日本の金融経済情勢と金融政策

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経済・物価情勢の展望(2018年1月)

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経済・物価情勢の展望(2017年10月)

金融政策決定会合における主な意見

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

平成30年全国証券大会における挨拶

当面の金融政策運営について(「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、12時50分公表)

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

わが国の経済・物価情勢と金融政策

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別紙2

月例経済報告

短期均衡(2) IS-LMモデル

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

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我が国中小企業の課題と対応策

月例経済報告

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

経済学でわかる金融・証券市場の話③

第1章

エコノミスト便り

経済見通し

2018年夏のボーナス見通し

わが国の経済・物価情勢と金融政策

なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか

はじめに日銀は 1 月 29 日に マイナス金利付き量的 質的金融緩和 の導入を決定し 金融緩和の拡大に踏み切った これまで 量的 質的金融緩和 という異例の大規模緩和を 3 年近く続けたにも関わらず 日銀が政策目標とする物価上昇率は足元でゼロ % 近傍に止まっている 原油価格の大幅下落という想定外

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

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タイトル

個人消費活性化に対する長野県内企業の意識調査

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

2017年夏のボーナス見通し

黒田総裁が 10 月 6 7 日の金融政策決定会合や 直前の参議院財政金融委員会 (10/28) でも物価目標達成への自信を示していたため 市場では今回は追加緩和が行われないとの見方が大勢であった 追加緩和は市場にとってサプライズとなり 株高 円安が進展することとなった 日銀は 追加緩和を行った理由

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

現実の金融政策 2016 年 1 月より政策委員 9 名 ( 総裁 副総裁を含む ) 年 8 回 ( 通常 1 月 4 月 7 月 10 月 ) ただし実施月は2 回ずつ 金融政策決定会合 金融政策を具体的にどのように運営していくのか 金融政策の方針を決定 ( 金融市場調節方針 ) 本来 金利ターゲ

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Economic Trends    マクロ経済分析レポート

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経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

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平成23年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

社団法人日本生産技能労務協会

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資料1

みずほインサイト 日本経済 2017 年 1 月 17 日 中小企業における賃金上昇の背景労働需給のひっ迫で上昇するも持続性には課題 経済調査部エコノミスト 上里啓 大企業の賃金上昇率が伸び悩む一方 2016 年入

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IT 人材需給に関する調査 ( 概要 ) 平成 31 年 4 月経済産業省情報技術利用促進課 1. 調査の目的 実施体制 未来投資戦略 2017 ( 平成 29 年 6 月 9 日閣議決定 ) に基づき 第四次産業革命下で求められる人材の必要性やミスマッチの状況を明確化するため 経済産業省 厚生労働

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ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

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スライド 1

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第45回中期経済予測 要旨

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( 参考 ) と直近四半期末の資産構成割合について 乖離許容幅 資産構成割合 ( 平成 27(2015) 年 12 月末 ) 国内債券 35% ±10% 37.76% 国内株式 25% ±9% 23.35% 外国債券 15% ±4% 13.50% 外国株式 25% ±8% 22.82% 短期資産 -

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エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

日本経済の変貌と量的・質的金融緩和

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平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

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< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

平成23年11月1日

関西の景気動向 2013 年 11 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直しのペースがひところと比べて鈍化している 輸出 ( 円ベース )

量的・質的金融緩和

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貸出は積極的だが消費者向けの環境に変化

通貨及び金融の調節に関する報告書(平成30年12月)

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( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

Transcription:

2017 年 3 月 6 日 日本銀行 日本の金融経済情勢と金融政策 在スイス日本国大使館主催セミナーにおける 講演の邦訳 ( 於チューリッヒ ) 日本銀行政策委員会審議委員 政井貴子

