資料 4-1 農業生産工程管理 (GAP) の普及 拡大に向けて 平成 28 年 10 月 生産局農業環境対策課
農業生産工程管理 (GAP) とは 農業生産工程管理 (GAP:Good Agricultural Practice) とは 農業生産活動の持続性を確保するため 食品安全 環境保全 労働安全に関する法令等を遵守するための点検項目を定め その実施 記録 点検 評価を繰り返しつつ生産工程の管理や改善を行う取組のこと 1 合意形成 体制作り 2 産地における PDCA サイクルによる GAP の実施体制 防ぐべき危害 食中毒 カビ毒中毒 農作業事故 農作業を通じた環境汚染 関係法令等の遵守事項 農薬取締法 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 各種指針 ガイドラインの取組事項 栽培から出荷までの野菜の衛生管理指針 農作業安全のための指針 食品安全 環境保全 労働安全について実施すべき取組を明確化したものを GAP として策定し 実施体制を構築 3 実施 記録のイメージ GAP 導入の効果 農産物の病原微生物等による汚染の低減等を通じた食品の安全性向上 農薬や肥料による環境負荷の低減等を通じた環境の保全 農作業中の事故の回避等を通じた労働安全の確保 土壌診断を踏まえた肥料の適正施用等を通じた資材コストの低減等 1
農業生産工程管理 (GAP) の定義 機関 団体 GAP の定義 国連食糧農業機関 (FAO) 農林水産省 : 農業生産工程管理 (GAP) の共通基盤に関するガイドライン ( 仮訳 )GAP とは 農業生産の環境的 経済的及び社会的な持続性に向けた取組であり 結果として安全で品質の良い食用及び非食用の農産物をもたらすものである 農業生産工程管理 (GAP:Good Agricultural Practice) とは 農業生産活動を行う上で必要な関係法令等の内容に則して定められる点検項目に沿って 農業生産活動の各工程の正確な実施 記録 点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動のこと 2
GAP の共通基盤に関するガイドラインの構成 農業生産工程管理 (GAP) の共通基盤に関するガイドライン 食品安全 環境保全や労働安全に関する法体系や諸制度を俯瞰し 我が国の農業生産活動において 特に実践を奨励すべき取組を明確化作物独自に適用される法令指針等の有無 作物独自の生産工程の有無を踏まえて 以下の1~9の作物毎に取組事項を整理 1 野菜 2 米 3 麦 4 果樹 5 茶 6 飼料作物 7その他の作物 ( 食用 : 大豆等 ) 8その他の作物 ( 非食用 : 花等 ) 9きのこ 作物毎の取組事項は以下の構成となっている 工程管理の内容 食品安全 ほ場環境の確認と衛生管理 農薬使用時の表示内容の確認作業者等の衛生管理 ( 野菜 果樹 ) かび毒 (DON NIV) 汚染の低減対策 ( 麦 ) かび毒 ( ハ ツリン ) 汚染の低減対策 ( 果樹 ) 荒茶加工時の衛生管理 ( 茶 ) 収穫 調製時の異物混入の防止対策等 環境保全 病害虫が発生しにくい環境づくり都道府県の施肥基準等に即した施肥堆肥等の有機物の施用 堆肥中の外来雑草種子の殺滅廃棄物の適正な処理有害鳥獣による被害防止対策 等 労働安全 危険な作業等の把握 機械等の安全装備等の確認農薬 燃料等の適切な管理 等 全般 知的財産の保護 活用 登録品種の種苗の適切な使用 情報の記録 保管等 工程管理の手法の実践 1 点検項目の策定 (Plan) 2 農作業の実施 記録 保存 (Do) 3 点検 (Check) 4 改善が必要な部分の把握 見直し (Action) ( 産地の責任者による内部点検等の客観的な点検の仕組みを付加 ) 3
