ワークショップ入門 1 ワークショップのススメ防災学習の手法の一つにワークショップがあります ワークショップでは参加者が主体的に参加しやすいため 防災に関する話合いを設定することで 参加者全員の防災教育に対する意欲を高めることが期待できます また 参加者全員でアイデアを出し合い 具体的な手だてが見つけられる 各自の災害時の経験を共有し 継承することができる などのメリットもあり 防災を推進する研修の手法として効果的であると言えます (1) ワークショップ とは ワークショップ(workshop) は もともと 作業場 仕事場 など 共同で何かを作る場所を意味しています 講師の話を参加者が一方的に聞くのではなく 参加者が学習の場に積極的に参加し 相互に学び合う過程を通じて様々な気づきや発見をする参加体験型の学習方法です 通常のワークショップでは ファシリテーターが進行役となり 複数のアクティビティ ( プログラムを構成する個々の活動 ) を実施した後 最後に学習者による ふりかえり と わかちあい を行ってプログラムを終了します (2) ファシリテーター とは ファシリテーター ( facilitator ) は 促進する 容易にする という意味の英語 ファシリテート (facilitate) を語源とし 学習者のワークショップへの積極的な参加を促し 相互学習者が円滑に行われる環境をつくる 司会者 援助者 道化役 など複数の役割を演じる進行役を意味します 複数のアクティビティを組み合わせながら 学習活動を深化あるいは活性化させ 学習者の交流を促し 結果として学習者や集団が変容し 学習の成果が行動につながるよう推進するよう努めます 教え込んだり操作したりするのではなく 学習者を主役にすることが重要な役割であると言えます (3) ワークショップによる防災学習の効果自主防災組織は 多様な背景と価値観をもった住民で構成されています その中で互いにアイデアや知恵を出し合い 問題を解決していく体験を通して 地域の絆を深めるとともに 具体的な手立てを見つけ出すことができます 様々な気づきにより 一人ひとりの参加意識が深まると同時に 絆が深まることにより 自主防災組織の活性化が期待できます また 次の効果が期待できます 1 参加者全員が主体的に取り組み 防災意識や防災対応能力を高められる 2 参加者全員で積極的にアイデアを出し合い 防災に関する具体的な手だてや指導方法が見つけられる 3 自主防災組織構成員の役割の確認や防災マニュアルの見直しや改善に役立ち 地域の実態に合わせた防災対策や防災学習を見直すことにつながる
4 地域の多様な主体 関係機関等がともに議論し 課題を把握することを通して 連携を深めることができる 5 各自の災害時の経験や知識を共有し 継承することができる (4) ワークショップを実施する際に重視することワークショップを実施する際に大切にしたいことは 主に次の3つです 1 すべての参加者が平等な立場で参加し 互いの個性や価値観を尊重するなかで 自由にのびのびと意見を出し合える雰囲気づくりをする 2 参加者は 理性だけではなく 身体や五感を使って からだ全体で 感じる ことを大切にする 3 新たな創造を生み出すためにも おもしろさ 楽しさが充満している空間を大切にする また 企画に当たっては 学習のねらいを明確にするとともに 学習の流れ ( 過程 ) を大切にする 学習者が 学習活動を通じて変容する過程を大切にする などに配慮することが大切です (5) ワークショップの準備 1 場づくりワークショップは活動 ( アクティビティ エクササイズ等 ) が中心となるため その活動に応じた場作りが必要です グループを編成するに当たっては 多様な意見交流ができ かつ全員が発言できることを考慮し 1グループあたり4~6 人が適当と言われています グループメンバーの構成や座席は 所属 年齢 男女比等により あらかじめ決めておきます 偶然でよければ くじ引き等で決定します 2 会場レイアウト全体の会場レイアウトも大切です 下図のように 進行役であるファシリテーターを囲むように机を配置します 机の配置は 移動しやすく 隣のグループの話が気にならないように間隔を空けます 机の向きは 参加者が顔を横に向けるだけ 少し振り向くだけで 全体の進行役や黒板 ホワイトボードでの発表の様子が見られるようにします 場づくりと会場レイアウトを工夫することで 参加者がリラックスして自由に意見を言い合える場の雰囲気づくりができます 3 準備するものワークショップによって異なりますが 災害図上訓練を行う場合には 次の5 点は必須です 地域の白地図 ハザードマップ サインペン 付箋 各種シール
