(2)里山の整備

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利用することをいう (4) 林業事業者森林において森林施業 ( 伐採, 植栽, 保育その他の森林における施業をいう 第 12 条において同じ ) を行う者をいう (5) 木材産業事業者木材の加工又は流通に関する事業を行う者をいう (6) 建築関係事業者建築物の設計又は施工に関する事業を行う者をいう

トヨタの森づくり 地域・社会の基盤である森づくりに取り組む

(1) 森林の状況 森林蓄積の推移蓄積1 森林の現状と課題 我が国は世界有数の森林国 森林面積は国土面積の 3 分の 2 にあたる約 2,500 万 ha( 人工林は約 1,000 万 ha) 森林資源は人工林を中心に蓄積が毎年約 7 千万 m³ 増加し 現在は約 52 億 m³ 人工林の半数が一般

平成31年度予算概算決定額 森林整備事業 治山事業 林野公共事業 (平成30年度1次補正予算額5,199百万円 182, ,049 百万円 平成30年度第2次補正予算額 32,528百万円) 臨時 特別の措置 として31年度概算決定額44,128百万円を別途措置 対策のポイント 林業の成

1 自然に対する関心 (1) 自然に対する関心 平成 24 年 6 月 平成 26 年 7 月 関心がある( 小計 ) 90.4% 89.1% 非常に関心がある 29.5% 21.9%( 減 ) ある程度関心がある 60.9% 67.2%( 増 ) 関心がない( 小計 ) 8.8% 10.5% あま


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平成 21 年度から あいち森と緑づくり税 を活用し 森林 里山林 都市の緑の整備 保全等に取り組んできた結果 第 4 章に示したとおり 一定の成果を上げることができました しかしながら 本県の森と緑を健全な状態で将来に引き継ぐためには 依然としてさまざまな課題があります 次ページ以降に 森と緑づく

1 森林の多面的機能 かんよう 森林は 国土の保全 地球温暖化の防止 水源の涵養 生物多様性の保全 木材等の生産など 多面的 な機能を発揮 これらの多面的機能は 森林が適正に整備 保全されることにより発揮 国民の森林に期待する働きは 災害防止 温暖化防止などが上位 森林の多面的機能 国民の森林に期待

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

整理番号 10 便益集計表 ( 森林整備事業 ) 事業名 : 森林居住環境整備事業 都道府県名 : 奈良県 地域 ( 地区 ) 名 : 上北山村地区 ( 単位 : 千円 ) 大区分 中区分 評価額 備考 木材生産等便益 森林整備経費縮減等便益 災害等軽減便益 木材生産等経費縮減便益木材利用増進便益木

平成 28 年度 森林整備事業 ( 造林 ) 標準単価 京都府農林水産部林務課

中井町緑の基本計画(概要版)

1 県土の利用に関する基本構想 (1) 県土利用の現況 分散型の都市構造 豊かで恵まれた自然環境を有する一方 山陽沿岸部では臨界工業地帯を形成 森林面積の割合が大きく 平地が乏しい 都市と農山漁村が近接 中山間地域が県土面積の約 7 割を占める (2) 県土利用をめぐる基本的条件の変化 本格的な人口


第 1. 基本的事項 1. 都道府県の森林整備及び林業 木材産業の現状と課題 1 森林整備の現状と課題本県の人工林面積の主な樹種別の構成割合は スギ 71% アテ 12% マツ 9% である 齢級構成は 10~11 齢級をピークとした偏った構成となっており 保育や間伐を必要とする 9 齢級以下のもの

CSRコミュニケーションブック

萩地域森林計画書

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Microsoft PowerPoint 森林資源と環境3.pptx

3. 市街化調整区域における土地利用の調整に関し必要な事項 区域毎の面積 ( 単位 : m2 ) 区域名 市街化区域 市街化調整区域 合計 ( 別紙 ) 用途区分別面積は 市町村の農業振興地域整備計画で定められている用途区分別の面積を記入すること 土地利用調整区域毎に市街化区域と市街化調整区域それぞ

Taro-01概要1,2頁0613.jtd

かん水源涵養便益洪水防止便益事業対象区域 38,731,178 千円 T-1 Y 1 (f1-f2) α A U B= Σ + Σ T (1+i) = 1 =T (1+i) 360 U: 治水ダムの単位雨量流出量当たりの年間減価償却費 ( 円 / m3 /sec) 出典 : ダム年鑑 2016 f1