様々な GAP 種類運営主体説明 ガイドライン準拠状況 1 グローバルマーケットでの活用状況 各都道府県の GAP 各都道府県 各都道府県が独自に定めた GAP 一部の都道府県で第三者による認証を実施 一部 JA グループの GAP JA 経済連 各 JAが独自に定めて取り組む GAP 一定の要件を満たすJAに対し 全農が認証システムを提供 一部 適正農業規範 / 農産物品質保証システム 日本生活協同組合連合会 ( 産直事業委員会 ) 生協の 産直 商品を主な対象とした GAP の基準 生産者自身による点検と生協の二者点検を実施 JGAP ( 一財 ) 日本 GAP 協会 農業者 JA 大手小売業等が参加して開発 指導員を育成する仕組みをもつ 第三者による認証を実施 アジアの一部で外資系飲料メーカーが原料茶葉調達に活用 GLOBALG.A.P. FoodPLUS GmbH( ドイツに本部を置く非営利組織 ) 欧州の流通小売の大手企業が主導して策定し生産者団体と調整して策定した取引要件としてのGAP 第三者による認証を実施 GFSI 2 承認スキーム ( 青果物のみ ) 1: 農水省において策定した 農業生産工程管理 (GAP) の共通基盤に関するガイドライン ( 平成 22 年 4 月 ) に準拠したもの ( 一定水準以上の GAP の普及を図るため 我が国の農業生産活動において奨励すべき取組を共通基盤として明確化 ) 2:GFSI (Global Food Safety Initiative) とは 2000 年にグローバルに展開する小売業者 食品製造業者等が集まり 食品安全の向上と消費者の信頼強化に向け発足した団体 食品安全リスクの低減とコストの最適化を目指し 多数ある食品安全認証スキームの標準化等の取組を行っている 4
GLOBALG.A.P. JGAP Advance JGAP Basic 及び GAP ガイドラインの水準の比較 ( イメージ ) 食品安全環境保全労働安全人権保護その他第三者認証 GLOBALG.A.P. ( 青果物 水産養殖 のみ GFSI 承認 ) ISO 認証制度に則った第三者認証 JGAP Advance ( 国際規格化を推進 ) ISO 認証制度に則った第三者認証 JGAP Basic ISO 認証制度に則った第三者認証 農水省 GAP ガイドライン ( 規定なし ) ガイドライン水準への統一化第三者による確認制度の導入 A 県 GAP ( ガイドライン非準拠 ) 県職員による確認 B 農協 GAP ( ガイドライン非準拠 ) 制度なし 内容 ( 例 ) 農薬使用時のラベル表示内容遵守 IPMによる病害虫防除 作業環境改善による事故防止 作業者の衛生管理 ( 手洗設備確保 農薬散布時の周辺作物 住民等へ 機械等の安全装備の確認 管理等 ) の影響回避 農薬 燃料等の適切な管理 収穫 調整時の異物混入防止 肥料の施肥基準等に則した施用 農場内の居住地に十分な設備 強制労働の禁止 使用者と労働者の対話記録 全ての生産工程でリスク評価を実施 文書化 仕入先 サービス提供者の信頼性評価 商品回収テスト 水の使用量把握と節水努力 5
GAP の取組状況 1 導入産地数の推移 平成 19 年 7 月 平成 19 年 12 月 平成 20 年 7 月 平成 21 年 3 月 平成 22 年 3 月 平成 23 年 3 月 223 439 596 1138 1572 GAP に取り組んでいる産地数 ガイドラインに則した GAP に取り組んでいる産地数 1984 2194 2 GAP の種類別導入状況 取り組んでいない 38% 都道府県 GAP 23% 平成 24 年 3 月 平成 25 年 3 月 平成 26 年 3 月 平成 27 年 3 月 620 980 2462 2607 1010 2713 2737 1010 ( 調査対象の 0 500 1000 1500 2000 2500 62%) 3000 調査対象 (4,391 産地 ) 1 の約 6 割がGAPに取り組み ( 産地数 ) ガイドラインに則したGAP 2 に取り組んでいる産地は 調査対象の 23%(1,010 産地 ) 農林水産省調べ ( 平成 27 年 3 月末現在 ) その他 GAP ( 産地独自など ) 14% JAグループGAP 21% 生協等が GLOBALG.A.P. JGAP 2% 策定したGAP 2% ( 1) 調査対象は 野菜 米 麦 果樹 大豆の産地強化計画等を作成している産地等 ( 平成 27 年 3 月 4,391 産地 ). ( 平成 23 年 3 月の結果は福島県を除く ) ( 2) ガイドラインに則した GAP は 農業生産工程管理 (GAP) の共通基盤に関するガイドライン ( 平成 22 年 3 月農林水産省生産局 ) における法令上の義務項目を全て満たし かつ法令上の義務以外の項目の 8 割以上の項目を満たしているもの 6
