発音指導のヒント タイ国日本語教育研究会第 180 回月例会 2009 年 8 月 15 日 まさひと 千葉真人 ( サイアム大学 ) 佐藤純 ( タイ商工会議所大学 ) 大田真也 ( タイ商工会議所大学 )
本日の発表内容 1タイ人学習者の発音の問題点に関する調査結果の発表 2 発音指導の方法およびその効果に関する調査結果の発表
調査の背景 1 タイ人学習者の発音の問題に関しては いくつか先行研究がある 何に基づいている? よくわからないものもあるわかるものも数が少ないのでは? 録音調査 ( 学習者 2 人 : 大西 1976) 質問紙調査 ( 教師 3 人 : 助川 1993) もう少し詳細な調査が必要では?
調査の背景 2 発音指導法 ( に限らず教授法 ) には唯一絶対という方法はない 様々なバリエーションを知っていたほうが強いのでは? 実際に教師に調査をしてみては? どの程度効果があるのか?
調査の目的 タイ人学習者の発音の問題点を明らかにする 発音の問題点に対する教師の対処法およびその効果を明らかにする
調査の概要 2008 年 12 月 ~2009 年 2 月 現役日本語教師 14 名 ( 男性 4 名 女性 10 名 /20 代 ~50 代 / 平均教授期間約 7 年 ) 半構造化面接調査 ( 一人 40 分 ~2 時間 )
教師が特に問題だと感じている音 1 し 2 す 3 ふ 4カ行 5ザ行 と ち と つ の子音が がサ行 とガ行 の混同 の混同 になる 6 文末の母音が無声化しない / 末子音のようになる になる の混同
教師が特に問題だと感じている音 7 長母音と短母音の混同 8 促音の有無の混同 9 拗音を 2 拍で発音する
教師が特に問題だと感じている音 10アクセントが 1 拍目 / 最終拍に置かれる 11 文末の上昇 / 下降イントネーションの混同 12 助詞や文末が際立つ 13 ~ んです の ん が強く / 弱くなる 14ポーズの有無
母音 子音の問題教師が特に問題だと感じている音 1 し 2 す 3 ふ 4カ行 5ザ行 と ち と つ の子音が がサ行 とガ行 の混同 の混同 になる 6 文末の母音が無声化しない / 末子音のようになる になる の混同
拍の問題教師が特に問題だと感じている音 7 長母音と短母音の混同 8 促音の有無の混同 9 拗音を 2 拍で発音する
韻律の問題教師が特に問題だと感じている音 10アクセントが 1 拍目 / 最終拍に 置かれる 11 文末の上昇 / 下降イントネーションの 混同 12 助詞や文末が際立つ 13 ~ んです の ん が強く / 弱くなる 14ポーズの有無
教師の対処法 ( 母音 子音 )1) 口腔断面図を板書する ( し ち ) 教師の口を見せる ( ふ ) のどを触らせて声帯振動を意識させる ( ガ行 )
教師の対処法 ( 母音 子音 )2) リピートさせる ( し ち す つ ガ行 ザ行 ) リピートさせる ( 母音の無声化 )
教師の対処法 ( 母音 子音 )3) にならないようにと注意する ( ふ ) 静かに ~ の し 舌打ちの ち nuts の つ ( し ち す つ ) 文字で示す ( 母音の無声化 : 例 masss)
教師の対処法 ( 母音 子音 )4) 手を使う ( す つ ) タイ文字を使う ( ガ行 ) 英語やタイ語の似た発音を使う ( し ち す つ )
VT 法 ( ベルボ トナルメソッド ) 指導法の実際 ( 木村 1997)( 木村 2001)
教師の対処法 ( 拍 )1) 文字で示す ( 拗音 ) 文字で示す ( 長音 ) ローマ字で説明する ( 拗音 )
教師の対処法 ( 拍 )2) リピートさせる ( 長音 促音 拗音 ) ミニマルペアを使う ( 促音 拗音 )
教師の対処法 ( 拍 )3) 手拍子 足踏みで拍感覚を教える ( 長音 促音 拗音 ) 手を横に動かす ( 長音 )
