胃癌の治療選択 早期胃癌 進行胃癌 粘膜癌 粘膜下層癌 1 内視鏡的粘膜切除術 (EMR) あるいは ESD 2 腹腔鏡下手術 3 開腹手術 ESD 腹腔鏡下手術開腹手術 1 開腹手術 2 化学療法 ( 抗がん剤 ) 早期胃癌切除例の半数以上が ESD 施行例となっている
ESD の実際
病変を確認事前の陰性生検にニードルナイフにてマーキング (VIO: swift coag 3, 30 W) AIM による病変の詳細な観察 逆は可
ニードルナイフにて全周にマーキング AIM を洗い落としてマークを明瞭化
マークの外を粘膜筋板が切れる程度 の深さで切開し, トリミングを加え まず, 筋層を把握する.
筋肉の層の直上を剥離します. 十分な粘膜下層が得られ 正確な組織診断にも有用 筋層直上は筋層を貫通する血管がよく認識でき, 効率よいプレコアグレーションが可能
病変切除終了 後出血の危険性のある血管の凝固処置 リン酸緩衝液 (ph 7.4)10ml で洗浄し, トロンビンを散布して終了
切除標本の詳細な観察と切り出し方向の決定
香川県立中央病院の ESD 適応 1UL(-) 分化型 m 癌 腫瘍径は問わない 2UL(-) 分化型 sm1 癌 (500μm 未満 ) 30mm 以下 3UL(+) 分化型 m 癌 30mm 以下 4UL(-) 未分化型 m 癌 10mm 以下 Ⅱb 平坦陥凹の Ⅱc
ESD 前診断と切除技術の向上
ESD 前診断 金比羅歌舞伎
ESD 術前診断 (ESD 施行 1 週間前 ) 1 2 3 4 高解像度内視鏡による通常観察 ( プロナーゼ + ガスコン水による出血をさせずに丁寧に洗浄 ) NBI 併用拡大内視鏡 薄めのインジゴカルミン ( 0.2% ) を使用するか酢酸加インジゴカルミン (0.6% 酢酸 +0.4% インジゴカルミン ) を使用するかは NBI を施行した時点での Villi あるいは pit の見え方によって決定している 酢酸による変化で 明瞭となるかは癌の粘液形質の違いとの報告もあるが 臨床上は 粘液層の状態で異なる 原則 4 点生検を施行も 境界診断困難例は追加で生検を行う
どうしても胃体部で炎症が強くて 範囲診断困難症例は H.pylori 除菌治療を先行することもある 除菌成功後に浮腫が減少するため 高低差がなくなるため もともと高低差がなく 色調変化が捕らえにくい病変には有効 前庭部では必ずしも有効でない ただし 前庭部は範囲診断困難例は少ない
初回内視鏡
除菌治療 3 ヶ月
ESD を考慮に入れた胃癌の診断
生検 5 個 生検による粘膜下層の線維化の進行 早期癌を疑った場合 生検は 1 ないし 2 個にとどめる Group V でなくても精査依頼は問題ない 紹介医との連携
ESD 技術向上 栗林 ( りつりん ) 公園
ESD は すべての内視鏡処置技術が 求められるため 技術の習得は容易 ではない
2002 年当時 ESD は危険 時間かかる ( 日付が変わった ) 術者を一人に限定して, learning curveの立ち上がりを早くし, 安全性にも十分配慮して行おう
ESD 完遂率 演者の ESD learning curve 100 80 60 40 20 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 症例
ESD 施行の体制の整備
ESD 同意書 内視鏡的粘膜下層剥離術を受けられる患者様へ ( ) 様各種検査の結果 あなたの胃に早期癌と思われる病変があることがわかりました 従来 癌というと外科的な開腹手術が行われる場合がほとんどでしたが 多くの研究により ある条件を満たす場合には 転移 ( 胃の中の癌細胞がリンパや血液の流れにより体の他の部分に運ばれてゆき そこで癌が増えていくこと ) がない状態と判断してよいことが判ってきました 他の場所に癌が及んでいないということは 胃の癌の部分のみをきれいに切り取れば治るということです 内視鏡的粘膜下層剥離術は いわゆる胃カメラを使って胃の中から癌を切除する手術 癌と内視鏡的管腔内手術 であり その最大の利点は 多少の胃の変形は起こるものの胃が残るということです また 病変の大きさ等によっても異なりますが 多くの患者さんは 手術の翌日から食事開始となり一週間くらいで退院されます 外科手術もできるだけ胃を残す術式になってきてはいますが 部分的にせよ胃がなくなるため食事量の減少などの影響はでます もちろん 外科的な開腹手術でなければ治らない癌もありますので 開腹手術も大切な癌の治療法であることに変わりありません 要は いかに患者さんへの負担を少なくして治療を行うかということを医師側は考えているわけです さて 転移を起こしていないと判断する癌の条件ですが 専門的となりますが 胃癌の場合 一般的には (1) 分化型腺癌 (2) 肉眼的に粘膜内癌 ( 浅い癌である )(3) 肉眼型に関わらず腫瘍径 2cm 以下 (3) 陥凹型では潰瘍を伴わない (2004 年 4 月発行 第 2 版日本胃癌学会の治療ガイドラインより ) とされています