Ⅰ. はじめに本日は 在スイス日本国大使館主催セミナーにご招待頂き スイスの経済界 金融界の皆様と懇談の機会を賜りまして 誠に光栄に存じます 本席では まず 日本の金融経済情勢についてお話しした後 日本銀行の金融政策についてご説明し 私の考えをお話させて頂きます Ⅱ. 日本の金融経済情勢はじめに 日本の金融経済の現状を大まかにご理解頂くため 金融経済の概観について私の見方を述べます そのうえで 日本銀行では 年 4 回 経済 物価情勢の展望 いわゆる 展望レポート を公表し 経済 物価情勢の現状 見通しを点検していますので 直近の 展望レポート (2017 年 1 月 ) の内容をご紹介したいと思います 1. 金融経済概観 (1) 家計部門 ( 良好な雇用環境と家計のマインド ) 日本経済の現状を端的に表しているのは 労働需給の引き締まりかと思います 2016 年平均の失業率は 3.1% まで低下し いわゆる 完全雇用 に近い水準とみられます 2016 年平均の有効求人倍率は約 1.4 倍まで上昇しました これは 実に 25 年振りの高水準です 例えば 有効求人倍率は大都市だけでなく 全ての地域で上昇しています ( 図表 1) こうした良好な雇用環境は 家計のマインドを間違いなく下支えしていると思います 企業業績が多少悪くなったとしても 給与は下がらないだろう または 転職が出来そうだと思える環境は 個人に大きな安心感を与えます こうした安心感は 労働市場の流動性が 他国と比べて相対的に低いと言われる日本ではなおさら重要です このことは 例えば 消費者を対象に 今後 1 年 1

間の暮らし向き の見通しを調査した生活不安度指数の顕著な改善からも窺えます 昨年 1 年間をみると 年初からの国際金融市場の混乱や 国内においては 熊本地震 夏場の悪天候などが続きました こうした中にあって 家計のマインドがよく踏み止った背景の1つには 労働需給の引き締まりがあったのではないかとみています ( 図表 2) ( 雇用者所得も緩やかに増加し 個人消費には持ち直しの動き ) 労働需給の引き締まりを背景に 雇用者所得は緩やかながら増加しています ( 図表 3) 日本では 賃金表の改定により賃金水準を引き上げることを ベースアップ と呼んでいます これは 昇格や年齢 勤続年数に応じた引上げ分とは別に 一律に賃金が引き上げられることです 高度成長期に取り入れられた慣行ですが 1990 年代後半以降 企業は人件費の抑制スタンスを強めた結果 2000 年代以降 ベースアップを行わない企業が殆どとなっていました 2014 年以降の労使交渉では これを実施する動きが十数年振りに拡がっています こうした動きが顕れてから今年で4 年目になりますが 足もと 消費者物価 ( 除く生鮮食品 ) がエネルギー価格の下落を主因に上がらないもとで 今年は期待出来ないという声もあります ただ 全体として 賃金の引下げではなく 賃金の引上げ幅が心配されているということは これまでベースアップが殆ど話題にすらならなかった期間が 20 年近くあったことを思い起こせば 少なくとも良い方向に行っていると考えています 家計のマインドが下支えされ 雇用者所得も増加する中にあって 個人消費はこのところ持ち直しの動きがみられています このように 家計部門における所得から支出への前向きの循環は保たれているとみています ただし 留意点として 1 労働市場の引き締まりの割には 賃金の上昇が弱いこと そして 2 着実な雇用者所得の改善の割には 消費の盛り上がりが弱いことが挙げられます すなわち 消費は持ち直しの動きがみられてきてはいるものの 力強さに欠けているため 所得から支出への循環メカニズムをもう少し確かなものにしていくことが必要だと考えています 2