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人工林 ( 左 ) と天然林 ( 右 ) 農業と暮らしを支えた里山の役割 集落の近くにあって 農業や生活に使われてきた森林のことを日本では 里山 と呼ぶ 里山は 農業と生活を支える大切な役割をもっていた 近代化が進んだ日本でも とくに農村地帯では 比較的近年まで 森林 ( 里山 ) からの資源を農業

平成 30 年度 森林整備事業 ( 造林 ) 標準単価 京都府農林水産部林務課

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(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

121022資料1さっぽろビジョン(素案)

Ⅲ 林業

目 次 平成 27 年度九州森林管理局重点取組事項 1 公益重視の管理経営の一層の推進 1 森林資源の循環利用による多面的機能の維持増進 ページ 1 2 国民生活の安全 安心の確保に向けた取組 (1) 民国連携した治山事業 (2) 海岸防災林の整備に向けた検討 (3) 木材の利用推進及び生物多様性保

Microsoft PowerPoint - 事業実施方針+++

Chapter 3 3 章森林経営信託制度と木造化 木質化 ~ 岐阜県御嵩町の取り組み ~ P 岐阜県御嵩町における森林経営信託方式の紹介 P 森林経営信託方式と木造化 木質化 030

宮城の将来ビジョン 富県宮城の実現 ~ 県内総生産 10 兆円への挑戦 ~ 富県宮城の実現 ~ 県内総生産 10 兆円への挑戦 ~ 認知度集計表 ( 回答者属性別 ) 内容について知っている 言葉は聞いたことがある 効知らない ( はじめて聞く言葉である ) 県全体 度数 ,172

様式 2 作成年度 平成 28 年度 森林整備加速化 林業再生基金変更事業計画書 区分 : 強い林業 木材産業構築緊急対策 区分 : 林業成長産業化総合対策 福井県

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5-1. 整備手法 本構想を実現していくためには 地域別構想で定めた地区区分ごとにその方針に基づ く具体的な整備及び保全手法を展開していく必要があります そこで 本市で適用が考 えられる手法内容及びその適用の方針について以下に整理を行います (1) 住民提案等によるまちづくり都市計画法においては 土

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欄の記載方法について 原則として 都道府県毎の天然更新完了基準に定められた更新調査 ( 標準地調査 ) の結果を元に造林本数欄に更新本数を記載する ただし 調査せずとも天然更新完了基準を明らかに満たしていると判断できる場合 ( 例えば 小面積の伐採等 ) には 造林地の写真その他の更新状況のわかる資

様式 2 作成年度 平成 27 年度 森林 林業再生基盤づくり交付金事業計画書 岡山県

第 1 部森林及び林業の動向 森林 林業の再生に向けた新たな取組 東日本大震災 で森林 林業 木材産業に甚大な被害 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律 の成立 生物多様性に関する新たな世界目標 ルールの採択 国際森林年 林業 木材産業関係者が天皇杯等を受賞 木材の需要拡大の背景 ( )

繰り返し森林森林を造成造成する 成長の悪い木等を伐り木を健全に育てる 苗木を雑草から守る 枝などを切り害虫の発生を防ぐ 成長を妨げる他の種類の木を伐る 育林費 素材生産費素材生産費 素材価格及素材価格及び山本立木価格山本立木価格の推移 ( 資料平成 16 年度森林 林業白書 ) ( 森林の保育管理費

中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書【神奈川県】

再造林 育林の低コスト化に関する指針 育林の低コスト化に関する指針平成 27 年 3 月高知県林業振興 環境部 1 指針の目的平成 24 年 9 月に策定した 皆伐と更新の指針 では 伐採時期を迎えた人工林を皆伐した後 再造林の適地と判断される伐採跡地では 森林資源の持続的な利用を図るうえでも再造林

Taro 土地利用基本計画(

市街化調整区域の土地利用方針の施策体系 神奈川県 平塚市 神奈川県総合計画 神奈川県国土利用計画 平塚市総合計画 かながわ都市マスタープラン 同地域別計画 平塚市都市マスタープラン ( 都市計画に関する基本方針 ) 平塚都市計画都市計画区域の 整備 開発及び保全の方針 神奈川県土地利用方針 神奈川県

