遠心分離を行うことで積層された層が剥離さ れる 結果均一に積層した単層又は 2 層で比 較的大面積なグラフェンが得られる しかし 酸化のプロセスにおいて, 酸素含有基が導入さ れる事により π 電子共役系が広範囲に破壊さ れ導電性を失う為 導電性を取り戻すために還 元を行い酸素含有基を除去する 2.

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遠心分離を行うことで積層された層が剥離さ れる 結果均一に積層した単層又は 2 層で比 較的大面積なグラフェンが得られる しかし 酸化のプロセスにおいて, 酸素含有基が導入さ れる事により π 電子共役系が広範囲に破壊さ れ導電性を失う為 導電性を取り戻すために還 元を行い酸素含有基を除去する 2. 実験方法 基板は膜厚 90nm の SiO2/Si 基板を用いた 基板はアセトン ( 3min, 15min) エタノール (3min) で超音波洗浄を行った 分散溶液作製は 超音波を印加する方法 印加しない方法 2 つ の方法を用いて行った 2.1 実験方法 1( 超音波印加 ) 2.1.1 グラファイトの酸化 グラファイト ( 焼結グラファイト 99.999%) をピンセットで削り グラファイト粉末 0.05g を用意する グラファイト粉末を濃硫酸 (H2SO4) に入れ 氷浴させながら攪拌 過マン ガン酸カリウム (KMnO4) をゆっくりと加え攪 拌し 35 で 30min 反応 その後純水をゆっ くり加え 98 度で 15min 反応 純水と過酸化 水素水 (H2O2)(30%) を加え反応停止とする 分 量条件を以下の表 1 に示す 2.1.2 濾別 表 1. 分量条件 薬品名製造会社純度分量 H2SO4 東京化成 97.0% 2.3ml KMnO4 東京化成 99.5% 300mg H2O2 東京化成 35.0% 0.9ml H2O - - 4.6ml,14ml H2N-N H2H2O 東京化成 98.0% 3ml 反応物を孔径 25nm のメンブレンフィルタ ーにて濾別 濾別した反応物を 5% の塩酸 (HCl) 2.1.3 分散水溶液の作製 乾燥させた酸化グラファイト粉末 0.2mg/ml の 濃度で純水に溶解 超音波洗浄機を用いて 超 音波を 60min 印加する その後 遠心分離機 で溶液を 30min 遠心分離を行い 上澄み液を 得て酸化グラフェン分散水溶液とする 2.1.4 酸化グラフェン薄膜の形成 10mm 2 の SiO2/Si 基板をアセトン 3min ア セトン 15min エタノール 3min の順で超音波 洗浄した その後 窒素ガスブロアーで基板表 面に付着したエタノールの乾燥を行った その後基板に UV オゾン処理を施し 作製した 酸化グラフェン水溶液 200μl を滴下し 8h 自 然乾燥を行う 2.1.5 酸化グラフェン薄膜の還元 シャーレに酸化グラフェン薄膜を積層させた SiO2/Si 基板と ヒドラジン一水和物 (H2NNH2 H2O) を染み込ませえた濾紙を置 き 蓋をしてホットプレートで 90 で 15min 加熱 SiO2/Si 基板上のグラフェン薄膜を得る 2.2 実験方法 2( 超音波印加なし ) 2.2.1 グラファイトの酸化 グラファイトロッド ( 99.9994%) をピンセッ トで削り グラファイト粉末を 1g 用意する グラファイト粉末を硝酸ナトリウム (NaNO3) と濃硫酸の混合液に入れ 氷浴 攪拌しながら 過マンガン酸カリウムをゆっくり加え 2h 攪 拌 そのまま緩やかに攪拌しながら 5 日間放 置する 分量条件を以下の表 2 に示す 表 2. 分量条件 薬品名 製造会社 純度 分量 H2SO4 東京化成 97.0% 34.5ml KMnO4 東京化成 99.5% 4.5g NaNO3 東京化成 - 0.75g H2O2 東京化成 35.0% 3ml H2N- NH2H2O 東京化成 98.0% 3ml 及び純水で充分に洗浄し 乾燥させて酸化グラ ファイトを得る 2

