例会レジュメ

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第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

ており 土地の個別的要因に係る補正が全て考慮されたものとなっていることから 土地の形状 道路との位置関係等に基づく個別的要因に係る補正 すなわち評価通達 15(( 奥行価格補正 )) から 20(( 不整形地の評価 )) まで及び 20-3(( 無道路地の評価 )) から 20-6(( 容積率の異な

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~ 都市計画道路予定地の評価 ~ 今回の豆知識では 我々不動産鑑定士が日常の評価業務において良く目にする 都市計画 道路予定地 の評価について取り上げてみたいと思います 1. 都市計画道路とは? 都市計画法では 道路 公園 下水道処理施設等の施設 ( 都市施設 ) のうち必要なものを都市計画に定める

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3-3 新旧対照表(条例の審査基準).rtf

路線価図

税理士法人チェスター【紹介】

和泉市の宅地開発における制度

12. 地価公示は 土地鑑定委員会が 毎年 1 回 2 人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め その結果を審 査し 必要な調整を行って 標準地の正常な価格を判定し これを公示するものである 13. 不動産鑑定士は 土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を行うに当たっては 近傍類地の取 引価格から

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第 5 章 N

Microsoft Word - 別添資料

2 都市計画法第 34 条第 11 号に係る区域指定の許可基準について 都市計画法の趣旨 施策の方針市街化調整区域において, 市街化区域に隣接又は近接し, 一体的な日常生活圏を構成している市街化の進行した一定の区域を条例で指定し, 予定建築物を周辺環境と調和する用途に制限することにより, 許可の対象

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予定建築物等以外の建築等の制限 法 42 条 立地基準編第 5 章 (P127~P131) 法第 42 条で規定されている 予定建築物等以外の建築等の制限 については 次のとおりとする 1 趣旨開発許可処分は 将来その開発区域に建築又は建設される建築物又は特定工作物がそれぞれの許可基準に適合する場合

1. 固定資産税 都市計画税について 固定資産税は 毎年 1 月 1 日 ( 賦課期日 といいます ) 現在に土地 家屋 償却資産 ( こ れらを総称して 固定資産 といいます ) を所有している人が その固定資産の所在する 市町村に納める税金です 都市計画税は 下水道 街路 公園などの都市計画事業

大谷周辺地区 及び 役場周辺地区 地区計画について 木原市街地 国道 125 号バイパス 役場周辺地区 (43.7ha) 美駒市街地 大谷周辺地区 (11.8ha) 地区計画の概要 地区計画とは住民の身近な生活空間である地区や街区を対象とする都市計画で, 道路や公園などの公共施設の配置や, 建築物の

(2) 区域内の主要な道路が 環境の保全上 災害の防止上 通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置されており かつ 区域外の相当規模の道路と接続していること (3) 区域内の排水路その他の排水施設が その区域内の下水を有効に排出するとともに その排出によって区域及びそ

相続財産の評価P64~75

計画書

1 天神 5 丁目本件土地及び状況類似地域 天神 5 丁目 本件土地 1 状況類似地域 標準宅地

養子縁組制度の利用 1. 制度の概要養子には 民法上 普通養子と特別養子の 2 種類があります 養子の相続税法上の取り扱いは 以下の通りです 1 累進課税される相続税率の緩和 (3 億円超は 50%) 2 相続人の数が増えるため基礎控除枠が増加 (1,000 万円 法定相続人 ) 3 死亡保険金 死

販売用不動産の時価評価の基準(案)と論点

目 次 1 固定資産税と固定資産税評価 1 1 固定資産税とは 1 2 固定資産税の課税のしくみ 2 (1) 固定資産税を納める人 ( 納税義務者 ) 2 (2) 税額の計算 2 2 固定資産税評価のあらまし 1 固定資産税評価の意義 2 固定資産税評価によって求める価格とは 3 固定資産の価格を求

