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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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Transcription:

EU における経済的格差の現状について 2018 年 5 月欧州連合日本政府代表部 1. 所得格差 所得のジニ係数 2 所得分布 3 相対的貧困率 4 2. 資産格差 ( 資産のジニ係数, 資産分布 ) 5 3. 地域間 ( 国別 ) 格差 ( 一人当たりGDP) 6 4. 格差感 公平, 格差に関する世論調査 7 欧州の将来に関する世論調査 8,9

1. 所得格差 1: ジニ係数 ( 社会全体の格差を測る指標 0~100( もしくは 0~1) の値を取り, 値が大きいほど格差が大きいことを表す ) EU 諸国の所得のジニ係数は日本と比べて総じて低め ( 所得格差は相対的に小さい ) その中でも比較的高いのは東欧, 南欧諸国 ( それでも米国より低い水準 ) 時系列で見た所得のジニ係数の動向 (2012~2016 年 ( 現在の EU の景気回復局面 )) は, ユーロ圏及び E U 全体ではそれぞれ +0.2pt,+0.3pt の上昇 国ごとの動向はまちまちだが, 例えば近年選挙が行われた国々の所得のジニ係数を見ると, オランダ, ドイツ, ハンガリー, イタリアでは拡大している一方, フランス, オーストリアでは縮小している 40.0 35.0 30.0 2016 年 2007 年 2012 年 所得のジニ係数の各国比較 所得のジニ係数の動向 (2012~2016 年 ) 拡大した国 縮小した国 1 リトアニア (+5.0pt) フランス, ラトビア (-1.2pt) 2 ブルガリア (+4.7pt) 3 ルクセンブルク (+3.0pt) ポーランド, クロアチア (-1.1pt) アイルランド, スロバキア (-1.0pt) 4 スウェーデン (+1.6pt) ポルトガル (-0.6pt) 25.0 20.0 スロバキアスロベニアチェコフィンランドベルギーオランダオーストリアスウェーデンデンマークハンガリーマルタフランスドイツアイルランドクロアチアポーランドユーロ圏 EU ルクセンブルク英国カナダキプロスエストニア日本イタリアポルトガルギリシャスペインラトビアルーマニアリトアニアブルガリア米国, ただし日本, 米国, カナダは OECD ( 注 ) 日本は 2012 年, 米国, カナダは 2015 年の値 クロアチア及び EU については 2007 年の値が非公表 5 オランダ (+1.5pt) フィンランド (-0.5pt) 6 マルタ (+1.4pt) オーストリア (-0.4pt) 7 ドイツ, デンマーク (+1.2pt) 8 キプロス (+1.1pt) - 9 ハンガリー (+1.0pt) - 10 イタリア, ルーマニア, スロベニア (+0.7pt) ベルギー (-0.2pt) - 2