八王子市緑地保護地区 斜面緑地保全区域面積推移 八王子市内の東京都緑地保全地域面積推移 m2 270,00 250,00 230,00 210,00 190,00 170,00 150,00 130,00 110,00 90,00 70,00 50,00 30,00 斜面緑地保全区域 緑地保護地区

平成 25 年度農林水産省委託業務報告書 平成 25 年度 水資源循環の見える化 調査 検討事業 報告書 平成 26 年 3 月 みずほ情報総研株式会社

H28秋_24地方税財源

1 次期計画の策定の基本的考え方 県民会議は 県民参加による水源環境保全 再生のための新たな仕組みづくり として 設置され 現在まで 3 年にわたり 県民フォーラム等により県民参加を図りながら 各年度の点検を行い 県に報告してきたところである その中において 現行計画の各施策は 水源環境の保全 再生

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目 次 ( ヘ ージ ) 1 はじめに 1 2 山梨県の森林と地下水資源について 1 (1) 森林の現状 1 (2) 地下水資源の利用状況 1 3 ミネラルウォーターに関する税 について 1 (1) ミネラルウォーターに関する税 の概要と考え方 1 (2) 納税義務予定者の意見 2 4 検討会での審


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(資料3) 奄美大島・徳之島におけるスギ人工林の広葉樹林復元の検討

2011あいち環境塾政策提言「2030年の未来社会を想定した環境アクションプラン」

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補助林道開設事業 108,737 効率的な林業経営の展開や森林の適正な維持管 理を図るための林道の開設や改良を行う 1 事業主体 市町 2 事業実施箇所 新規 (4) 継続(3) 3 事業内容 林道の開設 改良 橋梁点検 診断 路線名 市町名 事業内容 負担区分 大奴田 岩国市 林道開設 L=100

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アマミノクロウサギ保護増殖事業計画 平成 27 年 4 月 21 日 文部科学省 農林水産省 環境省

Taro-21 岐阜農林高校

PowerPoint プレゼンテーション

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Microsoft PowerPoint - 06+H29住懇資料_宮城北部署(提出)修正(局)再修正+(2)

7-3 上田城南地域 (1) 将来像 ( 将来像 ) 水と緑と多様な都市機能が調和し快適な暮らしの環境が整ったまち ( 基本目標 ) 千曲川をはじめ産川や浦野川 小牧山や上田原古戦場 半過岩鼻など奇景や原風景の残る豊かな自然や農地を大切に保全するとともに 秩序ある都市空間づくりを進めます 良好な住環

項目別目次 森林被害編 1 森林において土砂崩れが発生してお困りの方 1 2 所有林の立木が被災されている方へ 2 3 保安林内の木が倒れてお困りの方へ 3 林道 作業道被害編 4 林道が崩壊等により通行ができない方へ 4 5 所有林の作業道が被災されている方へ 5 施設被害編 6 木材加工流通施設

抜本的な鳥獣捕獲強化対策 平成 25 年 12 月 26 日環境省農林水産省


資料 1 五智公園自然環境保全地域 の概要 ( 案 ) 1 自然環境保全地域の名称 五智公園自然環境保全地域 2 自然環境保全地域に含まれる土地の区域 五智公園一帯約 22 ヘクタール 3 自然環境保全地域の指定の理由 五智公園は 上越市街地の北西部に位置する日本海に近い里山を利用した公園である 公

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現行見直し案見直し理由等 カラス 被害時期 : 通年 ニホンザル 被害対象 : 農作物全般への食害 農業施設へ被害 生活環境被害 ヒヨドリ 被害時期 : 通年 アナグマ 被害対象 : 果樹への食害 被害対象 : 農作物全般への食害 ハクビシン 被害対象 : 農作物全般への食害 住居侵入による生活環境

森林吸収源対策について

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

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1. 市街化調整区域における地区計画ガイドライン策定の目的市街化調整区域は 市街化を抑制すべき区域であるとともに 豊かな自然環境を育成 保全すべき区域である そのため 都市計画法において開発行為や建築行為が厳しく制限されている 本市都市計画マスタープランにおいても 将来都市構造の基本的な考え方の一つ