鹿嶋市都市計画法の規定による市街化調整区域における

( 対象区域 ) 第 5 地区計画の対象区域は 工業団地 ( 国母工業団地 南部工業団地 機械金属工業団地 ファッション工業団地 ( アリア ディ フィレンツェ ) をいう 以下同じ ) の区域内及び隣接地又は近接地 ( おおむね工業団地から500メートル以内 ) とする ( 区域の設定 ) 第 6

などについては連たんの戸数に含めることはできません また 建築物の敷地相互の間隔とは 相互の敷地端からの直線距離です (2) 本市では 昭和 46 年 3 月 15 日から市内を市街化区域と市街化調整区域に区分する 線引き を行っています ( 法第 3 3 条第 4 項の条例で定める建築物の敷地面積

3. 市街化調整区域における土地利用の調整に関し必要な事項 区域毎の面積 ( 単位 : m2 ) 区域名 市街化区域 市街化調整区域 合計 ( 別紙 ) 用途区分別面積は 市町村の農業振興地域整備計画で定められている用途区分別の面積を記入すること 土地利用調整区域毎に市街化区域と市街化調整区域それぞ

不動産鑑定士第2次試験

名前 第 1 日目 建築基準法 2 用途規制 1. 建築物の敷地が工業地域と工業専用地域にわたる場合において 当該敷地の過半が工業地域内であると きは 共同住宅を建築することができる 2. 第一種低層住居専用地域内においては 高等学校を建築することができるが 高等専門学校を建築する ことはできない

及びその周辺の地域における自然的条件 建築物の建築その他の土地利用の状況等を勘案し 集落の一体性を確保するために特に必要と認められるときは この限りでない (2) 区域内の主要な道路が 環境の保全上 災害の防止上 通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置されており か

富士見市都市計画法に基づく開発許可等の基準に関する条例

平成 26 年 10 月 3 日 元国税の税理士 不動産鑑定士が教える 税理士が誤りやすい資産税の論点 税理士 不動産鑑定士 西川浩二

筑豊広域都市計画用途地域の変更 ( 鞍手町決定 ) 都市計画用途地域を次のように変更する 種類 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域 面積 約 45ha 約 29ha 建築物の容積率 8/10 以下 8/10 以下 建築物の建蔽率 5/10

PowerPoint プレゼンテーション

Ⅰ. 評価対象地の表示及び報告事項 1 評価対象地の表示 所在 地番 公簿 地目 現況 公簿 数量 ( m2 ) 対象 仙台市 区 町 番 宅地宅地 1, , 報告事項 評価対象地は 財産評価基本通達 24-4( 広大地の評価 ) に規定される 広大地 に該当するものと

別紙 40 東京都市計画高度地区の変更 都市計画高度地区を次のように変更する 面積欄の ( ) 内は変更前を示す 種類面積建築物の高さの最高限度又は最低限度備考 第 1 種 約 ha 建築物の各部分の高さ ( 地盤面からの高さによる 以下同じ ) は 当該部分から前面道路の反対側の境界線 高度地区

市税のしおり2016表紙再3

生産緑地制度の概要 市街化区域内の農地で 良好な生活環境の確保に相当の効用があり 公共施設等の敷地に供する用地として適している 500 m2以上 *1 の農地を都市計画に定め 建築行為や宅地の造成を許可制により規制し 都市農地の計画的な保全を図る 市街化区域農地は宅地並み課税がされるのに対し 生産緑

一団地認定の職権取消し手続きの明確化について < 参考 > 建築基準法第 86 条 ( 一団地認定 ) の実績件数 2,200 ( 件 ) 年度別 ( 住宅系のみ ) S29 年度 ~H26 年度 実績件数合計 16,250 件 用途 合計 ( 件 ) 全体 17,764 住宅系用途 16,250

第1章 開発許可制度の概要

都市計画法改正における市街化調整区域内の規制について

3 市長は 第 1 項の規定により指定した土地の区域を変更し 又は廃止しようとするときは あらかじめ久喜市都市計画審議会 ( 以下 審議会 という ) の意見を聴くものとする 4 第 1 項及び第 2 項の規定は 第 1 項の規定により指定した土地の区域の変更又は廃止について準用する ( 環境の保全