1. 所得格差 2: 所得分布 所得分布を見ることで, ジニ係数と各所得階級の関係を確認すると (2012~2016 年 ), (1) ジニ係数の拡大が相対的に大きな国 ( 例えばオランダ, ドイツ, ハンガリー ): 低所得階級及び一部の中所得階級の所得シェアが縮小し, 高所得階級の所得シェアが拡大している傾向 (2) ジニ係数の拡大が相対的に小さな国 ( 例えばイタリア, 英国 ): 低所得階級の所得シェアが縮小し, 中所得階級の所得シェアが拡大している傾向 (3) ジニ係数が縮小している国 ( 例えばオーストリア, フランス ): 低所得階級及び中所得階級の所得シェアが増大し, 高所得階級の所得シェアが縮小している傾向 所得格差拡大国の共通点は, 低所得階級の弱まり (= 貧困問題の悪化 ) さらに, 所得格差の拡大が大きい国では, 所得シェア縮小が中所得階級にも及んでおり, 社会全体の格差拡大が意識されやすい可能性 所得階級 EU ユーロ圏オランダドイツハンガリー 2007 2012 2016 2007 2012 2016 2007 2012 2016 2007 2012 2016 2007 2012 2016 低所得 第 1 五分位 - 7.9 7.7 8.1 7.9 7.7 9.3 9.8 9.2 7.8 8.6 8.2 9.6 9.1 8.6 中所得 第 2 五分位 - 13.3 13.2 13.4 13.3 13.3 14.1 14.6 14.1 13.7 13.7 13.5 14.6 14.1 13.9 第 3 五分位 - 17.5 17.6 17.5 17.5 17.6 17.6 18.0 17.9 17.5 17.8 17.7 18.0 17.9 17.8 第 4 五分位 - 22.8 22.9 22.7 22.8 22.9 22.0 22.4 22.6 22.5 22.9 22.8 22.5 22.5 22.9 高所得 第 5 五分位 - 38.5 38.5 38.3 38.5 38.6 37.0 35.3 36.1 38.5 36.9 37.8 35.3 36.4 36.9 所得階級 EU 及び加盟国における所得分布 イタリア英国オーストリアフランス 2007 2012 2016 2007 2012 2016 2007 2012 2016 2007 2012 2016 低所得 第 1 五分位 7.3 7.0 6.3 7.6 7.9 7.7 9.5 8.7 8.8 9.3 8.7 8.9 中所得 第 2 五分位 12.8 12.9 12.8 12.6 13.0 13.0 14.4 14.1 14.2 14.2 13.3 13.7 第 3 五分位 17.5 17.5 17.9 17.0 17.2 17.2 17.9 18.0 18.2 17.9 16.9 17.2 第 4 五分位 23.1 22.9 23.5 22.5 22.7 22.9 22.3 22.7 22.8 22.5 21.6 21.6 ( 単位 :%) ( 注 ) 所得階級の五分位とは, 所得の多寡に応じて当該国 地域の国民を20% ずつ5グループに分けたもの 各計数はそれぞれの五分位が当該国 地域の所得総額の何 % をシェアしているかを示している 高所得 第 5 五分位 39.4 39.6 39.5 40.3 39.2 39.2 35.9 36.5 36.0 36.2 39.5 38.5 3

1. 所得格差 3: 相対的貧困率 ( 一人当たり所得が国民全体の中央値の一定割合 (EU の基準は 60%) を下回る人口の比率 ) ジニ係数と同様,EU 諸国の相対的貧困率は日本と比べて総じて低め その中でも比較的高いのは東欧, 南欧諸国 割合としては国ごとに 10~25% と幅があるが, 概ね前頁の所得第一五分位の範囲内に相当 時系列で見た相対的貧困率の動向は国ごとにまちまちだが, ユーロ圏及びEU 全体について2012 年比で見ると, いずれも+0.5%ptの上昇 各国の貧困線 (2016 年 ) (%) 30.0 2016 年 相対的貧困率の各国比較 国 名 ユーロ 国 名 ユーロ 1. ルクセンブルク 20,291 15. マルタ 8,143 2. デンマーク 17,199 16. スロベニア 7,396 25.0 2007 年 2012 年 3. スウェーデン 15,098 17. ポルトガル 5,269 4. オーストリア 14,217 18. エストニア 5,187 20.0 5. フィンランド 14,190 19. チェコ 4,703 6. オランダ 13,640 20. ギリシャ 4,500 15.0 7. アイルランド 13,444 21. スロバキア 4,171 8. ベルギー 13,377 22. ラトビア 3,819 10.0 9. フランス 13,028 23. ポーランド 3,530 5.0 チェコフィンランドデンマークオランダスロバキアフランススロベニアオーストリアハンガリーベルギー英国キプロススウェーデンドイツルクセンブルクマルタアイルランド EU ポーランドユーロ圏ポルトガルクロアチアイタリアカナダギリシャエストニアラトビアリトアニア日本スペインブルガリア米国ルーマニア, ただし日本, 米国, カナダは OECD ( 注 ) 日本は 2012 年, 米国, カナダは 2015 年の値 クロアチア及び EU については 2007 年の値が非公表 10. ドイツ 12,765 24. クロアチア 3,435 11. 英国 12,682 25. リトアニア 3,387 12. イタリア 9,748 26. ハンガリー 2,861 13. キプロス 8,412 27. ブルガリア 1,891 14. スペイン 8,209 28. ルーマニア 1,469 ( 注 ) 貧困線とは, 相対的貧困の基準となる所得水準のこと 一人当たり所得がこれを下回る者の割合が相対的貧困率となる 国ごとに経済水準が異なるため, 貧困線も国ごとに異なる 4

