問題がある そこで 哺乳動物細胞を用いたリスク評価系の開発が望まれる 我々は DNA 修復遺伝子の欠損したES 細胞を用いて 化学物質に対する生存率や染色体異常を定量的に測定することにより 化学物質の種々の毒性を測るリスク評価系ができると考え その開発を目的とした 防御遺伝子等の改変 種々の毒性の解析 マウス万能細胞のコロニー

化学物質と防御遺伝子 我々は 遺伝毒性のある発がん物質に対する毒性も DNA 損傷に対する DNA 修復作用 ( 右図 緑 ) により軽減すると考えた そこで DNA 修復遺伝子が欠損したマウスES 細胞を用いれば 化学物質に対する感受性が増すと考え その結果から化学物質と遺伝子の防御作用を推察することができると考えた DNA 損傷 発がん作用 DNA 修復能 閾値 化学物質濃度

DNA 二重鎖切断の修復 放射線や化学物質によってDNAが切断されると付近のヒストンH2AXがリン酸化される それをきっかけに NBS, MRE11, Rad50 等の分子が集合する その後 Ku70,Ku80, DNAPKcsなど非相同末端結合により修復するタンパク あるいは相同組換えにより修復するRad51, 52, 54タンパクなどがDNA 切断を修復する 化学物質による DNA 二重鎖切断 ATM P P ヒストン H2AX のリン酸化 H2AX H2AX P Ku80 Ku80 P H2AX H2AX Ku70 Ku70 P H2AX Rad52 Rad51 P H2AX Rad54 非相同末端結合による修復 相同組換え修復

DNA 修復遺伝子欠損と化学物質の細胞毒性 そこで 我々は 化学物質に対する防御機構に関する遺伝子 例えば ヒストンH2AXのようなDNA 修復遺伝子 p53のような細胞周期調節遺伝子などを欠損したes 細胞を作製し これらの細胞に種々な濃度の発がん性のある化学物質を添加して培養することにより 増殖をコロニー形成能で解析した

DNA 修復遺伝子欠損と化学物質の細胞毒性 化学物質濃度 0.000001 0.0001 0.01 1 10 化学物質濃度 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 細胞の生存率 1 0.1 0.01 0.001 0.0001 0.00001 MNU H2AX+/+ MNU H2AX-/- MMS H2AX+/+ MMS H2AX-/- DEN H2AX+/+ 細胞の生存率 1 0.1 0.01 0.001 0.0001 MNU P53+/+ MNU P53-/- MMS P53+/+ MMS P53-/- DEN P53+/+ 0.000001 DEN H2AX-/- 0.00001 DEN P53-/-

化学物質の細胞毒性の実験結果 (1) マウスES 細胞は 化学物質により細胞毒性が異なる (2) さらに ヒストンH2AX 遺伝子の欠損により 感受性の変わるMNU,MMS と変わらないDENがあり それらの作用に違いがあることが示唆された (3) がん抑制遺伝子であるp53 遺伝子欠損 ES 細胞についても化学物質による毒性を比較した結果 MNUでは感受性が増大したのに対し MMSでは変化せずDENでは逆に感受性が減少し ヒストンH2AX 欠損とは異なるパターンを示した ES 細胞が化学物質の毒性を評価できると同時に その作用と防御遺伝子との関係の解明に利用できることを明らかにした メチルニトロソウレア (MNU) メチルメタンスルホン酸 (MMS) ジエチルニトロサミン (DEN)

ES 細胞を用いる理由 マウス ES 細胞には リスク評価細胞として以下のような利点がある (1) 哺乳動物であるマウス ヒト由来の ES 細胞が利用できる (2) 染色体が正常であり 外来遺伝子の導入による影響を考慮する必要がなく 染色体への影響, 発癌性などを正 確に解析できる (2) 遺伝子を改変することが可能であり 化学物質による作用と遺伝子の関係を解析でき 化学物質の作用機序と防 御遺伝子 解毒遺伝子との関係を推定できる (3) マウス ES 細胞を用いて 受精卵にマイクロインジェクションし 個体発生させることができるので化学物質に曝露 した ES 細胞の発生への影響を解析できる (4) 培養細胞として扱えるので 増殖性など 96 穴プレートなどを用いて大量 安価に解析ができる (5)ES 細胞を人工的に分化させることにより 神経系など 特異な細胞への影響を解析できる可能性がある (6)ES 細胞はマウスの受精卵から樹立することができるので 他の培養細胞株のような継世代的な変化はほとんど 考えられず 常に標準となる安定な ES 細胞を用意することができる (7) 現在 全遺伝子ノックアウトマウスの作成プロジェクトが完成しつつあり そのようなマウスの共同利用により 遺 伝子改変 ES 細胞のパネルの作成が可能である 万能細胞 ES 細胞 (+/+) 防御遺伝子 (-/ -) マイクロインジェクション 子宮移植 細胞毒性変異原性 ( 染色体異常 ) 胚盤胞形成ハッチング能 (in vitro) 出産帝王切開吸収胚 発生生育生殖性