指定標準 適用区域 建ぺい率 容積率 建築物の高さの最高限度 m 用途地域の変更に あたり導入を検討 すべき事項 ( 注 2) 1. 環境良好な一般的な低層住宅地として将来ともその環境を保護すべき区域 2. 農地等が多く 道路等の都市基盤が未整備な区域及び良好な樹林地等の保全を図る区域 3. 地区計

( 法第 33 条第 4 項の条例で定める建築物の敷地面積の最低限度 ) 第 3 条法 34 条第 8 号の3に規定する開発行為を行う場合における建築物の敷地面積の最低限度は, 法第 33 条第 4 項の規定に基づき,250 平方メートルとする ただし, 市長が良好な住居等の環境の形成又は保持のため

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73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

5-1から3許可・不許可

宅地造成費の金額表

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

宅地 雑種地 田に土盛りをして畑とした土地牧草栽培地 農業用施設の内部で用水を利用しないで耕作する土地 家屋建築用地として造成され 道路 上下水道 公共施設等を備えている土地建物に付随する広場 庭園 通路等に過ぎないと認められる土地 工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場用地 家屋の敷地内にある

広島市開発審査会提案基準

調布都市計画深大寺通り沿道観光関連産業保護育成地区の概要

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スライド 1

LEC 東京リーガルマインド 複製 頒布を禁じます 平成 29 年度不動産鑑定士論文式試験 ズバリ的中 鑑定理論 論文問題 問題 1 (50 点 ) 移行地に関する次の各問に答えなさい (1) 不動産の種別における移行地の定義について 見込地と比較した上で 説明しなさい (2) 移行地の個別的要因に

◆JREI固定インフォ No9◆◆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

開発許可申請の手引き 平成 31 年 4 月改訂 熊本市都市建設局

アガルートアカデミー宅地建物取引士試験総合講義業法 第 1 宅地 建物 取引 業 とは 宅地建物取引業 ( 宅建業 ) を営むためには 原則として 免許を受ける必要があります (3 条 1 項 ) 宅地建物取引業 とは 宅地または建物の取引を業として行うことをいいます (2 条 2 号 ) 宅地 建

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エ建替え後の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影面積の合計は 現に存する建築物又は現に建築の工事中の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影面積の合計を超えないこと オ建替え後の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影部分の形状は 現に存する建築物又は現に建築の工事

用途地域の指定のない地域の建築形態規制\(素案\)

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< 解答例 > 一小問 (1) について不動産の価格は 不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要に影響を与える諸要因の相互作用によって形成されるが その形成の過程を考察するとき そこに基本的な法則性を認めることができる 不動産の鑑定評価は その不動産の価格の形成過程を追究し 分析する

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あるが 人が通り抜けられる状態となっており 効用の増加が認められると判断しているので 1% を加算している 公法上の規制による減価の1% について 用途地域が第一種低層住居専用地域で 建蔽率の差が10% 容積率の差が20% こちらを勘案して1% の減価としている その他減価の整地の3% について 整

スライド 1

第 1 基本的事項 1 業務内容についての順守事項本業務を行う不動産鑑定士又は不動産鑑定士補 ( 以下 不動産鑑定士等 という ) は 本業務が単に個別地点について行う鑑定評価と異なり 同一価格時点で大量に行う鑑定評価であり 特に面的な価格の均衡が求められる固定資産税評価のための基礎資料を作成するも

『知っておきたい 不動産所有コストの中身と抑えるコツ』


東京都市計画高度地区の変更 都市計画高度地区を次のように変更する 2 建築物の各部分の高さは 当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水 資料 5 面積欄の ( ) 内は変更前を示す 種 類 面積 建築物の高さの最高限度又は最低限度 備考 約 ha 建築物の各部分の高さ (