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4. 都市づくりの目標と方針 4-1 都市づくりの基本理念 地域の個性が輝く生活快適都市 上田 ~ 魅力あるふるさと活気ある交流風格ただようまち ~ 基本理念の意味あい 上田市は 歴史 文化 自然 産業などに恵まれた特色ある地域から成り立っており 各地域が個性を発揮し 連携し合い 交流を促進しながら

森林育成学特論Ⅰ

森林環境税 ( 仮称 ) は国税とし 都市 地方を通じて 国民一人一人が等しく負担を分かち合って 国民皆で 温室効果ガス吸収源等としての重要な役割を担う森林を支える仕組みとして 個人住民税均等割の枠組みを活用し 市町村が個人住民税均等割と併せて賦課徴収を行う 森林環境税 ( 仮称 ) は 地方の固有

(仮称)里山再生計画(骨子案)

1-1 林地台帳の記載事項 1 林地台帳には 法改正案に規定されているものに加え 市町村の行政事務の円滑化や の施業集約化の効率化に資する情報を記載 ( 省令 通知で規定 ) 追加的な情報としては 経営計画の認定状況 保安林等法指定状況等を想定 ( これらはすでに市町村や 都道府県が有している情報

- 1 - 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律目次第一章総則 ( 第一条 第六条 ) 第二章公共建築物における木材の利用の促進に関する施策 ( 第七条 第十六条 ) 第三章公共建築物における木材の利用以外の木材の利用の促進に関する施策 ( 第十七条 第二十条 ) 附則第一章総則 ( 目

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な公益的機能は 国民に広く恩恵を与えるものであり 適切な森林の整備等を進めていくことは 我が国の国土や国民の命を守ることにつながります しかしながら 森林整備を進めるに当たっては 所有者の経営意欲の低下や所有者不明森林の増加 境界未確定の森林の存在や担い手の不足等が大きな課題となっています 今回の新

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PowerPoint プレゼンテーション

2 森林局 (Forest Department:FD) 環境保全林業省の中に設置されている 森林政策 計画実施の機関です 生物多様性の保全 劣化した森林の回復 流域保全 森林資源の持続可能な管理を管轄しています 3 乾燥地緑化局 (Dry Zone Greening Department:DZGD

森林法等の一部を改正する法律案の概要 国内の森林資源が本格的な利用期を迎えている中 住宅用など従来需要に加えて CLT( 直交集成板 ) や木質バイオマスなど国産材の需要の創出と拡大が進展 木材自給率は H14 年の19% を底に上昇傾向で推移し H26 年は31% まで回復 一方 木材価格の低迷

Microsoft Word - 01 変更計画書

スライド 1

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緑の雇用 事業を開始するまでは 林業の新規就業者数は年平均約 2 千人程度でしたが 事業 を開始した以後は約 3 千 4 百人に増加し 平成 22 年度には 4,013 人となっています ( 図 ) 2

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農山性化1 農山漁村の 6 次産業化の考え方 雇用と所得を確保し 若者や子供も集落に定住できる社会を構築するため 農林漁業生産と加工 販売の一体化や 地域資源を活用した新たな産業の創出を促進するなど 農山漁村の 6 次産業化を推進 現 状 農山漁村に由来する様々な地域資源 マーケットの拡大を図りつつ

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森林の現状と課題 1 森林を取り巻く状況の変化 戦後 荒廃した国土の復興と急増した木材需要に応えるため 昭和 30 年代には 盛んに木材生産が行われるとともに 成長が早く利用価値の高い針葉樹の造林や木材の輸入自由化等の対策が進められました こうした状況を背景に 木材生産の量的拡大に向けて林業振興を図ることを目指した林業基本法が昭和 39 年に制定されました この法律では 森林の持つ公益的機能は 基本的には 林業振興を通じて森林所有者による森林整備が進み その結果として発揮されるという考え方に立っていました しかし 昭和 50 年代のなかば以降 それまで森林整備を支えてきた林業が 採算性の悪化等により停滞すると 十分な整備が行われず 間伐などの手入れが不足した森林が見られるようになりました [ 木材価格 林業労働者賃金の推移 ] [ 林業産出額 素材生産量の推移 ] 円 35000 億円 15000 万m3 4000 25000 スギ丸太価格 [ 円 / m3 ] (14~28cm 4m) 10000 素材生産量 3000 2000 15000 木材伐出業賃金 [ 円 / 人日 ] 5000 林業産出額 1000 5000 0 S53 S58 S63 H5 H10 H15 参考 ) 林野庁 農林水産統計年報 ( 全国数値 ) S53 S58 S63 H5 H10 H15 0 一方 集落周辺に広がる里山林は 薪炭材や竹 落葉の採取などのために 地域住民の日常生活の中で継続的に利用されることで維持管理されていましたが 薪や炭などの利用が少なくなるとともに 放置された森林が多くなってきました こうした状況のまま推移すれば 森林の公益的機能の発揮にも支障をきたすことが懸念される状況となってきたことから 平成 13 年には 林業基本法が大幅に改正されて森林 林業基本法として成立しました これにより それまでの木材生産主体の政策から 森林の持つ機能を将来にわたって持続的に発揮させるための政策へと大きく転換され 森林の持つ多面的機能の発揮を重視した整備 保全が進められています 1