ただ 最近では もっと大きな癌や胃の壁に深くもぐった癌でも内視鏡による切除で癌が治りうることが明らかとなってきており 専門施設では より広い適応で内 視鏡的粘膜下層剥離術による胃癌の切除を行っています 従来から 胃癌に対する内視鏡的な切除法はありましたが確実性は十分とは言えず より確実に癌を切除する方法として開発されたのが 内視鏡的粘膜下層剥離術です ただ 手術手技としては従来の方法と比べると格段に難しく 切除した場所からの出血や穿孔 ( 胃に穴が開く ) の危険が従来の方法より高いため 内視鏡の専門医であっても皆が行えるわけではありません 当院では 現在 (800) 人の胃腫瘍の患者さんに内視鏡的粘膜下層剥離術を行っており 主な偶発症である出血が (1.5)% で 穿孔が (1.0)% です 完全に癌が取りきれた率は (98.7)% ですが 切除前に浅い癌と診断していても 実際に切除してみると癌が深くもぐっているという場合は必ずありますので 100% にはなりません このように切除した後の病理診断により 予想外に深く癌がもぐっている場合は追加で外科的な手術を受けていただく場合があります 成績の提示と追加治療
内視鏡的粘膜下層剥離術の方法電気メスを用いて癌の周辺に印をつけ切除すべき範囲を決めます 引き続いて 印のさらに外側を電気メスで全周切開します その後 切除すべき粘膜の深層にある粘膜下層を少しずつ剥離して全体を切除します この際 深い層を切ってしまうと胃に穴が開いてしまう 穿孔 を起こしてしまいますし 浅い層を切ってしまうと癌そのものに傷がついてしまいますので 慎重かつ丁寧に行わなくてはなりません このように粘膜下層を剥離していく内視鏡的粘膜下層剥離術の開発によって 大きな病変であっても内視鏡的治療が可能となり 胃癌治療が飛躍的に進歩しました 麻酔について内視鏡室のベッド上にて のどの麻酔を行った後に静脈麻酔を行います 意識がない状態で治療は行われます 治療終了後 麻酔を覚ます薬を投与しますが はっきりした状態になるまでの時間は個人差があります 手術時間 あなたの予想される手術時間は ( ) 分くらいと 思いますが 病変の下の粘膜下層の状態によって変わってきます
偶発症について治療にともなって起こりうる不都合な事象を偶発症と言います 医療側はゼロになるよう努力していますが 患者さんの状態 現在の医療の限界も含めてゼロにはなりません 内視鏡的粘膜下層剥離術に関しては (1) 出血 (2) 穿孔 ( 胃に穴が開く )(3) 肺炎が起こりうる主な偶発症です 他にも患者さんの元々持っておられる病気によって起こりうることは異なります あなたの場合では ( ) などが考えられます 出血が起こった場合多少の出血は必ずありますが ほとんどの場合 その時点で内視鏡的に止血できます ただし極めてまれですが 隠れていた動脈に切除のための電気が及び 出血が激しく全身状態が悪化するおそれのある場合には 輸血を要する場合もあります その際には ご家族等にも説明し 輸血をさせていただくこととなります 当院では経験はありませんが 各種処置にても止血しない場合には 緊急で開腹手術となります 穿孔 ( 胃に穴が開く ) が起こった場合見た目に判らないくらいの小さい穴も含めて まれには穿孔が起こることがあります ほとんどの患者さんが 絶食のうえ抗生剤を投与すれば3 日間くらいで回復されますが 感染が広がり腹膜炎という状態になれば開腹手術となります 肺炎が起こった場合内視鏡処置中に唾液などが肺に流れ込むことで起こりえますが 抗生剤の投与にてほとんどの方が回復されます ただし 高齢の方 肺の病気をお持ちの方 糖尿病の方などは治りにくい場合があります その他万が一 これら以外の偶発症が起こった場合も迅速かつ適切な治療を行います
治療後の評価切除した病変を顕微鏡にて十分検索します 癌が予想以上に深くもぐっていたり リンパや血管の中に入り込んでいたりすると転移の危険がありうるとの判断になりますので 追加の外科的手術を勧める場合があります 治療を行わない場合病変が進行します ( ) 年 ( ) 月 ( ) 日に ( ) 同席のもと 上記を説明しました 香川県立中央病院消化器内科 ( ) 年 ( ) 月 ( ) 日に ( ) 医師より 上記の説明を受け 治療を受けることに同意いたします 直筆サイン
ICC200 VIO Water jet 付内視鏡購入 NBI 上部拡大 BIS モニター ( 麻酔深度モニター ) TCI ( プロポフォール自動注入装置 ) 140 120 100 80 60 40 20 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
テルフュージョン TCI BIS (Bispectral Index) モニター 生体監視装置 VIO 体圧分散マット
安全な ESD を目指して
まず 正確な病変範囲と深達度診断生検による瘢痕形成 (ESD 依頼する側でも極めて大切 ) ESDを施設として行うかどうかの決定編集ビデオでは わからないこともある 見学 できれば研修適応遵守自分の実力を知る 油断禁物 - Kagawa prefectural central hospital -
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) は, 消化管癌の治療を大きく変えた デバイスの改良等もあり 一般病院であっても高いレベルのESDを目指すことは可能と思われる 着実なステップアップをめざし ゴールはない 完成度の高い ESD を目指して