2.2.2 遠心分離による分散溶液を 5% 硫酸にゆっくり加え 2h 攪拌 溶液を遠心分離 (1000rpm10min) し 上澄みを廃棄 遠心管に 3% 硫酸と 0.5% 過酸化水素水の 1:1 混合液を加え沈殿を再分散してから 遠心分離 (4000rpm 60min) し 上澄みを廃棄 この作業を15 回繰り返す その後 遠心管に加える溶液を純水とし 再分散 遠心分離 (4000rpm30min) 上澄みの廃棄を 2 回行う さらに純水を加えて再分散させ 1 日放置後 沈殿を除去する 沈殿を除いた溶液を遠心分離 (4000rpm60min) し 上澄みを廃棄 この操作 AFM 像を (c) に (b) の黄枠線の部分のラインプロファイルを示す また (b) の AFM 像の測定範囲を (a) の光学顕微鏡像内に赤枠線で示す 図 3.1(a),(c) より グラフェンの文献値通りの厚さ 0.98nm の物質を見つけた この部分のラマンピークを図 3.2 に示す 図 3.2 より D ピーク G ピークは確認出来たが 2D ピークはブロードなピークとなって表れた グラフェンの文献値である強度比の反転と ピークの低エネルギー側へのシフトは起きている 3.2 2 層グラフェン探索結果 を 20 回繰り返す 最後に純水を加えて攪拌し 図 3.3(a) に基板上の光学顕微鏡像を (b) に 酸化グラフェン分散溶液を得る 2.2.3 酸化グラフェン薄膜の形成 5mm 2 の SiO2/Si 基板をアセトン 3min アセトン 15min エタノール 3min の順で超音波洗浄した その後 窒素ガスブロアーで基板表面に付着したエタノールの乾燥を行った その後基板に UV オゾン処理を施し 作製した酸化グラフェン水溶液 50μ l を滴下し自然乾燥を行う 2.2.4 酸化グラフェン薄膜の還元シャーレに酸化グラフェン薄膜を積層させた SiO2/Si 基板と ヒドラジン一水和物を染み込ませえた濾紙を置き 蓋をしてホットプレートで 90 で 15min 加熱 SiO2/Si 基板上のグラフェン薄膜を得る また ヒドラジン還元の後 CVD により Ar,H 下で 600 で 6h 還元を行った また 今回 4000rpm で行った遠心分離は本来の文献では 7000rpm であるが 実験機器の仕様上 今回は 4000 で行った 3 結果 3.1 グラフェン探索結果 AFM 像を (c) に (b) の黄枠線の部分のラインプロファイルを示す また (b) の AFM 像の測定範囲を (a) の光学顕微鏡像内に赤枠線で示す 図 3.3(b),(c) より グラフェンの文献値通りの厚さ 1.82nm の物質を見つけた この部分のラマンピークを図 3.4 に示す 図 3.4 より 単層探索時と同じく 2D ピークはブロードなものとなった また ピークの低エネルギー側へのシフトが起きている 実験方法 2 図 3.5(a) に光学顕微鏡像を (b) に AFM 像を (c) にラインプロファイルを示す 図 3.5 より 実験方法 1 の光学顕微鏡像と比べると存在しているグラファイトは小さくまた絶対量も少なかった また AFM 像 ラインプロファイルより実験方法 1のように グラフェンらしき厚さのものは発見する事は出来なかった 図 3.5 の黄色の破線部分のラマンピークとテープ剥離により作製したグラフェンのピークを図 3.6 に示す 2D ピークのシフトは見られないものの D ピークの強度が非常に少なくなり G ピークはしっかりとしたピークが現れた 実験方法 1 図 3.1a) に基板上の光学顕微鏡像を (b) に 3