2 森林の機能 森林の持つ様々な機能 ( 多面的機能 ) は 大きく分けると 木材やきのこなどの林産物を供給する経済的機能と 自然環境の保全や災害の防止などの公益的機能とに分けられます 特に公益的機能の恩恵は 県民全体が享受しているものですが こうした機能を将来にわたって持続的に発揮させていくためには 天然林であっても人工林であっても それが良好な状態に保たれていることが必要です [ 森林の公益的機能 ] 多くの野生動植物の生息 生育の場となるなど 遺伝子や生物種 生生物多様性保全態系を保全する働き二酸化炭素の吸収や蒸発散作用により 地球規模で自然環境を調節す地球環境保全る働き土砂災害防止森林の下層植生や落枝落葉が地表の侵食を抑制するとともに 森林の土壌保全樹木が根を張り巡らすことによって土砂の崩壊を防ぐ働き森林の土壌が 降水を貯留し 河川へ流れ込む水の量を平準化して洪水源かん養水 渇水を緩和するとともに 雨水が森林土壌を通過することにより 水質を浄化する役割蒸発散作用等により気候を緩和するとともに 防風や防音 樹木の樹快適環境形成冠による塵埃の吸着 ヒートアイランド現象の緩和などにより快適な環境形成に寄与する働き保健 レクリエーフィトンチッドに代表される樹木からの揮発性物質により直接的にション健康を増進させたり 行楽やスポーツの場を提供する働き森林の景観が行楽や芸術の対象として人々に感動を与えたり 日本人文化の自然観の形成に寄与する働き参考 ) 日本学術会議 地球環境 人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について ( 答申 ) ( 平成 13 年 11 月 ) [ 森林の公益的機能の評価額 ] 機能の種類 評価額 ( 億円 / 年 ) 全国愛知県 二酸化炭素吸収 12,391 136 表面浸食防止 282,565 2,508 表層崩壊防止 84,421 749 洪水緩和 64,686 677 水資源貯留 87,407 1,217 水質浄化 146,361 1,946 化石燃料代替 2,261 111 保健 レクリエーション ( うち保養 ) 22,546 200 合計 702,638 7,544 参考 )1 日本学術会議 地球環境 人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について ( 答申 ) ( 平成 13 年 11 月 ) 2 愛知県農林水産部資料 2

近年 台風等による山地災害の多発や地球温暖化問題等もあって 森林の公益的機能に対する社会的な認識は高まっています 内閣府が昭和 55 年から行なっている世論調査によると 国民が森林に期待する機能として 木材の生産よりも 災害の防止や地球温暖化防止 水資源のかん養等に関心が集まっています [ 森林に期待する働きに関する世論調査結果 ] 順位 0 昭和 55 61 平成 5 11 15 1 2 3 4 5 6 7 8 9 災害防止地球温暖化防止水資源かん養大気浄化 騒音緩和保健休養野生動植物野外教育木材生産林産物生産 参考 ) 林野庁 平成 16 年度森林 林業白書 ( 注 ) 期待する割合の高いものから順に並べている 3