(2) 企業部門 ( 企業の収益は過去最高水準ながら 先行きには慎重な姿勢 ) 日本企業の収益は 2013 年度から 15 年度と過去最高を更新し その後も高水準で推移しています こうしたもと 設備投資も緩やかな増加傾向にあり 企業部門でも所得から支出への前向きの循環は保たれているとみています ただし 収益の増加の割には 設備投資が伸びていないのも事実です この背景として 今回の景気回復局面における企業収益の拡大には 交易条件の改善が大きく寄与していた一方で 期待成長率の高まりに繋がりやすい売上数量の改善が鈍かったことから 設備投資の押し上げ効果が高まり難かったことが指摘されています 1 もっとも 交易条件の改善であっても その定着が確認されていくことで設備投資にプラスの影響を及ぼすと考えられることも指摘されています また きわめて緩和的な金融環境が 企業の前向きな投資を促しています 今後とも 家計部門同様 前向きの循環メカニズムを一層強化すべく 成長期待を高めていくことが重要です この点は 後ほど詳しく述べたいと思います ( エネルギー価格の安定化は日本経済にも好影響 為替レートのボラティリティの高さが続く場合には 企業マインドへの影響が懸念される ) 企業部門に関しては さらに2 点指摘したいと思います 第 1は 昨年後半以降 原油価格をはじめエネルギー価格が安定的な動きを続ける見通しが強まったことは 世界経済ひいては日本経済にも好影響を及ぼすと考えています これを受けて 私自身は 日本経済の下振れリスクは昨年後半と比べて低下しているとみています 第 2 は 為替レートについてです 昨年 1 年間のドル円レートのボラティリ ティはやや高めとなり レートの水準も 年前半は円高方向へ 年後半は円安 1 企業が 過去最高水準にある収益との対比でみて 慎重な設備投資行動を続けてきた背景 については 日銀レビュー 企業収益と設備投資 企業はなぜ設備投資に慎重なのか? (2016-J-4) を参照 3

方向へと大きめに変動しました 振り返ってみると ドル円相場の年間平均レート近辺の取引期間が短かった 1 年となりました この点 日本同様 為替レートの変動に悩まされがちなスイスの経済界 金融界の皆様には 容易に想像頂けることかと思いますが 為替水準が比較的短期間に上下に大きく変動する状況は 経営の舵取りを難しくさせたものと思います このような状況が仮に続く場合 それが企業マインドに及ぼす悪影響が懸念されるところです さて 以上 日本経済を大まかに俯瞰しました 一言で言えば 雇用者所得 企業収益ともに増加してきており 家計 企業ともに所得から支出への前向きの循環は維持されているものの それを確実なものとするにはもう一歩のところだと 纏められるかと思います それでは 次に 直近の 展望レポート の内容に沿って 少し丁寧に 日本経済の現状と見通しをお話します 2. 現状と見通し (1) 現状日本の景気については 緩やかな回復基調を続けている と判断しています 国内需要の面では 設備投資は 企業収益が高水準で推移し 業況感も幾分改善するなかで 緩やかな増加基調にあります また 個人消費は 雇用 所得環境の着実な改善を背景に 底堅く推移しているほか 住宅投資も持ち直しを続けています 輸出は 足もとではグローバルな製造業の景況感が改善する中で 情報関連需要の堅調さや新興国の在庫 設備調整の進捗などを背景に 増加品目の裾野は着実に拡がっており 輸出の増勢は徐々に持続力を増してきていると判断されます こうした内外需要を映じて また 在庫調整にも進捗がみられる中 鉱工業生産は持ち直しています 物価面では 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は 既往の原油価格の動きを反映したエネルギー価格のマイナス寄与と エネルギー価格以外のプラス寄与が概ね相殺し 全体では0% 程度となっています 4