(a) 光学顕微鏡像 (a) 光学顕微鏡像 (b) 表面観察像 (b) 表面観察像 (c) ラインプロファイル 図 3.1 単層グラフェン探索結果 (c) ラインプロファイル 図 3.3 2 層グラフェン探索結果 800 400 Intensity[a.u.] 600 400 Intensity[a.u.] 200 200 1350 15001585 2000 2500 2660 Wavenumber[cm -1 ] 1349 1590 1500 2000 2500 2662 Wavenumber[cm -1 ] 図 3.2 単層グラフェンの可能性のあるラマン ピーク 図 3.4 2 層グラフェンと思われる部分のラマ ンピーク 4

4. 考察実験方法 1 図 3.2 図 3.4 より 2D ピークが非常にブロードなピークになっていたが グラフェン 2 層グラフェンの文献値通りの厚さ 0.98nm 1.82nm と D ピーク G ピークを観測する事が出来た (a) 光学顕微鏡像 AFM のラインプロファイル ラマンピーク双 方の測定結果より 厚さの文献値 強度比の反転 2D ピークのシフトがこの測定部分がグラフェンである事を示しているが 2D ピークがブロードな原因として 還元を行った後そのまま AFM とラマンを測定した為 まだ還元剤等の溶液がグラフェン上に残った また還元しきれなかった部分が表面にあったのではないかと考える 実験方法 2 図 3.6 3.7 に関して グラフェンが存在しな (b) 表面観察像 かった理由として 溶液の作製時に遠心分離の 回転数が足りなかった 用いたグラファイトロッドが今回の実験に使うのに適していなかった等の理由が考えられる グラファイトロッドは実験方法 1で用いた物とは違い 層がバラバラの方向に向かい合って存在している 削って Intensity a,u, 2200 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 (c) ラインプロファイル 図 3.5 方法 2 による結果 0 1000 2000 3000 Wavenumber cm -1 図 3.6 ラマンピーク 劈開法 化学 2 粉にした際 細かくなった粒子がさらに薄片になる際に細かくなってしまうのではないかと考える 劈開法で作製したグラフェンと比較すると 2D のシフト等が見られない事がわかることから ある程度の厚さを持つことがわかるが D ピーク強度が少ないことから 還元がしっかり行え 結晶性の良いものが得られたことがわかる 5. 総論グラファイト超伝導の Tc 低下抑制の為 2 層グラフェン超伝導モデルに着目し 2 層グラフェン層間に金属原子をインタカレートすることで室温超伝導に至ると考えた このモデル 5

を実現するために 酸化還元を利用した化学的 [6]M. Hirata et al, Carbon 42 (2004) 2929 2937 剥離形成法に着目し 文献値より結果が明らかになっているグラフェンの作製を目指した まず各種酸化剤を用いてグラファイトを酸化させ 純水中に分散させた 分散水溶液を基板に成膜させて 還元を行うことで 基板上のグラフェン薄膜を得た 単層に近いグラファイトは光学顕微鏡では見えなかった事から AFM である程度のグラファイトの周りを探索した後にグラフェンの文献値通りの値が得られた場所を改めてラマン分光器でピークを調べるのが効率的だと考え これを行った 結果 2D ピークがブロードだったものの単層グラフェンの文献値通りの厚さ D ピーク G ピーク 強度比の変化等の結果は得られた また 超音波印加の代わりに遠心分離を多く行い 時間をかける事で薄片の細断を防ぐ手法も行った より還元を進めるため Ar H2 雰囲気下 600 にて 6h 還元を行った しかし 溶液にはほぼグラフェンは分散していない事が示された 還元の結果は D ピークの減少と2D ピークに示された 今後の方針として 実験方法 2の溶液条件の改善と CVD による真空還元等を行い より大面積なグラフェン及び 2 層グラフェンの作製を検討する 6. 参考文献 [1] 秋光, パリティ,MARUZEN, 05(2008)6-12. [2] W.S Hummers, Jr. et al.. J.Am Chem,Soc, 80(1958)1339. [3]S. Stankovich et al.,nature442(2006)282 [4]Konstantin.N.Kubin, Nano Letters 08(2009)36-41 [5]Fabrication of graphene by chemical exfoliation and its application to transparent electrodes:kenji Ueno, Koich Suganuma, Masashi Yoshida 6