3 愛知県の森林の現状 愛知県の区域面積 51 万 6 千 ha のうち 森林は 22 万 ha で 森林率は 43% となっています 地域別では 尾張部の森林率が 11% であるのに対し 三河部は 58% となっています [ 土地利用の現況 ] 森林農用地河川等道路 43% 16% 5% 9% 宅地 17% その他 10% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 参考 ) 愛知県 土地に関する統計年報平成 17 年版 森林のうち 国有林を除く民有林は 208 千 ha で そのうち人工林が 132 千 ha を占めており 民有林の人工林率は 64% となっています 人工林を樹種別に見ると ヒノキが 62 千 ha で最も多く 次いでスギが 5 万 ha となっており この 2 種で人工林全体の 85% を占めています 一方 天然林は 76 千 ha で これを分布地域別に見ると 山間地域に広がる奥山林が 42 千 ha 都市近郊の里山林が 34 千 ha となっています [ 愛知県の森林の概要 ] 森林 220 千 ha (95%) (5%) 民有林 208 千 ha 国有林 12 千 ha (64%) 人工林 132 千 ha 天然林 (36%) 76 千 ha (85%) (15%) (45%) (55%) スギ ヒノキ林 112 千 ha マツ林等 20 千 ha 里山林 34 千 ha 奥山林 42 千 ha 参考 ) 愛知県 平成 16 年度愛知県林業統計書 ( 注 1) 人工林とは 主に人が苗木を植えて造成した森林 天然林とは 主に自然に生えた木で構成された森林 ( 注 2) 天然林の面積には 竹林等を含む ( 注 3) 一般的に里山林とは 居住地近くに広がり 薪炭材の伐採等を通じて地域住民に利用されてきた森林を指すが ここでは その中でも特に都市部に隣接した地域の天然林 竹林を里山林とし その他を奥山林としている 4

[ 愛知県の森林 ( 民有林 ) の分布状況 ] 尾張部 三河部 人工林 天然林 参考 ) 愛知県農林水産部資料 こうした森林の中には 主に自然のバランスにより良好に維持されているものもありますが 特に人工林や里山林は 人の手で整備 管理を行うことで良好な状態が保たれてきました 5

4 森林整備の現状と課題 (1)-1 人工林の現状 人工林は植栽から伐採まで非常に長い年月を要しますが その間 樹木の成長にあわせて適期に手入れを行っていく必要があります [ 人工林作業の概要 ] 作業の種類時期内容 地ごしらえ植栽前植栽する前に 植え付け場所に残った材や枝などを整理する作業 植栽 - 林地に目的樹種の苗木を植え付ける作業 下刈り つる切り 1~5 年 適宜 植栽木が健全に成長するために 他の草や低木を刈りとり被圧を防止する作業稚樹の幹等に絡みつき 幹折れや幹曲がりの原因となるつるを取り除く作業 除伐 6~15 年育成の対象となる樹木の生育を妨げる他の樹木を切り払う作業 間伐 16~60 年 除伐後に行う作業で 森林を健全に成長させるため 樹木の混み具合に応じて密度を調整するために伐採 ( 間引き ) する作業 本県の人工林の大半を占めるスギ ヒノキ人工林は 戦後から盛んに造林が行われてきた結果 16 年生から 60 年生の森林が多くなっており 作業の中心は間伐となっています 今後 15 年間に 1 度は間伐が必要な森林は約 7 万 2 千 ha( スギ ヒノキ人工林の 65%) あり これを単純に平均すると年間 4 千 8 百 ha の間伐が必要になります [ 本県のスギ ヒノキ人工林の林齢構成 ] 面積 (ha) 20 千 10 千 0 千 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 31~35 36~40 41~45 (16~60 年生 ) 46~50 51~55 55~60 61~65 66~70 71~75 76~80 81~85 86 年以上 林齢 参考 ) 愛知県 平成 16 年度愛知県林業統計書 6