(2) 先行きの見通し先行きについては 2018 年度までの見通し期間中 景気面では 緩やかな拡大に転じていく と予想しています 国内需要は きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に 増加基調をたどると考えられます この間 海外経済の改善を背景に 輸出も 基調として緩やかに増加するとみられます 以上のもとで 見通し期間を通じて 潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます 1 月の展望レポートにおける政策委員見通しの中央値をみると 実質 GDP 成長率は 16 年度 +1.4% 17 年度 +1.5% 18 年度 +1.1% となっています ( 図表 4) 主要な項目別にみると 設備投資は 当面は 既往の新興国経済の減速や円高がややラグを伴って製造業を中心に下押しに作用するものの 見通し期間を通してみれば 緩やかな増加基調を続けると予想しています これは 低金利や緩和的な貸出スタンスといったきわめて投資刺激的な金融環境が維持されるもと 財政投融資や投資減税などの財政政策の効果 そして期待成長率の緩やかな改善などが効いてくるためです さらに 企業収益は改善が見込まれますが 多少下振れしたとしても 1 東京オリンピックを見据えた再開発投資 2 成長分野への研究 開発 (R&D) 3 人手不足等に対応した効率化 省力化投資 4 設備の老朽化に対応した維持 更新投資などを中心に 設備投資を下支えする姿を想定しています 個人消費は 雇用者所得の着実な改善に加え 株価上昇による資産効果や経済対策の効果もあり 緩やかに増加していくと見込まれるほか 住宅投資は 持ち直しを続けると予想されます 輸出は 新興国の減速の影響が和らぐ中で 当面は基調として持ち直しを続けた後 緩やかに増加していくと見込まれます これは 海外経済の成長率の高まりを背景に世界貿易量が次第に伸びを高めるとともに それに占める日本の輸出シェアも世界的な資本財セクターの回復などを受けて緩やかに上昇すると予想されるためです 鉱工業生産は 新興国経済の減速の影響が和らぎ 経済対策の効果も顕在化するもとで 内外需要の増加を映じて緩やかに増加していくと見込ん 5

でいます また 物価面では 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は エネルギー価格のマイナス寄与剥落を主因に 0% 程度から小幅のプラスに転じた後 マクロ的な需給バランスが改善し 予想物価上昇率も高まるにつれて 2% に向けて上昇率を高めていくと考えています 1 月の展望レポートにおける生鮮食品を除く消費者物価の前年比について 政策委員見通しの中央値は 16 年度 -0.2% 17 年度 +1.5% 18 年度 +1.7% となっています ( 前掲図表 4) Ⅲ. 日本銀行の金融政策次に 日本銀行の金融政策についてお話します はじめに 日本銀行が過去 20 年近くもの間 様々な形で非伝統的な金融政策を続けていることを簡単に振り返っておきたいと思います 1. デフレ下における日本銀行の金融政策日本では 1990 年代の後半から 15 年以上にわたり消費者物価の前年比がゼロないし僅かなマイナスが続くデフレの状態が続いてきました もちろん この間 日本銀行も手をこまねいていた訳ではありません 日本の場合 1998 年の時点で 政策金利 ( オーバーナイト物の無担保コールレート ) は既に 0.25% とゼロ近傍に達していました それでも経済 物価が改善しない状況を踏まえ 日本銀行は 1999 年 2 月に ゼロ金利政策 を導入し 同年 4 月には デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでゼロ金利政策を続ける という 今で言うところのフォワードガイダンスを導入します その後も 操作目標を日本銀行の当座預金残高とする 量的緩和政策 (2001 年 3 月に開始 ちなみに このときはCPIの実績値に紐付けるフォワードガイダンスを導入しています ) や CP 社債 ETF J-REITも買い入れる 包括緩和政策 などを行ってきました ( 包括緩和政策 の導入は 2010 年 10 月 なお これらの資産買入れは現在も続けています また ETF 及びJ-REITに 6

