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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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記 者 発 表(予 定)

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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生物時計の安定性の秘密を解明

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

報道発表資料 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 ヒト白血病の再発は ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因 - 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - ポイント 患者の急性骨髄性白血病を再現する 白血病ヒト化マウス を開発 白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性が

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( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

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60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

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PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:


図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

平成16年6月  日

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Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

スライド 1

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

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この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

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4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

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11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

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1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

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平成14年度研究報告

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甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

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抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

平成24年7月x日

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研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

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PRESS RELEASE(2017/07/18) 九州大学広報室 819-0395 福岡市西区元岡 744 TEL:092-802-2130 FAX:092-802-2139 MAIL:koho@jimu.kyushu-u.ac.jp URL:http://www.kyushu-u.ac.jp 造血幹細胞の過剰鉄が血液産生を阻害する仕組みを解明 骨髄異形成症候群の新たな治療法開発に期待 - 九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授 西山正章助教 武藤義治研究員らの研究グループは 正常な血液細胞が作られなくなることで知られる骨髄異形成症候群 ( 1) の患者の造血幹細胞 ( 2) で FBXL5( 3) というたんぱく質の量が減少していることに着目し 同様の状態をマウスで再現したところ 造血幹細胞 ( 血液細胞を生み出す元となる細胞 ) に鉄がたまって血液細胞を作る能力が低下することを見出しました 研究グループはこのマウスを用いて造血幹細胞による鉄制御メカニズムを解明し 将来の治療応用に向けた基盤を確立しました 骨髄異形成症候群では 造血幹細胞における血液細胞を供給する能力が低下し さらに一部の患者では白血病に移行することが知られています また 骨髄異形成症候群の患者さんでは体に鉄がたまりやすく それが血液細胞を供給する能力の低下をさらに悪化させていることが報告されていましたが 具体的なメカニズムは謎でした 本研究グループは 以前に FBXL5 が体内の鉄量を制御することを世界にさきがけて発見し その研究をリードしてきました このたび 骨髄異形成症候群の患者で 造血幹細胞の FBXL5 の量が低下していることと FBXL5 が欠失したマウス造血幹細胞では IRP2( 4) というたんぱくが蓄積し その結果 鉄がたまって強力な酸化ストレスを生じ その結果として血液細胞を供給する能力が低下することを発見しました これらの結果は 造血幹細胞において IRP2 を抑制することにより過剰な鉄を減らすことで骨髄異形成症候群が治療できる可能性を示すものです 本研究成果は 2017 年 7 月 17 日 ( 月 ) 午前 10 時 ( 英国夏時間 ) に英国科学雑誌 Nature Communications で公開されました なお 用語解説は別紙を参照 研究者からひとこと : FBXL5 が機能しないと鉄がたまって正常な血液細胞の産生ができなくなります 骨髄異形成症候群の患者では実際 FBXL5 が減少していることが分かりました これらの知見から 骨髄異形成症候群の新たな治療法開発が期待されます 参考図細胞の過剰な鉄は骨髄異形成症候群の治療標的となりうる お問い合わせ 中山敬一 ( ナカヤマケイイチ ) 生体防御医学研究所主幹教授 Tel:092-642-6815 Fax:092-642-6819 E-mail:nakayak1@bioreg.kyushu-u.ac.jp