JGAP 導入による経営改善効果 販売先への信頼 が改善された 約 5 割 資材の不良在庫 が削減 約 5 割 品質の向上 が図られた 約 5 割 従業員の責任感 や 自主性 が向上 約 7 割 資料 :GAP 導入による経営改善効果に関するアンケート調査結果 ( 平成 25 年 1 月 ( 独 ) 農業 食品産業技術総合研究機構 ) 7
GAP 共通基盤ガイドラインに則した GAP の普及 拡大に関するアクションプランのポイント 具体的な取組方向 1 GAP 共通基盤ガイドライン準拠確認する仕組みを構築し ガイドラインに準拠した GAP を公表 2 重点的に推進する対象者 品目の明確化ア GAPを通じた経営改善の意識が高い農業経営者 ( 具体的には いわゆる 担い手 ) JAの生産部会 ( 団体での導入を念頭 ) イ地域の状況を踏まえ GAPの取組が少ない品目 3 GAPの普及 教育活動への支援ア普及指導員 営農指導員を含めてGAP 実践に精通した指導者を育成 リスト化し 要望があったときに紹介イ研修 教育機関 ( 農業高校 農業大学校 大学農学部 JA 都道府県 全国農業会議所等) に GAPに関するプログラムの設定を要請ウ講師派遣 研修内容等のコーディネートエ普及指導員 営農指導員と斡旋した指導者が連携する取組を支援 4 GAP の周知活動ア GAP 共通基盤ガイドラインのパンフレット 手引き書等の作成 提供イ関係機関と連携し 農林水産省主催のシンポジウムを開催ウ GAPに取り組む農業者等が互いの情報を共有 交換できる情報のネットワーク化の仕組み及び経営改善効果をわかりやすく示す指標を検討 5 GAP の利便性向上の取組記帳の負担軽減 迅速な作業計画の策定及び経営の管理 改善に資する ICT を活用したサービスの導入支援 6 グローバルマーケットを意識した農業者に対しては ISO 認証制度に則った第三者認証を備える GAP の認証取得を促進 上記に加え ガイドラインに準拠した農業生産活動を行っていることを第三者が認証する仕組みの構築を支援 8
産地活性化総合対策事業 2,049 百万円のうち GAP 体制強化 供給拡大事業 平成 28 年度予算 56 百万円 インバウンド需要や輸出の拡大に向けて 我が国の安全で高品質な農産物をアピールするため 農業生産工程管理 (GAP) の取組の高度化 普及の拡大を図る取組を支援します さらに 国際的に通用するGAPの検討やICTサービスを活用したGAPの認証取得等の取組を支援します GAP の高度化 普及拡大に向けた取組 輸出促進に向けた取組 1 販路拡大等を目指した GAP の普及推進 国内の GAP 取組レベルの底上げに向けて ガイドラインに則した GAP の普及に向けた取組を支援します 1 全国推進事業 (27 年度 ~29 年度継続事業 ) 日本の農業者が GLOBALG.A.P. を取得しやすくするための運用改善 日本の農業者が使いやすい輸出用 GAP の策定に向けた取組を支援します 事業内容 GAPの普及に向けた推進活動や 普及資料の作成 事業内容 検討会の開催 取組の更なる高度化に向けた研修会 国内外の実態調査 の開催や実践マニュアルの作成 等 国際規格化に向けた調整 補助率 1/2 補助率 定額 1/2 事業実施主体 農業協同組合 協議会等 事業実施主体 民間団体等 等 2 認証体制導入支援 2 ICT を活用した既存 GAP の高度化支援 信頼性の向上に向け 第三者等がGAPの取組を確認 認証する仕組みを導入する取組を支援します 事業内容 確認体制導入検討会の開催 輸出を見据えた産地に対して ICTサービスを活用して記帳作業の負担を軽減し GLOBALG.A.P. 