ついては 2013 年以降 買入れを大幅に拡大しています ) この間 成長基盤強化を支援するための資金供給や貸出増加を支援するための資金供給の枠組みも導入し 現在も続けています このように 日本銀行は様々な方法を駆使して 金融緩和を進めていました この結果 緩和的な金融環境が実現されており 例えば 2000 年代以降の長期金利をみると 大体 1% 台という低水準で推移し 2013 年の 量的 質的金融緩和 を始める前の1 年間をみると平均 0.8% 程度でした このような金融環境の実現は 経済の下支えとなってきましたし また 局面によっては 日本銀行の大規模の資金供給が金融システムの安定維持や デフレスパイラルに陥ることの防止に貢献したと思われます もっとも この間 マイルドなデフレの状態が続いていたことは事実です そこで 日本銀行は 15 年近く続いていたデフレから脱却するという強く明確なコミットメントとそれを裏付ける大規模な金融緩和を開始しました これが今に続く 量的 質的金融緩和 です 2.2% の 物価安定の目標 と 量的 質的金融緩和 の導入日本銀行は 2013 年 1 月 物価安定の目標 を導入し その目標を消費者物価上昇率で2% としました それまでは 中長期的な物価安定の目途 として 消費者物価の前年比上昇率で2% 以下のプラスの領域 当面は1% を目途 としていたものです さらに このとき 政府と日本銀行は政策連携を強化し 共同で声明を公表していますが これは 両者が一体となってデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に取り組む決意を示したもので きわめて重要なものであると思います その後 日本銀行は 2013 年 4 月に 量的 質的金融緩和 を導入しました 翌年には買入れをさらに拡大した後 2016 年 1 月にはマイナス金利政策を採用し 同年 9 月には 長短金利操作付き量的 質的金融緩和 を導入しました (1) 基本的なメカニズム 2013 年 4 月に 量的 質的金融緩和 を導入して以降 金融緩和の基本的なメカニズム自体は変わっていません すなわち 1 日本銀行の大規模な国債 7

買入れによって イールドカーブ全体を押し下げること そして2 日本銀行が 2% の 物価安定の目標 に強くコミットし 予想物価上昇率を押し上げることです これらによって 実質金利を引き下げることで 経済 物価に好影響を及ぼすというメカニズムを想定しています ( 図表 5) (2) 量的 質的金融緩和の効果日本銀行は昨年 量的 質的金融緩和 導入以降の経済 物価動向と政策効果について 総括的な検証 を実施しました その結論を申し上げると 先に述べたメカニズムがしっかりと作用し 実質金利は長期までマイナスで推移し 経済 物価情勢は大きく改善したということです 基調的な消費者物価 ( 除く生鮮食品 エネルギー ) が プラスに転じ 2 年半以上にわたってプラス圏で推移してきたことからも きわめて緩和的な金融環境の実現を通じて 物価が持続的に下落する という意味でのデフレではない状態まで来たと判断されます ( 図表 6) このことは 量的 質的金融緩和 の成果だと言えます (3) 長短金利操作付き量的 質的金融緩和 の狙い 量的 質的金融緩和 は このように政策効果が認められたにもかかわらず 昨年 日本銀行が金融緩和の枠組みを強化する形で 長短金利操作付き量的 質的金融緩和 を導入したのはなぜでしょうか これには2つ理由があったと理解しています 第 1に 量的 質的金融緩和 が所期の効果をあげたとはいえ 2% の 物価安定の目標 は実現されておらず より効果的な枠組みとする必要があったことです 第 2に 大規模な国債買入れとマイナス金利政策の組み合わせは イールドカーブ全般に影響を及ぼすうえでの有効性が確認された一方 場合によっては 必要以上にイールドカーブを押し下げ得ることとなり 却って金融機能に悪影響を及ぼす可能性もあることが懸念されたことです この点を若干敷衍します 日本では 先ほど触れましたとおり 長期金利も含め 金利水準が低い状況が続いているうえ 預貸率は低下傾向を辿るなか 8