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ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

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参考資料 ( 美祢都市計画区域 ) 目次 1. 区域区分の二次検討 25 23

質問 20 市街化調整区域の規制が厳しくて 計画している開発行為ができません なんとかなりませんか? 質問 21 すか? 開発許可を得て建築された建築物については 自由に用途を変えても良いで 質問 22 菜園地分譲は許可は不要ですか? 各論 2( 市街化調整区域における建築行為 ) 質問 23 すか

東京の土地2017(土地関係資料集)

また, 区域外の道路部分については, 区域内の道路の整備後に, 交通量等の利用状況をみて, 検討していきます 4 常磐自動車道の側道沿いの一方通行の道路について, 一方通行の制限を解除できないのか また, この道路の交通量についても調査を実施した上で, 区域外の道路の整備をしなければならないのではな

(審42)参考 福島県内の宅地の調査

第 Ⅱ ゾーンの地区計画にはこんな特徴があります 建築基準法のみによる一般的な建替えの場合 斜線制限により または 1.5 容積率の制限により 利用できない容積率 道路広い道路狭い道路 街並み誘導型地区計画による建替えのルール 容積率の最高限度が緩和されます 定住性の高い住宅等を設ける

東京都市計画用途地域の変更 ( 東京都決定 ) 都市計画用途地域を次のように変更する ( 中野区分 ) 種類面積容積率建ぺい率 第一種低層住居専用地域 第 二 種 低層住居 専用地域 /10 15/10 4/10 5/10 外壁の後退距離の限度 建築物の敷


目次 Ⅰ 運用基準の策定にあたって P1 1 策定の目的 P1 2 運用基準の位置づけ P1 Ⅱ Ⅲ 土地利用のあり方 P1 地区計画の活用 P2 1 地区計画とは P2 2 地区計画の活用類型 P2 (a) 地域資源型 P3 (b) マスタープラン適合型 P3 (c) 街区環境整序型 P3 (d)

計算式 1 1 建物の価額 ( 固定資産税評価額 ) =2 長期居住権付所有権の価額 +3 長期居住権の価額 2 長期居住権付所有権の価額 ( 注 1) =1 固定資産税評価額 法定耐用年数 ( 経過年数 + 存続年数 ( 注 3)) 法定耐用年数 ( 注 2) 経過年数 ライプニッツ係数 ( 注

⑷ 納税猶予の打ち切り P. 49 Q. 納税猶予の対象の農地を売却する場合 納税猶予が打ち切られてしまうのですか ⑸ 市町村合併と納税猶予 P. 54 Q.B 町が平成 3 年 1 月 1 日現在特定市であるA 市に合併される場合 旧 B 町の農地等は生産緑地の指定を受けていないと納税猶予の特例は

(審47)参考2 福島県内の宅地の調査

第1号様式(第9条第1項関係)

都市計画法第 29 条における 開発許可制度等 東京都八王子市

す ) 5 地区 地域内の各筆の評価 ( 一画地の宅地ごとに評価額を算出します < 土地に対する課税 > (1) 評価のしくみ固定資産評価基準によって 地目別に定められた評価方法により評価します 平成 6 年度の評価替えから 宅地の評価は 地価公示価格の 7 割を目途に均衡化 適正化が図られています

市街化調整区域における都市計画法第 34 条第 12 号の規定による開発許可等の基準に関する条例 の審査基準 ( 趣旨 ) 第 1 条この条例は 市街化調整区域における都市計画法 ( 昭和 43 年法律第 100 号 以下 法 という ) 第 34 条第 12 号の規定による開発許可の基準及び都市計

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[2] 道路幅員による容積率制限 ( 基準容積率 ) 敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を 容積率 といい 用途地域ごとに容積率の上限 ( 指定容積率 ) が定められています しかし 前面道路の幅員が 12m 未満の場合 道路幅員に応じて計算される容積率 ( 基準容積率 ) が指定容積率を下回る