間伐の意義 適切な間伐は 利用価値の高い林木を育成するだけではなく 林内に適度な空間が生じ太陽の光が差し込み 下草や低木類が生え地表面を覆うことになり 植栽木と相まって土壌の流出を防ぐとともに 豊かな森林土壌を育み水源かん養機能等の公益的機能を高度に発揮します また 間伐により元気な森林を育成することは 二酸化炭素の吸収源としての機能を高め 地球温暖化防止に貢献したり 大気の浄化や安らぎや憩いの場の提供など 都市住民の生活にも深く関わります [ 間伐実施林 ] [ 手入不足の森林 ] (1)-2 現行の施策 間伐の実施は 近年 造林補助事業により約 1 千 3 百 ha 治山事業により約 1 千 ha その他水源基金事業や市町村事業等により約 8 百 ha となっており 間伐必要面積の 3 分の 2 程度の 3 千 ha 前後が実施されています [ 間伐推進のための事業の概要 ] 区分 内容等 平成 14~16 年度平均間伐実績 (ha) 森林所有者が行う間伐作業に対して補助を造林補助事業 1,293 行っています 保安林内で 全額公費による間伐を実施して治山事業 999 います 水源基金事業や豊田市の水道水源保全事業 その他 等の地域独自の取組み等により間伐が実施 796 されています 合計 3,088 7

(1)-3 人工林整備の課題 森林の多くが私有財産であることから 間伐等を始めとする森林整備の実施は 森林所有者の意欲 意思に委ねられており 補助金などの援助があるものの 採算の合わない所では 整備が進まない傾向があります このため 間伐の遅れが原因で下層植生の衰退した不健康な人工林が増え 公益的機能の低下が懸念されます ( 奥地の人工林の整備 ) 林道などから遠い奥地の人工林は 採算性が悪いため 管理放棄されているところも見られます そこで 水源かん養等の機能の低下を防ぐだけでなく 奥地林での多様な動植物の生息 生育を促し カモシカやイノシシなどによる農作物等の被害軽減策の一つとするためにも 奥地の人工林の手入れが必要です ( 公道沿いの人工林の整備 ) 国道 県道などの公道は通行車両が多いため 安全上の問題などからその周囲の森林では間伐などの作業がやりにくく 整備が遅れがちになり 地震や台風などの災害時に生活 経済の生命線である公道への被害が心配されます そこで 公道沿いの森林を防災機能の高い森林として整備していくことが必要です 8

(2)-1 里山林の現状 かつて里山林 は 薪炭材や竹 落葉の採取などのために継続的に利用されることで維持管理されてきました しかし 化石燃料がエネルギーの主体となったこと等により 薪炭や肥料として利用されることが少なくなったため 放置された森林が多くなっています ( ここでは 都市部に隣接した地域の天然林 竹林を里山林としています ) 一方で 生物多様性の確保や環境保全等の観点から 里山林の価値が再認識されており ボランティア団体 ( 約 50 グループ ) などによる里山林整備が見られるようになってきましたが その活動範囲は限られています [ 放置された里山林の状況 ] [ ボランティアによる里山林整備の活動例 ] (2)-2 現行の施策 これまで 里山保全活動を促進する里山保全アドバイザーの養成 生活環境保全林の整備 県民と行政が協働した里山林整備等が行われています また 愛知万博の原点である 海上の森 において 里山に関する学習 交流や人材の育成等の拠点づくりを進めるとともに 各地域の里山林整備の取組を一層促進することにしています [ 里山林整備のための事業等の概要 ] 区分内容等森林整備 里山に関する学習交流の実施 指導的あいち海上の森保全活用事業人材の育成 情報発信などを行います 治山事業 その他 保安林内で 生活環境保全林の整備を行います 県 市町村等と県民が協働して里山林整備などに取り組んでいます 9

(2)-3 里山林整備の課題 里山林が放置されると生物多様性の確保や生活環境の保全 災害の防止等の公益的機能の発揮に支障をきたす恐れがあります また 里山林は森林環境学習や健康づくりの場の提供等 今日的な役割が期待されております このため 里山林の様々な役割に応じ 将来にわたって保全活用されるよう整備していく必要があります ( 里山林の実態の把握 ) 地域ごとに特色のある里山林の整備を進めるうえで その里山林の利用の歴史や生態系 生物の多様性などを調査 把握し 効果的な管理手法を研究していく必要があります ( 里山林の生物多様性の保全 ) 里山林における生物多様性の保全を図るため 希少野生動植物の保護や生態系に著しく影響を及ぼす外来種の放逐等の防止を進めていく必要があります ( 里山林整備のモデル林の整備 ) 各地域の里山林保全活動を促進するため モデルとなる見本林の整備を進めていくことが必要です ( 災害防止のための里山林の緊急整備 ) 里山林の中でも 特に集落や公共施設に接した森林では 山地災害防止のなどの防災機能を高めるための整備が必要です 10