貸出競争も激しいため 金融機関の預貸利鞘は 90 年代以降 趨勢的に縮小傾向となっており その意味で かねてより金融機関経営の課題でありました ただ マイナス金利の導入後 預金金利の低下幅は 貸出金利の低下幅と比べて小さいものでしたので 長期金利や超長期金利の過度な低下は この傾向に拍車を掛けたことは否めません これが長期化すると 金融機関収益に相応の影響が及び得ることが認識されました また 長期金利や超長期金利の過度な低下は 保険や年金などの運用利回りを低下させることから 将来における広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし マインド面を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性もあります このような留意点を考慮し 柔軟な金融政策運営を可能とする枠組みにシフトすることが適当と考えられたのです (4) イールドカーブ コントロールこの新しい枠組みの中心的な要素である イールドカーブ コントロール では 直接長期金利を目標とすることにより 経済 物価 金融情勢に応じて効果的かつ柔軟な金融政策運営が可能になったと考えられます どういうことかと言うと 大量の国債買入れを継続していくことは これまでと何ら変わりありませんが 従来 操作目標は マネタリーベースや国債保有残高の増加ペースであったのに対して この枠組みでは 短期政策金利と 10 年金利の操作目標を示すこととなります これまでの枠組みは 実務的な運営方法が明確なのですが 望ましいイールドカーブとの対比でみて 金利の引き下げが不十分なものに止まったり 逆に過度な引き下げをもたらす可能性がありました この枠組みでは 金融機能に与える影響にも配慮しつつ 政策運営することが可能なものとなっています (5) オーバーシュート型コミットメント 長短金利操作付き量的 質的金融緩和 のもう1つの要素は オーバーシュート型コミットメント です これは 日本銀行の強い決意を示すことにより 予想物価上昇率を高めていくことが狙いです 9

予想物価上昇率は 過去の実績に引きずられる要素 ( 適合的な期待形成 ) と やがては中央銀行が目標とする上昇率に収束していくだろう という要素 ( フォワード ルッキングな期待形成 ) の2つで決まると考えられます この点 日本においては 適合的な 要素が諸外国と比べて際立って強いという特徴があります ( 図表 7) 日本銀行は 量的 質的金融緩和 を通じてフォワード ルッキングな期待形成への転換を図ってきましたが これが十分に強まる前に 原油価格の下落などから 現実の物価上昇率が低下した結果 人々の予想物価上昇率は適合的な期待形成を通じて 低下しました このため 日本において 2% の 物価安定の目標 を実現するためには 予想物価上昇率を高め フォワード ルッキングな期待形成への転換を促していくことが何としても必要だと考えています このコミットメントはそのための1つの手段です 2% の 物価安定の目標 に向けたモメンタムは維持されているものの 力強さに欠ける状況が続いています 日本銀行は 今後とも 経済 物価 金融情勢を踏まえ 物価安定の目標 に向けたモメンタムを維持するため 必要な政策の調整を行っていきます Ⅳ. 前向きの循環メカニズムの強化に向けて冒頭 日本経済の現状をお話する中で 家計 企業ともに 所得から支出への前向きの循環メカニズムを一層強化していくことが課題であるとの認識を述べました 繰り返しになりますが 家計部門では 労働需給の引き締まり 雇用者所得の増加の割には消費が増えていないのが実情です この背景として 株価下落や天候不順などの短期的な影響や 耐久財のストック調整の影響などが指摘されていますが 将来に対する漠然とした不安も挙げられるように思われます 高齢化が進む日本では 世帯主 60 歳以上の高齢者世帯の消費が 消費全体の 10

およそ半分を占めると推計されるため この影響は大きなものがあります ここでやや脱線しますが 日本では老後に不安を感じる人の割合が他国と比べて高いというアンケート調査の結果を紹介したいと思います 内閣府が 2015 年に実施した高齢者の意識調査をみてみますと 日本では 貯蓄や資産が老後の備えとして足りない と考える高齢者の割合が6 割近くに上ります ( 図表 8) これは 調査対象の他国と比べて最も多い結果となっています 一方で 同調査では 老後の経済生活の備えを 50 代まで 特に何もしていない と答えた高齢者の割合も 日本では4 割超であり 他国と比べて際立って高い水準です ( 図表 9) こうした不安の払拭には 年金 医療 その他の社会保障といった幅広い分野における制度の持続性を高めると同時に 国民の意識の改革や金融教育の充実もまた必要であるように思います また 企業部門において 所得から支出への前向きの循環メカニズムを後押しするのは 成長期待 の高まりだろうと思います この点 政府は 昨年 6 月 日本再興戦略 2016 の中で 官民で認識と戦略を共有し 新たな有望市場を創出するべく 官民戦略プロジェクト 10 を立ち上げています( 図表 10) これをみると 日本経済の課題が総花的に列挙されている印象を持たれるかもしれませんが 現在 日本経済に必要なのは まさにこうした数多くの課題に同時で取り組んでいくことではないかと思います これらの課題は それぞれが相互に密接に関連しており 1つの課題への取組みは別の課題への対応に不可欠なところも少なくありません 例えば 1 点目の柱である 第 4 次産業革命の実現 は IoT ビッグデータ 人工知能を活用してイノベーションを起こしていくことが中心になると思いますが 当然ながら サービス産業の生産性向上や中堅 中小企業 小規模事業者の変革の実現のためにも不可欠な要素かと思います また 日本再興戦略のもとで推進されている 働き方改革 については 成長分野への人材の円滑な移動を促すことにも繋がる面がありますし 纏まった形で休暇を取りやすくすることで 国内の観光需要を喚起する観点からも重要だと思います 一見すると a little bit of everything 11