2. 資産格差 : ジニ係数と資産分布 EU 諸国の資産のジニ係数は, 所得のジニ係数と異なり, 概して南欧 東欧諸国が相対的に小さく, ドイツやオランダといった比較的経済の堅調な国において大きい 時系列で見た資産のジニ係数の動向 ( 概ね 2010~2014 年 ) は国ごとにまちまちだが, ユーロ圏では + 0.5pt の上昇 資産分布を見ると, 資産階級上位 10% の資産シェアは, 日本の 41% に対して,EU 諸国は全体的に高めとなっている 所得格差と異なり,EU の資産格差は比較的大きいと考えられる 80.0 70.0 2014 年 2010 年 資産のジニ係数の各国比較 100% 90% 80% 70% 60% 34.3 資産分布の各国比較 (2014 年 ) 資産階級 100-90% 資産階級 90-50% 資産階級 50% 以下 45.8 41.8 42.5 42.4 45.6 42.8 48.5 48.5 48.7 45.2 50.7 52.1 51.2 55.7 43.6 56.7 55.5 53.8 59.8 63.3 60.0 50% 50.0 40% 30% 20% 10% 48.2 40.6 46.8 46.0 46.9 42.4 47.3 40.8 42.0 42.7 48.1 43.0 40.8 43.0 36.9 54.1 37.2 41.3 44.8 37.7 33.8 17.5 13.6 11.4 11.5 10.7 12.0 9.9 10.7 9.5 8.6 6.7 6.3 7.1 5.8 7.4 2.3 6.1 3.2 1.4 2.5 2.9 40.0 スロバキア マルタ ポーランド ベルギー ギリシャ スペイン イタリア スロベニア ハンガリー ルクセンブ フィンランド フランス ( 出典 ) 欧州中央銀行 ( 注 1)2010 年の値について, フランス, ギリシャ, スペインは 2009 年, オーストリア, ドイツ, イタリア, ルクセンブルクは 2011 年の値 また,2014 年の値について, エストニア, アイルランド, ポルトガルは 2013 年, オランダは 2015 年の値 ( 注 2) 右図は, 資産の多寡に応じて当該国 地域の世帯を 3 つのグループに分けている 資産階級 100-90% が資産を最も多く保有している上位 10% の世帯を示しており, 資産階級 90-50% がそれに続いて多く資産を保有している 40% の世帯を, 資産階級 50% 以下 が資産の保有額が最も少ない下位 50% を示している 各計数はそれぞれのグループが当該国 地域の資産総額の何 % をシェアしているかを示している ポルトガル ユーロ圏 エストニア オランダ キプロス オーストリア アイルランド ドイツ ラトビア 0% スロバキア マルタ ポーランド ベルギー ギリシャ スペイン イタリア スロベニア ハンガリー ルクセンブルク フィンランド ( 参考 ) 上記以外の国の資産階級 100-90% の資産シェア 日本 41.0%(2014 年 ) 米国 79.5%(2016 年 ) デンマーク 64.0%(2015 年 ) 英国 52.5%(2015 年 ) ( 出典 )OECD フランス ポルトガル ユーロ圏 エストニア オランダ キプロス オーストリア アイルランド ドイツ ラトビア 5