別紙 造血幹細胞の過剰鉄が血液産生を阻害する仕組みを解明 - 骨髄異形成症候群の新たな治療法開発に期待 - < 研究の背景と経緯 > 骨髄異形成症候群とは 造血幹細胞の異常により 血液が正常に作られなくなる疾患であり 白血病の前段階ともされています ( 図 1) 近年 骨髄異形成症候群の患者さんでは体に鉄がたまりやすく それが血液細胞を供給する能力の低下をさらに悪化させるという現象が報告されていました 鉄はヒトの体内に 5g 程度含まれており 赤血球や様々な酵素の働きに必須であることが知られています しかし強い酸化ストレスを発生させる源であることから マウス胎児や中枢神経で FBXL5 と IRP2 いうたんぱく質による厳密な調節が必要であることが知られています ( 図 2) 造血幹細胞は酸化ストレスに弱いことが知られていることから 鉄のコントロールは特に重要であると考えられます しかしながら 造血幹細胞でどのように鉄はコントロールされているか そして鉄が造血幹細胞にたまることが病気とどう関係するかどうか という点については謎でした < 研究の内容 > 骨髄異形成症候群の患者さんで 体に鉄がたまることが造血幹細胞の血液を供給する能力を低下させるという知見に着目し 骨髄異形成症候群の造血幹細胞トランスクリプトーム ( 5) のデータを解析したところ FBXL5 の量が低下していることが分かりました ( 図 1) このことから造血幹細胞の正常な働きに FBXL5 による鉄のコントロールが重要ではないかと考え 造血幹細胞の FBXL5 の機能解析に着手しました まず造血幹細胞の維持における FBXL5 による鉄のコントロールの役割を調べるために 遺伝子操作で FBXL5 を欠失させたマウス造血幹細胞を調べたところ 正常の造血幹細胞に比べて細胞に鉄がたまって その数が減少するという異常を示しました ( 図 3) つまり 鉄のコントロールが正常な造血幹細胞の維持に必要であることを示しています 次に 造血幹細胞の機能が低下しているかどうか評価する骨髄移植実験 ( 6) を行いました 造血幹細胞は放射線により骨髄を破壊したマウスに移植すると 骨髄を再生する能力がありますが この再生能力を指標に造血幹細胞の機能を調べました すると FBXL5 を欠失した造血幹細胞は骨髄を再生する能力が極めて低下していることが観察されました ( 図 4) この結果は 鉄のコントロールが正常な造血幹細胞の機能に必要であることを示しています さらに 細胞に鉄がたまることが造血幹細胞の維持や機能に悪い影響を及ぼす理由を調べるために トランスクリプトーム解析を行ったところ FBXL5 を欠失した造血幹細胞では大変強い酸化ストレスが生じていることが分かりました ( 図 5) また 造血幹細胞は ふだん細胞分裂をあまりせずに じっとした状態にあることで血液細胞を作る能力を温存することが知られていますが FBXL5 を欠失した造血幹細胞は 鉄の刺激で細胞分裂が異常に起こっていることが分かりました これらの結果から FBXL5 を欠失し鉄がたまった造血幹細胞は 強い酸化ストレスと細胞分裂の増加から 血液細胞を供給する機能が低下してしまうと結論づけました FBXL5 は IRP2 というたんぱく質を分解して機能を発揮することが知られているため FBXL5 がないと IRP2 が蓄積して鉄のコントロールに影響を与えていると予想されます そこで本研究グループは FBXL5 を欠失した造血幹細胞にさらに遺伝子操作で IRP2 が蓄積しないようにしました その結果 この造血幹細胞は機能が回復することが分かりました つまり FBXL5 を欠失することによる造血幹細胞の鉄の過剰と機能の低下は IRP2 の蓄積が原因であると考えられます ( 図 6) 以上の結果から 造血幹細胞において FBXL5 は IRP2 の働きを抑えることによって 細胞内の鉄をコントロールし 酸化ストレスや 細胞分裂を制御していることが明らかになりました また 造血幹細胞の FBXL5 の低下は 骨髄異形成症候群に関係している可能性が示唆されました < 今後の展開と治療応用への期待 > 本研究では 造血幹細胞の FBXL5 が不足すると IRP2 が蓄積し 細胞に鉄がたまり 強い酸化ストレスや細胞分裂の促進により 異常をきたすことが明らかとなりました またこれが骨髄異形成症候群を引き起こしている可能性があることが判明しました つまり IRP2 の働きを抑えて鉄の過剰を防ぐことで骨髄異形成症候群が治療できる可能性を示すものです ( 図 6) また造血幹細胞で FBXL5 を欠損したマウスは 鉄の過剰を伴う血液の病気のモデル動物になると考えられます 今後はこのモデルマウスを用いて 骨髄異形成症候群などの血液の病気の発症メカニズムを解明するとともに 治療薬剤の探索をおこなうことで 治療への応用を目指していきたいと考えています