( 少しずつ全てをやること ) のようにみえても このような取組みを全方位でしっかりと推進し 日本経済の活力を高めていくことが必要です そうしていくことで 成長期待ひいてはインフレ期待も高まってくるのだと考えています 世界で3 番目の規模である日本経済が デフレから完全に脱却し 持続的な成長軌道に復することは 世界経済にとっても重要だと思います 日本銀行は 2% の 物価安定の目標 の実現に向けて きわめて緩和的な金融環境を維持し デフレからの脱却を確実に進めていきます きわめて緩和的な金融環境は 官民のこうした取組みとも相俟って 企業の積極的な投資や生産性向上に向けた取組みを後押しし また デフレからの確実な脱却は 日本経済の活力を高めていくと考えています ご清聴ありがとうございました 以上 12

日本の金融経済情勢と金融政策 在スイス日本国大使館主催セミナーにおける講演 ( 於チューリッヒ ) 2017 年 3 月 6 日 日本銀行 政井貴子

労働需給 ( 図表 1) (1) 失業率と有効求人倍率 (2) 短観 雇用判断 DI 6 ( 季節調整済 %) ( 季節調整済 倍 ) 1.5 失業率 ( 左目盛 ) 有効求人倍率 ( 右目盛 ) 30 20 ( 過剰 - 不足 % ポイント ) 過剰 5 1.2 10 不足 4 0.9 0-10 3 0.6-20 全規模 大企業 中小企業 2 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 年 0.3-30 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 年 ( 資料 ) 総務省 厚生労働省 日本銀行

( 図表 2) マインド指標 (1) 消費者態度指数 (2) 生活不安度指数 55 ( 季節調整済 ) ( 季節調整済 DI) 120 50 改善 130 45 40 140 150 改善 35 30 悪化 160 悪化 25 05 年 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 170 05 年 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ( 注 ) 消費者態度指数の 2013/4 月には 調査方法変更による不連続が生じている ( 資料 ) 内閣府 日本リサーチ総合研究所 消費者心理調査

雇用 家計支出関連 (1) 雇用者所得 (2) 個人消費 (3) 住宅投資 ( 前年比 %) ( 季節調整済 2010 年 =100) 4 ( 季節調整済年率換算 兆円 ) 110 18 108 ( 図表 3) 106 2 104 16 102 100 98 0 96 14 94 92-2 10 11 12 13 14 15 16 年 90 10 11 12 13 14 15 16 年 12 10 11 12 13 14 15 16 年 ( 注 )1. 雇用者所得は 常用労働者数 名目賃金 ( 毎月勤労統計調査ベース ) 四半期は 以下のように組替えている 第 1 四半期 :3~5 月 第 2 四半期 6~8 月 第 3 四半期 9~11 月 第 4 四半期 :12~2 月 2. 個人消費は 消費活動指数 ( 実質 ) 3. 住宅投資は GDP ベースの民間住宅投資 ( 実質 ) ( 資料 ) 厚生労働省 内閣府 日本銀行