3. 地域間 ( 国別 ) 格差 : 一人当たり GDP ( 当該国国民の平均的な所得水準 ( 豊かさ ) を示す ) 一人当たり GDP の 水準 は, 加盟国間で大きな差が存在し, 東欧諸国が相対的に低い 一方, 一人当たり GDP の 伸び は, むしろ東欧が高く, キャッチアップが進んでいる 現在の EU の景気回復局面に当たる 2012~2017 年にかけては, 多くの EU 諸国において, 一人当たり GDP が EU 平均に緩やかに収斂 他方, キプロス, ギリシャ, イタリアといった南欧諸国の一部における一人当たり GDP の伸び悩みも確認できる 一人当たり名目 GDP(2017 年 ) 国名ユーロ国名ユーロ国名ユーロ 1. ルクセンブルク 92,800 11. フランス 34,100 21. スロバキア 15,600 2. アイルランド 61,700 12. イタリア 28,400 22. リトアニア 14,800 3. デンマーク 50,000 13. スペイン 25,000 23. ラトビア 13,900 4. スウェーデン 47,400 14. マルタ 23,900 24. ハンガリー 12,600 5. オランダ 42,800 15. キプロス 22,400 25. ポーランド 12,100 6. オーストリア 42,000 16. スロベニア 21,000 26. クロアチア 11,700 7. フィンランド 40,600 17. ポルトガル 18,700 27. ルーマニア 9,600 8. ドイツ 39,500 18. チェコ 18,100 28. ブルガリア 7,100 9. ベルギー 38,500 19. エストニア 17,500 10. 英国 35,200 20. ギリシャ 16,600 EU 平均 29,900 ( 注 ) ユーロ換算しているため, 非ユーロ圏諸国については為替レートの影響が含まれていることに留意 (EU 平均 =100) 300 250 200 150 一人当たり実質 GDP の収斂 2012 年 2017 年 EU 平均よりも低所得国 上昇 (100 に近付く ) 収斂 (16 国中 14 国が収斂方向に推移 ) (2012 年 =100) 160 150 140 130 120 110 100 150 一人当たり実質 GDP の伸び (2012~2017 年 ) 東欧諸国は高い伸び 126 126 123 121 119 118 118 115 114 114 112 111 110 109 108 108 107 107 106 106 105 104 104 102 102 102 101 101 アイルランドマルタルーマニアリトアニアラトビアブルガリアハンガリーポーランドスロバキアエストニアチェコスロベニアクロアチアスペインスウェーデンポルトガル英国 EU オランダルクセンブルクドイツデンマークベルギーフランスキプロスオーストリアフィンランドギリシャイタリア ( 注 ) 国 地域ごとに 2012 年を 100 として 2017 年の水準を見たもの 南欧諸国は明暗が分かれる 100 50 0 EU 平均よりも高所得国 低下 (100 に近付く ) 収斂 (12 国中 8 国が収斂方向に推移 ) ブルガリアルーマニアラトビアハンガリーポーランドクロアチアリトアニアエストニアスロバキアチェコポルトガルマルタギリシャスロベニアキプロススペインイタリア英国フランスドイツベルギーフィンランドオーストリアアイルランドオランダスウェーデンデンマークルクセンブルク ( 注 )2012 年と 2017 年について,EU 平均を 100 として各国の水準を見たもの 6

4. 格差感 1: 世論調査 ( 公平, 格差, 世代間移動に関するユーロバロメーター特別調査 ) EU の公平, 格差, 世代間移動に関する世論調査 (2018 年 4 月 ) によれば, 8 割を超える EU 市民が, 自国の所得格差は過大である, あるいは 自国政府は所得格差対策を講じるべき と感じており, 格差に対する問題意識は極めて高い <Q. 自国の所得格差は過大だと思いますか > <Q. 自国政府は所得格差対策を講じるべきだと思いますか > <EU 全体の集計結果 > <EU 全体の集計結果 > 強く同意 強く同意 同意 同意 < 国別の集計結果 > < 国別の集計結果 > 公平, 格差, 世代間移動に関するユーロバロメーター特別調査 (2018 年 4 月公表 ) 7

< 国別の集計結果 > 会格差4. 格差感 2: 世論調査 ( 欧州の将来に関するユーロバロメーター特別調査 ) 欧州の将来に関する世論調査 (2017 年 11 月 ) でも,EU 全体では, 社会格差 は 失業 に次いで高い問題意識が持たれている これは 移民問題 や テロ 治安問題 よりも高い結果 2 つの世論調査の国別の結果を, 特定の経済的格差との関係で一義的に説明することは困難 所得 資産 地域間といった様々な格差や, 貧困や格差の固定化といった問題, 歴史的経緯など, 複合的な要因によって格差感は形成 また, データが示す EU の実態からすれば, これらの結果には,EU 市民による格差に対する過剰な反応先入観が加味されている可能性も考えられる 冷静な実態把握が重要 社<Q.EU の主要な課題は次のうちのどれですか?( 最大 3 つまで選択 )> <EU 全体の集計結果 > 社会格差 欧州の将来に関するユーロバロメーター特別調査 (2017 年 11 月公表 ) ( 注 ) どのような格差を問題視しているかは明らかではない点に留意 8

4. 格差感 3: 世論調査 ( 欧州の将来に関するユーロバロメーター特別調査 ) 最後に, 加盟国ごとの EU に対する肯定感と, 格差に関する意識やマクロデータとの関係を見ると, ここでもやはり一定の規則性を見出すことは難しい 他方,EU に対する肯定感に関する質問の回答者の属性を見ると, 生活に困窮している者ほど,EU には否定的であることが分かる <Q.EU に対して肯定的ですか? 否定的ですか?> < とても肯定的 と ある程度肯定的 の合計 > 請求書の支払いの困難さ どの社会階層に所属するか ( 自己認識 ) 欧州の将来に関するユーロバロメーター特別調査 (2017 年 11 月公表 ) 9