等調整都市計画税額が 当該商業地等に係る当該年度分の都市計画税の課税標準となるべき価格に 10 分の 6 を乗じて得た額 ( 当該商業地等が当該年度分の固定資産税について法第 349 条の 3( 第 20 項を除く ) 又は法附則第 15 条から第 15 条の 3 までの規定の適用を受ける商業地等で

Transcription:

広大地の評価について ( 不動産鑑定士の立場から ) 1. 通達等の変遷 (1) 平成 6 年 2 月 15 日課評 2-2 財産評価通達 ( 広大地 24-4) 新設 1 紙数の関係で規定は省略します 本通達によって初めて広大地が登場しました 広大地の定義 広大地に該当する場合の評価計算式が定められました この時の評価計算式は後日 ( 平成 16 年 6 月 4 日 ) 課評 2-7 によって改められます 2 広大地の定義 a. その地域の標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大 b. 開発行為を行う場合 公共公益的施設用地の負担を必要とする * 但し この場合における開発行為はビル開発 マンション開発ではなく戸建分譲団地の開発をいうと考えられる 通達等を読むとそのようにしか考えられない *b が問題となった裁決例 判例 国税不服審判所裁決 H16 9 28( 広大地に該当するとした裁決 ) 国税不服審判所裁決 H14 11 6( 広大地に該当するとした裁決 ) 東京高判 H18 3 28( 広大地に該当しないとした判決 ) これらは公共公益施設用地の負担が必要 ( 納税者側 ) 不要 ( 税務署例 ) という点で争った事例ですが 論点を簡単に説明します 次の図を見て下さい 税務署側主張 納税者側主張 A A B B C C 左は税務署主張の画地割図 右は納税者主張の画地割図です 左図の場合 : 対象地全体を A B C として有効に使えるので道路用地 ( 潰地 ) が生じない 広大地ではない 右図の場合 :A B C の有効宅地以外に斜線部分 ( 開発道路用地 ) が生じる 公共公益施設用地負担が生じる 広大地である 結局 上の裁決等は税務署側と納税者側がどちらの画地割が経済合理性にかなっているかという主張で争ったものです 1

3 開発行為の難しい点各市町は開発指導要綱にて開発許可基準を定めている 基準に該当し開発許可が必要となると 公共公益施設用地負担が必要となってくる 開発許可基準に該当しない場合 公共公益施設用地負担を回避し 自由に開発計画を立てることができる 一般に開発許可基準に該当する場合は 開発によって水路 市町村道等の公共施設を新設 つけ替え 廃止する場合 土地の面積が一定規模以上 切土 盛土が一定規模以上の場合等である いずれにせよ市町村で必ず確認が必要である 4 広大地の評価方法 ( 旧バージョン ) 正面路線価 有効宅地化率 各種画地補正率 面積 納税者側で有効宅地化率算定の基となる開発想定図等を作成するのが困難であった 鑑定評価に基づいて申告 更正請求事件が急増した 平成 16 年 6 月 4 日課評 2-7 によって新バージョンの広大地補正率が規定された * 鑑定評価は造成費を考慮するので安く評価できたのだと思います 鑑定評価によって広大地を評価する場合 開発法という手法を適用します 以下開発法を簡単に説明します この手法はデベロッパー等が開発用地を購入する場合に投資採算性を考慮して値付けを行う方法を参考としています 1 収入 2 費用 1-2 項目 金 額 分譲住宅販売収入 100,000,000 円 造成費販 管費 60,000,000 円 土地購入費 40,000,000 円 ( 開発法による土地価格 ) 1 の分譲住宅を想定する段階で広大地を区画割りして道路付け等を考慮しています (2) 平成 6 年 2 月 28 日 ( 資産評価企画官情報第 1 号 ) 広大地に該当しない例を補足した 既に開発行為を了しているマンション等の敷地用地 現に宅地として有効利用されている建築物の敷地用地 * これらの場合さらに戸建住宅団地として開発する必要性がないため 大規模工場用地 (5 万m2以上 ) については評価基本通達 22 から 22-3 までに評価方法が特別に定められており 広大地とはしない (3) 平成 16 年 6 月 4 日課評 2-7 広大地補正率を定めた ( 新バージョン ) 広大地補正率 =0.6-0.05 広大地の地積 /+1,000 m2 * 前記 (1)4 で記述した理由により定められました (4) 平成 16 年 6 月 29 日 ( 資産評価官情報第 2 号 ) 1 広大地に該当する条件の例示各自治体が定める開発許可基準面積以上の面積が必要 但しミニ開発分譲が多い地域における例外あり 2