展望レポートの経済 物価見通し (2017 年 1 月 ) ( 対前年度比 %) ( 図表 4) 実質 GDP 消費者物価指数 ( 除く生鮮食品 ) 2016 年度 +1.4-0.2 10 月時点の見通し +1.0-0.1 2017 年度 +1.5 +1.5 10 月時点の見通し +1.3 +1.5 2018 年度 +1.1 +1.7 10 月時点の見通し +0.9 +1.7 ( 資料 ) 日本銀行

量的 質的金融緩和 で想定したメカニズム ( 図表 5) 量的 質的金融緩和 大規模な長期国債買入 引下げ効果 2% の 物価安定目標 への強く明確なコミットメント 引上げ効果 名目金利 - 人々の予想物価上昇率 = 実質金利 引下げ効果 経済の好転 物価の上昇

消費者物価 ( 図表 6) 3 ( 前年比 %) 2 総合 ( 除く生鮮食品 エネルギー ) 総合 ( 除く生鮮食品 ) 1 0-1 -2-3 07 年 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ( 注 ) 総合 ( 除く生鮮食品 エネルギー ) は 日本銀行調査統計局算出 消費税調整済み ( 試算値 ) ( 資料 ) 総務省

( 図表 7) 予想物価上昇率の形成における 適合的 な要素 予想物価上昇率のうち 実際の物価上昇率で説明される割合 (1) 短期 (1 年先 ) (2) 長期 (6~10 年先 ) 1.0 1.0 より適合的 より適合的 0.8 0.8 0.6 0.6 0.4 0.4 0.2 0.2 0.0 日本米国ユーロ圏英国 0.0 日本米国ユーロ圏英国 ( 注 1) 実績インフレ率に総合指標を用いた推計 ( 注 2) 推計方法は 日本銀行 量的 質的金融緩和 導入以降の経済 物価動向と政策効果についての総括的な検証 (2016 年 9 月 21 日 ) 補論図表 3 参照 ( 資料 )Consensus Economics コンセンサス フォーキャスト 総務省 BLS Eurostat ONS 日本銀行

( 図表 8) 老後の備えに関するアンケート調査結果 (1) 現在の貯蓄や資産は老後の備えとして十分か についての回答 80 70 60 50 40 30 20 10 (1) 足りない と考える割合 (2) 十分 と考える割合 % 80 70 60 50 40 30 20 10 % 0 日本米国ドイツスウェーデン 0 日本米国ドイツスウェーデン ( 注 1) 対象は 60 歳以上の男女 ( 施設入所者は除く ) ( 注 2) 足りない は やや足りない と まったく足りない の合計 十分 は 十分 と まあ十分 の合計 なお このほかの回答選択肢には 社会保障で基本的な生活は満たされているので 資産保有の必要性はない わからない がある ( 資料 ) 内閣府 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査 ( 平成 27 年 )

( 図表 9) 老後の備えに関するアンケート調査結果 (2) 50 歳代までに 老後の経済生活に備えて特に行ったこと についての回答 (1) 特に何もしていない の割合 (2) 備えの方法 50 % % 80 70 預貯金債券 株式の保有 投資信託 個人年金への加入不動産取得 40 老後のために職業能力を高める その他 60 30 50 40 20 30 10 20 10 0 日本米国ドイツスウェーデン 0 日本米国ドイツスウェーデン ( 注 1) 対象は 60 歳以上の男女 ( 施設入所者は除く ) ( 注 2) 複数回答 ( 資料 ) 内閣府 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査 ( 平成 27 年 )

600 兆円に向けた 官民戦略プロジェクト 10 1. 第 4 次産業革命 2. 世界最先端の健康立国へ 3. 環境 エネルギー制約の克服と投資拡大 4. スポーツの成長産業化 5. 既存住宅流通 リフォーム市場の活性化 6. サービス産業の生産性向上 7. 中堅 中小企業 小規模企業の革新 8. 攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化 9. 観光立国 10. 官民連携による消費マインド喚起策 ( 図表 10) ( 平成 28 年 6 月 2 日閣議決定 日本再興戦略 2016 第 4 次産業革命に向けて )