< 参考図 > 図 1 造血幹細胞と骨髄異形成症候群造血幹細胞は血液細胞を生み出すおおもとの細胞です 骨髄異形成症候群は 造血幹細胞の能力が低下し さらにしばしば白血病に移行することが知られています トランスクリプトーム解析により骨髄異形成症候群の患者さんの造血幹細胞では FBXL5 の量が減少していることが明らかになりました 図 2 FBXL5 と IRP2 による鉄のコントロール鉄はヒトの体内に 5g 程度含まれています 生体の鉄の調節は FBXL5 と IRP2 というたんぱく質が重要な働きを担っています IRP2 は細胞の鉄の取り込みを促進することで細胞内の鉄を増やす働きがあり FBXL5 は IRP2 の働きを抑えることで細胞内の鉄を減らす働きがあります

図 3 FBXL5 を欠損した骨髄では造血幹細胞は減少する血液細胞においてのみ FBXL5 を欠損したマウスを作製したところ 鉄がたまって造血幹細胞が次第に減少するという異常を示しました 図 4 FBXL5 を欠損した造血幹細胞は血液細胞の産生能力が低下する正常の造血幹細胞を放射線照射で骨髄を破壊した別のマウスに移植すると骨髄を再生する能力がありますが FBXL5 を欠失した造血幹細胞はその能力が非常に低下していることが分かりました

図 5 FBXL5 が低下した造血幹細胞では強い酸化ストレスが生じているトランスクリプトーム解析の結果から FBXL5 を欠失した造血幹細胞では強い酸化ストレスが生じて それに応答する遺伝子の活動が増加していることがわかりました 図 6 FBXL5 は細胞内の鉄を制御することで造血幹細胞を維持する FBXL5 は 鉄の取り込みに重要なたんぱく質である IRP2 の働きを抑えることによって 細胞の鉄の量を調節しています FBXL5 が欠失すると IRP2 がたまることで細胞内の鉄が増加し その結果 血液細胞を産生する能力が低下すると考えられます 異常な IRP2 活性を抑えることによって 骨髄異形成症候群などの一部の血液の病気は治療できる可能性があることが分かりました

< 用語解説 > ( 1) 骨髄異形成症候群 : 骨髄異形成症候群とは 造血幹細胞 ( 血液細胞を生み出す元となる細胞 ) の異常により 血液が正常に作られなくなる血液の病気であり 白血病の前段階ともされています ( 2) 造血幹細胞 : 血液細胞を生み出すおおもとの細胞で ヒトの場合には骨髄の細胞 10 万個に 1 個と非常にまれな細胞です ( 3)FBXL5: 細胞内の鉄の量を制御しているたんぱく質で IRP2 というたんぱく質を分解することで 細胞内の鉄が増えすぎないように 必要に応じて減らす働きがあります ( 4)IRP2: 細胞内の鉄の量を制御しているたんぱく質で 細胞の鉄の取り込みや貯蔵を調節することで 細胞内の鉄を増やす働きがあります ( 5) トランスクリプトーム解析 : 遺伝子から作られる転写物を全て測定することによって 生体内にどのような変化が起こっているかを調べる技術 ( 6) 骨髄移植実験 : 造血幹細胞はすべての血液細胞を作ることができるため 骨髄を破壊したマウスに移植すると その骨髄や血液細胞を全て再生する能力があります この再生能力を指標に造血幹細胞の機能を評価することができます < 論文名 > Essential role of FBXL5-mediated cellular iron homeostasis in maintenance of hematopoietic stem cells ( 造血幹細胞の維持における FBXL5 を介した細胞鉄ホメオスタシスの必須の役割 ) Nature communications, 2016 本成果は 以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 科学研究費補助金 基盤研究 (S) 研究課題名 : 幹細胞維持分子の機能解析と全身の幹細胞の可視化を目指した総合的研究 研究代表者 : 中山敬一 ( 九州大学生体防御医学研究所主幹教授 ) 研究期間 : 平成 25 年 4 月 ~ 平成 30 年 3 月 お問い合わせ 中山敬一 ( ナカヤマケイイチ ) 生体防御医学研究所主幹教授 Tel:092-642-6815 Fax:092-642-6819 E-mail:nakayak1@bioreg.kyushu-u.ac.jp