染色体異常の解析 染色体が正常であり 外来遺伝子の導入による影響を考慮する必要がなく 転座 断裂など化学物質による染色体異常を定量的に解析できる

発生毒性 催奇性 生殖毒性の解析 マウスES 細胞は下図のように 正常胚にマイクロインジェクションすることにより 正常に発生する (ES 細胞はGFP 遺伝子を導入することで緑色に光る ) 胚盤胞まではin vitroで発生させることができるので 顕微鏡下で発生を追跡し 発生毒性を調べることができるかどうか検討する この解析には ヒトES 細胞は倫理的な問題から使用できないので マウスES 細胞で行う ES 細胞 マイクロインジェクション 桑実胚 胚盤胞 仮母への移植 による出産

子宮へ移植と発生毒性 催奇性の解析 マウスES 細胞を含む胚は 偽妊娠マウスの子宮に移植することにより その後の発生 出産を追跡できる 下図は申請者らが X 線照射したES 細胞について行った実験である 照射線量にしたがって 正常な出産が減少した 逆に帝王切開が必要なマウスや妊娠していない ( 着床ができない ) マウスが増加した 帝王切開した場合 吸収胚や奇形が認められた このように マウスES 細胞を導入した胚を偽妊娠マウスの子宮に移植することにより化学物質についても ES 細胞の発生 催奇性への影響を同様に解析できると考えられる 14 12 10 8 6 4 正常出産 帝王切開 妊娠なし 正常出産帝王切開妊娠なし 2 2 0 0 0 1 3 5 X 線照射線量 (Gy)

万能細胞を用いた化学物質の毒性の解析方法 多くの化学物質をハイスループットな方法を用いて ES 細胞でスクリーニングし 限られた化学物質についてのみ動物実験を行う評価の流れを示す 野生型 ES 細胞 代謝系 (-/ -) ES 細胞 修復系 (-/ -) ES 細胞 酸化系 ( - / - ) ES 細胞 化学物質 ( 例 C) 細胞増殖 濃度 細胞死 細胞毒性 MTT アッセイ 物質 A 物質 B 物質 C 物質 D 物質 E 物質 F 物質 G 物質 H 物質 I 物質 J 野生型 代謝系 修復系 酸化系

濃度万能細胞を用いた化学物質の毒性の解析方法細胞死 細胞毒性の見られた化学物質についてのみ 染色体 発生への影響解析を行い 細胞毒性 MTT アッセイ 動物実験をできるだけ少なくするよう努める 物質 A 物質 B 物質 C 物質 D 物質 E 物質 F 物質 G 物質 H 物質 I 物質 J 野生型 代謝系 修復系 酸化系 染色体異常 染色体正常 I n vitro 発生 催奇性 ES 細胞 マイクロインジェクション 桑実胚 胚盤胞 仮母への移植 による出産 動物実験 発がん性 神経毒性 免疫毒性 遺伝子との関係

特許出願 特許出願 特許番号 : 特願 2012-110115 発明者 : 森田隆 吉田佳世発明の名称 : 多能性幹細胞を利用した毒性リスクの判定方法出願人 : 大阪市立大学出願日 : 平成 24 年 5 月 11 日

社会への貢献 (1)ES 細胞を用いたリスク評価は 動物実験をできるだけ回避できると期待され 動物愛護の面から優れていると考えられる また 動物実験に比べ コストがはるかに少なく 迅速であることから 企業が予め化学物質の有害性について評価し 予測することにより 安全な製品を開発し 社会に送ることができると考えられ 経済的 社会的効果は大きい (2) 種々の遺伝子欠損したES 細胞パネルの作製と解析により 化学物質などに対する細胞の反応についての学術的な知見が得られ 化学物質に対する過敏反応など疾患の診断 治療など医療に応用できる可能性がある (3)ES 細胞を用いたリスク評価により 数多くの化学物質の中から細胞毒性を持つ物質を同定できる その中には 逆に 抗がん剤として使用できる物質が含まれている可能性があり 創薬の面からも有用である (4) この系は原子力関連や宇宙放射線などの影響に関する評価にも利用できる 実際に我々は本年 12 月 15 日予定で 国際宇宙ステーションにマウスES 細胞を打ち上げ 細胞への影響を解析する予定である

お問い合わせ先 大阪市立大学産学連携コーディネーター井上孝志 TEL 06-6605 -3550 FAX 06-6605 - 2058 e-mail: tinoue@ado.osaka-cu.ac.jp