VT 法指導法の実際 ( 木村 1997)( 木村 2001)
教師の対処法 ( 拍 )3) 手拍子 足踏みで拍感覚を教える ( 長音 促音 拗音 ) 手を横に動かす ( 長音 ) パー グー パー ( 促音 )
VT 法指導法の実際 ( 木村 1997)( 木村 2001)
教師の対処法 ( 韻律 )1) 音の高低を線 / で表す ( アクセント ) 音の高低を線で表す ( 文末イントネーション )
教師の対処法 ( 韻律 )2) リピートさせる ( アクセント ) リピートさせる ( 文末イントネーション )
教師の対処法 ( 韻律 )3) ルールを教える ( アクセント ) 授業外で個人指導する ( アクセント ) 学生の発音を教師が真似して演じる ( 文末イントネーション ) メモして再生できるようにする ( アクセント )
ここでみなさんも一緒に 考えてみてください 1 みなさんはこれらの方法を使ったことがありますか もしある場合 効果はどうでしたか 2 他にはどんな方法があるでしょうか その効果はどうでしたか ご自分で使っている方法でも 聞いたことがあるだけのものでも結構です
話し合いの流れ 1) 自己紹介時間が無いので簡単に 2) レジメに書いてある対処法の効果について 3) それ以外の方法とその効果について 4) 話し合いの際は どなたかがグループの意見を簡潔にまとめてお配りした紙に書いてください 話し合いの時間は 10 分
教師の対処法 ( 母音 子音 )1) 口腔断面図を板書する ( し ち ) やらないよりはやった方が 一回ではなかなか ほとんどない 教師の口を見せる ( ふ ) 効果ある のどを触らせて声帯振動を意識させる ( ガ行 ) やらないよりはやった方が
教師の対処法 ( 母音 子音 )2) リピートさせる ( し ち す つ ガ行 ザ行 ) あまり / ない / よくわからない 直りにくい / 上の学年では直りやすい 直るが元に戻る ( これがベストかどうかは ) 言える学生もいる リピートさせる ( 母音の無声化 ) 学生が理解しているかどうかは
教師の対処法 ( 母音 子音 )3) にならないようにと注意する( ふ ) 大丈夫 静かに ~ の し 舌打ちの ち nuts の つ ( し ち す つ ) 聞き取りができている学生はできる 文字で示す ( 母音の無声化 : 例 masss) あった ( ただし タイ人の先生の手柄かも )
教師の対処法 ( 母音 子音 )4) 手を使う ( す つ ) よくわからない タイ文字を使う ( ガ行 ) よくわからない 英語やタイ語の似た発音を使う ( し ち す つ ) できる学生もいる 一回だけではなかなか
調査で現れなかった対処法 ( 母音 子音 )1) あいうえお の発音の体操 仮名を覚える段階で 母音の発音練習も取り入れ あいうえお の発音の体操で覚える ( 重川 中村 2005) 具体的な効果については 特に記述なし
町田 小圷他 (1994)
調査で現れなかった対処法 ( 母音 子音 )2 発音チェックリスト 学習者自身が 録音した自らの発音をチェックする ( 河野 小河原 2007) 学習者が自分の不適切な発音を聞いて不適切だと判断できる語も見られた
調査で現れなかった対処法 ( 母音 子音 )3 発音チェックシート 学習者自身に自分の発音を録音したものを聞かせ チェックシートに問題点を記入させる ( 横井 1998) 学習者が自分の発音を意識するようになり 発音の上達につながった
調査で現れなかった対処法 ( 母音 子音 )4 独自の基準 言い分けができる学習者は 有効な 独自の基準 を持って発音している ( 河野 小河原 2006) 話し合いによって 他者の 独自の基準 を取り入れることがある
教師の対処法 ( 拍 )1) 文字で示す ( 拗音 ) 効果大 文字で示す ( 長音 ) ない ローマ字で説明する ( 拗音 ) ( ローマ字が読めるなら ) すぐできる