2 広大地に該当しない条件の例示広大地に該当しない例を更に補足した 現に宅地として有効利用されている建物等の敷地 (ex. 大規模店舗 ファミリーレストラン等 ) 原則として容積率 300% 以上の地域に所在する土地 * 地域としてはマンション等高度利用が行われている場合が多いと思われる 広大地は戸建分譲用地発を対象とするため * この規定の容積率は 指定容積率 をいう 実際に広大地に該当するかどうか判定する際には対象地について 基準容積率 をみる必要がある この場合 指定容積率と基準容積率を比較し 小さい方の容積率について高度利用が適当か 戸建団地としての利用が適当か判断する必要がある 前面道路幅員 ( 前面道路幅員が 12m 未満のとき ) 但し最低でも 4m とする 住居系用途地域 4/10 = 基準容積率それ以外の用途地域 6/10 指定容積率 都市計画の定めにより指定される容積率基準容積率 建築基準法上前面道路の幅員制限によって算定される容積率 開発に際して公共公益的施設の負担が殆ど生じないと認められる土地 3 マンション適地の判定戸建住宅とマンションが混在する地域 ( 主に容積率 200% の地域 ) では 明らかにマンション用地に適していると認められる土地を除き 広大地としてよい ( マンション適地判断基準の参考 ) a. マンション移行地域 ( 移行度が高い ) の中にある土地近隣地域又は周辺の類似地域に現にマンションが建てられているし また現在も建築工事中のものが多数ある場合 つまりマンション敷地としての利用が地域に移行しつつある状態で しかもその移行の程度が相当進んでいる場合 b. 対象地単独でマンション好適地現実のマンション建築状況はどうであれ 用途地域 建ぺい率 容積率や当該地方公共団体の開発規制等が厳しくなく 交通 教育 医療等の公的施設や商業地への接近性から判断しても 換言すれば 社会的 経済的 行政的見地から判断して まさにマンション適地と認められる場合 4 広大な市街地農地等 市街地山林及び市街地原野 従来は宅地に限っていたが これらについても広大地の適用があるとした 但し 造成費の控除はできない また広大地補正率と宅地比準方式を採用し いずれか低い額を採用することができる 倍率地域内の土地の場合近傍標準宅地 ( 固評 )1 m2当たりの価格 宅地倍率を評価路線価と置き換える * 当該農地の固評 農地の倍率に広大地補正率ではない広大地規定を使う場合農地 山林等を宅地と同じように評価することとなる この場合鑑定評価の方が有利ではないかとの疑問が生じる これについて例えば対象地が 1,000 m2の市街地農地等とすると 広大地補正率は 0.55 となる 路線価は公示レベル ( 実勢 ) の 80% なので 0.55 0.8=0.44 更地実勢価格の約 44% 1,000 m2でも更地価格の 44% 程度であり おおよその場合 鑑定評価額と同程度の減額効果はあると考えられる ただ次のような土地では鑑定評価額の方が有利な場合もありうると思われる 3

