教科指導ステップアップ研修中学校 ( 国語 ) 実践レポート阿賀野市立水原中学校教科 学年国語 3 年氏名佐久間朋子 1 単元名 ( 題材名 ) 状況に生きる ( 故郷 光村図書 ) 2 単元の目標情景描写に着目し 2つの場面を比べて読むことを通して 登場人物の心情を想像したり作者の意図について考えたりすることができる 3 単元の評価規準 文章から感じたイメージを明確にしたり その根拠となる表現を見つけようとしている [ 国語への関心 意欲 態度 ] 情景描写に着目して読み 登場人物の心情を想像したり作者の意図について考えたりすることができる [ 読む能力 ] 身の回りの風景を二百字で描写し 発表することができる [ 書く能力 ] 描写表現の効果を理解し 自分の書く文章に用いることができる [ 言語についての知識 理解 技能 ] 4 単元の構想 (1) 故郷 は 情景描写によって登場人物の心情を暗示したり 人物の描写によって作者の意図を伝えたりする表現が随所に見られる 学習指導要領の言語活動ア 物語や小説などを読んで批評する に挙げられた 語句や描写などについて その意味や効果を評価しながら読む ことを意識し指導にあたりたい 優れた表現に着目することで 登場人物の揺れ動く心情や作者の意図などを読み取らせ 描写から感じ取る思いを他者と比較することで 自分の考えをさらに深め とらえ方の視野を広げたい (2) 当校では 朝読書の時間が設けられており 生徒は自分で選んだ本を毎朝 10 分間読んでいる 聞き取りを行ったところ 多くの生徒が登場人物を中心とした話の展開に興味をもち 本を読み進めている 故郷 の学習を通して 他の物語や小説などにおける語彙や表現上の工夫への関心を高めたい 5 単元の指導計画 ( 全 8 時間本時 3/8) 時間内容 1 全文を通読し 登場人物を確認しながら 初読の感想をまとめる 2 故郷 の社会状況や作者へ関心を持ち 場面分けをする 3( 本時 ) わたし の 現在の様子 と 思い出の世界 はどのように変化したのかを 情景 4 描写に着目して読み取る 5 楊おばさんとの再会 場面から 楊おばさんの人物像を読み取る 6 ルントウとの再会 場面から ルントウの変容を読み取り ルントウと わたし の関係や状況を変化させたものについて考え 作品を読み深める 7 作品に込められた作者の思いに迫り 故郷をあとにする わたし の 希望 がどのようであるかについて考える 8 故郷 の情景描写を参考に 身の回りの風景を二百字で描写し 発表する -1-
6 本時の指導 (1) 本時の目標 現在の故郷 と 思い出の故郷 を比較し 情景描写からそれぞれの わたし の気持ちや状況を読み取る (2) 本時の記録 展開の構想 2つの場面の情景を比較し その描写から伝わる わたし の気持ちや状況を読み取らせたい また 意見交流を行うことで読み方や感じ方を深め 表現の工夫に気付かせたい 授業記録時間学習活動 教師 生徒 導入 5 分 前時の復習本時のねらい 前時の場面分けで 1は現在の故郷 2は過去の故郷であることを確認した 展開 30 分 1の場面の 故郷 を読み取る ワークシートの本文抜粋部分 ( 資料 1~3のA) を教師が範読し 続いてペアで音読させた 故郷 のイメージを書かせ その後イメージの根拠となる語句や表現を抜き出させた 数名を指名して発表させ 語句の意味を確認した 空模様は怪しくなり ヒューヒュー 鉛色 わびしい 横たわっていた を挙げた生徒が多く 全体で辞書の意味や使用例を確認した ( 資料 1~3のBを参照 ) 1の場面の描写から考えられる わたし の気持ちや現在の故郷の状況を考え ワークシートに記入させた < 発問 > 情景描写のイメージと照らし合わせ わたし のどのような気持ちを読み取ることができるだろうか 悲しい 寂しい 気分が沈んでいる 独り取り残されたような感じ 故郷に思いがない などの記述が多く見られた ( 資料 1~3のCを参照 ) 故郷との別れを覚悟した帰郷であったことを1の場面の続きを教師が読み 確認した -2 -