教師の対処法 ( 拍 )2) リピートさせる ( 長音 促音 拗音 ) その場では直るが元に戻る 強調しすぎて変になった ( 長音 ) ない お手上げ 何かあったら教えてほしい ( 拗音 ) ミニマルペアを使う ( 促音 拗音 ) 効果がある / できている
教師の対処法 ( 拍 )3) 手拍子 足踏みで拍感覚を教える ( 長音 促音 拗音 ) 直る / よくなる 発音には効果があるが 聞き取りには 手を横に動かす ( 長音 ) 不自然になることもある パー グー パー ( 促音 ) 上の学年ではよく直る
調査で現れなかった対処法 ( 拍 )1 長音 拗音の応急処置!! 長音 拗音の部分が言えていなくても アクセントの型を正しくするだけでかなり近い音になる ビヨーイン ビヨーイン おばさんおばさんおばさん
調査で現れなかった対処法 ( 拍 )2 促音 撥音音節を利用する松崎 河野 (1998) 例 : 一本 [ip]+[pon] と 2 音節で教える 三枚 [sam]+[mai] 前の節の母音が長くならないように注意する
拍のリズムの取り方 1 拍単位 2 特殊拍を長めの 1 まとまりとし 特殊拍を中心に 2 拍分で 1 まとまりとする 土岐 村田 (1989) 戸田 (2004) 3 特殊拍を長めの 1 まとまりとし 他を 1 拍とする 河野俊之他 (2004)
教師の対処法 ( 韻律 )1) 音の高低を線 / で表す ( アクセント ) その場ではできるようになる かえって変になった ( スピーチの 指導 ) 音の高低を線で表す ( 文末イントネーション ) 直る / 80% ぐらいできる あまり
教師の対処法 ( 韻律 )2) リピートさせる ( アクセント ) その場ではできるようになる かえって変になった ( スピーチの指導 ) リピートさせる ( 文末イントネーション ) 直る あまり伝わらない
教師の対処法 ( 韻律 )3) ルールを教える ( アクセント ) 意識化はされている 授業外で個人指導する ( アクセント ) その場では直る 学生の発音を教師が真似して演じる ( 文末イントネーション ) 違いはわかるけど
教師の対処法 ( 韻律 )4) メモして再生できるようにする ( アクセント ) 効果あった人もいる
調査で現れなかった対処法 ( 韻律 )1) シャドーイング 原発言を聞きながら 同時に近いタイミングで同じ表現をおうむ返しにする練習 ( 船山 1998) 聞こえてくるネイティブの音声言語をほぼ同時的にあるいは少し遅れてできるだけ正確に繰り返すこと ( 望月 2005)
調査で現れなかった対処法 ( 韻律 )2) シャドーイングの効果は? 1 上級学習者に対して 5 週間シャドーイング練習を行った ( 高橋 2007) アクセントの誤用が約 25% 減少した 2 発音がネイティブレベルの 7 名の学習者の共通点を探った ( 戸田 2008) シャドーイングなど音声化した発音方法を継続して行っている
調査で現れなかった対処法 ( 韻律 )3 学習者自身の発音を録音させる 1 1 中級学習者 17 名に対して 1) まず教師が発音 2) 次に 学習者が次々に同じものを発音 3) 最後にもう一度教師が発音し全て録音し 再生 一部の学習者の自己訂正能力が上がった ( 金村 2000)
調査で現れなかった対処法 ( 韻律 ) 4 学習者自身の発音を録音させる 2 2 初級後半から中級前半学習者 7 名が 1) モデル音を聞きながら練習文を発音 2) 自分の音声を録音 3) 録音した音とモデル音を比較し 違いを記述 自分の問題点に気づいて的確に指摘できる学習者ほど発音がよかった ( 福井 2007)
質疑応答 (10 分間 ) ご意見 ご質問等ありましたら よろしくお願いします
ご清聴ありがとうございました