形状不良等の無道路地 路線価が安い地域にあって 造成条件が劣悪な土地 ( 造成費は全国一律であり 土地価格に対して造成費の構成割合が高くなる ) (5) 平成 17 年 6 月 17 日 ( 資産評価企画官情報第 1 号 ) 1 広大地に該当する条件の例示 ( 面積基準 ) 原則として 次に掲げる面積以上の宅地について 面積基準の用件を満たすものとする a. 市街化区域 用途地域が定められていない非線引都市計画区域 ( 市街化区域 ) 三大都市圏 500 m2それ以外の地域 1,000 m2 ( 非線引都市計画区域 ) 3,000 m2 b. 用途地域が定められている非線引都市計画区域市街化に準じた面積 ただし 近隣の地域の状況から 地域の標準的な規模が上記面積以上である場合については 当該地域の標準的な土地面積を超える面積のものとする 2 広大地に該当しないものの例示現に宅地として有効利用されている建物等の敷地 ( 例えば 大規模店舗 ファミリーレストラン等 ) は広大地規定の適用はできない * しかし戸建住宅が連坦する住宅街に存する大規模店舗やファミリーレストラン ゴルフ練習場はその地域の標準的使用とはいえないので 適用の可能性があるとしている この見極めが広大地判定の一番難しい点であると思う 通達の中には 標準的使用 最有効利用 等不動産鑑定評価基準の用語が登場する 参考のため不動産鑑定評価基準における標準的使用と最有効使用の判定方法を簡単に示しておきます 近隣地域 ( 対象不動産の価格形成に最も密接に関連する地域 ) 近隣地域の要因について過去からの推移 将来の動向を分析 *(1) 地域の標準的使用を判定 有力な標準として対象地の個別性を考慮 対象地の最有効使用を判定 *(1) 過去はマンション地域であったが 将来は戸建住宅地域となる蓋然性が高い 現在はその過渡期である 移行地域 ( このような場合は広大地規定の適用の可能性が充分ある ) *(2) 近隣地域における標準的使用 最有効使用の判定 1 郊外路線商業地域 ( 近隣地域 ) 郊外路線商業地 ( 標準的使用 ) 対象地は大規模店 ファミリーレストランとして利用されている ( 標準的使用と同じ ) 広大地適用不可最有効使用の蓋然性が高い 4

2 戸建住宅地域 ( 近隣地域 ) 戸建住宅地 ( 標準的使用 ) 対象地は大規模店舗 ファミリーレストラン ゴルフ練習場として利用されているが 客観的にみて場違いである ( はやっておらず 潰れそうである )( 標準的使用と異なる ) 広大地適用可対象地の最有効使用は 戸建住宅団地であり 現況利用は最有効使用とはいえない 3 市街化調整区域内の土地に係る広大地の評価 条例指定区域内の宅地 で 都道府県の条例の内容により 戸建分譲を目的とした開発行為を行うことができる場合には広大地に該当する * 条例指定区域内の土地 市街化区域に隣接し 又は近接し かつ 自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であって おおむね 50 以上の建築物が連たんしている地域 この地域に該当するかどうかは県の土木事務所で調べて下さい 市街化調整区域内の雑種地で 宅地に比準して評価する場合については 宅地の場合と同様に取り扱うことが相当である 2. 広大地規定と鑑定評価どちらを使うのが有利か 例えば広大地補正率によると 0.6-0.05 広大地の地積 /1,000 m2であり 5,000 m2を超える広大地の場合 広大地補正率は 0.35 を下限とする 従って 5,000 m2を超える土地の場合 広大地補正率を適用すると損をするのではないかと疑問が生じる これについては路線価は公示レベル ( 実勢 ) の 80% なので 0.35 0.8=0.28 更地実勢価格の約 28% であり 一般的には鑑定評価額と同程度以上に減額効果があると思われる また前に 1.(1)4 で検討した通り 市街地農地 山林等についても広大地規定は鑑定と同程度以上の減額効果は出せる 以上より広大地規定の適用が可能であれば 広大地規定の減額率は相当大きく 一般的にみて 鑑定評価を行うのと同程度の減額を出せるものと考えられる ( 不動産鑑定士としては大変残念 ) 土田剛司 5