展開 30 分 2 の場面の 故郷 を読み取る ワークシートの本文抜粋部分 ( 資料 1~3のD) を教師が範読し 続いてペアで音読させた 故郷 のイメージを書かせ その後イメージの根拠となる語句や表現を抜き出させた 故郷のイメージとしては 自然が多い きれい 色が使われていて明るい などの記述が多く見られ 根拠となる語句や表現としては 紺碧の空 金色の丸い月 海辺 緑のすいか チャー などの記述が多く見られた ( 資料 1~3のEを参照 ) < 発問 > 1と比較し 2の情景描写から わたし のどのような気持ちを読み取ることができるだろうか 2の場面の描写から考えられる わたし の気持ちや現在の故郷の状況を考え ワークシートに記入させた 楽しい 生き生きしている 安心 故郷を自慢したい 充実している などの記述が見られた ( 資料 1~3のFを参照 ) 班内で発表する 1 2の わたし の気持ち 状況を班内で発表させた ( 資料 1~3のC F) また 他の意見を聞き 自分の考えと比較した上で 自分のワークシートに書き加えさせ 自分の考えを深めさせた 何も書けない生徒や 記述の少ない生徒にも共感できる考えを書き写すように指示した まとめ 15 分 表現の工夫のまとめ 数名を指名して発表させ 情景描写に暗示された わたし の気持ち 状況を全体で確認した 故郷 には 他の場面でも登場人物の心情や状況が情景描写によって示されていることを確認し 本時の授業の感想を書かせた 情景描写の比較だけで 故郷に対する思いが違うことがわかることに驚いた など 新たな発見が感想に書かれた ( 資料 1~3のGを参照 ) 次時の予告 同場面の全体の読み取りから実態を知り わたし と ルントウ の関係をおさえることを伝えた -3 -
資料 1 資料 2-4 -
資料 3 7 単元を振り返って (1) 目標の実現状況今回は イメージの記述 根拠となる語句の抜き出し 登場人物の気持ちや状況の読み取り という三段階に分けて指導を行った まず 文章から自分の感じたイメージを記述し その後イメージの根拠となる語句を探させたことにより 初めは漠然としていたイメージを明確化することができた そして その結果生徒は情景描写が登場人物の心情を暗示していることに気付き 登場人物の心情を読み深めていった また 2つの場面の比較から 気持ちや気分 状況によって 同じ情景でも見え方 感じ方が異なることを感じ取っている生徒も見られた 中には自分の感じたイメージではなく 本文の表現をそのまま書き写す生徒も見られた しかし 本文に登場人物の心情は書かれていないため 本文の表現と自分自身の感情と語彙とをつなぎ合わせ わたしの気持ち 状況 について自分の考えをもつことができていた 意見交流の場面では 班内で他の班員と自分の考えを比較し 自分では使わない表現を注意深く聞いたり 他の班員の意見に納得し 参考にするため書き写したりする様子も多く見られた 語彙力を高めるためには 文章だけではなく 他の生徒との意見交換も有効であることが確信できた 本時の目標である2つの場面の情景から 登場人物の気持ちや状況を読み取ることは ほぼ達成されたと考えられる (2) 指導の成果と課題本時の授業を通して 情景描写から登場人物の心情を読み取ることができることを改めて感じた生徒は多い 1 2 学年の にじの見える橋 雨の日と青い鳥 の学習でも 今回と同様に -5 -
情景描写に着目した読み取りを行った 今回は同じ作品中の2つの場面を比較しながら読み取った点が今までと大きく異なる点であり 生徒が理解しやすかった理由の一つと考える しかし 情景描写そのものを優れた表現として読み味わったり評価したりするまでには至らなかった また 語彙力が弱い 文章中で理解できても自分の文章や発表などで用いることができないことが新たな課題として挙がってきた 主体的に文章表現に着目させ 語彙力を高めるには 朝読書の機会なども利用しながら こうした文章表現を意識した読み取りを繰り返し行う必要があると考える (3) 今後の指導に向けて今回の 故郷 の学習を受け 生徒が情景描写に着目し 文学的文章の読み取りを深めることのできる指導を今後も行いたいと考える そこから 生徒自身の感情表現もより豊かになり 心情を表す語彙の選択肢も増えると考えている 普段は 嬉しい 楽しい 悲しい 悔しい などの感動を直接表わす語句に頼りがちであるが 例えば とぼとぼ歩く 心に虹が架かる 太陽までが私の味方に思われる などの表現からも登場人物の心情の読み取りができ さらには 文章や発表原稿においても工夫を凝らした表現ができるようになることを望んでいる そのために 工夫された表現に着目した音読活動を取り入れていきたい 現在は 毎時間音読活動を取り入れ 他者評価 自己評価をさせているが その評価項目は 漢字や語句のまとまりを考えて読めているか 読む速さは適切か 声の大きさは適切か の三点と感想を書かせるにとどまっている ( 資料 4) そこで 文学的文章を読む際には 工夫された表現を抜き出すための項目を増やし その表現を用いて短文を作る場面を設ける ( 資料 5) こうした反復練習によって 文章の表現に着目した読み方ができ また他の生徒がどのような表現を挙げるかに興味を持ち 互いに短文を考え合う機会を設けることができると考える より豊かな自己表現が生徒の充実した学校生活にもつながることを心に留め 今後も言語活動を重視して授業を行っていきたい 資料 4 資料 5-6 -