4 ワークショップの主な役割 役割名主な内容留意点等 ファシリテーター 全体の進行 助言 開始前の説明および終了後のまとめ 時間の管理 話の展開を洞察しつつ 必要に応 じて介入し 意見を関連づけたり 円滑な進行を促したりします 進行役 各グループの話し合いの進行 ファシリテーターの指示やグループの進行表をもとに 話し合いを進めます 進行役もできる範囲で話し合いに参加します グループメンバー 全員参加による話し合い ワークショップの内容に応じて グループメンバーの中で 更に記録係 発表係などを設定します 5 プログラム ワークショップには基本的な流れがあり, 研修内容や参加者の実態を考慮してアレンジします 限られた時間の 中で行うには, プログラムを練ることが必要です ワークショップの種類によって基本的な流れが異なり 使用する備品等も異なります 6 話を進める上での約束全員が話合いに参加できる雰囲気を作るために 話を遮らない 否定しない 一人で話し過ぎない ことが必要です また 限られた時間の中で実施するために 時間どおりに活動を区切る必要があります 話合いが途中でも ファシリテーターの指示に従います
2 付箋の活用のススメ (1) 付箋を使ったワークショップの流れここでは ブレーンストーミングとKJ 法という ブレーンストーミングの 4 原則 手法をとりあげます 批判厳禁: 他人の意見を批判してはいけない 批判があるブレーンストーミングは 参加者全員でたくさんのと良いアイデアが出にくくなる 意見やアイデアを自由に出し合い そこから 何か 自由奔放: 奇抜で自由奔放なアイデアを歓迎する を見つけていくための手法です 数人がひとつのテ 質より量: できるだけ多くのアイデアを出す ーブルに集まり とにかく思いつくままアイデアを出し 連想と結合: 他人の意見を聞いてそれに触発され 連想を続けることによって 自分ひとりでは思いもつかなか働かせ あるいは他人の意見に自分のアイデアを加えて新しいったアイデアが出ることがあります ブレーンストーミ意見として述べる ングには基本原則があります KJ 法は 各自の頭の中にあるぼんやりとした意見 アイデアをグループ化し 論理的に整理する手法です ブレーンストーミングで出た多くのアイデアをKJ 法により論理的に整理するといった流れになります ブレーンストーミングとKJ 法による付箋を活用したワークショップの主な流れは以下のとおりです (Step のナンバーは 前ページの 5プログラム の ワークショップの基本的な流れ に対応しています ) Step 0 自己紹介をする グループリーダー サブリーダーを決める Step 1 意見や考えを1 枚の付箋に1 項目ずつわかりやすく大きな字で書く Step 2-1 参加者が交代で自分の意見を読み上げ 模造紙に貼る 他人と同じ意見は重ねる Step 2-2 Step 2-3 Step 3 参加者が交代で自分の意見を読み上げ 模造紙に貼る 他人と同じ意見は重ねる Step4で整理したまとまりの意見について 関連するグループや対立するグループなどその関係性について線や文字を入れ 全体構造がわかりやすくなるようにまとめる 全体で シェアする
( 例 ) 災害図上訓練ワークショップの流れ 1 地図や写真等を活用し どこで, どんな自然災害が発生したか を確認する 2 考えられる危険 を付箋に書き出し 地図 写真等に貼り付ける 3 貼った付箋をもとに発表し 話し合う 4 対策 を付箋に書き出し 地図 写真等に貼り付ける 5 貼った付箋をもとに発表し 話し合う 6 付箋を整理してグループ化し まとめる 7 全体でシェアリングをする ワークショップの種類によって基本的な流れが異なり 使用する備品等も異なります (2) 付箋に書き 模造紙に整理することの意味ワークショップに付箋を使うのは 多様な考えをもつメンバーが対等な立場で 創造的 建設的に話合いを進めるためであると言えます 考えられる具体的な効果は下記のとおりです すぐに発言するのではなく付箋に書き出すことで 自分の考えを整理できる 発言が得意な人 不得意な人に関係なく 意見や考えを提示することができる 話し合った内容を統合 整理し 視覚的に分かりやすく記録することができる 発言者の影響を受けずに 意見を意見として切り離して整理することができる