等を取得する取組を支援します 審査員養成研修会の開催 事業内容 研修会の開催 基準書の作成 ICTサービスの利用 確認体制の実証及び検証 GLOBALG.A.P. 等の認証取得 補助率 定額 1/2 補助率 定額 1/2 事業実施主体 都道府県 農業協同組合 等 事業実施主体 農業協同組合 農業生産法人 等 日本産農産物に対する信頼性の向上 インバウンド需要や輸出の拡大 9
国際水準 GAP 等取得拡大緊急支援事業 ( 新規 ) 平成 28 年度補正予算 350 百万円 〇輸出やインバウンド消費の拡大 国内の消費動向の変化に適切に対応するため オリパラ東京大会の食料調達への対応も視野に入れつつ 農産物の国際水準 GAP 及び有機 JAS の認証取得の拡大に必要な環境整備と認証取得に対する支援を強化します 1 我が国発の輸出用 GAP の国際規格化支援 2 国際水準認証の取得拡大のための環境整備支援 我が国発の輸出用 GAP の国際規格化 導入推進 1 国際水準 GAPのマニュアル策定等 2 国際水準 GAP の指導員育成等支援 3 有機農産物の需要喚起 日本の農業者が取り組みやすい我が国発の輸出用 GAP (JGAP Advance) について 国際規格化の交渉や 導入推進のための技術マニュアルの策定等の取組を支援します 補助率 定額 事業実施主体 民間団体 日本の農業者が国際水準 GAPを取得しやすくするため す検討会の開催 国内外の実態調査 技術マニュアルの策定等の取組を支援します 補助率 定額 事業実施主体 民間団体 農業生産現場における取組を促進するため 国際水準 GA Pの指導ができる指導員を育成するために行う研修会等に係る取組を支援します 補助率 定額 事業実施主体 都道府県 協議会等 国産有機農産物の需要拡大キャンペーンの実施を通じて有機 JAS 認証取得の拡大につなげる取組を支援します 補助率 定額 事業実施主体 民間団体等 3 国際水準認証の取得支援 認証取得 技術習得研修 ICT 技術導入 残留農薬等分析 認証対応施設改修 機器導入等 農地所有適格法人や産地を対象とし 認証取得 技術習得のための研修会の開催 販路拡大に向けた実需者との連携体制の構築 記帳作業軽減のための ICT 技術導入 残留農薬等分析 集出荷 調製施設等を GAP や有機 JAS 対応にするための改修 機器導入等 認証取得のために必要な取組を総合的に支援します 補助率 定額 ( 機器等のリース導入については 1/2 以内 ) 事業実施主体 農地所有適格法人 農業協同組合 協議会等 ( 一部については 交付先である民間団体を通じて支援 ) 8
1 ガイドライン GAP の普及推進 平成 29 年度予算概算要求額 : 産地活性化総合対策事業 2,530 百万円のうち 60(56) 百万円 GAP 体制強化 供給拡大事業 ガイドライン GAP の取組を産地において広く普及させる取組や ガイドライン GAP の取組を認証する体制の整備を支援します 農業生産工程管理 (GAP) の共通基盤に関するガイドライン に則した一定水準以上の GAP の普及に向けた取組を支援します 事業内容 生産者向け研修会の開催や実践マニュアルの作成 団体での取組に必要な内部監査員等の管理者養成研修会の開催 GAPの普及に向けた推進活動や普及資料の作成等 補助率 1/2 事業実施主体 農業協同組合 協議会協議等 2 認証体制整備支援 信頼性の向上に向け 第三者が GAP の取組を認証する体制を整備するための取組を支援します 事業内容 補助率 認証体制導入検討会の開催( 定額 ) 審査員養成研修会の開催( 定額 ) 基準書の作成( 定額 ) 認証体制の実証及び検証 (1/2) 事業実施主体 都道府県 農業協同組合等 経営の改善や日本産農産物に対する信頼性の向上 9